たとえば、築年数の古いビルで、空調機と配管を入れ替える工事を、オーナーから直接請け負うことになったとする。見積書を出す前に、上司が聞く。「この工事は建設リサイクル法の対象か。対象なら、届出は誰が出して、終わったら誰に何を報告するのか」。
ビルは地上10階、床面積の合計は1万平方メートル。大きな建物だから対象だろうか。それとも、決め手は別のところにあるのか。このトピックを読み終えるころには、階数や面積と請負代金のうちどれを見るかを、工事の種類から選べるようになっている。
まず一言で
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)は、特定の資材を使う一定規模以上の工事で、廃棄物を種類ごとに分けながら工事し(分別解体等)、再資源化することを求める法律だ。
- 対象になる工事は、2段の門で決まる。特定建設資材が関わることと、規模が基準以上であること(9条1項)
- 規模の物差し(何で規模を測るか)は工事の種類で違う。解体は床面積80平方メートル、新築・増築は500平方メートル、新築・増築でない建築物の工事は請負代金1億円、建築物以外は請負代金500万円(施行令2条1項)
- 主語を分ける。届出は発注者、説明・書面・完了報告は元請、変更命令は都道府県知事。分別解体等と再資源化は、下請を含む受注者が行う
届出の日数と窓口は工事の申請書・届出と提出先で扱ったので、ここでは繰り返さない。廃棄物の処理の委託や管理票(廃棄物処理法)、フロン類(フロン排出抑制法)は、このトピックでは扱わない。条文は、2026年11月4日に e-Gov 法令検索で確認した現行のものだ。
仕組み — なぜ?
なぜ、4種だけなのか
分別と再資源化を義務づける資材は、法2条5項が定義している。建設資材が廃棄物になったときに、その再資源化が資源の有効な利用と廃棄物の減量を図るうえで特に必要であり、かつ経済性の面で制約が著しくないと認められるもの。これを政令で定める。施行令1条は、次の4つを掲げた。
- コンクリート
- コンクリート及び鉄から成る建設資材
- 木材
- アスファルト・コンクリート
条文が書いているのは「特に必要」で「経済性の制約が著しくない」という定義までで、4つを選んだ個別の説明は書かれていない。大事なのは、列挙が閉じていること。鉄は2号の形(コンクリートと組み合わさった資材)でしか入らず、鋼管のような鉄だけの資材は入らない。石膏ボードもガラスも保温材も、列挙にない。
対象建設工事 — 2段の門
法9条1項は、次のどちらかで、規模が基準以上のものを対象建設工事と呼ぶ。
- 特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事
- その施工に特定建設資材を使用する新築工事等
ここでいう新築工事等は、新築に限らない。法2条3項2号は「新築その他の解体工事以外の建設工事」を新築工事等と定義する。改修や設備の更新も、解体工事に当たらなければここに入る。
対象建設工事の受注者(下請負人を含む。法は「対象建設工事受注者」と呼ぶ)と、請負契約によらず自ら施工する自主施工者は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければならない(9条1項)。
なぜ、規模で線を引き、地域で動かせるのか
規模の線を引く理由は、条文に書かれていない。一方、地域で線を動かせる理由は書かれている。都道府県は、再資源化施設や最終処分場の処理量の見込みなどから、国の基準では廃棄物の減量が十分でないと認められる区域について、条例で、基準に代えて適用する規模の基準を定められる(9条4項)。だから設問に「条例は無いものとする」とあれば、政令の数字で解く。
数と条文で追う
規模の物差し
| 工事の種類 | 基準 | 測るもの |
|---|---|---|
| 建築物の解体 | 80平方メートル | 解体する部分の床面積の合計 |
| 建築物の新築・増築 | 500平方メートル | 床面積の合計(増築は増築部分) |
| 上の2つでない建築物の工事 | 1億円 | 請負代金の額 |
| 建築物以外の解体・新築工事等 | 500万円 | 請負代金の額 |
令の書き方は「八十平方メートルであるもの」だが、法9条1項が「基準以上のもの」と書くので、ちょうど基準の工事も対象になる。3号は、新築工事等のうち新築・増築に当たらない建築物の工事を拾う。
また、同じ者が解体工事又は新築工事等を2以上の契約に分割して請け負うときは、一の契約で請け負ったものとみなして基準を当てはめる。ただし、正当な理由に基づいて分割したときは別だ(令2条2項)。
判定の手順
工事を聞いたら、次の順に当てはめる(当サイトの整理)。
- 特定建設資材が関わるか。関わらなければ対象外
- 上の図の順に工事の種類を決め、物差しを当てる
- 分割契約と条例を確かめる
やってみよう ①:4つの工事を判定する
いずれも特定建設資材が関わる工事で、都道府県の条例はないものとする。対象建設工事に当たるか。
(a) 木造2階建て住宅の全部を解体する。床面積の合計は78平方メートル。
(b) 事務所に、床面積520平方メートルの棟を増築する。
(c) 地上20階、床面積の合計5万平方メートルの建築物で、空調設備を更新する。新築・増築でない建築物の工事として扱う。請負代金は9,500万円。
(d) 建築物でない工作物を新築する。請負代金はちょうど500万円。
答え:(a) 78平方メートルは解体の80に届かず、対象外。(b) 増築は増築部分で測り、520は500以上なので対象。(c) 請負代金で測り、9,500万円は1億円に届かず対象外。(d) 建築物以外は請負代金500万円以上で、ちょうども対象。
分別解体等 — 何を、どの順に
分別解体等とは、解体工事では、建築物等に用いられた建設資材に係る建設資材廃棄物を種類ごとに分別しつつ、工事を計画的に施工する行為。新築工事等では、工事に伴い副次的に生ずる建設資材廃棄物を種類ごとに分別しつつ施工する行為だ(2条3項)。法の定義は「建設資材廃棄物」と書き、9条2項の施工方法の基準は「特定建設資材廃棄物を種類ごとに分別することを確保する」ためのものと書く。
その基準は施行規則2条1項に4段で書かれている。
- 調査:建築物等と周辺の状況、作業場所、搬出経路、残存物品(解体する建築物の敷地内にある、建設資材廃棄物以外の物品)の有無、吹付け石綿などの付着物の有無
- 計画の作成:調査に基づき、分別解体等の計画を作る
- 事前の措置:作業場所と搬出経路の確保、残存物品の搬出の確認、付着物の除去など
- 施工:計画に従って工事をする
建築物の解体工事の工程は、次の順序に従う(規則2条3項。構造上その他施工の技術上これにより難い場合を除く)。
1の工程に木材を含む内装材があるときは、木材と一体になった石膏ボードなど、木材が廃棄物となったものの分別の支障になるものを、先に取り外してから木材を外す(同条4項)。解体工事の工程の方法は、手作業、又は手作業と機械の併用のどちらかで、1と2の工程は手作業が原則だ(同条6項・7項)。構造上その他施工の技術上これにより難い場合は、手作業と機械の併用ができる。
なぜ、この順なのか。条文は理由を書いていない。当サイトの読みでは、廃棄物が混ざる前に、外せるものから種類ごとに外すためだろう。
やってみよう ②:解体の作業を並べる
次の4つの作業を、規則2条3項の順に並べよ(ただし書は考えない)。
ア 基礎の取壊し イ 空調機・配管・内装材の取り外し ウ 外壁と構造耐力上主要な部分(基礎を除く)の取壊し エ 屋根ふき材の取り外し
答え:イ → エ → ウ → ア。
誰が、いつ、何をするか
分別解体等の周りの手続きは、次のように主語が分かれる。
| 時期 | 誰が | 何を(条) |
|---|---|---|
| 請け負う前 | 直接請け負おうとする建設業者 | 書面を交付して説明(12条1項) |
| 契約 | 契約の当事者(下請契約も) | 方法・費用を書面で相互交付(13条) |
| 着手の7日前まで | 発注者・自主施工者 | 都道府県知事へ届出(10条1項) |
| 受理から7日以内 | 都道府県知事 | 計画の変更などを命令(10条3項) |
| 下請に出すとき | 対象建設工事受注者 | 届け出られた事項を告げる(12条3項) |
| 完了したとき | 元請業者 | 発注者へ書面で報告、記録を保存(18条1項) |
12条1項の説明は「請け負おうとする」建設業者、18条1項の報告は「元請業者」(発注者から直接建設工事を請け負った建設業者。2条10項)が主語で、時期が違う。建設業法の元請負人(下請契約の注文者である建設業者。元請負人の義務で扱った)と違い、一次下請が二次下請に出す場合の一次下請は、この法律の元請業者でない。説明は電磁的方法で代えられるが、発注者の承諾が要る(12条2項)。契約の書面は、建設業法19条1項に定めるもののほか、方法・解体工事に要する費用・再資源化等をする施設の名称と所在地・再資源化等に要する費用を記載する(13条、特定建設資材に係る分別解体等に関する省令7条)。
完了報告では、再資源化等が完了した年月日、施設の名称と所在地、再資源化等に要した費用を報告する(施行規則5条)。記録の保存期間の年数は、確認した範囲の法・政令・省令に見つけられなかった。報告を受けた発注者は、適正に行われなかったと認めるとき、都道府県知事に申告できる(18条2項)。
やってみよう ③:誰の仕事か
次の行為を行うのは誰か。「発注者」「直接請け負おうとする建設業者」「元請業者」「都道府県知事」「対象建設工事受注者(元請も下請も)」から選べ。
(1) 着手の7日前までに届け出る。 (2) 契約の前に、書面を交付して説明する。 (3) 完了後に書面で報告し、記録を保存する。 (4) 受理から7日以内に計画の変更を命じる。 (5) 下請に出すとき、届け出られた事項を告げる。
答え:(1) 発注者(又は自主施工者)。(2) 直接請け負おうとする建設業者。(3) 元請業者。(4) 都道府県知事。(5) 対象建設工事受注者。
再資源化と縮減
分別解体等で出た特定建設資材廃棄物は、再資源化しなければならない(16条)。再資源化は、資材や原材料として利用できる状態にする行為などだ(2条4項)。例外が1つある。指定建設資材廃棄物(令5条は「木材が廃棄物となったもの」)は、主務省令で定める距離の基準の範囲内に再資源化施設がない場所で施工する場合などは、再資源化に代えて縮減をすれば足りる。縮減とは、焼却、脱水、圧縮その他の方法で大きさを減ずる行為だ(2条7項)。国の距離の基準は50キロメートル(規則3条)で、都道府県は条例で代わりの基準を定められる(17条)。現場付近から施設まで運搬の用に供する車両が通る道路が整備されておらず、縮減のための運搬費が再資源化(運搬に当たるものに限る)の費用より低い場合も、縮減で足りる(規則4条)。
知事の権限と罰則
知事は、必要があると認めるときは、対象建設工事受注者や自主施工者に分別解体等の助言・勧告ができ(14条)、正当な理由なく必要な行為をしない場合に特に必要があると認めるときは、方法の変更などを命じられる(15条)。再資源化等も同じ型だ(19条・20条。相手は受注者)。必要な限度で、報告の徴収(42条)と立入検査(43条)もできる。
ただし、施行令9条により、一部の事務は市町村長が行う。建築主事を置く市町村・特別区の長は10条の届出と11条の通知の受理、10条の変更命令、14条・15条の事務などを、指定都市・中核市の長は18条2項の申告の受理、19条・20条の事務などを行う(前者は、一部の市町村・特別区では扱う建築物が限られる。令9条2項・3項)。本文は条文の主語どおり知事と書く。
罰則はたとえば次のとおり。届出をしない・虚偽の届出は20万円以下の罰金(51条1号)、変更命令に違反すると30万円以下の罰金(50条1号)、15条・20条の命令に違反すると50万円以下の罰金(49条)、無登録で解体工事業を営むと1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(48条1号)。18条1項の記録を作らない・保存しない場合は10万円以下の過料(53条1号)。
解体工事業者の登録
解体工事業は、土木工事業・建築工事業・解体工事業の建設業許可を受けた者を除いて、都道府県知事の登録が要る。管工事の許可だけの者は、除かれない。
| 項目 | 内容 | 条 |
|---|---|---|
| 登録が要る人 | 解体工事業を営む者で、土木・建築・解体のいずれの許可も受けていない者 | 21条1項 |
| 登録先 | 営業しようとする区域の知事 | 21条1項 |
| 有効期間 | 5年。更新しないと失効 | 21条2項 |
| 更新の申請 | 満了の30日前まで | 省令2条 |
| 変更・廃業 | 30日以内に届出 | 25条、27条 |
| 技術管理者 | 現場の技術上の管理者を選任 | 31条、32条 |
| 標識・帳簿 | 営業所と現場に標識、営業所に帳簿 | 33条、34条 |
登録を受けた者が土木・建築・解体のいずれかの許可を受けたときは、登録は効力を失う(21条5項)。許可は、政令で定める軽微な建設工事(請負代金500万円未満など)のみを請け負う者には要らない(建設業法3条1項ただし書、施行令1条の2)。許可の要否と登録の要否は別の話だが、登録は、土木・建築・解体のいずれの許可も持たずに解体工事業を営む者(軽微な工事だけの者や、管工事などの許可だけの者)のための制度と読める(当サイトの整理)。
技術管理者の基準(省令7条)には、解体工事の実務経験、建設業法の技術検定(建設機械施工・土木施工・建築施工)、建築士、とび技能検定、技術士(建設部門)などの道が書かれている。管工事施工管理の名は、1号の列挙には挙がっていない。ほかに、講習・登録試験・大臣認定の道もある(同条2号〜4号。ここでは扱わない)。
現場とつなぐ
- 設備の撤去は工程の頭にある。 規則2条3項は、建築設備・内装材などの取り外しを最初に置き、手作業を原則とする。管や電気の設備を外す仕事の段取りは、後ろの工程が進む条件になる(当サイトの読み)
- 調査が先。 計画の前に、付着物(吹付け石綿など)の有無の調査が入る(規則2条1項1号)。石綿に関する個別の法令の義務は、このトピックでは扱わない
- 設備の材料の多くは4種に入らない。 電線、盤、金属や樹脂の配管・電線管、ダクト、保温材は、令1条の4つのどれでもない。ただし、設備の撤去でコンクリートの壁や床、機器基礎を壊して出たものは、コンクリートが廃棄物となったものとして特定建設資材廃棄物に当たる(2条6項。義務がかかるかは、工事が対象建設工事かで決まる)
試験での出方
令和8年度の問題Bの No.19 は、設備改修工事に規模の基準を当てはめる形だった。「条例は無いものとする」との断りが付く。設備改修を新築・増築でない建築物の工事として請負代金で見ると、正答肢と合う。なお、撤去を含む改修が解体工事と新築工事等のどちらに当たるかは工事の中身で決まる。法は建築物等の全部又は一部を解体する建設工事を解体工事と定め(法2条3項1号)、規則2条3項1号は建築設備を建築物の部分として扱うので、設備の撤去が一部解体と読まれる余地がある。この運用の細部と、令和8年度以外の年度の出題は、このトピックでは確認していない。
冒頭の問いの答え合わせ
地上10階、床面積1万平方メートルのビルの空調設備更新は、解体工事でなく新築工事等(新築・増築でない建築物の工事)として扱うなら、請負代金で決まる。1億円以上なら(特定建設資材が関わり、条例がなければ)対象建設工事で、階数と面積は物差しにならない。撤去を一部解体とみるなら、解体する部分の床面積で測る(法2条3項1号、令2条1項1号)。対象なら、届出は発注者が着手の7日前までに出し、直接請け負う側は契約の前に書面で説明し、契約の書面を交わし、完了したら元請として発注者に書面で報告して記録を保存する。
次の問い
分けて出した廃棄物は、誰が運び、どんな書類を付けて、どこで処分されるのか。建設現場の廃棄物には、別の法律の仕組みも重なる。その仕組みは、このトピックの範囲の外だ。