型番の一文字が、メーカーが変わると正反対の意味になる。IDECの安全リレーを扱った記事で、そのことをすでに確認した。HR2S-301Pの「P」は正論理(Positive)の入力方式を表していた。
ではオムロンの安全リレー、G9SAシリーズの型番はどうか。銘板を見ると「G9SA-301」「G9SA-501」「G9SA-321-T30」と並ぶ。パッと見た印象では、この3桁の数字は型式ごとの通し番号か、開発順の管理番号のように思える。実際に読み解くと、そうではなかった。もっと単純で、もっと機械的な規則がそこにある。
結論——3桁の数字は、接点の個数をそのまま並べただけだった
G9SAの型番は「G9SA」+3桁の数字(301・501・321など)+必要に応じて末尾の記号(オフディレー時間のT075/T15/T30、コモン方式の-P)という構成を取る。そして中心にある3桁の数字は、暗号でも管理番号でもない。1桁目が主接点(安全出力)のa接点数、2桁目がオフディレー接点のa接点数、3桁目が補助接点のb接点数を、そのままの順番で並べただけの値だ。
G9SA-301なら主接点3a・オフディレーなし(0)・補助接点1bで「3」「0」「1」。G9SA-501なら主接点5a・オフディレーなし・補助接点1bで「5」「0」「1」。オフディレー付きのG9SA-321なら主接点3a・オフディレー接点2a・補助接点1bで「3」「2」「1」。この規則は、OMRON EuropeがG9SA-P向けに公開しているデータシートの「Model Number Legend」に、そのままの形で図示されている。
分解——7つの位置に区切られた型式
そのデータシートによれば、G9SAの型式は次の7つの位置で構成されている。
- 機能(無印=非常停止用)
- 接点構成(安全出力):0=なし、3=3極(3PST-NO)、5=5極(5PST-NO)
- 接点構成(オフディレー出力):0=なし、2=2極(DPST-NO)、3=3極(3PST-NO)
- 接点構成(補助出力):0=なし、1=1極(SPST-NC)
- 入力構成(無印=1chまたは2ch入力対応)
- オフディレー時間:無印=オフディレーなし、T075=7.5秒、T15=15秒、T30=30秒
- コモン方式:-P=マイナスコモン(NPN)、無印=プラスコモン(PNP)
位置2・3・4を並べた3桁が、そのままG9SA-301やG9SA-321の中心部分になる。増設ユニットのG9SA-EX031-T075も同じ規則で説明がつく。こちらは本体を持たない増設専用の型式なので、位置2(安全出力)は0のまま、位置3(オフディレー出力)が3極ぶんの「3」、位置4(補助出力)が「1」で、並べると031。オムロン公式の形式一覧に載っているG9SA-EX031-T075の実際の仕様(オフディレー接点3a、補助接点1b)と、数字の並びがぴったり一致する。
現行ラインナップを表にすると、こうなる。
| 型式 | 主接点 | オフディレー接点 | 補助接点 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| G9SA-301 | 3a | - | 1b | 非常停止ユニット |
| G9SA-501 | 5a | - | 1b | 非常停止ユニット |
| G9SA-321-T075/T15/T30 | 3a | 2a | 1b | オフディレー付き |
| G9SA-TH301 | 3a | - | 1b | 2ハンドコントローラ(2ch固定) |
| G9SA-EX301 | 3a | - | 1b | 増設ユニット |
| G9SA-EX031-T075/T15/T30 | - | 3a | 1b | 増設ユニット(オフディレー) |
驚きの発見——「-P」の意味が、IDECとは正反対だった
ここまでは、型番の中心部分の話だ。もう一つ、末尾に付く記号にも見過ごせない発見がある。
G9SA-301には、G9SA-301-Pという派生型式が存在する。オムロン公式の形式仕様一覧では「安全出力 3a, 補助接点 1b, マイナスコモン(NPN), DC24V」と説明され、電源電圧もAC/DC24Vの共用ではなくDC24V専用に絞られている。OMRON EuropeのG9SA-Pデータシートは、この「-P」を「Negative common (NPN)」、無印のほうを「Positive common (PNP)」と明確に定義している。
冒頭で触れたIDECのHR2S-301Pを思い出してほしい。あちらの「P」は正論理(Positive)の入力方式を表す記号だった。G9SAの「-P」は、負論理側、つまりマイナスコモン・NPNを表す。同じアルファベット一文字が、メーカーが変わると意味が入れ替わるどころか、電気的な極性まで正反対になっている。IDECの型番の読み方に慣れた目でG9SA-301-Pを見ると、うっかり「正論理の版だろう」と早合点しそうになるが、それは逆だ。
なぜそうなっているのか
なぜオムロンは、3桁の数字に接点構成をそのまま埋め込む方式を選んだのか。公式資料にその設計意図を説明する記述は見当たらない。推測にはなるが、非常停止用リレーという製品の性格上、現場の作業者が型番の数字だけを見て「主接点がいくつ、補助接点がいくつ」と即座に判断できることには、選定ミスを減らす実務上のメリットがある。記号の意味を暗記しなくても、数字を数えるだけで接点構成が読めるという方式は、覚え間違いの余地が小さい設計だと言えそうだ。ただし、この意図をオムロン自身が明言しているわけではなく、あくまで型番の一貫性から読み取れる推測にとどまる。
現場での実務的な注意点
盤の中のG9SA-321-T30を見て、非常停止部と同じ安全性能がオフディレー接点にも及んでいると思い込まないことだ。オムロン公式の「ご使用の前に」ページには、G9SA-321-T□/EX031-T□のオフディレー出力部だけはPLd・安全カテゴリ3にとどまる、という注記がある。主接点はPLe・カテゴリ4でも、オフディレー接点を安全出力として設計に組み込む場合は、要求されるパフォーマンスレベルがPLdの範囲に収まっているかを、あらためて確認する必要がある。
発注時には、電圧の指定を型番の3桁だけで済ませられない点にも注意したい。G9SA-301という型式そのものは、AC/DC24V用とAC100~240V用の両方をまとめて指しており、電圧は発注時に別途指定する項目になっている。流通・販売店のコードで「G9SA-301 AC/DC24」のように電圧が型番に付け足されているのは、あくまで注文管理上の表記だ。
もう一つ、-Pの有無は電源電圧の選択肢そのものを狭める。無印のG9SA-301はAC/DC24VとAC100~240Vの両方が選べるが、G9SA-301-PはDC24V専用になる。既設盤でNPN出力のセーフティセンサ・機器を使っている場合、-P付きの型式を選ぶ必要があるだけでなく、電圧仕様の選択肢自体が変わることも踏まえて発注する必要がある。
型式仕様一覧を眺めていて、もう一つ気になる型式に行き当たった。G9SA-301-300という型番だ。標準在庫機種として価格・在庫区分は表示されているのに、商品説明の欄だけが空欄になっている。ここまでの規則に当てはめれば「301」の部分は主接点3a・オフディレーなし・補助接点1bのはずだが、末尾に付く「-300」が何を追加・変更しているのかは、今回確認できた公式ページの範囲では説明が見つからなかった。型番の規則が読めるようになったからといって、初見の型番のすべてを規則だけで断定してよいわけではない。見慣れない末尾記号に行き当たったときは、規則から類推した内容を鵜呑みにせず、該当する型式の仕様一覧・データシートで裏を取る一手間を省かないことだ。
型番からの読み解きが難しい、あるいは銘板の一部が判読できない場合は、写真や分かる範囲の情報を添えていただければ照合する。
オムロン製G9SAセーフティ・リレーユニットの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残ったG9SA-301・G9SA-321-T30等の型番の分解から、コモン方式(-Pの有無)・電圧仕様の確認、オフディレー部のパフォーマンスレベルの照合、増設ユニットとの組み合わせ確認、後継品の照合までのご相談を見積フォームで受け付けている。
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