分電盤の避雷器(SPD)を発注する前、品番表を並べて見比べたことがある人なら覚えがあるだろう。「DS240-400」と「DS42-400」。両方とも単相、440Vac、In 20kA、Imax 40kA。数字だけ追えば、片方が旧品番でもう片方が新品番の、単なる表記ゆれのように見える。
だがCITELフランス本社の公式サイト(citel.fr)で両方の製品ページを個別に開くと、Isccr(許容短絡電流)という欄だけが噛み合わない。DS240-400は10,000A、DS42-400は25,000A。他の数値がすべて一致しているのに、ここだけ2.5倍の開きがある。同じ性能の製品に見せかけて、実は別の設計思想を持つ別系列の製品なのではないか——その疑いを確かめるために、CITELの電源回路用SPD「DSシリーズ」に属する製品ページを、関連する型番も含めて8つ突き合わせた。
末尾の「-400」「-230」は素直に読める——定格電圧
まず紛れの少ないところから片付けておく。型番末尾のハイフンに続く数字は、CITEL公式仕様表のNominal line voltage(Un、定格線間電圧)に対応する。DS240-400のUnは400Vac、DS240-230のUnは230Vac。DS42-400・DS43-400・DS44-400もすべて末尾が「-400」でUn 400Vac、DS44VGS-230は末尾「-230」でUn 230Vacと、8製品すべてで一致する。この部分に例外は見当たらない。
ただし「電圧が高い方が上位品」という単純な序列で捉えるのは早い。DS240-400の仕様表にはAC system欄があり、値は「IT」と記載されている。一方DS240-230は同じ欄が「TN」だ。IT系統は中性点を接地しない(あるいは高インピーダンスで接地する)配電方式で、地絡時に健全相の対地電圧が線間電圧近くまで跳ね上がる。DS240-400のUn 400VacというIT向けのSPDは、まさにこの跳ね上がりに耐える前提で設計された品番であって、「TN系統の230V回路に念のため400V品を使っておく」といった格上げの発想で選ぶ数字ではない。なお同じ4極構成のDS44-400ではAC system欄が「TT-TN」となっており、末尾の電圧記号だけで接地方式が一意に決まるわけでもない。回路の接地方式は、型番の数字ではなく個々の仕様表のAC system欄で確認する必要がある。
極構成を示す数字は、系列によって位置が違う
ここからが本題だ。DS41・DS42・DS43・DS44という4つの製品ページを開くと、ページタイトルにそれぞれ「1-pole」「Single-phase」「3-phase」「3-phase+N」という文字がある。Connection mode(s)欄を見ると、DS41は「L/N or N/PE」(1極分をL側・N側どちらにも使える汎用モジュール)、DS42は「L/PE and N/PE」(L・N両方=単相2極)、DS43は「L/PE」のみ(中性線を持たない3極)、DS44は「L/PE and N/PE」(3相分+中性線=4極)。「DS4」に続く1桁の数字が、1・2・3・4という極構成の段階とそのまま対応している。
同じ並びは、コンパクト筐体系列にも現れる。DS240(単相2極)とDS440(3相+N・4極)を比べると、先頭の数字が「2」と「4」で、やはり極構成の段階に対応する。ただし数字の位置が逆だ。モジュラー系列は「DS4」+極数(DS41〜DS44)、コンパクト系列は極数+「40」(DS240、DS440)という並びになっている。CITELはこの対応関係を一枚の早見表として公開しているわけではないが、8つの製品ページを横に並べれば、極構成を示す数字がどちらの系列でも同じ規則性を持つこと自体は確認できる。
| 型番 | 系列 | 極構成 | Connection mode(s) |
|---|---|---|---|
| DS41-400 | モジュラー | 1極 | L/N or N/PE |
| DS42-400 | モジュラー | 単相2極 | L/PE and N/PE |
| DS43-400 | モジュラー | 3相3極 | L/PE |
| DS44-400 | モジュラー | 3相+N4極 | L/PE and N/PE |
| DS240-400 | コンパクト | 単相2極 | L/PE and N/PE |
| DS440-400 | コンパクト | 3相+N4極 | L/PE and N/PE |
ここで一つ、自分で試して裏切られた読み方を書いておく。DS42-400のSPD type欄は「IEC 2」、つまりType 2だ。極数を示す数字「2」とType区分の数字「2」が同じ値なので、一瞬「型番の2桁目はType区分では」と思いたくなる。だがDS41もDS43もDS44も、SPD type欄はやはり同じ「IEC 2」のままで、Type区分は変わらない。DS42だけを見て仮説を立てると、たまたま両方とも「2」だっただけの一致を規則と誤認する。極数を示す数字とSPD typeの数字は、たまたま値が重なることはあっても別の欄の情報だと切り分けておく必要がある。
実機に当てはめる——4つの型番の中身
冒頭のDS240-400とDS42-400に戻る。DS240-400はUn 400Vac・Uc 440Vac・In 20kA・Imax 40kA(1極あたり、Total 80kA)・Isccr 10,000A。単相2極分をひとつの完成品として収めた「コンパクト」筐体で、スペアモジュールはDSM240-400、劣化時のリモート信号出力が必要ならDS240S-400という別型番を選ぶ。
DS42-400は同じUn・Uc・In・Imaxでありながら、Isccr 25,000A、Connection mode(s)はL/PEとN/PEの両方、スペアモジュールはDS41・DS43・DS44と共通のDSM40-400だ。CITELの製品説明文には「designed to be used in a multipolar configuration to protect single-phase, 3-phase or 3-phase+Neutral AC networks」とある。DS42単体で単相回路をそのまま保護することもできるが、本来はDS41・DS43・DS44と組み合わせて3相や3相+N回路を構成するための部材という位置づけだ。同じ単相・同じ電気的性能でも、完成品として売られているか、組み立てる前提の部材として売られているかで、Isccrという安全上重要な数字が変わってくる。
DS240-230はDS240-400のUn/Uc/AC systemだけを230Vac・TN向けに変えたもので、In・Imax・Isccrはすべて同一。ここは素直な対応関係で、末尾の電圧記号を変えるだけで読み解ける。
DS44VGS-230は毛色が違う。SPD type欄が「IEC 2+3」——Type 2に加えてType 3の試験区分も満たす。Technology欄は「VG Technology (MOV+GSG)」で、バリスタ(MOV)に加えてガス放電管(GSG)を組み合わせたハイブリッド構造だ。Residual Current欄のIpe(対地漏れ電流)とIc(動作電流)は、DS44-400ではそれぞれ2mA・0.5mAという実測値が入っているのに対し、DS44VGS-230は両方とも「None」。CITELの製品説明文は「completely eliminate the leakage and operating current」と言い切っている。型番の「44」は3相+N4極という極構成、「VG」はこの技術方式、末尾の「S」はリモート信号出力——DS44VGS-230はこの3つの記号が積み上がった型番であり、しかもDS44-400のような「オプションでS付き」ではなく、リモート信号出力が標準搭載になっている点も仕様表から読み取れる。
現場で間違えやすい点
型番が似ているために起きる取り違えは、大きく2つに整理できる。
一つめは、さっき見たDS240とDS42の関係そのものだ。「単相・同じ電圧・同じIn/Imax」という一致だけを見て、片方の在庫がなければもう片方で代替できると考えてしまう。だがコンパクト筐体とモジュラー部材では取付方法もスペアモジュールの型番も異なり、Isccrという安全余裕まで違う。見た目の仕様の一致は、系列が同じであることを保証しない。
二つめは、DS44-400とDS44VGS-230の関係だ。「44」という数字が共通しているために、VGSが単なる信号出力オプション付きの上位互換だと早合点しやすい。しかし技術方式(MOV単体かVGハイブリッドか)とSPD type(Type 2かType 2+3か)まで変わっており、スペアモジュールもDSM40-400とDSM40VG-230で別部品になっている。数字の共通部分が示しているのは極構成の一致だけで、それ以外の仕様まで一致しているとは限らない。
実務上の注意点
型番から発注仕様に落とし込むときは、次の3点をこの順番で確認するとよい。まず末尾の電圧記号でUnを確定し、同時にAC system欄で接地方式(IT・TN・TT-TNなど)が対象回路と合っているかを見る。次に「DS4+極数」または「極数+40」という並びで極構成を確定し、DS41〜DS44のいずれかコンパクト筐体のDS240・DS440かを区別する。最後に末尾に付くS(信号出力)やVG(技術方式)の有無を確認し、既設の監視回路が信号出力を前提にしているかどうかを照らし合わせる。この3段階を踏めば、見た目が近い型番同士でも系列を取り違えずに発注できる。
まとめ
CITELのDSシリーズは、型番中の数字の意味を一枚の凡例図として公開していない。だがDS41・DS42・DS43・DS44・DS240・DS440という関連製品のページを横に並べて突き合わせると、極構成を示す数字の位置(モジュラー系列は後ろ、コンパクト系列は前)、末尾の電圧記号、S(信号出力)とVG(技術方式)という記号の役割は、いずれも公式仕様表の記載から一貫して確認できた。逆に言えば、型番の見た目の近さだけで系列や仕様の一致を判断するのは危うい。冒頭のDS240-400とDS42-400のように、主要スペックが一致していても系列そのものが違えば、安全上のマージンであるIsccrのような数字がそのまま食い違う。
CITEL製DSシリーズSPDの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、CITEL製サージ保護デバイスの型番確認から、系列・電圧・信号出力仕様を踏まえた発注仕様の確定、お見積りまでのご依頼を見積フォームで受け付けている。
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