制御盤更新の見積もりを頼まれて、既設の電源をひっくり返してみる。銘板には「PS5R-VD24」と刻印されている。手元のカタログを開くと、同じPS5R-V形の並びに「PS5R-VF24」がある。DがFに変わるだけで、何が変わるのか。とっさに「電流のクラスが上がるんだろう」と口にしたくなる。だが、それは半分正しく、半分は的を外している。
型番の骨格——B・C・D・E・F・Gは容量のものさし
IDEC公式データシート「Switching Power Supplies PS5R-V Series」(文書番号PS9Y-DS500-1a)には、「Part Number Structure」という図がある。型番を「PS5R」「V」「出力容量記号」「出力電圧記号」の4つに分解した、まさに答え合わせのための図だ。そこにはこう書かれている。
出力容量記号は、B=10W/15W、C=30W、D=60W、E=90W、F=120W、G=240W。出力電圧記号は、05=5V、12=12V、24=24Vである。
つまり「D」と「F」の違いは、電流のクラスでも設計の世代でもなく、出力できる電力(ワット数)のクラスだった。B→C→D→E→F→Gとアルファベットが一段進むごとに、10W台から240Wまで容量が段階的に大きくなっていく。しかも、この順序はきれいな昇順のまま並んでいる。偶然ではなく、容量が増えるたびにアルファベットを一文字ずつ繰り上げていった結果、この並びになったと考えるのが自然だ。
実機に当てはめる——5モデルと、隠れた3モデル
冒頭のPS5R-VD24とPS5R-VF24を当てはめ直すと、VD24=60W・DC24V、VF24=120W・DC24Vとなる。IDEC公式製品一覧ページで確認できる全ラインナップは次の通りだ。
- PS5R-VB05(10W・DC5V)
- PS5R-VB12(15W・DC12V)
- PS5R-VB24(15W・DC24V)
- PS5R-VC12(30W・DC12V)
- PS5R-VC24(30W・DC24V)
- PS5R-VD24(60W・DC24V)
- PS5R-VE24(90W・DC24V)
- PS5R-VF24(120W・DC24V)
- PS5R-VG24(240W・DC24V)
並べてみると、もう一つの規則が見えてくる。容量クラスが上がるほど、選べる出力電圧の幅は狭まっていく。BとCには5V・12V・24Vの組み合わせが用意されているが、D以上はどれも24V専用しかない。制御盤の中でDC5VやDC12Vが必要になるのは、小容量のセンサ・リレー回路に限られることが多い。60W以上ともなればPLCや複数機器への一括給電が前提になり、需要が24Vに集約されるということなのだろう。数字だけを見ていると気づきにくいが、型番の「選べる幅」自体が、容量帯ごとの使われ方を映している。
横幅にも同じ段差が現れる。公式ページの「主な特長」には、横幅22.5mm(10W/15W/30W)、36mm(60W/90W)、46mm(120W)、60mm(240W)という薄形設計が明記されている。B・Cクラス(10〜30W)は22.5mm、D・Eクラス(60〜90W)は36mm、Fクラス(120W)は46mm、Gクラス(240W)は60mm。容量のアルファベットが一段上がるたびに、DINレール上の専有幅も一段広がる。制御盤のスペース設計で「このクラスは何ミリ分見込んでおけばいいか」を判断する材料にもなる。
なぜ「A」がないのか
ここまでの規則に納得しかけたところで、一つ引っかかる。容量クラスはB始まりで、Aがない。最初から抜けているのか、それとも別の場所に隠れているのか。
Galco International掲載のIDEC発行カタログ「PS5R Standard Series」を見ると、答えの一端が見つかる。これはVの付かない旧世代のPS5R標準シリーズのカタログで、そこにはPS5R-A05・A12・A24という型番が並んでいる。容量は7.5W。現行のPS5R-V形には存在しない、B(10W/15W)よりもさらに小さいクラスだ。同じカタログのB05/B12/B24は15W、C12/C24は30W、D24は50W、Q24は75W、E24は100W、F24は120W、G24は240Wと続く。
つまり旧世代のPS5Rには、たしかにAクラス(7.5W)が存在していた。現行のPS5R-V形でAが登場しないのは、7.5Wという最小クラスが世代交代のどこかで整理され、B以上のラインナップに集約された結果ではないかと推測できる。ただし、この統合の経緯そのものを明言した公式資料までは見つけられなかった。ここは「たぶんそうだろう」という推測の域を出ないが、Aの不在が単なる欠番ではなく、旧シリーズには実在したクラスだったという事実だけは、一次資料で裏付けられる。
なお、このPS5R標準シリーズの型番表には「D24」の次に「Q24」という、アルファベット順を外れた記号も混じっている(50W→75W→100W)。容量クラスの記号が常に厳密な連番規則で割り振られてきたわけではなく、あとから追加された容量帯には順序を無視した記号が割り当てられることもある、という点も付け加えておきたい。
現場で間違えやすい点
「D24」だけでは世代を特定できない。先に触れたPS5R標準シリーズのPS5R-D24は50W・24V・2.1Aだが、現行のPS5R-V形のPS5R-VD24は60W・24V・2.5Aである。同じ「D24」という末尾を持っていても、Vの有無で容量そのものが違う。古い制御盤の配線図や部品表に「PS5R-D24」とだけ記載されていた場合、それが現行のPS5R-VD24と同一だと決めつけるのは危うい。まず刻印の全体を確認し、Vが付いているかどうかを見るところから始めたほうがいい。
PS5R-S形はすでに販売中止。IDEC公式ページには「2016年12月28日販売中止<推奨代替品:PS5R-V形>」と明記されている。図面上に「PS5R-S」という型番が残っている案件では、そのまま発注しようとしても入手できない。代替品はPS5R-V形になる。
UL認証の対象はVB〜VEまで。IDEC公式製品一覧ページの注記によれば、UL1310 Class 2と、危険場所(Class I Division 2)対応を含むc-UL認証(CSA C22.2 No.107.1・213・223)は「PS5R-VB/VC/VD/VE形のみ」が対象になっている。120WのPS5R-VF24、240WのPS5R-VG24はこの範囲に含まれない。北米向け設備や危険場所対応が要件に入っている案件では、容量だけで機種を選ばず、この認証範囲を必ず確認したほうがいい。
直付金具はPS6RとVGでしか共用できない。IDEC公式製品一覧ページのラインナップには、PS9Z-6R1F(直付金具)とPS9Z-6R2F(低背取付直付金具)という2つの金具が載っており、いずれも「PS6R、PS5R-VG」専用と記載されている。つまりこの金具はPS5R-Vシリーズ全体で共用できるわけではなく、対応するのは最大容量のVG24(別売のPS6Rシリーズと共通)だけだ。VD24やVF24をパネルに直付けしたい場合、この金具がそのまま使えると思い込むと選定を誤る。
実務上の注意点——内蔵ヒューズの定格も容量クラスで変わる
型番の読み方を超えて、保守で実際に効いてくる情報も一つ。IDEC公式データシートの「Rated Current of Internal Fuses」表によれば、内蔵ヒューズの定格電流は容量クラスごとに区分されている。PS5R-VB・VCは2A、PS5R-VD・VE・VFは4A、PS5R-VGは6.3A。容量記号がB・C・D・E・F・Gと段階を追うのと同じ区切りで、ヒューズの定格も切り替わっている。
なお、この内蔵ヒューズはAC入力用であり、DC入力で使う場合は外部ヒューズを別途取り付ける必要があると同データシートに明記されている。定格電流は内蔵ヒューズの定格を踏まえて選定するようにと注意書きがある点も、現場での交換対応時に見落としやすい。
IDEC製PS5R-V形電源の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、PS5R-V形電源の型番確認から、容量クラス(B〜G)と出力電圧の組み合わせの照合、UL・c-UL認証の要否確認、旧世代PS5R標準シリーズやPS5R-S形からの代替品選定までのご相談を見積フォームで受け付けている。図面や現物の刻印だけでは判別が難しい場合、写真を添えてもらえれば型番の照合を進めやすい。
あわせて読みたい
- IDECのRUリレーの型番はどう読むのか|RU2S-D24とRU2S-C-D24を分ける「C」の一文字とラッチングレバー・コイルサージ対策の規則
- MEAN WELLのDR/EDR形DINレール電源の型番はどう読むのか
- COSELのPBA形電源の型番はどう読むのか
- IDECの取扱品種一覧
関連するIDEC・PS5R-V・PS5R-VD24・PS5R-VF24・スイッチング電源・型番・見方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。