制御盤の安全リレーモジュールを交換することになり、外した本体の銘板をそのままIDECの製品検索に打ち込んだことがある人は、少なくないはずだ。たとえば「HR2S-301N」。ヒットしたページを開くと、型番の由来をたどるより先に、小さな注記が目に入る。「販売中止」。慌てて安全リレーモジュールのカテゴリ一覧を開くと、並んでいるHR1S-AC・HR1S-AF・HR1S-AK・HR1S-ATE・HR1S-DMB/DME・HR2S-301P/N・HR2S-332N-Tのほぼすべてに、同じ注記が付いている。現行品として残っているのは、聞き覚えのないHR5SとHR6Sという二つの形名だけだ。
型番を読み解いたところで、それはもう発注できる記号ではないのかもしれない。そう思いたくなる。だが、読み解く価値はむしろここにある。目の前の実機に何が書かれているかが分からなければ、それが本当に同等品と呼べる後継品を探すことも、少なくとも壊れた理由を切り分けることもできない。IDEC公式カタログ「Safety Relay Modules HR Series」に基づいて、HR1S・HR2Sという型番の階層を分解していく。
骨格——HR1Sは機能ごとの一台、HR2Sはブロック型の一台
型番の頭にある「HR1S」と「HR2S」は、どちらも安全リレーモジュールの系列名だが、設計の思想が違う。IDEC公式カタログのSelection Guideは両者を別々の表に分けて掲載しており、HR1S系列はAC・AF・AK・ATE・DMB/DMEという5つの形式に細分され、それぞれが「非常停止スイッチ用」「インターロックスイッチ・溶着検出用」「非接触安全スイッチ用」といった特定の入力機器に対応する専用モジュールとして設計されている。対してHR2S系列は301と332N-Tの二形式のみで、カタログ自身が「コンパクト設計とメンテナンス性の向上」を謳う、より新しい世代の枠組みだ。
つまりHR1Sは「機能ごとに一台を選ぶ」発想、HR2Sは「一つの筐体で必要な入力方式を選ぶ」発想に近い。この違いを踏まえたうえで、型番の中身を見ていく。
HR1Sの五形式——アルファベット二文字が入力機器と出力構成を決める
HR1Sの直後に続く2文字(AC・AF・AK・ATE・DM)は、対応する入力機器と出力構成の両方を一度に決めている。IDEC公式カタログのSelection Guideと各形式のSpecifications表を突き合わせると、次のように整理できる。
| 型番 | 主な入力対象 | 安全出力 | 補助・追加出力 | 安全カテゴリ |
|---|---|---|---|---|
| HR1S-AC | 非常停止・インターロック(1NCまたは2NC) | 3NO | トランジスタ1NO | 3 |
| HR1S-AF | インターロック(2NC)+起動スイッチの溶着検出 | 3NO | なし | 4 |
| HR1S-AK | 非常停止・インターロック・ライトカーテン | 3NO | リレー1NC+トランジスタ4NO | 4 |
| HR1S-ATE | 非常停止・インターロック+時延出力 | 瞬時2NO+時延3NO | トランジスタ4NO | 4 |
| HR1S-DMB/DME | 非接触インターロックスイッチ | 2NO | トランジスタ2NO | 4 |
同じ「3NO」という安全出力を持つAC・AF・AKでも、補助出力の有無と点数がそれぞれ違う。ACにはトランジスタ出力が1点だけ付き、AFには補助出力が一切なく、AKにはリレー接点とトランジスタ出力の両方が付く。カタログの特長欄を読むかぎり、AFが「小形高機能タイプ」として起動スイッチの溶着検出という固有の診断機能を持つ代わりに、汎用の補助出力を削っているという設計上のトレードオフがうかがえる。
AKの「3」と「5」——同じ「11144」の前に立つ一桁が電圧クラスを分ける
HR1S-AKにはHR1S-AK311144とHR1S-AK351144という、末尾の数字列がまったく同じ二つの型番が存在する。違うのは「AK」の直後、末尾より前に来る一桁だけだ。カタログの仕様表でこの二つを並べると、AK311144(およびそのP付き)は24V AC・24V DC対応、AK351144(およびそのP付き)は120V AC・24V DC対応と書かれている。「3」は24V系、「5」は120V系——この一桁だけが電圧クラスを切り替え、残る「11144」という並びは出力構成(安全回路3NO・補助接点1NC・トランジスタ出力4NO)を表したまま両者で共通している。
ここで注意したいのは、この「3」「5」という数字の意味づけがAK形にだけ確認できる、という点だ。HR1S-AC5121もHR1S-ATE5110も型番の途中に「5」を含むが、どちらも電圧のバリエーションを持たない単一品番であり、AK形のように同じ末尾数字を電圧違いで比較できる相手が存在しない。数字が同じ位置にあるからといって、系列をまたいで同じ規則を当てはめてよいとは限らない。
DMB・DMEの「B」と「E」——点検用の記号ではなく、直列につなげる台数の記号
HR1S-DMB1132とHR1S-DME1132も、末尾の「1132」は共通している。違いは直前の一文字、BとEだ。旧版カタログの仕様表を見ると、この一文字に対応する形で「Input」欄の数値がDMBの行では2、DMEの行では6と切り替わっている。実際にDME形のLED表示の説明文には、S13・S23・S33・S43・S53・S63という6系統ぶんの非接触インターロックスイッチ入力端子の名称が列挙されており、DMB形(幅22.5mm)が2台までの非接触スイッチを扱うのに対し、DME形(幅45.0mm)は6台までを1台のモジュールで束ねられる。幅が2倍にも満たないのに、扱える安全スイッチの台数は3倍になる——BとEという一文字が、この規模の違いを担っている。
Pという記号——ただし挿入位置は系列によって違う
HR1S-AC5121P・HR1S-AK311144P・HR1S-ATE5110P。いずれも末尾に付く「P」はRemovable Terminal Block、つまり端子台が着脱できるタイプを指す。カタログの図解によれば、この端子台は工具なしで引き抜いてモジュールごと交換できる構造になっており、盤の中でモジュールだけを差し替えたいときに選ぶ。
ところがHR1S-AFだけは勝手が違う。基本形はHR1S-AF5130Bで、着脱式はHR1S-AF5130PBとなり、「P」は末尾ではなく基本形の末尾文字「B」の手前に割り込む形で挿入される。同じ「端子台着脱」という意味を担う記号なのに、系列によって差し込まれる位置が変わる——このAF形の「B」は、DMB形の「B」(6台まで扱えるDMEに対する2台版という機能区分)とは無関係の、単なる基本形の型番末尾の一文字にすぎない。同じアルファベットが並んでいても、系列をまたいで意味は引き継がれない。
HR2Sの「P」「N」——端子台ではなく入力の論理方式を表す記号に変わる
HR1Sの世界でPが端子台の種類を表していたのに対し、HR2S-301の型番末尾に付くPとNはまったく別の意味を担う。カタログのPart Numbers表には、HR2S-301Pの入力方式がPositive(正論理)、HR2S-301Nの入力方式がNegative(負論理)と明記されている。同じ一文字が系列をまたぐと別の役割に変わる、という点はAF形のBと同じ構図だ。
この違いは単なる配線極性の話にとどまらない。カタログの注記には「HR2S-301Nはカテゴリ4の安全用途での使用が推奨される」という一文があり、カテゴリ3以下ならHR2S-301Pで足りる場面でも、カテゴリ4を要求される回路ではNを選ぶ必要がある。型番の末尾一文字が、そのまま安全カテゴリの選定基準に直結している。
332N-Tという例外——負論理専用になり、時延という第二の出力が加わる
HR2S-332N-T075・T15・T30には、そもそも「P」の選択肢がない。型番はすべて「N」で固定されており、負論理入力の専用モデルという位置づけだ。その代わりに301系列にはない出力が加わる。Part Numbers表によれば、332N-Tの安全出力は瞬時3NOに加えて時延3NOがもう一系統あり、補助接点も301系列の1NCに対して2NCと増えている。
型番末尾のT075・T15・T30は、この時延出力が設定できる時間のレンジを表す。カタログの注記には「T075=0.5, 1, 1.5…7.5秒(15段階)」「T15=1, 2, 3…15秒(15段階)」「T30=2, 4, 6…30秒(15段階)」という具体的な数値が並んでおり、型番のこの3桁だけで、実機のロータリースイッチが刻む時間の上限が最大4倍まで変わることが分かる。ただし型番が示すのはあくまで「レンジ」までで、そのレンジの中のどの秒数に設定されているかは、型番ではなく現物のロータリースイッチの位置を見なければ確認できない。
型番だけでは決まらないもの
ここまでの規則を積み上げれば、HR1S-AK311144もHR2S-332N-T075も、入力方式・出力構成・電圧クラス・時延レンジという層に分解して読めるようになる。ただし、数字そのものにこれ以上の意味を求めるのは危うい。HR1S-AC5121の「5121」やHR1S-ATE5110の「5110」がなぜその並びなのかを説明する一次資料は見当たらず、これらは系列内で電圧や出力構成のバリエーションを持たない固定の品番として扱うほかない。HR1S-ATEのプリセット時間(0, 0.5, 1, 2, 4, 6, 8, 10, 15, 20, 25, 30秒)も、型番の記号ではなく本体前面のスイッチで設定する値であり、型番から読み取れる情報ではない。
現実——この型番はもう新規で買えない
ここまで読み解いた型番のほぼすべてが、すでに過去のものだ。2026年8月時点でIDEC公式サイトの安全リレーモジュール一覧を確認すると、HR1S-AC・HR1S-AF・HR1S-AK・HR1S-ATE・HR1S-DMB/DME、そしてHR2S-301P/HR2S-301N・HR2S-332N-T075/T15/T30のすべてに「販売中止」の表示があり、現行品として並んでいるのはカテゴリ2向けのHR5S形と、予知保全機能を備えたHR6S形の二つだけだ。IDEC自身が用意していた推奨代替品の検索機能も、2024年6月末をもって終了している。
だからといって、型番を読む作業が無意味になるわけではない。既設の盤に今も収まっている実機の型番が、入力方式・出力構成・安全カテゴリのどれを満たすために選ばれた一台だったのかが分かれば、それを手がかりにHR5S・HR6Sという現行シリーズの中から相当する仕様を選び直す作業ができる。型番の解読は、発注のためだけでなく、引き継ぐための作業でもある。
IDEC安全リレー(HR1S・HR2S)の型番確認・代替品のご相談について
電材資材専門商社・松本電業株式会社では、盤に残るHR1S・HR2Sの型番から入力方式・出力構成・安全カテゴリを確認したうえで、現行のHR5S形・HR6S形をはじめとする代替経路のご相談に対応しています。銘板の型番が一部判読できない場合も、写真を添えていただければ照合いたします。
あわせて読みたい
- IDEC(アイデック)操作スイッチ・リレー完全ガイド|HWシリーズ・RUリレー・安全リレーの選び方
- IDECのRUリレーの型番はどう読むのか|RU2S-D24とRU2S-C-D24を分ける「C」の一文字とラッチングレバー・コイルサージ対策の規則
- 非常停止回路とセーフティリレー|普通のリレーが使えない理由と安全カテゴリ・パフォーマンスレベル(PL)の考え方
- 安全スイッチのb接点をa接点で配線してしまい、扉を開けても機械が止まらなかった!インターロックが「壊れているのに正常に見える」誤配線の恐怖
- IDECの取扱品種一覧
関連するIDEC・HR1S・HR2S・安全リレー・型番・見方・販売中止・HR5S・HR6Sの品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。