仮に、あなたが事務所ビルの屋上にある業務用エアコン(室外機)の更新工事を担当しているとする。点検に来た人が言う。「冷媒が減っていますね。足してから運転しましょう」。足してよいのか。足すとしたら、誰がやるのか。
更新が決まり、古い室外機を撤去する日が来る。中の冷媒は、誰が、どこへ渡すのか。渡したことを、発注者はどうやって確かめるのか。
このトピックを読み終えるころには、この2つの場面で「いま誰が何をしてよいか」を、法令の言葉で言えるようになっている。
まず一言で
フロン排出抑制法は、業務用エアコンや冷蔵・冷凍機器の冷媒(フロン類)を、使うあいだ・足すとき・捨てるときの3つの場面で、人と書類を決めて追う法律だ。
- 対象は第一種特定製品。業務用のエアコンと冷蔵・冷凍機器で、冷媒にフロン類が入っているもの(法2条)
- 使うあいだ、管理者が点検し、記録を残し、漏れたら直す。漏えいが一定量以上なら報告する
- 整備で冷媒を足す・抜くときは、登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者に委託する(法37条・39条)。業者は、足す前に確かめ、漏えいがあれば箇所が直るまで原則として足さない
- 捨てるときは、管理者が充塡回収業者へフロン類を渡し、書面(回収依頼書・委託確認書)を出し、引取証明書で渡ったことを確かめる
- 解体工事を管理者から直接請け負おうとする建設業者は、機器の設置の有無を確認し、書面で説明する
扱わないことは決めておく。フロン類のGWP・ODP、規制の歴史、排出量の数字は、別のトピック「地球環境」で扱った。冷凍サイクルとCOPは「冷凍サイクルとCOP」、空調機・熱源機器は「空調機・冷却塔・熱源機器」にある。解体で出る廃材の法令(建設リサイクル法、廃棄物処理法)は、別のトピックで扱う。
登場人物 — 同じ現場でも、法令上の名前が変わる
条文は人を役割で呼ぶ。同じ会社が、場面によって別の役割になる。
| 役割 | 誰か | 主な義務 |
|---|---|---|
| 管理者 | 機器の所有者その他、使用・整備の発注・廃棄等を管理する責任を有する者(法2条8項) | 点検、記録、報告、廃棄時の引渡し |
| 第一種特定製品整備者 | 第一種特定製品の整備を行う者(法6条) | 充塡・回収を充塡回収業者に委託 |
| 第一種フロン類充塡回収業者 | 都道府県知事の登録を受けて、充塡・回収を業として行う者(法2条10項、27条) | 基準に従う充塡、証明書の交付、引取り |
| 第一種フロン類引渡受託者 | 廃棄時の引渡しを管理者から委託された者(手引きは建物解体業者などを例に挙げる) | 委託確認書の回付 |
以下、「手引き」は、環境省・経済産業省の運用の手引き第3版(令和3年4月)を指す。このトピックで使うのは、管理者向けと、充塡回収業者・解体工事元請業者向けの2冊。
管理者は誰か。手引きは、原則を所有者とし、契約書面で保守・修繕の責務を所有者以外が負うリース契約等では、その責務を負う者が管理者になると整理する。
整備の範囲も、現場の人には大事だ。手引きは、整備を「機器の設置から廃棄前までに行われる設備施工、保守・修繕等の作業」とし、工場生産時の冷媒充塡は含まず、現場設置時の機器・配管等への冷媒充塡は含むと整理する。廃棄等の作業そのものは、整備ではない。
仕組み — なぜ、機器の「一生」を書類で追うのか
なぜ① 使うあいだの責任が、管理者に置かれるのか。 手引きは、管理者を、機器からの漏えいに実質的な責任を持ち、漏えい抑制のために必要な行動(費用の負担の判断等)をとれる者と説明する。点検にも修理にも費用がかかる。費用を決められる人に義務を置く、という組み立てだ(当サイトの読み)。
なぜ② 足す前に確かめ、直るまで足さないのか。 漏れた冷媒は、直接は測れない。手引きは、漏えいしたフロン類を直接測定できないので、追加充塡した総量を漏えい量とみなして算定すると説明する。つまり、足した量が漏れた量の目安になる。手引き(充塡回収業者向け)は、充塡前の確認と原則禁止について「繰返し充塡による漏えいを防止するため」と書く。この循環を断つ趣旨と読める(当サイトの読み)。
なぜ③ 捨てるときは、書類で追うのか。 冷媒は密閉された機器の中にあり、外からは入っているかどうかが見えない。手引きによれば、平成18年に行程管理制度が入り、令和元年には、低迷する廃棄時の回収率を上げるため、引渡義務違反への直接罰と、廃棄物・リサイクル業者等が回収を確認できない機器を引き取ることの禁止等が加わった。渡したかどうかを書面で追えるようにするのが、書類を重ねる理由と読める(当サイトの読み)。
数と条文で追う① — 点検と記録(告示)
管理者の「判断の基準」は、告示(平成26年経済産業省・環境省告示第13号)に書かれている。使用等の状況が基準に照らして著しく不十分なときは、都道府県知事が勧告でき、従わなければ公表され、なお正当な理由なく措置をとらないと命令に進むことがある(法18条)。勧告の対象は、定格出力7.5kW以上の機器を1台以上使用等する管理者(施行規則2条)。
| 点検 | 頻度 | 実施者 |
|---|---|---|
| 簡易点検 | 3月に1回以上 | 限定なし |
| 定期点検(エアコン 7.5kW以上50kW未満) | 3年に1回以上 | 十分な知見を有する者が自ら行うか立ち会う |
| 定期点検(エアコン 50kW以上、冷蔵・冷凍機器 7.5kW以上) | 1年に1回以上 | 同上 |
区分に使う数字は、圧縮機を駆動する電動機の定格出力だ(ガスヒートポンプのように内燃機関で駆動するなら、その定格出力)。二以上の電動機で駆動するなら合計で決める(別表2の備考)。手引きは、室外機の銘板で確認するとし、「呼称出力」「電動機出力・圧縮機」などの表記がありうると書く。電気設備の側からは、銘板のうち圧縮機の出力の欄が物差しになる。室外ファンなどほかの電動機や消費電力の数字と取り違えない。複数の圧縮機は、手引きによれば冷媒系統が同じなら合算し、二元系冷凍機は高い方の定格出力で判断する。
記録簿は機器ごとに備える。点検・修理・充塡・回収の日と者、種類と量などを記録し、廃棄等をしてフロン類の引渡しを完了した日から3年を経過するまで保存する(告示第四)。
漏えいを確認したら、管理者は速やかに点検し、箇所が特定されれば修理する。故障等を確認したら、点検と修理を行う。それまで、整備者を通じた充塡の委託はしてはならない。次節の充塡回収業者側の基準は、故障等だけなら点検で漏えいが現に生じていないと確認できれば足りるので、書きぶりが違う。例外は、次節の充塡側と同様に、著しく困難な場所の漏えいと、同じ限定つきの応急の1回だ(告示第三1〜3)。充塡を止める仕組みが、管理者と充塡回収業者の両方にある(当サイトの読み)。
やってみよう①:圧縮機を5.5kWと4kWの2台の電動機で駆動する冷凍機器は、定期点検の対象か。
合計は 5.5 + 4 = 9.5kW。7.5kW以上なので対象で、冷蔵・冷凍機器の7.5kW以上は1年に1回以上(別表2)。1台ずつは7.5kW未満でも、合計で判断する。
数と条文で追う② — 充塡の基準(施行規則14条)
第一種フロン類充塡回収業者は、充塡の委託を受けて充塡するとき、主務省令(施行規則14条)の基準に従う(法37条3項)。流れは図のとおり。
基準を自分の言葉で並べ直すと、次のようになる。
充塡の前
- 管理者が保存する点検・整備の記録簿の確認や目視などで、冷媒の漏えいの有無と、あれば点検・修理の実施の有無を確かめる。漏えいを現に生じさせている蓋然性が高い故障等(故障又はその徴候)も同じように確かめる(1号)
- 確認の方法と結果を整備者と管理者に通知する。点検・修理の実施を確認できないときは、その必要性も伝える(2号)
- 漏えいを確認したら、箇所が特定され、修理により漏えいが現に生じていないと確認できるまで充塡しない。故障等(故障又はその徴候)だけなら、点検が行われ、漏えいが現に生じていないと確認できれば足り、修理は要らない。漏えいが分かれば、特定・修理まで進める(3号イ・ロ)。例外①:漏えい箇所の特定や修理が著しく困難な場所の漏えい(3号ただし書)
- 例外②:人の健康を損なう事態や事業への著しい損害を避けるため、環境衛生上必要な空気環境の調整、被冷却物の衛生管理又は事業の継続のために修理せず応急的に充塡する必要があり、かつ漏えいを確認した日から60日以内に修理することが確実なときは、1回に限り充塡できる(4号)
充塡のとき
- 充塡する冷媒が機器に表示された種類に適合することを確認する。または、GWPが表示された冷媒より小さく、安全上支障がないことを製造業者等に確認する(5号)
- 現に充塡されている冷媒と異なるものは、あらかじめ管理者の承諾を得る(6号)
- 充塡に際して放出させない措置をとり、必要以上の充塡などでのちに放出されるおそれがないよう措置する。フロン類の性状と充塡方法に十分な知見を有する者が、自ら行うか立ち会う(7〜9号)
充塡したら、充塡証明書を管理者に交付する(電子登録で代えるときは不要。登録は、業者の端末が情報処理センターに接続され、管理者の承諾を得て、充塡後20日以内に行う場合に限る。法38条1項、規則17・18条)。記載事項には、設置に際しての充塡か、それ以外の整備での充塡かの別がある。交付は充塡した日から30日以内(施行規則15条・16条)。
やってみよう②:冷凍倉庫の機器で漏えいを確認したが、事業を止められない。修理は来週の予定。冷媒を足せるか。
条件を分ける。(a) 放置すると人の健康を損なう事態や事業への著しい損害が生じかねず、そのために、環境衛生上必要な空気環境の調整・被冷却物の衛生管理・事業の継続のいずれかで、修理せず応急的に充塡する必要がある。(b) 漏えいを確認した日から60日以内に修理することが確実。(c) 応急の充塡は1回に限る。この3つがそろえば、修理の前に1回充塡できる(14条4号)。来週に修理が確実なら(b)は満たせる。ただし2回目の応急充塡は、この号では認められない。
数と条文で追う③ — 算定漏えい量と報告
算定漏えい量の式は、命令(算定漏えい量命令2条)にある。管理する全ての管理第一種特定製品について(連鎖化事業者は、約款に加盟者の機器の機種・性能・管理方法の指定及び管理状況の報告に関する定め〔命令5条〕があれば、加盟者の機器を含む。法19条2項)、フロン類の種類ごとに次を求め、合計する。
M は算定漏えい量(t-CO2)、F は前年度の追加充塡量(kg)、R は整備時の回収量(kg)、G は冷媒のGWP。
前年度は4月1日から翌年3月31日。設置の際の充塡量は、追加充塡に含めない。GWPは、令和6年度以降に行う算定では、令和5年の告示の表の値を使う(環境省の資料)。R-410Aは1,920、R-32は677だ。
仮の例。 R-410Aの機器で、前年度に追加充塡410kg、整備時回収90kg、設置時の充塡100kg(算入しない)。(410 − 90) × 1,920 ÷ 1,000 = 614.4t-CO2。千トン未満なので、報告の対象にならない。
報告の対象は、算定漏えい量が千トン以上の者(特定漏えい者。命令3条)。毎年度7月末日までに、報告書を提出して行う(命令4条1項)。報告先は事業所管大臣(法19条1項)。
やってみよう③:R-410Aだけの場合、千トン(CO2換算)に達する実漏えい量(追加充塡−回収)は何kgか。冷媒がR-32なら。
1,000t = 1,000,000kg-CO2を、GWPで割る。R-410A(1,920)は約520.8kgで、521kgなら1,000.3t、520kgなら998.4tだ。R-32(677)は約1,477.1kgで、1,478kgで千トンに達する。
数と条文で追う④ — 廃棄の行程管理
廃棄等をしようとする管理者(第一種特定製品廃棄等実施者)は、第一種フロン類充塡回収業者が機器にフロン類が充塡されていないことを確認した場合を除き、自ら、または他の者に委託して、充塡回収業者へフロン類を引き渡さなければならない(法41条)。「入っていない」という判断を管理者自身ですることは認められておらず、充塡回収業者の確認(確認証明書)を受ける(手引き)。
| 書面 | 誰が誰に | 写し等の保存 |
|---|---|---|
| 回収依頼書 | 管理者が充塡回収業者へ(自ら引き渡すとき) | 管理者が3年 |
| 委託確認書 | 管理者が受託者へ(委託の契約を結んだとき遅滞なく)。受託者が業者へ回付 | 管理者・受託者が3年 |
| 引取証明書 | 充塡回収業者が管理者へ(受託者経由なら送付。写しは受託者へ) | 管理者・業者が3年。受託者は写しを3年 |
引取証明書が届かないときの手当てもある。回収依頼書または委託確認書の交付の日から30日(解体工事の契約に伴い委託確認書を交付する場合は90日)以内に、引取証明書の交付または送付を受けないとき(記載事項が欠けた、または虚偽の記載のある証明書を受けたときも)、管理者は都道府県知事に報告する(法45条4項、施行規則46条・47条)。
守らないときの定めも法にある。法41条に違反して第一種特定製品の廃棄等を行った者は、50万円以下の罰金(法104条2号)。回収依頼書や委託確認書を交付しない者は、30万円以下の罰金(法105条2号)。みだりにフロン類を放出した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(法103条13号。2025年6月1日施行の版)。また、充塡回収業者の確認や引取証明書の写しの交付などがないまま、第一種特定製品の引取り等を行うことは、何人にも禁じられる(法45条の2第4項。例外は主務省令で定める場合)。
数と条文で追う⑤ — 解体工事を請け負うとき(法42条)
建築物その他の工作物(第一種特定製品が設置されていないことが明らかなものを除く)の全部または一部を解体する建設工事を、管理者から直接請け負おうとする建設業者は、第一種特定製品の設置の有無を確認し、結果を記した書面を交付して発注者に説明する。書面の写しは3年間保存する。発注者も、書面を3年間保存し、確認に協力する(法42条、特定解体工事書面省令)。書面の記載事項は5つ(交付年月日、元請業者と発注者の氏名・住所、工事の名称と場所、確認結果)。
手引き(充塡回収業者・解体工事元請業者向け)は、次のように整理する。
- 解体工事は、建築物では建築基準法施行令1条3号の構造耐力上主要な部分の全部又は一部を取り壊す工事、建築物以外の工作物では全部又は一部を取り壊す工事を指す。「一部を解体する工事」に面積や金額の下限はなく、リフォームでも該当しうる。建設リサイクル法の事前届出の要件とは別(建設リサイクル法は別のトピックで扱う)
- 機器のみの入替えで解体工事を伴わない場合は、この規定の対象ではない。ただし、入替えを行う業者は、管理者にフロン類の回収が必要なことを説明し、回収済みかを確認して、みだり放出にならないよう注意を払う必要がある、とされる
- 確認の結果、機器があり、回収(引渡し)を含めて請け負うなら、元請業者は引渡受託者になり、管理者から委託確認書の交付を受ける
現場とつなぐ
設置工事は「整備」に入る。 現場で冷媒を追加する作業は、手引きの整理では整備にあたり、登録を受けていない会社は、自分では充塡できず、登録の充塡回収業者に委託する(法37条1項)。委託のとき、整備者は、管理者の氏名・住所と情報処理センターの利用の有無を業者に通知する(法37条2項)。
点検と修理の場所を、設計と施工で残す。 告示は、設置場所の周囲に、点検・修理に必要な作業空間や通路を確保することと、著しい振動を出す設備を置かないことを、管理者が留意する事項として定める(第一)。
更新工事で撤去するとき。 機器のフロン類を渡す責任は管理者にある。工事会社がその引渡しを委託されるなら、引渡受託者として委託確認書を受け取り、充塡回収業者に回付する。
電気との接点。 簡易点検の代わりになる常時監視システムの条件は、圧力・温度などの計測、診断、記録をそれぞれ1日1回以上行い、記録を1年以上保存し、検知したら管理者以外が容易に解除できない方法で直ちに通知すること、などだ(第二1(2)①)。
試験での出方とワナ
令和8年度 問題B No.20(選択)は、第一種フロン類充塡回収業者が行う第一種特定製品への充塡について、誤っているものを選ぶ形だった。内容は、このトピックの「充塡の基準」(施行規則14条)にあたる。
- 主語(管理者か、充塡回収業者か、整備者か)と、時期の語(「あらかじめ」「遅滞なく」「〜日以内」など)を確かめる
- 「必ず」「すべて」「どのような場合でも」と言い切る肢は、例外(著しく困難な場所、応急の1回)を落としていないかを疑う
冒頭の問いの答え合わせ
冷媒が減っていたら、足してよいか。 すぐには足せない。足すのは登録を受けた充塡回収業者で、足す前に、漏えいや故障等の有無を確かめる。漏えいがあれば、箇所を特定して直し、止まったと確認できるまで、原則として足せない。応急の1回は、条件がそろったときだけだ。
撤去する冷媒は、誰がどこへ渡すのか。 フロン類は管理者が充塡回収業者に引き渡す。自ら渡すなら回収依頼書、解体業者などに委託するなら委託確認書を出す。渡ったことは引取証明書で確かめる。入っていないと判断するのは、管理者ではなく、充塡回収業者だ。
次の問い
冷媒を抜いた室外機は、鉄、銅、アルミなどの塊として現場から出ていく。解体で出るコンクリートや廃材は、誰が、どの順で、どこへ運ぶのか。