SL-V23Fという型番を渡されて、まず読み取れるのは「23」の部分だろう。キーエンス公式の仕様表を見ると、SL-V23Fの光軸数は確かに23。型番の数字がそのまま実際の光軸の本数を指しているという読み方は、この時点でもう外れようがない。
問題はその先だ。安全柵の設計では、光軸が並んでいる範囲だけでなく、機械の可動部との間に確保すべき「保護高さ」という数値を使う。SL-V23Fの仕様表を見ると、検出高さは220mm、保護高さは244mm、そして本体の全長は230mmとある。ここで手が止まる。全長230mmの筐体から、保護高さ244mmという、全長より14mm長い数字が出てくる。型番の光軸数から素直に計算した長さと、安全距離の計算に使うべき数字が、同じ型番の中で静かにずれている。
このずれがどこから来るのか、そしてSL-Vシリーズの型番全体がどんな規則で組まれているのかを、キーエンス公式サイトの型式一覧・仕様表という一次資料に沿って確かめていく。
型番の骨格――「SL-V」+光軸数+検出能力記号+堅牢タイプ記号
キーエンス公式の型式一覧・仕様表を通して見ると、SL-Vシリーズの型番は次の要素で組み立てられている。
| 位置 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 数字 | 4〜127 | 光軸数(そのまま実数) |
| 末尾1文字目 | F / H / L | 検出能力(最小検出体) |
| 末尾2文字目 | M(あれば) | 堅牢・防水タイプ |
検出能力の記号は、公式サイトの仕様ページで検出体の直径と対応づけられている。Fはø14mm(指検出)、Hはø25mm(手検出)、Lはø45mm(腕・脚・体検出)。光軸ピッチもこの3区分で変わり、公式仕様表によればFが10mm、Hが20mm、Lが40mmだ。SL-V23Fなら光軸ピッチ10mmで23軸、SL-V08Hなら光軸ピッチ20mmで8軸、SL-V04Lなら光軸ピッチ40mmで4軸、という具合に、末尾の1文字を見た瞬間にピッチと最小検出体がひとつに決まる。
Mが付く型式は堅牢・防水タイプで、保護構造がIP67/65になる(無印はIP65)。SL-V23FとSL-V23FM、SL-V08HとSL-V08HMのように、光軸数・検出能力が同じなら電気的な仕様はほぼそのまま引き継がれる。少なくとも、そう見える。
驚きの発見――保護高さは「全長+一定の隙間」で、その隙間は検出能力ごとに違う
型番の数字から素直に読み取れるのは光軸数と、そこから決まる検出高さだ。検出高さは公式仕様表の値を並べると、(光軸数-1)×光軸ピッチにきれいに一致する。SL-V23Fなら(23-1)×10mm=220mm。SL-V08Hなら(8-1)×20mm=140mm。SL-V04Lなら(4-1)×40mm=120mm。ここまでは電卓を叩けば誰でも出せる。
ところが、実際に安全柵の隙間計算に使うべき保護高さは、この検出高さに単純な足し算では届かない。仕様表の全長と保護高さを検出能力ごとに並べてみる。
| 検出能力 | 型式例 | 全長 | 保護高さ | 差 |
|---|---|---|---|---|
| F(ø14mm) | SL-V23F | 230mm | 244mm | 14mm |
| F(ø14mm) | SL-V127F | 1,270mm | 1,284mm | 14mm |
| H(ø25mm) | SL-V08H | 150mm | 185mm | 35mm |
| H(ø25mm) | SL-V12H | 230mm | 265mm | 35mm |
| L(ø45mm) | SL-V04L | 150mm | 205mm | 55mm |
| L(ø45mm) | SL-V12L | 470mm | 525mm | 55mm |
差の欄を縦に見ると、F系列は光軸数が23だろうと127だろうと必ず14mm、H系列は8だろうと12だろうと必ず35mm、L系列は4だろうと12だろうと必ず55mmと、検出能力ごとに完全に一定している。光軸数が変わっても、この差だけは変わらない。
一見、この差は最小検出体の直径がそのまま出てきているように見える。F系列の14mmは最小検出体ø14mmと数字が一致する。だが同じ理屈をH系列に当てはめると、最小検出体ø25mmに対して差は35mm。L系列は最小検出体ø45mmに対して差は55mm。どちらも直径より10mmだけ多い。F系列だけが直径とぴったり重なり、H・L系列は直径に10mmを足した数字になっている。
なぜこの10mmの差が生まれるのか、公式資料からは分からない
ここで正直に書いておきたい。なぜF系列だけ差が最小検出体の直径と一致し、H・L系列では直径に10mm上乗せされた数字になるのか、その理由をキーエンス公式サイトの仕様表・商品ページから読み取ることはできなかった。投光器・受光器それぞれの光学窓の位置や、検出能力ごとに変わるレンズ配置に起因する可能性は考えられるが、それを裏付ける記述は見つかっていない。分かっているのは、この差が光軸数によらず検出能力ごとに一定の値として仕様表に現れている、という事実だけだ。
理由が分からないからといって、この事実の重みが下がるわけではない。むしろ現場での意味は逆で、「型番の光軸数から計算した全長を、そのまま保護高さの代わりに使ってはいけない」という一点に集約される。
現場での実務的な注意点
一つめは、いま確かめた全長と保護高さの取り違えだ。安全柵の開口部を設計するとき、うっかり全長を保護高さの代わりに使うと、F系列では14mm、H系列では35mm、L系列では55mm、実際に検出される範囲より柵の計算が短く見積もられる。数字自体は小さいが、指や手が入り込める隙間の設計では無視できる幅ではない。型番から長さを逆算するときは、必ず仕様表の「保護高さ」の欄を直接引くべきで、光軸数×ピッチの暗算に頼らないほうがいい。
二つめは、Mの有無が示すのは安全性能ではなく筐体の作りだという点だ。公式仕様表によれば、安全規格――IEC61496-1・UL61496-1のタイプ4 ESPE、IEC61496-2・UL61496-2・EN61496-2のタイプ4 AOPD、IEC61508・EN61508・IEC62061のSIL3、EN ISO13849-1のカテゴリ4・PLe――は、F・H・Lの検出能力を問わず、M付きか無印かも問わず、確認できたすべての型式で同一だった。つまり「指検出だから安全性能が高い」「堅牢タイプだから安全性能が上」という読み方は成立しない。その代わり、同じ光軸数のSL-V12HとSL-V12HMを比べると、質量は投光器で200gから670gへと3倍以上に増えている。Mを選ぶ判断は、安全等級の底上げではなく、設置環境の防水・耐環境要求と、それに伴う重量増を取付金具や支柱の強度に反映できるかどうかで行うべきものだ。
三つめは、HとHSという型式が並存している点だ。SL-V08HとSL-V08HSを仕様表で比較すると、全長・検出高さ・保護高さ・応答時間・質量まで数値が完全に一致する。にもかかわらず、型式一覧では光軸数104・112・120のHS型(SL-V104HS等)だけに「生産終了」の表示があり、対応するH型には表示がない。小さい光軸数ではHとHSが両方現行品として並び、大きい光軸数ではHSだけが退場している。この構造の理由も公式資料からは確認できなかった。図面や過去の発注履歴にHSの型番が残っている場合、後継としてHへ読み替えられるのか、それとも別型式として扱うべきなのか、リプレース前に一次資料かキーエンスへの確認を挟んだほうが安全だ。
四つめは、SL-Vは1つの型式が投光器・受光器のセットとして注文される構造になっている点だ。SL-V23Fの製品ページでは、価格183,000円が型式ひとつに対して単一で表示され、質量の欄だけが投光器200g・受光器205gと分かれている。投光器と受光器を別々の型番で個別発注する必要はなく、型番を1つ指定すれば対のセットが揃う。見積書やBOMを作る際に、光電センサーの感覚で投光器・受光器を別行に分けて数量を二重計上しないよう注意したい。
制御盤の更新や新設で安全柵の仕様を詰めるとき、型番の数字だけでなく保護高さ・堅牢タイプの要否・型式の生産状況まで一次資料で照合する作業は、思ったより手間がかかる。手元の図面にある型番の読み替えや、後継品・在庫の確認が必要な場合は、見積もり依頼をする →から問い合わせてほしい。
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