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機械工学等 ・ 15 / 19

空調機・冷却塔・熱源機器 — 熱はどこで作られ、どこへ捨てられるのか

読み終えると、こうなる

屋上や機械室の機器を、冷水・冷却水・温水・空気の流れのどこにつながる機器かで見分けられるようになる

  • 冷凍機を圧縮式と吸収式に分け、吸収式の4つの容器(蒸発器・吸収器・再生器・凝縮器)の役割と、冷媒の水・吸収剤の臭化リチウム水溶液を説明できる
  • 冷却塔の入口水温・出口水温・外気湿球温度からレンジとアプローチを求め、濃縮倍数からブロー量と補給水量を計算できる
  • ユニット形空気調和機・ファンコイルユニット・パッケージ形空気調和機を熱の運び手で区別し、大温度差送風で風量が減る理由を式で説明できる
  • デシカント空気調和機と全熱交換器、密閉式と開放式の冷却塔、真空式と無圧式の温水発生機の、取り違えやすい記述を見分けられる
考えてみよう

ビルの屋上で、大きな箱が白い湯気を上げながらファンを回している。冷却塔だ。仕事は「水を冷やすこと」なのに、水槽にはボールタップ(水位が下がると自動で水を足す弁)が付いていて、水を足し続ける。冷やすだけなら、水は減らないはずだ。しかも、足した水の一部は、あえて捨てることになる。

なぜ水が減るのか。なぜ、きれいな水を捨てるのか。そして、「冷凍サイクルとCOP」のトピックの終わりで立てた問い(冷却塔が冷やせる温度の目安に、乾球温度ではなく湿球温度が使われるのはなぜか)。この3つは、一つの筋でつながっている。読み終えるころには、屋上の箱の中で起きていることを、その筋で説明できるようになる。

まず一言で

ビルの空調は、熱を作る場所(熱源)、熱を運ぶ水や空気、熱を使う場所(空調機)に分かれる。

  • 冷凍機が冷水を作る。水冷式では、そのとき出る熱を冷却水が冷却塔へ運び、おもに水の蒸発で大気へ捨てる
  • ボイラー・温水発生機が、温水や蒸気を作る
  • 空調機が、冷温水や冷媒の熱で、空気を冷やし、温める
空調機(コイル) ボイラー 温水 冷水 7〜12℃ 冷凍機 冷却水 32〜37℃ 冷却塔 蒸発で放熱 大気 熱源から大気までのつながりの概念図(自作)。両頭の矢印は水の往きと還り。熱の出口は冷却塔から大気。温度は、冷凍能力の標準条件(冷水12℃と7℃)と遠心冷凍機の標準定格条件(冷却水32℃と37℃)による

圧縮式冷凍機の原理とCOPは「冷凍サイクルとCOP」、湿球温度は「湿り空気と空気線図」、据付けは「機器の据付け」で扱った。空気調和の方式やポンプ・送風機の特性は、別のトピックで扱う予定だ。

熱を作る — 冷凍機とボイラー

冷凍機は2方式に分かれる

J-Net21の省エネQ&Aは、冷凍機を、主に電力による圧縮冷凍機と、燃料による吸収冷凍機に分けて書く。国土交通省の公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編、令和7年版。以下「標準仕様書」)は、冷凍機の節に、空気熱源ヒートポンプユニット、水冷チリングユニット、遠心冷凍機、吸収冷凍機、吸収冷温水機などを並べる。遠心冷凍機、吸収冷凍機、水冷チリングユニットの冷凍能力は、冷水の入口12℃・出口7℃の条件で表す。このときの冷却水の入口温度(冷凍機から見た入口)は、遠心と吸収が32℃、水冷チリングが30℃だ。

比べる点圧縮式吸収式
動力電動機で圧縮機を回す燃料や蒸気などで再生器を加熱する
冷媒種別は特記による純水(吸収剤は臭化リチウム水溶液)
主な構成遠心なら遠心圧縮機、凝縮器、蒸発器など蒸発器、吸収器、再生器、凝縮器、溶液熱交換器、ポンプ
構成と冷媒は標準仕様書、吸収式の熱源は環境省による。標準仕様書は、温水や排熱を加熱源とする場合も書く。

吸収式は、なぜ水で冷やせるのか

吸収式の冷媒は水だ。水は、まわりの圧力が低いほど低い温度で蒸発する。環境省の概要シートは、蒸発器の中がほぼ真空なので、滴下した水が約5℃で蒸発し、その気化熱でチューブの中の冷水が冷える、と説明する。NISTの水の飽和表で確かめると、5℃の水の飽和圧力は約0.87 kPa(絶対圧)で、大気圧(101.3 kPa)の約1/116だ(筆者の検算)。

蒸発した水蒸気を放っておくと、蒸発器の圧力が上がって水が蒸発しにくくなる。そこで、水を吸いやすい臭化リチウム水溶液に水蒸気を吸わせる。水を吸って薄くなった溶液は、都市ガスや灯油などの燃料(蒸気を使うこともある)で加熱して濃くし、分離した水蒸気は水に戻して蒸発器へ送る(環境省)。4つの容器の役割は、次のとおりだ。

  • 蒸発器:水が蒸発して、冷水から熱を奪う
  • 吸収器:水蒸気を溶液に吸わせ、蒸発器の圧力を保つ
  • 再生器:薄くなった溶液を加熱して濃くする
  • 凝縮器:再生器で分かれた水蒸気を水に戻す

標準仕様書は、二重効用(低温と高温の2つの再生器を持つ方式)の吸収冷凍機には高温再生器と高温溶液熱交換器を備えると書く。二重にする理由と効率の差は、確認できた公的資料が足りず、ここでは扱わない。

吸収式は、電気も冷却塔も要らない機器ではない。標準仕様書の吸収冷温水機ユニットは、冷凍能力が単体で186 kW未満の二重効用の吸収冷温水機に冷却塔とポンプを備えたものだ。溶液ポンプと、強制循環式の冷媒ポンプ(どちらも密閉式のキャンド形ポンプ)や制御盤も電気で動く。熱の収支で見ても、冷水から奪った熱に加えて、再生器へ入れた熱も最後は冷却水へ出ていく(筆者の整理)。

ボイラーと温水発生機

ボイラーは、一般に燃料の燃焼で得た高温ガスの熱で水を加熱し、蒸気または温水を作る装置だ(日本ボイラ協会、日本産業機械工業会)。蒸気ボイラーの能力は、最大連続負荷の状態で1時間に発生する蒸発量(kg/hやt/h)で表す。蒸気の圧力や給水温度が違うと、同じ蒸発量でも熱量が違う。そこで、100℃の飽和水を100℃の飽和蒸気にする熱量2,257 kJ/kgで割った換算蒸発量を使うこともある(日本ボイラ協会)。

形式特徴
丸ボイラー(炉筒煙管など)構造が簡単で安い。高圧・大容量に不向き。起動は遅いが負荷変動に強い
水管ボイラー水管内で蒸発。高温高圧や多様な燃料に適し、容量の幅が広い
貫流ボイラー長い管を水が一方向に流れて蒸気になる。ドラムのないものが多く、小型にできる
鋳鉄製ボイラー鋳鉄のセクションを組み合わせた構造(低圧ボイラー)
丸ボイラーと鋳鉄製は日本ボイラ協会、水管と貫流は日本産業機械工業会(業界団体)による。協会の分類表は貫流を水管ボイラーの一種とする。

標準仕様書は、ボイラーを鋼製ボイラー、鋼製小型ボイラー、鋼製簡易ボイラー、小型貫流ボイラー・簡易貫流ボイラー、鋳鉄製ボイラー、鋳鉄製簡易ボイラーに分け、「ボイラー」「小型ボイラー」「簡易ボイラー」は労働安全衛生法施行令の区分に当たるものとする。区分の圧力や伝熱面積の数値は施行令にあり、ここでは扱わない。鋳鉄製ボイラーの附属品の表では、蒸気用に水面計や低水位警報装置など水位の装置が挙がり、温水用には温度計と水高計などが挙がる。蒸気は水位が下がると空だきのおそれがあるためと読める(当サイトの読み。仕様書は理由を書かない)。

温水発生機には、真空式と無圧式がある。標準仕様書は、真空式を、缶体内を大気圧以下に保つ気密性があり、熱交換器で間接的に温水を出力するもの、無圧式を、運転時に大気圧のもとで缶体内の熱媒水を沸点以下の温度に加熱し、熱交換器で間接的に温水を出力するもの、と書く。どちらも缶体の水を直接送らず、熱交換器を介する点が共通だ。

熱を捨てる — 冷却塔

構造と、開放式・密閉式

標準仕様書の冷却塔は、塔本体、水槽、送風機、電動機などで構成する。塔本体には、水の落下分布を均一にする水分配装置、空気の流通を均分して水の飛散を防ぐ空気取入口、落下水滴を均一に細分させる充塡材がある。水槽には、排水管、オーバーフロー管、補給水管などの接続口があり、附属品にボールタップがある。

方式は2つある(青森県産業技術センター)。開放式は、循環水と空気を直接触れさせて冷やす。空気中のガスや汚れが冷却水に溶け込むので、水質管理や熱源機器の保守管理が要る。密閉式は、密閉コイルの外面に水を散布し、蒸発潜熱でコイル内の水を冷やす。コイル内の冷却水は汚れにくいので保守管理費は軽くなるが、開放式に比べて塔のサイズや送風動力が大きくなり、コストが増す。

比べる点開放式密閉式
冷やし方水と空気を直接触れさせるコイル外面に水を散布する
冷却水の汚れ空気中の汚れが溶け込むコイル内の水は汚れにくい
塔・送風動力小さい大きい
青森県産業技術センターの説明による。

なぜ水が減るのか — 蒸発と湿球温度

冷却塔は、水を冷やすのではなく、水の一部を空気に渡して、残りを冷やす装置だ。水の一部が蒸発すると、その蒸発熱は、おもに残った水が失う熱でまかなわれる。空気と水の温度差でやりとりする熱(顕熱)は無視して計算しよう。蒸発潜熱は約2,430 kJ/kg(NIST、30℃)、水の比熱は約4.18 kJ/(kg·K)なので、1%を蒸発させたとき、残り99%の水は、次の分だけ冷える。

0.01×24300.99×4.18≈5.9 K\frac{0.01 \times 2430}{0.99 \times 4.18} \approx 5.9 \text{ K}

青森県産業技術センターと、冷却塔メーカーの空研工業は、これを、1%の蒸発で約6℃下がる、と書く(上の式は筆者の計算で、資料の値と合う)。だから水は減る。減った分は、ボールタップが補う。

では、どこまで冷えるのか。水が蒸発して奪う熱と、まわりの空気から入ってくる熱がつり合うと、水温はそれ以上下がらない。そのつり合う温度が湿球温度だ(空研工業)。ガーゼで包んだ温度計で測る温度で、乾球温度(ふつうの気温)以下になる。つまり、一般的な冷却塔では、冷却水は乾球温度より低くできるが、湿球温度より低くはできない。J-Net21は、標準の冷却塔は「外気湿球温度+5℃」になるように設計されている、と書く。ここまでが、「冷凍サイクルとCOP」の終わりで立てた問いへの答えだ。

レンジとアプローチ — 2つの温度差

空研工業は、冷却塔の性能を、循環水量、入口水温、出口水温、外気湿球温度の4条件で表す。ターボ冷凍機(遠心冷凍機の通称とみられるが、資料に明記はない)向けの標準的な組合せは、入口37℃、出口32℃、湿球27℃だ。入口・出口は冷却塔から見た呼び名で、冷凍機から見ると入口32℃・出口37℃と逆になる。ここから2つの温度差が出る。

  • レンジ=入口水温−出口水温。水がこの塔で何K冷えるか
  • アプローチ=出口水温−外気湿球温度。出口水温が湿球温度にどこまで近づくか(環境省のフリークーリング資料も同じ定義)
温度 37℃ 入口水温 32℃ 出口水温 27℃ 外気湿球温度 これより下には冷やせない レンジ 5 K アプローチ 5 K 冷却塔の温度の例(自作の概念図。ターボ冷凍機向けの標準的な組合せ。空研工業の技術解説による)

range は水温の幅、approach は近づく度合い、と英語の意味でも覚えられる。入口水温を一定にすると、湿球温度が下がる冬は、出口水温が下がってレンジが大きくなる(空研工業)。

補給水とブロー — なぜきれいな水を捨てるのか

冷却塔で水が失われる経路は3つある(空研工業)。蒸発(E)、微小な水滴として飛び去る飛散(D、循環水量の0.05%程度)、そして濃縮を防ぐために循環水の一部を捨てるブロー(B)だ。補給水は、この3つの合計になる。

M = E + D + B

ブローが要るのは、蒸発では水だけが出て行くからだ。補給水に含まれるカルシウム、マグネシウム、シリカ、塩化物などは循環水に残り、濃くなっていく。濃縮が進むと、カルシウムやマグネシウムがスケールとして析出し、藻も出やすくなる(空研工業)。補給水に対して循環水を何倍の濃さまで許すかが濃縮倍数Nで、空調用では3程度とする例が多い。溶けている塩は、ブローと飛散でしか出て行かない(スケールで析出する分は無視する)ので、塩の収支は M×(補給水の濃度)=(B+D)×(循環水の濃度)になる。N=M÷(B+D)なので、次の関係が出る(筆者が導き、空研工業の式と一致することを確認した)。

B+D=EN−1B + D = \frac{E}{N - 1}

蒸発量は、空研工業の式で、循環水量×(レンジ÷600)と見積もれる(水の蒸発潜熱を2,520 kJ/kg、比熱を4.2 kJ/(kg·K)とした近似。NISTの潜熱より約4%大きい)。

例題。 循環水量が120 m³/h、レンジ5 Kの冷却塔で、飛散が循環水量の0.05%、濃縮倍数を3に保つとする。

  1. 蒸発量 E = 120×5÷600 = 1.0 m³/h
  2. 飛散量 D = 120×0.0005 = 0.06 m³/h
  3. ブロー量 B = E÷(N−1)−D = 1.0÷2−0.06 = 0.44 m³/h
  4. 補給水量 M = 1.0+0.06+0.44 = 1.5 m³/h(検算:M÷(B+D)=1.5÷0.5=3)

補給水は蒸発量の1.5倍になる。M=E×N÷(N−1)なので、Nが2なら2倍、5なら1.25倍だ。濃縮倍数を上げれば捨てる水は減るが、そのぶんスケールの危険は増える。

やってみよう ①:補給水はいくらか

循環水量が240 m³/h、レンジが5 K、濃縮倍数が5で、飛散は無視できるとする。ブロー量と補給水量は?

蒸発量 E = 240×5÷600 = 2.0 m³/h。ブロー量 B = 2.0÷(5−1) = 0.5 m³/h。補給水量 M = 2.0+0.5 = 2.5 m³/h(E×5÷4 と一致)。

冬の白煙と、衛生の決まり

冬は、冷却塔の吹出し空気が白い煙のように見えることがある。特許公報の従来技術の記述は、冷却塔から出る空気は高温多湿で、外気温が低いと湿気が白煙状になって排出される、と書く。湿り空気線図で見ると、混ぜた空気の状態は、2つの空気の状態を結ぶ直線の上にある。その直線が飽和曲線を越える部分で、霧になる。仮に、30℃の飽和空気を5℃・相対湿度60%の外気と混ぜると、混合空気に占める排気の割合が、湿り空気の質量で約17〜18%を超えるあたりから、ほぼ全域で飽和を越える。吹出し空気を、絶対湿度はそのままで40℃に温めると、この例では越えない(筆者の検算。湿り空気の標準式による)。同じ公報は、排出空気に高温乾燥空気を混ぜる方法が知られている、と書く。

衛生の面では、特定建築物(定義は「換気」)の管理の基準として、建築物衛生法施行規則3条の18が、冷却塔と冷却水について、使用開始時と、以後は1か月以内ごとに1回、汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃や換水等を行うこと(1か月を超えて使わない期間を除く)、冷却塔と冷却水の水管の清掃を1年以内ごとに1回行うことを定める。平成11年(1999年)の厚生省通知(厚生労働省のサイトに掲載)は、レジオネラ属菌の増殖を抑える方法として、冷却塔と冷却水系の冷却水の交換、消毒、清掃を挙げる。

熱を届ける — 空調機

熱の運び手で分ける

空調機は、最後にコイルで空気から熱を奪い、または与える。おもな違いは、コイルに来るのが冷温水か、冷媒かだ。

機器熱の運び手標準仕様書の記述
ユニット形空気調和機冷温水(蒸気もある)ケーシング、コイル、加湿器、ドレンパン、送風機、電動機など
ファンコイルユニット冷温水コイル、送風機、ドレンパンなど。床置形、天井吊形、ローボイ形、カセット形
パッケージ形空気調和機冷媒圧縮機などを収めた屋外機と、屋内機を冷媒管で接続するセパレート形
マルチパッケージ形は、1つの冷媒系統の屋外機に複数の屋内機を備え、屋内機は個別に運転できる(標準仕様書)。

ユニット形では、水用コイルの通過面風速を2.5 m/s以下とする(設計風量9,000 m³/h以下で機外静圧の条件もある床置形のコンパクト形は3.0 m/s以下)。仕様書は理由を書かない。風速を上げるとコイルは小さくできるが、空気を押し通す圧力損失が増える、という釣り合いの数字と読める(当サイトの読み)。

大温度差送風 — なぜ風量が減るのか

環境省の概要シートは、水や空気が搬送する熱量は往還温度差と流量の積に比例する、と書く。空気では、次の式になる(標準的な式。出典資料にはなく、筆者が置いた)。

Q=ρ c V ΔTQ = \rho \, c \, V \, \Delta T

Qは熱量(kW)、ρは空気の密度、cは比熱、Vは風量、ΔTは送風と室内の温度差だ。標準仕様書は、冷房時に14℃以下で送風を行う場合(14℃は送風温度。室温26℃なら温度差12 K以上)を大温度差送風方式とし、コイル通過後のケーシングに表面結露対策を講ずる場合は特記による、と書く。

例題。 顕熱負荷30 kW、室温26℃とする(仮の条件。ρ=1.2 kg/m³、c=1.006 kJ/(kg·K))。送風が16℃(ΔT=10 K)なら、V=30÷(1.2×1.006×10)=2.485 m³/s(8,946 m³/h)。送風が12℃(ΔT=14 K)なら、V=1.775 m³/s(6,390 m³/h)。風量は10÷14≒0.71倍、約29%減る。

やってみよう ②:風量はどれだけ減るか

顕熱負荷28 kW(ρ・cは例題と同じ)。送風の温度差8 Kを10 Kにすると、風量は何倍か。

Vは温度差に反比例するので、8÷10=0.8倍。具体的には、8 Kで2.899 m³/s(10,437 m³/h)、10 Kで2.319 m³/s(8,350 m³/h)で、20%減る。

これで、送風温度を下げると風量が減る理由を、式から言えるようになる。

外気を処理する3つの方式と機器

潜熱・顕熱分離形は、外気負荷と室内負荷に分けて処理を行う方式だ。標準仕様書は、適用は特記によるとしたうえで、コイルとして外気負荷用と室内負荷用を備え、加湿器は外気負荷用コイル側、エアフィルターは外気負荷用・室内負荷用のそれぞれのコイル側に備えると書く。

デシカント空気調和機は、乾燥剤で除湿する。標準仕様書は、デシカントロータの吸着剤をシリカゲル、ゼオライト又は高分子収着剤とし、再生空気40〜80℃で再生できる低温再生形とする。環境省の概要シートによると、冷却コイルで冷やして結露させ、再加熱する方式に比べ、再生に熱源は要るが、冷やし過ぎと再加熱のエネルギーが要らない。

全熱交換器は、換気で、排気の顕熱と潜熱を給気に回収し、外気負荷を減らす(環境省)。標準仕様書の処理風量2,000 m³/h以上の回転形は、熱交換エレメント、駆動装置、ケーシングなどで構成し、排気側の空気が給気側へ移らない構造とする。

比べる点デシカント空気調和機全熱交換器
役目乾燥剤で除湿する排気の熱を給気へ回収する
主な部品デシカントロータ熱交換エレメント

電材とつなぐ

標準仕様書で確かめられた電気側の記述は、次のとおりだ。

  • 冷却塔とユニット形空気調和機の電動機は、低圧トップランナーモータ(JIS C 4213)を基本とし(冷却塔は0.75 kW未満に限りJIS C 4212・C 4210も可)、保護方式は全閉防まつ形(IP44)か防滴保護形(IP22)とする。冷却塔でIP22を使えるのは、防水上有効な構造のケーシングに納められた場合に限る
  • 遠心冷凍機の容量調整装置は、始動時に始動電流を低減する機能を備える。電動機盤は、低圧なら機器附属盤による。高圧ならJEM1225の高圧コンビネーションスタータによる閉鎖形とし、短絡保護装置や過負荷欠相リレーなどを備える
  • 吸収式は圧縮機の電動機がない。環境省は、電力量や契約電力を下げられる点を得失の1つに挙げる

冷却塔は屋外で水が飛ぶ環境なので、防まつ形が基本と読める(当サイトの読み)。IP44・IP22は、JIS C 4034-5の外被構造による保護方式の区分で、「電動機の保護」で扱った過負荷・欠相の保護とは別物だ。パッケージ形などエアコンの電源側は、ガイド「エアコン設置に必要な電材」に書かれている(本稿の根拠にはしていない)。

試験での出方とワナ

出題の型

令和8年度の第一次検定は、問題A No.38で空気調和機、No.39で冷却塔について、4つの記述から「適当でないもの」を1つ選ばせた。どちらも必須問題(No.38〜No.44は全問解答)だ。空気調和機の問は、「外気を処理する3つの方式と機器」「風速・大温度差送風」にあたる題材を、冷却塔の問は、「開放式・密閉式」「白煙」「補給水とブロー」「レンジ」にあたる題材を含む(当サイトの整理。問題の文面は転載しない)。

冒頭の問いの答え合わせ

  • なぜ水が減るのか。 冷却塔は、水の一部を蒸発させ、その気化熱で残りを冷やす。1%の蒸発で、残りが約6 K下がる。減った分を、ボールタップが補う
  • なぜきれいな水を捨てるのか。 蒸発では塩類が置いていかれ、循環水が濃くなる。放っておくとスケールや藻が出る。濃縮倍数3なら、補給水は蒸発量の1.5倍で、その差がブローと飛散だ
  • なぜ湿球温度なのか。 蒸発による冷却は、蒸発で奪う熱と空気から入る熱がつり合う温度、つまり湿球温度で止まる。標準の冷却塔は湿球温度+5 Kになるように設計される

できるようになったことは4つある。吸収式の4つの容器を言う。冷却塔の温度差と水量を計算する。空調機を熱の運び手で分け、大温度差送風の風量を式で出す。似た機器の取り違えを見分ける。理解度チェックで確かめてみよう。

(例題の数値は、プログラムで検算している。)

次の問い

冷水は7℃で、夏の空気の露点より低いことがある。冷水の配管や空調機のケーシングの外側は、保温をしないと、どうなるだろうか。「結露と防露」に戻りながら考えてみよう。保温・保冷の材料と目的は、別のトピックで扱う予定だ。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. デシカント空気調和機と全熱交換器を取り違える

    なぜ引っかかるどちらも回転するロータ状の部品を持ち、湿度の話に出てくるので、同じ機能に見える(当サイトの想定)

    見破り方デシカントは吸着剤で除湿し、再生に熱が要る。全熱交換器は排気と外気の間で顕熱と潜熱を交換する。主語が「吸着」か「排気との熱交換」かを見る

  2. レンジとアプローチを取り違える。または空気の温度差だと思う

    なぜ引っかかるどちらも冷却塔の性能を表す温度差で、組になる温度の違いを覚えていないと入れ替わる

    見破り方レンジは水の入口と出口の差、アプローチは出口水温と湿球温度の差

  3. 吸収式を、電気も冷却塔も要らない機器と思う。または冷却塔の負担が軽いと思う

    なぜ引っかかる冷媒が水で燃料で冷やす、という特徴が先に立ち、冷却水で熱を捨てる部分と、ポンプの電気を見落とす

    見破り方環境省の概要シートは、冷房時の冷却塔への水張りに触れる。以下は熱収支からの当サイトの整理で、資料の記述ではない。冷却水が運ぶ熱は、冷水から奪った熱に入力(圧縮機の仕事、または再生器への加熱量)を足したもの。入力あたりの冷凍能力(成績係数、COP)が圧縮式より小さいとき、吸収式は、同じ冷凍能力なら捨てる熱が多い

  4. 大温度差送風で、風量が増える、または搬送動力が増えると考える

    なぜ引っかかる温度差が大きいほど多く冷やす気がして、少ない風量で足りることを忘れる

    見破り方運ぶ熱=密度×比熱×風量×温度差。熱量が同じなら、風量は温度差に反比例する。温度差を広げると風量は減る

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用5問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 冷凍機には、主に電力による圧縮式と、燃料による吸収式がある(J-Net21)。吸収式は冷媒が純水、吸収剤が臭化リチウム水溶液で、主な4つの容器は蒸発器・吸収器・再生器・凝縮器(標準仕様書、環境省の概要シート)
  2. 冷却塔は、冷却水の一部を蒸発させ、その気化熱で残りを冷やす。1%の蒸発で残りが約6 K下がる(青森県産業技術センター、空研工業。資料の表記は約6℃)。出口水温は(蒸発を利用する塔では)外気の湿球温度より低くできない
  3. レンジ=入口水温−出口水温(水の入口と出口の差)、アプローチ=出口水温−外気湿球温度(水温と空気の状態の差)。空気の入口・出口の温度差ではない(空研工業、環境省の概要シート)。標準的な例は37℃・32℃・27℃で、どちらも5 K
  4. 補給水は蒸発量+飛散量+ブロー量。蒸発では塩類が残って濃縮するので、濃縮倍数Nのもとでブロー量は E÷(N−1)−飛散量になる(空研工業)。濃縮を放置すると、スケールや藻が出る
  5. 空調機は熱の運び手で分ける。ユニット形とファンコイルユニットは冷温水、パッケージ形は冷媒。パッケージ形は、圧縮機などを屋外機に収め、屋外機と屋内機を冷媒管で結ぶ(空冷式で冷房能力28 kW超の規定。標準仕様書)。運ぶ熱=風量×温度差なので、温度差を広げた分だけ風量を減らせる。デシカントは除湿ロータ、全熱交換器は熱回収で、別物
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