古い生産ラインの改修現場で、据え付けから何年も経った減速機付きモーターの銘板に、こう刻まれているのを見たとしよう。「CNHM2-6115-EP-29」。ハイフンで区切られた文字列を前にすれば、たいていの人はこう読む。前半のアルファベットが機種と取付の向き、真ん中の数字が容量か枠のサイズ、末尾の数字が減速比だろう、と。
その予測は、半分だけ当たっている。
住友重機械工業の「サイクロ」減速機付きギヤモータの型式は、公式カタログに11個の区分で示された構成図を持つ。読み方の骨格自体は、他社の型式表示と大きく変わらない。ところが枠番の並びを選定表で追っていくと、素朴な思い込みを一つ裏切る箇所にぶつかる。枠番――減速機の外形サイズを示す数字――は、モータの出力だけでは決まらない。同じ「0.1kW」の容量記号のまま、減速比が変わるだけで枠番が6060から6120まで、7段階以上も動く区間があるのだ。
型式の骨格――11個の区分が並ぶ
CYCLO 6000 Series総合カタログの「形式」ページには、型式構成図がこう示されている。並びは「C N H M □ 1 - 6105 □ - EP - B - 51」。
先頭の「C」は機種記号で、サイクロ減速機6000シリーズと6000SKシリーズはどちらもこの「C」を使う。低減速比シリーズだけが「P」になる。続く1文字は低速軸方向で、横形・水平がH、立形・垂直下向がV、逆立形・垂直上向がW、そして取付方向を限定しない「取付方向自由」がN。この自由形は都度照会となる逆立形とは違って標準対応の区分だが、選べる枠番が606□・607□・608□・609□・610□・611□・612□系列に絞られるという制約がついている(□には0・5・Hのいずれかが入る)。
3文字目は取付方法で、脚付がH、フランジ取付がF、取付台付がV。ここにも一つ注記がある。6000SKシリーズはフランジ取付の製作ができない。同じ機種記号「C」を名乗っていても、枝分かれ先のシリーズによって作れる取付方法が違う。4文字目のモータ連結方法は、モータ直結形がM、連結台付がJM、高速軸ホローシャフトがXM。5番目の特殊仕様は標準仕様なら空欄、特殊仕様ならSが入る。
続く6番目がモータ容量記号だ。4P(4極、標準的な回転数)なら0.1kWの「01」から75kWの「100」まで、6Pなら15kWの「206」から132kWの「1756」まで、決められた表の中から数値が入る。ここで一つ気づく人がいるかもしれない。3.7kWの容量記号は4Pなら「5」だが、6Pだと「606」に対応する。同じ出力でも極数が違えば記号は総入れ替えになる。極数を見落として容量記号だけ拾うと、想定と違う出力のモータを選んでしまう。
ハイフンをまたいだ7番目が枠番で、これはB25頁の選定表を見なければ決まらない。8番目の軸種類はメートルサイズ標準が空欄、インチサイズがY、メートルDINがG。9番目の補助形式は、無印の三相モータ付から、プレミアム効率三相モータ付のEP、インバータ用AFモータ付のAV、インバータ用プレミアム効率三相モータ付のAP、高効率三相モータ付のESまで並び、さらに重ラジアル荷重形のR1・R2、台板付のBP、トルクリミッタ付のTL、壁取付や天井取付を示すH1〜H3、低バックラッシ形のLBまで用意されている。10番目のブレーキ有無は無印かB。11番目の減速比は、6000シリーズなら実際の減速比の数値がそのまま入るが、6000SKシリーズと低減速比シリーズは公称値になるため、実際の減速比は選定表側で確認しないといけない。
分解してみる――カタログが挙げる2つの実例
同じカタログの「形式例と製品例」ページには、この構成に沿った実例が2つ示されている。
例1)CNHM2-6115-EP-29。C=サイクロ減速機、N=低速軸方向は方向自由、H=取付方法は脚取付、M=モータ連結方法はモータ直結、2=モータ容量は1.5kW、6115=枠番、EP=補助形式はプレミアム効率三相モータ付、29=減速比。
例2)CVVM5-6195DA-AP-B-377。C=サイクロ減速機、V=低速軸方向は垂直下向、V=取付方法は取付台付、M=モータ連結方法はモータ直結、5=モータ容量は3.7kW、6195DA=枠番、AP=補助形式はインバータ用プレミアム効率三相モータ付、B=ブレーキ付、377=減速比。
2つを並べると、枠番の書き方に幅があることに気づく。「6115」のような単純な4桁もあれば、「6195DA」のように末尾にアルファベットが付く枠番もある。選定表を見る限り、この「DA」付きの枠番は大きな減速比の領域で頻出する。ここまでは、まだ読み方の確認にすぎない。
驚きの発見――同じ0.1kWモータのまま、枠番が6060から6120まで動く
選定表のB28〜B30頁を、容量記号「01」(0.1kW・4P)の行だけ追ってみる。減速比が6のとき、枠番は6060。出力トルクは3.75N・m。ここまでは想像通りだ。ところが減速比を上げていくと、枠番は6065、6070、6075、6080、6085と徐々に大きくなり、減速比59では6070から6085まで4種類の枠番が併存する。さらに減速比319まで来ると、枠番は6060DA・6065DA・6070DA・6075DA・6090DA・6095DA・6100DA・6105DA・6120DAの9種類が選定表に並ぶ。出力トルクも、減速比6のときの3.75N・mから、減速比119のときには74.5N・mまで広がっている。
モータの容量記号は「01」のまま、一文字も変わっていない。それなのに減速機の外形サイズを表す枠番だけが、7段階以上も飛び級する。
なぜそうなっているのか――枠番は「モータの大きさ」ではなく「受け止める力」の記号
同社の製品特長ページには、この現象の種明かしにあたる一文がある。「SF(サービスファクター)の自由選択により、モータ容量を上げずに減速機枠番のみサイズアップすることが可能」というものだ。サイクロ減速機は、モータの出力とは独立に、減速機側のケース・低速軸・軸受のサイズだけを選べる設計になっている。
理由の見当はつく。同じ入力動力でも、減速比が上がれば出力側の回転速度は下がり、その分だけ出力トルクは大きくなる。トルクを受け止めるのは減速機のケースと軸受であって、モータそのものではない。だから減速比が上がるほど、モータの容量記号を据え置いたまま、枠番だけを大きくする必要が出てくる。加えて、負荷の運転条件に安全余裕(サービスファクター)を持たせたい場合にも、モータを大きくする代わりに枠番だけを一段上げるという選び方が用意されている。枠番とモータ容量記号は、見た目こそ型式の中で隣り合っているが、それぞれ別の物理量に対応する別の軸の記号だと考えたほうがいい。
なお、なぜ「DA」という2文字が特定の枠番にだけ付くのか、その内部構造(段数や歯車列の違いなのか)までは、参照した資料の記載からは確定できなかった。選定表上でDA付き枠番が大きな減速比の領域に集中しているという傾向は確認できたが、正確な技術的根拠については個別の照会が必要になる。
現場での実務的な注意点
置き換え・後継品選定の場面では、型式の文字列を機種記号や補助形式だけで判断しないほうがいい。特に次の3点は見落としやすい。
一つ目は、容量記号と極数の組み合わせだ。「5」なら3.7kW・4Pだが、「606」なら45kW・6Pになる。桁数の似た記号を見誤ると、極数(回転数)が丸ごと違うモータを選定してしまう。
二つ目は、枠番だけを手がかりに「同等品」を探す危うさだ。枠番が同じでも減速比・モータ容量記号が違えば別物になり、逆に枠番が違っても取付寸法自体は選定表の「寸法図(ページ)」欄で個別に確認しないと互換性は判断できない。
三つ目は、防爆仕様の扱いだ。型式の11区分にも、水・腐食・粉塵を組み合わせる使用環境パッケージ番号にも、防爆を示す記号は現れない。安全増防爆形・耐圧防爆形は、それらとは別枠の「その他の環境要素」として注文のたびに個別指定する仕様になっている。中古設備の移設や既存盤の更新で防爆区域に設置する場合は、銘板の型式文字列だけを見て安心せず、発注時の仕様書や現物の防爆表示まで確認する必要がある。
型式を読み解くところまでは自分でできても、実際にその枠番・減速比・補助形式が今も製作可能か、防爆仕様への変更ができるかどうかの判断は、選定表と資料を照合する手間がかかる。
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