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制御盤電材基礎規格・法令

制御盤内で主回路と制御回路を分ける理由|ノイズだけでは説明できない感電・混触リスクと配線設計

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

「主回路は危ない。制御回路はただの信号線だから、多少雑に扱っても大丈夫だろう」——制御盤の配線に触れたことのある人なら、一度はこの感覚を持ったことがあるはずだ。シーケンス制御用の配線は24VやAC100Vが中心で、三相200Vや400Vの動力線に比べれば見た目も細く、頼りない。「触れても大した被害にはならない」という空気が現場のどこかにある。

その油断が崩れる瞬間が、実はそう珍しくない。主回路の被覆が長年の振動でわずかに擦り切れ、すぐ隣を這う制御回路の電線に触れた瞬間、制御回路の電位はもう24Vでもなければ100Vでもない。動力線の電圧がそのまま乗り移る。盤を開けてテスタを当てるまで、それを見分ける手段は作業者の側にはない。

制御盤の配線で「主回路と制御回路を分ける」という基本ルールが繰り返し語られるのは、単にノイズを避けるためだけではない。感電・混触・保守時の識別性という、もっと直接的な安全上の理由がその背景にある。

主回路・制御回路とは何か——「同じ低圧」でも役割が違う

制御盤の中を大きく分けると、電動機やヒータなど実際に動力・熱エネルギーを消費する機器へ電力を送る主回路(動力回路)と、押しボタンやセンサーの信号を受けてリレーやコンタクタ(電磁接触器)を動かす制御回路(シーケンス制御回路)の2系統がある。主回路は三相200V・400Vが一般的で、電流も数A〜数百Aに達する。制御回路はAC100V・200Vの場合もあれば、PLCの入出力に合わせてDC24Vで構成される場合もあり、流れる電流はごくわずかだ。

どちらも「低圧」の範囲に収まることが多いという点が、かえって危険の判断を難しくする。高圧・特別高圧のように色や太さで一目瞭然に危険度が変わるわけではなく、盤を開けた瞬間の見た目だけでは、どちらがどれだけの電圧を持っているのか判断がつきにくい。

電気設備技術基準の解釈が示す「近づけてはいけない」条件

配線を近づけてはいけないという発想の法的な根っこをたどると、電気設備技術基準の解釈(経済産業省)にたどり着く。ただし、ここには一段階、注意して読むべき分岐がある。

同解釈第167条は、低圧配線が「弱電流電線」と接近・交差する場合の離隔(がいし引き工事で原則10cm以上)や、同一の管・ダクトへの収容の扱いを定めている。第3項では、低圧配線の電線と弱電流電線は原則として同一の管・線ぴ・ダクトの中に施設してはならないとしたうえで、例外を2つ挙げている。ひとつは、低圧配線と弱電流電線の間に堅ろうな隔壁を設け、金属製部分にC種接地工事を施す方法。もうひとつが、弱電流電線が「リモコンスイッチ、保護リレーその他これに類するものの制御用の弱電流電線であって、絶縁電線と同等以上の絶縁効力があり、かつ、低圧配線との識別が容易にできるもの」である場合だ。

ここで効いてくるのが、同解釈第1条・第181条の定義である。第181条は「電磁開閉器の操作回路又は呼鈴若しくは警報ベル等に接続する電路であって、最大使用電圧が60V以下のもの」を「小勢力回路」と定義し、最大使用電流も電圧区分ごとに1.5A〜5Aと定めている。そして第1条十五号は、この小勢力回路の電線を「弱電流電線」の定義に含めている。

つまり、制御回路が電磁開閉器(コンタクタ)の操作用でDC24Vのように60V以下、かつ電流も規定値以下であれば、これは法令上「弱電流電線」であり、主回路(低圧配線)との関係は第167条の規制対象になる。しかもその例外条件は「絶縁電線と同等以上の絶縁効力」と「低圧配線との識別が容易にできること」という、まさに配線設計の実務そのものを名指ししている。制御回路用の電線をわざわざ主回路用と同等以上の絶縁グレードにし、色や被覆で見分けやすくする、という現場の慣行には、この条文が背景にあると理解できる。

一方で、制御回路がAC100Vや200Vの制御トランスで構成されている場合は事情が変わる。60Vを超えるため小勢力回路の定義に当てはまらず、法令上は主回路と同じ「低圧配線」として扱われる。この場合、第167条が定める弱電流電線との離隔・分離のルールがそのまま主回路・制御回路間に適用されるわけではない。制御回路の電圧構成次第で、根拠となる規制の有無そのものが変わってくるという点は、慎重に扱う必要がある。

混触が起きたときに壊れるのは「電圧の前提」

物理的な絶縁劣化によって主回路と制御回路が接触する現象は「混触」と呼ばれる。制御盤の中でこれが起きたときに壊れるのは、配線1本ではない。壊れるのは「この線は低い電圧のはず」という保守者の前提そのものだ。

PLCの入力モジュールやリレーのコイルは、多くがDC24Vや低電流を前提に設計されている。そこへ主回路側の電圧がそのまま流れ込めば、機器の損傷はもちろん、その端子に無防備で触れた人間が受けるダメージも、平常時にDC24Vへ触れた場合とはまったく別物になる。だいたい、盤の保守作業でヒヤリとする瞬間の多くは、こうした「電圧の前提が崩れた状態」に気づかず作業を始めてしまうところから始まる。厚生労働省の労働災害データベースにも、低圧配電盤内の露出充電部分に接触して感電し死亡した事例が記録されており、盤内での接触事故が決して軽視できる話ではないことがわかる。

主回路側で地絡(電線が絶縁不良を起こして大地や金属フレームに接触する現象)が起きた場合も、事情は似ている。地絡した箇所の周辺は瞬間的に電位が持ち上がる。制御回路の接地・基準電位が主回路のフレームや接地系統と近い位置で共有されていると、その電位上昇の影響を制御回路側が受ける可能性が一般に指摘される。地絡そのものの仕組みについては、地絡・漏電の基礎解説で扱っている内容と合わせて理解しておくと見通しがよい。

JIS B9960-1が示す、もう一つの視点——PELVという考え方

国際的な機械安全規格であるJIS B9960-1(IEC 60204-1に整合)には、感電保護に関する章立てとして「基本保護」「故障保護」に続き、「PELVの使用による保護」という項目がある。PELV(Protective Extra Low Voltage)は、接地された低電圧回路を、より高い電圧の回路から確実に絶縁・分離することで、その低電圧回路自体を安全に触れられる状態に保つという考え方だ。

この規格の詳細な要求事項は有償頒布のため本記事では章立ての所在確認にとどめるが、考え方としては先に見た電気設備技術基準の解釈の発想と重なる。制御回路を「低い電圧だから安全」と扱うためには、それが本当に主回路から絶縁・分離されていることが前提になる。分離が守られていない制御回路は、名目上の電圧がいくら低くても、PELVが期待するような安全な低電圧回路とは言えない。

保守性という、もう一つの実務上の理由

感電・混触のリスクに加えて、現場でもうひとつ語られるのが保守時の識別性だ。主開閉器を切って作業を始めるとき、盤の中のどの配線が今どの状態にあるかを瞬時に判断できるかどうかは、色分けやルートの分離に大きく左右される。この点は制御盤内配線の色分けルールで扱った内容と地続きで、主回路と制御回路を物理的にも視覚的にも分けておくことが、感電防止と作業効率の両方に効いてくる。

実務チェックリスト

  • 制御回路の電源仕様を確認する:DC24Vか、AC100V・200Vかによって、根拠とすべき規制・考え方が変わる。
  • 同一ダクト・同一配管に収める場合は隔壁とC種接地、または絶縁グレードと識別性を確保する:どちらか一方だけでは不十分になりやすい。
  • 色分け・マークチューブで主回路と制御回路を視覚的に区別する:保守者が電圧の前提を誤らないための最初の手がかりになる。
  • 改修時は既設の配線状態を先に確認する:新設のルールをそのまま持ち込むと、盤内で基準が二重化することがある。
  • 最終判断はテスタによる実測に委ねる:色や配置は当たりをつけるための情報であり、絶対の保証ではない。

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