在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付

配線用遮断器の『連続定格』とは何か|JIS規格が定める定格電流の前提は8時間か、無期限か

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

制御盤の更新計画を任された担当者が、24時間稼働する冷凍設備の主幹ブレーカーを選定していた。負荷側の合計電流を計算し、内線規程の80%ルールに沿って余裕のあるATを選ぶ——ここまでは、いつもの手順通りだ。ところが見積書を書きながら、ふと手が止まった。この「定格電流20A」というカタログの数字、そもそも何時間の通電を前提に決められた値なのだろうか。

冷凍設備は年に数日のメンテナンス停止を除けば、ほぼ止まらない。定格電流の80%に収めたところで、それが「24時間365日、何年にもわたって流し続けてよい」という意味の80%なのか、それとも「せいぜい半日か一晩、持ちこたえればよい」という意味の80%なのかでは、話がまるで違ってくる。溶接機のカタログには「定格使用率」という、断続的な使い方を前提にした数値が別に載っている。配線用遮断器の定格電流にも、実は似たような「時間の前提条件」が隠れているのではないか——そう考え始めると、これまで当たり前のように読んでいたカタログの数字が、急に頼りなく見えてくる。

定格電流という数字に、時間の単位は書かれていない

配線用遮断器のカタログを見ても、定格電流の欄に「20A(8時間)」とも「20A(連続)」とも書かれていない。ただ「20A」とあるだけだ。三菱電機FAの技術資料は、遮断器の定格電流を「遮断器に支障なく連続通電可能な最大電流値」と説明している。「連続」という言葉は使われているが、それが「何時間以上を連続と呼ぶのか」までは、このFAQ単体では読み取れない。

同社の別のFAQは、定格電流を「連続通電電流・短限時電流・瞬時電流の基準としている値」だとも説明する。定格電流という一つの数字が、複数の異なる時間スケールの動作特性の基準点になっている——ということは裏を返せば、定格電流そのものの定義の中に、時間の前提条件が明示的な文言としては現れにくい構造になっている、ということでもある。この曖昧さの正体を確かめるには、メーカーのFAQより上流、JIS規格の条文そのものに当たる必要がある。

JISが定める5つの「責務」——配線用遮断器はどれに属するか

低圧の開閉装置・制御装置全般の共通ルールを定めているのがJIS C8201-1(通則)だ。この規格は、機器が電流を流し続ける期間の性質を「責務」という単位で分類しており、その中には確かに「8時間」という数字を含む区分が存在する。

なお、以下で示す項番号はJIS C8201-1:2020(およびJIS C8201-2-1:2011)のものである。JIS C8201-1は2024年8月20日の改正で箇条構成が変わり(現行のJIS C8201-1:2024では用語及び定義が箇条3、特性が箇条5)、JIS C8201-2-1も2021年9月21日に改正されている。条文を直接確認する場合は現行版の該当箇条を参照してほしい。

JIS C8201-1の4.3.4.1は「8時間責務」を、主接点を閉じたまま、装置が熱的平衡に達するのに足りる時間だけ、8時間を超えない範囲で遮断せずに定常電流を流す責務として定義している。熱平衡に達するまでの時間があれば足り、それが8時間を超えない、という区分だ。

これに対して4.3.4.2の「連続責務」は、主接点を閉じたまま8時間以上(数週間から数年におよぶ場合を含む)、無通電期間を挟まずに定常電流を流し続ける責務とされている。8時間を境に、責務の名前そのものが切り替わる。同じ規格の中には、このほかにも反復責務・一時的責務・周期的責務といった区分もあるが、配線用遮断器に直接関わってくるのは、この「8時間責務」と「連続責務」の対比だ。

冒頭の担当者が抱いた疑問——定格電流はどちらの責務を前提にしているのか——には、規格上の答えが用意されている。JIS C8201-2-1(回路遮断器の規格)の4.3.2.3は次のように規定している。「回路遮断器については、定格電流は定格連続電流(Iu)である。」定格連続電流Iuは、通則側の定義でいえば「装置が連続責務として流すことが可能な製造業者が指定する電流値」だ。配線用遮断器の定格電流は、規格上、明確に連続責務——8時間ではなく、数週間・数箇月・数年という時間スケール——の側に位置づけられている。

それでも消えない「8時間」という数字の影

ここで話が終われば、担当者の疑問はきれいに解消する。定格電流は連続責務の値であり、24時間稼働の冷凍設備にそのまま当てはめてよい、と。ところが、先ほど引用した4.3.2.3の条文には、もう一文だけ続きがある。「また、定格電流は開放熱電流(Ith)に等しい。」

開放熱電流Ithとは何か。通則の4.3.2.1は、これを「自由大気中での開放形装置の温度上昇試験に用いる試験電流の最大値」であり、「8時間責務での開放形装置の定格使用電流の最大値に等しい」と定義している。読み違いではない。配線用遮断器の定格電流は、責務の分類としては連続責務に位置づけられていながら、その数値そのものは8時間責務の試験方法によって検証された値と、規格上同じ数字にそろえられている。

なぜ「無期限に流し続けてよい」はずの値が、「8時間の試験」によって決まる値と一致させられているのか。この対応関係を裏づける工学的な理由まで、JISの公開されている一次資料の範囲で確認することはできなかった。断定は避けたいが、一つ推測できることはある。温度上昇試験は、機器が熱的に安定した状態(熱平衡)に達するまで電流を流し続けて初めて意味を持つ。しかし「無期限に電流を流し続けて安定を確認する」試験は、現実には実施できない。多くの開閉装置において熱平衡に達するまでの時間が8時間以内に収まるという経験則があるからこそ、8時間という上限が試験方法として規格化され、その試験で確認された電流値が、そのまま連続責務の定格値としても採用されている——という構図なのだろう。実務上重要なのは、「8時間」が試験の実施方法に由来する数字であって、配線用遮断器を8時間しか使えないという意味ではない、という一点だ。

溶接機の「定格使用率」との違い

この整理をより際立たせるのが、断続的にしか電流を流さない機器との対比だ。溶接機のカタログに載る「定格使用率」は、一定時間だけ通電し、その後休止する使い方を前提にした指標であり、通則でいえば反復責務・断続責務に近い発想になる。配線用遮断器の連続責務は、この対極にある。休止期間を挟まず、電源が入っている限り常に電流が流れ続けることを前提にした値だ。同じ「JISが定める電流の定格」という枠組みの中に、「休むことを前提にした値」と「休まないことを前提にした値」が併存しているという事実は、カタログの数字を鵜呑みにする前に知っておいて損はない。

選定時にどう扱うか

冒頭の冷凍設備のように、年間を通してほぼ止まらない負荷にブレーカーを選ぶとき、JISが定める責務の前提を確認しておくと判断の軸が一つ増える。

  • 配線用遮断器の定格電流は、連続責務(Iu)を前提にしている——8時間だけ持てばよい値ではなく、24時間365日・数年単位の通電を前提にした値として規格上位置づけられている
  • その数値自体は、8時間責務の試験方法(Ith)で検証されている——「8時間」は試験の実施方法に由来する数字であり、使用可能な時間の上限を意味しない
  • 溶接機のような断続負荷の機器とは、前提にしている責務そのものが異なる——定格使用率が付いた機器のカタログを、配線用遮断器と同じ感覚で読まない
  • 責務の前提が「継続通電」であることと、「定格ぴったりで運用してよいか」は別の論点——動作特性の製造ばらつきを踏まえた実務上の余裕(80%ルール)は、また別に確認する

冒頭の担当者が抱いた疑問への答えは、半分は単純だった。配線用遮断器の定格電流は、規格上すでに連続責務——止めることなく流し続けることを前提にした値として定義されている。もう半分は、少しだけ込み入っていた。その値自体は、8時間という試験の枠組みの中で検証されたものだったという事実だ。カタログに並ぶ「20A」という数字の裏側には、責務という規格上の分類と、それを検証する試験方法という、二つの異なる時間の考え方が同居している。

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、24時間稼働設備・断続稼働設備それぞれの使用条件をお伺いした上で、責務区分を踏まえたブレーカー機種の選定と見積りに対応しています。

見積もり依頼をする →

あわせて読みたい

関連する配線用遮断器・定格電流・連続定格・8時間定格・JISの品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。

よくある質問

配線用遮断器の『定格電流20A』は、24時間365日流し続けてよい値ですか?

JISの分類上はそうなります。JIS C8201-2-1の箇条4.3.2.3は、回路遮断器の定格電流を定格連続電流(Iu)とすると規定しています。通則であるJIS C8201-1の4.3.4.2「連続責務」は、主接点を閉じたまま8時間以上(数週間から数年におよぶ場合を含む)無通電期間なしに定常電流を流し続ける責務として定義されています。つまり配線用遮断器の定格電流は、8時間だけ持てばよい値ではなく、長期間にわたり遮断せず流し続けることを前提に定義された値です。ただし、これはJIS上の分類の話であり、製造ばらつきや盤内温度まで踏まえた実務上の余裕については別の論点になります。

『8時間責務』という区分は、配線用遮断器にも存在するのですか?

『8時間責務』という区分自体はJIS C8201-1(通則)に実在します。4.3.4.1は、主接点を閉じたまま、装置が熱的平衡に達するのに足りる時間だけ、8時間を超えない範囲で遮断せずに定常電流を流す責務として定義しています。ただし、これは低圧開閉装置・制御装置全般に共通する規格上の選択肢の一つであり、配線用遮断器がこの区分を採用しているわけではありません。JIS C8201-2-1は配線用遮断器の定格電流を明示的に『連続責務』側に位置づけています。

それなら、なぜ配線用遮断器の温度上昇試験に『8時間』という数字が関係してくるのですか?

JIS C8201-1の4.3.2.1は、開放熱電流(Ith)を「自由大気中での開放形装置の温度上昇試験に用いる試験電流の最大値」であり「8時間責務での開放形装置の定格使用電流の最大値に等しい」と定義しています。そしてJIS C8201-2-1の4.3.2.3は「配線用遮断器の定格電流は開放熱電流(Ith)に等しい」ともしています。つまり、定格電流という一つの数字は、『責務の分類』としては連続責務(無期限)に位置づけられていながら、その数値自体は8時間責務の試験方法によって検証された値と一致させられているということです。この対応関係の技術的な理由まではJISの公開されている一次資料の範囲では確認できませんでしたが、規格の条文上、両者が同じ数値として扱われている点は事実です。

溶接機の『定格使用率』とは同じ考え方ですか?

違います。溶接機の定格使用率は、断続的にしか電流を流さない負荷(一定時間だけ通電し、その後休止する)を前提にした指標で、JIS C8201-1でいえば4.3.4.3の反復責務・断続責務に近い発想です。配線用遮断器の定格電流はこれとは逆に、休止期間を挟まない連続責務を前提にしています。溶接機のような断続負荷の一次側電源の選び方は、当サイトの別記事『溶接機の一次側電源選定』で扱っています。

『連続責務』が前提なら、定格電流ぴったりで運用しても問題ないということですか?

『JISの責務区分としては継続通電が前提』という話と、『実務上どこまで余裕を見るべきか』という話は別の論点です。配線用遮断器の動作特性には製造上のばらつきがあり、内線規程3605-3の3は連続負荷を有する分岐回路の負荷容量を定格電流の80%以内に収めることを勧告しています。この実務上の余裕については、当サイトの別記事『配線用遮断器・幹線ケーブルの80%ルールとは』で詳しく扱っています。

参考文献・出典

型番不明でもOK

この記事の内容で、製品選定から相談できます

「配線用遮断器の『連続定格』とは何か|JIS規格が定める定格電流の前提は8時間か、無期限か」に関連する製品を、用途・仕様・写真からお探しします。リンク先には相談内容を入れた状態で用意するため、型番が分からなくてもそのまま進められます。 手書きメモや型番リストの写真・PDFでも依頼できます。

AIと状況を整理してから相談する

普段お使いのChatGPT・Gemini・Perplexity等に貼り付けられる質問文をコピーできます。 自分の状況を伝えて相談すると、最後に電材サーチへの見積依頼文もまとめてもらえます。