見積書や設備の銘板に、こう書かれているのを見たことはないだろうか。「BXS6200AM-A-2」。ハイフンで区切られた文字列を前にすれば、たいていの人はこう考える。前半のアルファベットと数字が機種とサイズ、後半が電源やオプションを表しているのだろう、と。分解できるはずだ、と。
その手がかりを求めて、オリエンタルモーター公式サイトの「品名の見方」ページを開いてみる。ブラシレスモーターBXⅡシリーズのページには、確かに型番の構成図が載っている。ところがそこに並んでいるのは、探している「BXS6200AM-A-2」の分解図ではなかった。
品名の見方が教えているのは、実は4つの型番
BXⅡシリーズの「品名の見方」ページを開くと、構成図は1つではなく4つに分かれている。モーター単体、ギヤヘッド単体、ドライバ単体、そして接続ケーブル。それぞれが独立した型番体系を持っている。
モーター単体は「BXM」から始まり、続けて取付角寸法(2=60mm、4=80mm、5=90mm、6=104mm)、出力(W)、電磁ブレーキ付を示す「M」、ハイフンのあとにシャフト形状(GFS=GFS歯切りモーター、A・A2=丸シャフトタイプ)が入る。公式の例は「BXM5120M-GFS」。実際、同シリーズの製品ページに掲載されている許容荷重の表には「BXM230」「BXM460」「BXM5120」「BXM6200」「BXM6400」という、この規則どおりのモーター品名が並んでいる。
ドライバ単体は「BXSD」から始まる。出力(W)のあと、電源電圧を示す記号(A=単相100-120V、C=単相・三相200-240V)、そして識別品番と呼ばれる数字が続く。公式の例は「BXSD120-C2」。これも同じ製品ページの回生抵抗の適用製品欄に「BXSD30-A2、BXSD30-C2」「BXSD120-A2、BXSD120-C2」「BXSD400-A2」といった実物の品名として登場する。
ケーブルは「CC」+長さ(003=0.3mから303=30.3mまで)+適用機種を示す「SB」+種別(F=接続ケーブル、R=可動接続ケーブル)+識別品番、という並びだ。ここまでは、他社の型番構成図と大きく変わらない。読み方の骨格自体は素直で、位置ごとの意味も一つずつ確認できる。
4つとも、位置ごとの意味が凡例付きで示されている。ここまで丁寧なら、あとは実物の品名にこの4つの表を当てはめるだけで済む——そう思っていた。
分解してみる——足りないのは、たった1つの表
4つの構成図を並べて見ると、奇妙なことに気づく。BXMはモーター、BXSDはドライバ、CCはケーブル。では実際に商品名として画面に表示され、見積書にも印字される「BXS6200AM-A-2」や「BXS230CM-5S-3」は、いったいどの表の話なのか。
試しに「BXS230CM-5S-3」を、手元にある4つの表の記号だけを使ってほどいてみる。「230」はモーター単体の表にある取付角2(60mm)と出力30(W)の組み合わせに一致する(実在する品名「BXM230」と同じ数字の並びだ)。「C」はドライバ単体の表にある電源電圧記号。「M」は電磁ブレーキ付。ハイフンのあとの「5」はギヤヘッド単体の表にある減速比の書き方と同じ。ここまでは、断片ごとになら意味が拾える。
ところが、そのあとの「S」が読めない。ギヤヘッド単体の構成図に載っている種類の記号は「なし(空欄)=平行軸ギヤヘッドGFSギヤ」と「FR=中空軸フラットギヤヘッドFRギヤ」の2つだけで、「S」という記号はどこにも定義されていない。さらに末尾の「-3」も、ドライバ単体の表にある「識別品番」と似た位置に付いてはいるが、この数字が何を識別しているのかを示す凡例は、やはりどこにもない。
驚きの発見——4枚の設計図があっても、組み立て図が1枚もない
これは見落としではないかと疑って、ページ全体をもう一度読み直した。モーター、ギヤヘッド、ドライバ、ケーブル。4つの区分見出しと、それぞれの表。それで終わりだった。「組み合わせ品の品名」や「セット品名の見方」といった、5つ目の構成図は存在しない。
つまりオリエンタルモーターは、BXⅡシリーズの部品ひとつひとつの型番の付け方は事細かに公開している。取付角の数字も、電源電圧の記号も、ケーブルの長さの刻み方も、位置ごとに凡例が付いている。それなのに、客が実際に検索し、注文し、見積書に書き込む「BXS」から始まる品名そのものについては、どう組み立てられているかを説明する表を用意していない。部品表はあるのに、完成品の設計図がない——そんな状態に見える。
なぜそうなっているのか——「作る名前」と「買う名前」は、もともと別の系統かもしれない
なぜこうなっているのか、正直なところ確証は持てない。ただ、手がかりになりそうな類例が、同じメーカーの別シリーズにある。
ACモーターのレバーシブルモーター(Kシリーズ)の「品名の見方」ページには、こう書かれている。「モーター銘板に記載されている品名は、コンデンサの種類を表す記号(J、U、E)がつきません」。カタログ上の品名は「5RK40GN-AW2J」だが、モーター本体の銘板に刻まれ、各種安全規格の認定を取得している品名は「5RK40GN-AW2」——末尾の「J」が消えた形になる、という注記だ。
つまりこの会社では、カタログ上で検索・注文するための品名と、モーター本体そのものに紐づく品名が、少なくとも1文字分だけずれる場面がすでに存在する。BXⅡシリーズの「BXS」から始まる品名も、同じように「注文・検索のための品名」という、部品単体の型番(BXM・BXSD・ギヤヘッド)とは別の系統の名前なのではないか、というのが今のところの見立てだ。ただしBXⅡシリーズの場合、Kシリーズのように「元の品名から1文字消える」という単純な対応関係すら、公開資料からは確認できなかった。取付角と出力の数字は部品単体の型番と一致するのに、シャフト形状やギヤ種類にあたる記号は、部品単体の表にない文字(S)に置き換わっている。ここから先は推測の域を出ない。
現場での実務的な注意点
見積・後継照合の場面では、この空白を前提に動いたほうがいい。
一つ目は、品名の文字列だけで代替品を探そうとしないことだ。「BXS」から始まる品名の途中の記号を、単体の構成図の記号と同じ意味だと決めつけて読み替えると、ギヤヘッドの種類やモーターのシャフト形状を取り違える恐れがある。取付角・出力・電源電圧など、複数の表で共通して確認できる要素だけを手がかりにし、それ以外は現物の仕様書や外形図で照合したい。
二つ目は、モーター・ドライバ・ギヤヘッドを分けて発注できる、という点をむしろ利点として使うことだ。既設品の後継照合で「BXS」の品名がまるごと一致する製品が見つからない場合でも、モーター単体(BXM形式)とドライバ単体(BXSD形式)それぞれの後継を個別に確認できれば、セットとしての品名が変わっていても機能的な置き換えが成立することがある。逆に言えば、モーターだけ・ドライバだけを単体で買い替えるときこそ、この4つの構成図がそのまま役に立つ場面でもある。電源電圧の記号(A・C)を電圧が違う設備に取り違えて発注すれば、当然ながらモーターは正しく動かない。
三つ目は、生産終了の確認を型番の見た目だけで判断しないことだ。今回参照した「BXS6200AM-A-2」「BXS230CM-5S-3」はいずれも2022年3月31日に生産終了しており、BXⅡシリーズという枠組み自体が現行品(2025年8月制作のパンフレットが最新版として案内されている)であっても、個々の組み合わせ品名は世代交代している。品名が読めることと、その品名が今も発注できることは別の話だ。
なお、ドライバ単体・ケーブルの構成図には「識別品番」という区分が数字のまま置かれているだけで、その数字自体が何を識別しているのかを説明する凡例はどちらにもない。「BXS」の品名に残る空白と同じ性質の空白が、実は部品単体の型番の中にも小さく残っている、ということでもある。
型番の骨格を読み解くところまでは自分でできても、実際にその組み合わせが今も製作可能か、後継品への置き換えでモーター・ドライバ・ギヤヘッドのどこが変わるのかの判断は、複数の資料を突き合わせる手間がかかる。
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