銘板に「P1-004LFF」とある。日立産機システムのインバータらしい、ということはロゴで分かる。ハイフンの後ろの「004」が容量を示していそうだ、というところまでは見当がつく。0.4kWの設備に付いているのだから、004は0.4kWなのだろう。
そう決めてかかった直後に、疑問が一つ残る。この「004」という数字は、いったい何を基準にした値なのか。単純にkW数を並べただけなら、0.75kWのインバータは「0075」になりそうなものだ。ところが日立産機システムの高機能インバータSJシリーズP1のラインアップには、そうならない型式が並んでいる。
日立産機システムの高機能インバータSJシリーズP1総合カタログ(SM-494Z、2025年11月発行)を確認すると、この容量コードの正体は、単なる「kW×10」の暗算では済まない一段深いところにあった。
型式の骨格――5つの位置に分かれる機種略号
カタログの「機種構成」ページには、機種略号として「P1-055 L F F」という並びが示されている。先頭の「P1」はタイプ名で、SJシリーズP1であることを表す固定の接頭辞だ。続くハイフンの後の3桁が容量コードで、注記には「適用モータ出力(ND定格) 004:0.4kW~3150:315kW」とある。ここでも、わざわざ「ND定格」という条件が付いている。
容量コードの次の1文字が入力電源仕様で、L(三相200V級)とH(三相400V級)の2通り。製品ページには「三相200V級 0.4kW~75kW」「三相400V級 0.75kW~315kW」とあり、200V級と400V級で対応する容量の範囲そのものが違う。さらに続く2つの1文字はどちらもFで、1つめが操作パネル付き、2つめが内蔵ノイズフィルタ付きを表す。カタログの機種一覧・寸法図・定格別選定表に載っている型式は、確認できた範囲ではすべてこの「LFF」または「HFF」で終わっていた。片方だけのF、あるいはどちらも付かない型式が実在するのかどうかは、今回参照した資料の中では確認できていない。
容量コードの作り方にも規則がある。ND定格のkW値を10倍して3〜4桁にそろえた数値で、0.4kWは004、2.2kWは022、15kWは150、315kWは3150。素直な対応に見えるが、0.75kWだけは007になる。7.5を四捨五入した8でも、切り上げた8でもなく、整数部の7で打ち切られた値だ。小数点以下の情報は、コードの上では静かに失われている。定格別インバータ選定表の脚注にも「※ND定格時の適用モータ容量を基準にしたコードです(004は0.4kW)」と、わざわざ「ND定格時の」という限定が添えられている。
実機への当てはめ――P1-004LFF、P1-022LFF、P1-037HFF
ここまでの読み方を、実際の型式に当てはめてみる。
P1-004LFFは、タイプ名P1、容量コード004(ND定格0.4kW)、入力電源仕様L(三相200V級)、操作パネル付き、内蔵ノイズフィルタ付き。カタログの機種一覧表でも、200V級の適用モータ出力に0.4kWの列があり、この型式が実在することが確認できる。
P1-022LFFは容量コード022(ND定格2.2kW)、三相200V級。P1-037HFFは容量コード037(ND定格3.7kW)、入力電源仕様H(三相400V級)。いずれもカタログの機種一覧・寸法図に実在する型式で、400V級の寸法図には「P1-004LFF~037LFF」に対応する形として「P1-007HFF~037HFF」がまとめて掲載されている。同じ外形寸法の枠に収まる容量帯が、200V級と400V級とで少しだけずれているわけだ。
寸法図の区切りを追っていくと、この「同じ筐体を共有する容量帯のまとまり」がSJシリーズP1全体を貫く設計思想らしいことが見えてくる。P1-004LFF~037LFF、次にP1-055LFF~075LFF、その次にP1-110LFF単独、そしてP1-150LFF~220LFF……という具合に、容量コードが上がるごとに筐体のサイズが段階的に大きくなる。容量コードは単なる型式上の記号ではなく、実機の外形寸法とも連動した値になっている。
現場で間違えやすい点――「004だから0.4kW専用」とは限らない
容量コードを読めるようになると、次に落とし穴になるのがこの点だ。「004」という表示を見て、「このインバータは0.4kWのモータ専用だ」と思い込んでしまう。
定格別インバータ選定表を横に読むと、そう単純ではないことが分かる。VLD(超軽負荷)は110%60sec・120%3sec、LD(軽負荷)は120%60sec・150%3sec、ND(標準負荷)は150%60sec・200%3secという3段階の過負荷電流定格があり、同じ型式コード004でも、200V級ではVLD・LDのときの適用モータ容量が0.75kW、ND定格のときだけ0.4kWになる。容量コードに刻まれているのは、あくまで一番厳しいND定格を基準にした値であって、パラメータで負荷仕様を切り替えれば、同じ1台のハードウェアがワンランク上のモータまで駆動できる。型式を読んで容量を確定したつもりでも、それは「NDで使うときの基準値」を読んだにすぎない。
もう一つ、旧シリーズからの置き換えで型式を素直に対応させてしまう間違いがある。カタログにはL700シリーズからP1シリーズへの置き換え表が載っており、たとえばL700-110LFFは、同じ「110」というコードのP1-110LFFに置き換わるのではなく、一枠下のP1-00460-LFF(P1-075LFF)を負荷仕様「軽負荷(LD)」に設定して使う、という対応になっている。旧シリーズの容量表記をそのまま新シリーズのコード数字に当てはめると、型式を一段階見誤ることになる。
そして、200V級と400V級とでコードの上限が違う点も見落としやすい。200V級はP1-750LFF(75kW)止まりだが、400V級はP1-900HFF、P1-1100HFF……と続いてP1-3150HFF(315kW)まで伸びている。同じ3桁・4桁のコードでも、Lシリーズ側にだけ存在してHシリーズ側には存在しない容量帯、あるいはその逆が普通にある。
実務上の注意点
適用モータについては、カタログに「適用モータは日立標準三相モータ4極を示します。他のモータをご使用の場合はモータ電流がインバータ定格電流を超えないようにしてください。」という注記がある。型式の容量コードは、あくまで日立の標準4極モータを前提にした目安であり、他社製モータや異なる極数のモータを組み合わせる場合は、型式表示の「kW」をそのまま信用せず、定格別インバータ選定表に記載されている定格電流(A)の数値でモータ側の電流と照合する必要がある。
型式コードの読み方自体は、この記事で確認した機種略号図と選定表の対応関係で足りる。ただし、実際にどの負荷仕様(VLD/LD/ND)で使うべきかは、駆動する機械の負荷特性(連続運転か、断続的な高負荷があるか)に応じた選定の話であり、型式を読むだけでは決まらない。容量コードと負荷仕様のどちらもが揃って初めて、そのインバータが現場のモータに合っているかどうかが分かる。
日立産機システムSJシリーズP1インバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、盤に残ったSJシリーズP1の型式から、容量コード・電圧クラス記号・負荷定格の組み合わせを照合し、後継品や代替品の選定に対応している。L700シリーズなど旧シリーズからの置き換えで、容量コードをどう読み替えればよいか分からない場合も相談できる。銘板の型式が判読しにくい場合は、写真を添えてもらえれば照合が早い。
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