盤の中から取り外した電磁弁のボディに、「SY5120-5LZD-01」という刻印が残っている。頭のSYを見てSMC製だとはわかる。だが、5120の並びが何を決めているのか、続く5とLとZとDがそれぞれ何の答えなのか、そこまではわからない。ネット検索に型番をそのまま打ち込めば代替品らしきものは出てくる。ただしそれは、記号を読めたからではなく、検索エンジンが型番の文字列一致で拾ってきただけのことだ。
SMC株式会社の5ポート電磁弁SYシリーズの型番は、SMCの公式カタログに「型式表示方法」という名前で明文化された規則に従って組み立てられている。ここでは、SY3000・5000・7000・9000 Seriesのカタログに記載された構成に沿って、この型番を一段ずつ剥がしていく。
型番は「シリーズ→切換方式→配管形式」から始まる
SMCのカタログに載っている構成例は「SY5120-5L□-01」というものだ。頭からシリーズ番号、切換方式、配管形式を示す固定数字が続き、ハイフンを挟んで定格電圧・リード線取出し方法・マニュアル・ランプ/サージ電圧保護回路が並び、もう一つハイフンの後ろにポート口径が来る。
シリーズ番号は、SY3000が3、SY5000が5、SY7000が7、SY9000が9。単純に見えるが、この一桁がボディサイズそのものを決めており、流量特性もこの数字によって別表になっている。カタログの流量特性・質量表には「SY5120-01」「SY7120-02」という型式がそのまま実例として載っており、シリーズが変わればポート口径の記号の意味まで変わることが、この二つの型式を並べるだけでわかる。
切換方式——シングルかダブルか、それとも3位置か
シリーズ番号の直後に来る数字は、切換方式を示す。カタログには1から5までの選択肢が定義されている。1は2位置シングル、2は2位置ダブル、3は3位置クローズドセンタ、4は3位置エキゾーストセンタ、5は3位置プレッシャセンタだ。
現場での判断はシンプルで、2位置シングルは電磁石一つで切り換え、通電を止めるとばねの力などで元の位置に自動的に戻る。ダブルは両側に電磁石を持ち、どちらの側に最後に通電したかで位置を保持し続ける。3位置は名前の通り、中間位置を含む3つの状態を切り換える構成で、シリンダを任意の位置で止めたい用途に使われる。この一桁を読み違えると、制御回路の側で自己保持のためのシーケンスを組む必要があるかどうかという設計判断そのものが変わってしまう。
「20」と「40」——配管形式は型式表示方法のページごと分かれている
ここが、この型番のいちばん見落としやすい部分だ。SY5120の末尾に付く「20」は、独立した凡例の枠として説明されているわけではない。SMCのカタログを開くと、型式表示方法のページそのものが配管形式ごとに分かれており、直接配管形/単体のページ(p.732)の構成例は「SY5120-5L□-01」、ベース配管形/単体のページ(p.748)の構成例は「SY5240-5L」となっている。同じ位置の数字が、20から40に入れ替わっている。
直接配管形は電磁弁の本体に配管を直接つなぐ形式で、ベース配管形はサブプレート(ベース)を介して配管する形式だ。既設設備の更新でここを取り違えると、電磁弁本体だけ交換したつもりが、配管の取り回しごと設計をやり直す羽目になる。なお、マニホールドに搭載する個別バルブの型式表示方法(p.767)でも、この位置の数字は直接配管形と同じ「20」が使われている。単体で発注するか、マニホールドに搭載するかという違いは、この数字には表れない。
定格電圧とリード線取出し方法——ハイフンの後ろに来る二つの決定
ハイフンの後ろに来る最初の記号は定格電圧だ。DC仕様は5がDC24V、6がDC12V、VがDC6V、SがDC5V、RがDC3V。AC仕様(50/60Hz)は1がAC100V、2がAC200V、3がAC110V[AC115V]、4がAC220V[AC230V]と定められている。DC24Vが現場で最も見かける仕様で、記号の5はその代表格だと考えていい。
続く記号がリード線取出し方法だ。グロメット(G・H)、L形プラグコネクタ(L・LN)、M形プラグコネクタ(M・MO)、DIN形ターミナル(D・Y・DO・YO)、M8コネクタ(WO・W□)という5系統が用意されている。同じDC24Vでも、Lが付けばプラグコネクタ経由のリード線付き、Dが付けばDIN形ターミナルのコネクタ付きという、まったく別の電気配線方式になる。既設設備を更新するとき、電圧の記号だけを合わせてリード線取出し方法の記号を見落とすと、届いた電磁弁に既設の配線コネクタが挿さらないという事態になりかねない。
マニュアルとランプ・サージ電圧保護回路——見落とされがちな二つの記号
リード線取出し方法の次に来るのがマニュアル(手動操作)の記号だ。無記号はノンロックプッシュ式、Dはプッシュターンロック式ドライバ操作形、Eはプッシュターンロック式手操作形。配線前の動作確認や、停電時の手動切り換えに使う機構で、Dのドライバ操作形はドライバでロックしておかないと不用意に押し込まれない仕様、Eの手操作形は工具なしで操作できる仕様という違いがある。
その次に来るのが、ランプ・サージ電圧保護回路の記号だ。ここが少しやっかいなのは、同じZという記号でも、直前のリード線取出し方法によって意味の範囲が変わる点にある。カタログには「リード線取出し方法がG、H、L、M、Wの場合」と「リード線取出し方法がD、Yの場合」で別の表が用意されており、前者ではR(サージ電圧保護回路付・無極性タイプ)やU(ランプ・サージ電圧保護回路付・無極性タイプ)まで選べるのに対し、後者の表にはR・Uの選択肢自体がなく、さらに「DOZ、YOZはありません」という注記まで付いている。Zという一文字だけを覚えても、その手前にどの記号が来ているかを見ないと、実際に選べる組み合わせなのかどうかは判断できない。
ポート口径とねじの種類——シリーズごとに固定された対応表
型番の末尾、二つ目のハイフンの後ろに来るのがA・Bポートの管接続口径だ。ねじ配管の場合、無記号がM5×0.8(SY3000)、01が1/8(SY5000)、02が1/4(SY7000)、03が3/8(SY9000)と、シリーズごとに対応する口径がほぼ固定されている。この末尾の数字だけを見て「01だから小さい方だろう」と判断すると、シリーズ番号との組み合わせを忘れて誤読することになる。冒頭で触れた「SY5120-01」「SY7120-02」という実例も、シリーズが変わればポート口径の記号自体が変わるという、この対応関係をそのまま体現している。
ポート口径の記号にはさらに、ねじの種類を示す付加記号が続く場合がある。無記号がRc、FがG、NがNPT、TがNPTFだ。M5規格を除くこの分類は、輸出先の規格や既存配管のねじ規格に合わせて選ぶための記号で、口径が合っていてもねじの種類が違えば接続できない。
実際の型番を分解する——SY5120-5LZD-01とSY7120-2DZ-02T
ここまでの記号を踏まえて、冒頭で触れた型番と、もう一つの実例を分解する。
「SY5120-5LZD-01」は、SY5(シリーズ=SY5000)・1(切換方式=2位置シングル)・20(配管形式=直接配管形)という頭部分に、5(定格電圧=DC24V)・L(リード線取出し方法=L形プラグコネクタ、リード線付)・Z(ランプ・サージ電圧保護回路付)・D(マニュアル=プッシュターンロック式ドライバ操作形)が続き、末尾の01(ポート口径=1/8、SY5000のねじ配管に対応する口径)で締めくくられる。
「SY7120-2DZ-02T」は、SY7(シリーズ=SY7000)・1(切換方式=2位置シングル)・20(配管形式=直接配管形)という同じ頭部分に、2(定格電圧=AC200V)・D(リード線取出し方法=DIN形ターミナル、コネクタ付)・Z(ランプ・サージ電圧保護回路付、この場合はDIN形ターミナル用の表が適用されるため無極性タイプ)が続き、マニュアルの記号は付いていないので無記号(ノンロックプッシュ式)、末尾の02(ポート口径=1/4、SY7000のねじ配管に対応する口径)、Tはねじの種類(NPTF)を示す。
一つだけ、正直に断っておくべきことがある。カタログの型式表示方法の図は、定格電圧・リード線取出し方法・マニュアル・ランプ/サージ電圧保護回路の記号を、それぞれ独立した凡例として並べて示しているが、複数の記号(ZDのように)がひと続きの文字列としてどの順で並ぶかを、図自体が番号付きで明記しているわけではない。ここで示した並び順は、SY5120-5LZD-01・SY7120-2DZ-02Tという実在の型番の文字列から、各記号の意味を一つずつ突き合わせて確認したものだ。記号一つひとつの意味はカタログの表で確実に裏付けられているが、発注の際は最終的にSMCの型式表示方法の図そのもので、記入欄の並びを確認してから記入するのが確実だ。
型番が読めると、現場で何ができるか
ここまでの記号を押さえれば、盤の中から外した電磁弁の刻印一つから、シリーズ・切換方式・配管形式・定格電圧・電気配線方式・手動操作の有無・ポート口径まで、カタログを開かなくても見当が付くようになる。改修現場で現物しか手元にない場合でも、型番を書き写すだけで代替品の候補をかなり絞り込める。
ただし、この記事で確認した記号の意味は、SY3000・5000・7000・9000 Seriesの直接配管形/単体とベース配管形/単体、そしてマニホールド搭載用20型という限られた型式表示方法のページに基づくものだ。ワンタッチ管継手配管を選ぶ場合の記号や、オーダーメイド仕様(X20・X90・X701)の細部、マニホールド側の型式表示方法まで踏み込むと、また別の一次資料の確認が必要になる。型番の骨格(シリーズ→切換方式→配管形式→電圧→配線方式→ポート口径)という考え方は流用できても、記号一つひとつの意味は発注前に必ずその型式そのもので確認する必要がある。
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