制御盤の増設で、リレーソケットの発注書を書いている場面を想像してほしい。手元の在庫リストには「SY2S-05C」という型番が並んでいる。似た型番の実績があるからと、今度組み込むRU2Sリレー用にも同じ系統で発注しようとする。だが、IDEC公式サイトのSY2S-05のページには、こう書かれている。「Standard din rail mount socket for RY2S relay」——RY2S用としか書かれておらず、RU2Sの文字はどこにもない。同じ「2極・8ピン」の箱に見えて、型番の一文字目からもう別の系列に入っている。
骨格——「2」「4」は極数、しかし中身は一枚岩ではない
型番の外側から見ていく。IDEC公式カタログ「ワンタッチSソケット」の表面配線形ソケット一覧表が示しているのは、SY2S・SM2S系が2極、SY4S系が4極という極数までだ。ピンの本数は一覧表には出てこず、同じカタログの外形寸法図に添えられた端子配列を見て初めて、2極形が8端子、4極形が14端子だと分かる。RUリレーの型番解説記事で触れたRU2S・RU4S・RU42Sの極数表記と、発想自体は同じだ。極数が多いほどピンの本数も増える、という素朴な予想はここでは裏切られない。
ただし、この対応は「ピン数がそのまま型番の数字になる」という意味ではない。SY4S-05は14ピンだが、型番のどこにも「14」という数字は現れない。極数を表す「4」と、ピンの本数である「14」は、別の情報として扱われている。カタログの端子配列図を実際に開かない限り、型番の文字列だけからピン数を逆算することはできない。
なぜ2極だけ「SM2S」に化けるのか
もう一段掘り下げると、極数の記号だけでは片付かない事情が見えてくる。IDEC公式カタログ「DN/DFシリーズ リレーソケット」の「種類[形番]」表を見ると、標準ねじ端子形のRU2S対応ソケットはSM2S-05DN、RU4S対応ソケットはSY4S-05DNと記載されている。4極側は「SY」のままなのに、2極側は「SY」ではなく「SM」に変わっている。
同じカタログの適合リレー欄を追うと、SM2S-05DN/DFはRU2S・RM2S・GT5Y-2に対応し、SY4S-05DN/DFはRU4S・RU42S・RY4S・RY42S・GT5Y-4に対応する。一方、「ワンタッチSソケット」カタログのSY2S-05B/Cの適合機種欄には、RY2S・RY22Sしか挙げられていない。整理すると、SYの2極形(SY2S)は旧世代のRY2S系リレー専用として生き残り、RU2Sという新しい2極リレーに対応する2極ソケットには、SYではなくSMという別の頭文字が割り当てられた。4極側だけはSYの型番がRY世代からRU世代へそのまま引き継がれている——極数記号の対称性を素直に信じると、この非対称に足をすくわれる。
「05」は仕様の数字ではない
型番の中央にある「05」も、思ったほど多くを語らない。「ワンタッチSソケット」カタログを見渡すと、この「05」はSY2S-05B/C・SY4S-05B/Cだけでなく、1極のSH1B-05B/C、2極のSH2B-05B/C/D、3極のSH3B-05B/C、4極のSH4B-05B/C、あるいはSJ1S-05BS・SJ2S-05BSといった極数もシリーズも異なる複数の表面配線ねじ端子形ソケットに共通して付いている。つまり「05」は極数を表す数字ではなく、表面配線・ねじ端子形という設計世代を示す固定区分に近い。ここに極数やピン数の情報を読み込もうとすると、SY4S-05DNの14という実際のピン数と型番の05という数字が一致しないことに戸惑うことになる。
その先の英字が、ようやく端子の形状を決める。DN/DFシリーズカタログの「種類[形番]」表によれば、標準ねじ端子形がDN、フィンガープロテクトねじ端子形(指を保護する構造)がDFだ。一方「ワンタッチSソケット」カタログのSY形・SM形・SH形では、同じ区分がB(標準形)・C(フィンガープロテクト形)という別の文字で表されている。同じ「標準か指保護か」という選択が、シリーズによって使う文字自体が変わる——DN/DFとB/Cを混同すると、片方のシリーズの感覚でもう片方の型番を読み間違える。
実機に当てはめる——SY4S-05DNとSY4S-14DNの差
ここまでの規則を、冒頭のRU2S用ソケット選定に当てはめ直す。RU2Sを挿す2極ソケットが必要なら、選ぶべきはSM2S-05DN(標準ねじ端子形)またはSM2S-05DF(フィンガープロテクトねじ端子形)だ。RU4Sを挿す4極ソケットなら、SY4S-05DN、あるいはSY4S-05DFになる。
一方で、社内資料の中に「SY4S-14DN」という型番を見かけることがあるかもしれない。SY4S-05DNの実体が14ピン・4極であることを知っている人ほど、ピン数をそのまま型番に組み込んで「14DN」と書きたくなる誘惑にかられる。だが、IDEC公式サイト・「ワンタッチSソケット」カタログ・「DN/DFシリーズ」カタログのいずれにも、SY4S-14DNという型番は見当たらなかった。14ピンの4極DN形ソケットを指す正しい型番は、あくまでSY4S-05DNである。ピン数を型番の数字だと思い込む——この一点だけで、実在しない型番を作り出してしまう。
固定ばね・渡り金具でも間違えやすい
型番を読み解けたつもりでも、付属品の選定でもう一段つまずく余地が残っている。DN/DFシリーズカタログの使用上のご注意には、次のような記載がある。「2極ソケット(SM2S-05DN/DF形)とRUリレーを組み合わせる場合は、固定ばねSFA-503形をご使用ください」「4極ソケット(SY4S-05DN/DF形)に固定ばねSFA-503形は使用できません」。極数ごとに取付穴の形状が違うため、固定ばね(リレーをソケットに固定する部品)は極数専用品を選ぶ必要がある。SM2S用にはSFA-503(RUリレー用)またはSFA-502(RMリレー用)、SY4S-05DN/DF用にはSFA-502(リレー用)が指定されている。
複数のソケットを並べて配線する際に使う渡り金具(隣接ソケット間の端子を橋渡しする部品)も同様だ。2極ソケット専用がSM9Z-JF2/JF5/JF8、4極ソケット専用がSY9Z-JF2/JF5/JF8で、いずれも定格通電電流10Aと明記されている。型番の頭文字がSMかSYかで、そのまま付属品の型番の頭文字も分かれる構造になっている。
実務上の注意点——同じ「SY4S-05」でも定格が違う
もう一つ、見落としやすい点がある。同じ「SY4S-05」という型番の枠の中でも、末尾の記号によって定格電流が変わる。「ワンタッチSソケット」カタログのSY4S-05B/C(RY4S・RU4S共用)は定格絶縁電圧250V・定格電流7A。これに対し「DN/DFシリーズ」カタログのSY4S-05DN/DFは定格AC/DC250V・6A、質量はDN形で約53g、DF形で約56gと明記されている。型番の型としては同じ「SY4S-05+英字1〜2文字」でも、系統が違えば電流定格も質量も別の値になる。なお、同じ一覧表の中で「7A(UL、TÜVでは10A)」という但し書きが付くのは2極のSM2S-05Cであって、SY4S-05B/Cには付かない。隣の行の数字を自分の型番の値だと思い込まないよう、そのつど自分の形番の行を指で追って確認したほうがいい。
なお、DN/DFシリーズには、RU9Z-P※という別売のマーキングプレート(5色:緑・黄・オレンジ・白・青)がRUリレー本体と共用できる形で用意されている。ソケット側にリレーと同じ色のプレートを付けておけば、盤の中でコイル電圧や機種の違いを一目で判別できる——型番の桁を追うだけでなく、こうした付属品の使い分けまで含めて「読み方」の一部になっている。
IDEC製SYリレーソケットの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、SY2S・SM2S・SY4S各系統の型番確認から、対応リレー(RU2S・RU4S・RU42S・RY2S・RY4S・RY42S・GT5Y)との組み合わせ照合、固定ばね・渡り金具・マーキングプレートといった付属品の選定までのご相談を見積フォームで受け付けている。手元の型番がワンタッチSソケットのB/C系かDN/DFシリーズ系か判別しづらい場合は、現物の刻印写真を添えてもらえると照合が早い。
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