制御盤の屋外端末処理で、届いたスミチューブW呼称サイズ7の現物をノギスで測ると7.3mmある。型番と実測がズレているのはスミチューブA(一般用)で見た話と同じだろうと見当をつけ、次に呼称サイズ9のロットを測ってみる。ところが今度は9.0mmでぴったり一致する。同じ製品シリーズの中で、なぜ一方はズレて一方は一致するのか。
結論——呼称サイズは「一律のズレ」ではなく、サイズごとに一致・不一致が混在する
住友電工ファインポリマーが公開するスミチューブWの製品仕様書(仕様書番号R4-1080、カタログNo.803)のサイズ表を確認すると、呼称サイズと実測の収縮前内径の関係は一様ではない。呼称サイズ7の収縮前内径は7.3±0.5mm、呼称サイズ8は8.2±0.5mmとズレがある一方、呼称サイズ9は9.0±0.5mm、呼称サイズ10は10.0±0.5mmとぴったり一致する。全11サイズ(呼称1.5〜14)のうち約半数がズレ、約半数が一致する——という、規則性の読み取りにくい混在状態が仕様書の数値そのものだ。
スミチューブA(一般用)では呼称サイズの帯ごとにズレ幅が段階的に縮んでいく規則性があったが、Wシリーズのサイズ表にはその種の帯構造は見当たらない。呼称サイズは実測値の代わりにはならない、という原則だけは同じだが、ズレ方の性質はシリーズによって異なる。
表示を分解する——防水を担う二層構造とサイズ表の5列
スミチューブWがA・イラックス各シリーズと違うのは、外層だけの単層構造ではない点だ。仕様書の「基本特性」欄には、外層チューブが電子線架橋軟質ポリオレフィン樹脂、内層チューブが熱溶融性ポリオレフィン樹脂と記載されている。加熱すると外層が収縮すると同時に内層が溶けて内部を充填する二層構造で、この仕組みが「特長」欄にある「段差の大きい被覆物体の充頡(充填)に効果的」という性能——つまりコネクタ付き端末のような凹凸のある形状でも隙間なく防水封止できる性能——の土台になっている。
サイズ表はこの構造を反映して、A系よりも1列多い5列構成になっている。左から「呼称サイズ(mm)」、「収縮前サイズ」(内径d・肉厚〈参考値〉tの2列)、「収縮後サイズ」(内径〈最大値〉d′・肉厚〈参考値〉t′の2列)、「単長〈最小値〉(m)」の並びだ。仕様書の断面図には、収縮前の状態と、外層・内層がともに縮み切った「完全収縮後」の状態が描かれており、細径サイズについては内層の溶融樹脂が内部を隙間なく埋め切る「完全充実型(d′=0)」という注記まで付いている。
全11サイズの実測値を並べると、次のようになる。
| 呼称サイズ | 収縮前内径d(mm) | 収縮前肉厚(参考値)t(mm) | 収縮後内径(最大値)d′(mm) | 収縮後肉厚(参考値)t′(mm) | 単長(最小値)(m) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.5 | 1.70±0.20 | 0.50 | 完全充実(d′=0) | 1.10 | 0.3 |
| 2.5 | 2.70±0.20 | 0.50 | 完全充実(d′=0) | 1.40 | 0.3 |
| 3.5 | 3.50±0.30 | 0.55 | 完全充実(d′=0) | 1.60 | 0.3 |
| 4.5 | 4.60±0.30 | 0.60 | 完全充実(d′=0) | 2.00 | 0.3 |
| 5.5 | 5.50±0.40 | 0.65 | 完全充実(d′=0) | 2.20 | 0.3 |
| 7 | 7.3±0.5 | 0.65 | 2.80 | 1.50 | 0.3 |
| 8 | 8.2±0.5 | 0.75 | 2.80 | 1.80 | 0.3 |
| 9 | 9.0±0.5 | 0.75 | 2.80 | 1.90 | 0.3 |
| 10 | 10.0±0.5 | 0.75 | 3.50 | 1.90 | 0.3 |
| 11 | 11.0±0.5 | 0.80 | 4.00 | 2.00 | 0.3 |
| 14 | 14.0±0.6 | 0.80 | 5.50 | 2.10 | 0.3 |
呼称サイズ7・10・14は、住友電工ファインポリマーの製品ページでも代表サイズとして挙げられている組み合わせだ。この3サイズだけを見ると「7→7.3mm(ズレあり)」「10→10.0mm(一致)」「14→14.0mm(一致)」となり、ここでもズレのある・なしが混在していることがわかる。
実機への当てはめ——収縮前内径の実測値から選び、防水を要する段差も確認する
現場で呼称サイズを選ぶ手順は、A系のときと基本は同じだ。まず防水封止したいケーブル端末やコネクタ部の外径を実測する。次に、サイズ表の「収縮前サイズ 内径」の列から、その実測外径よりわずかに大きい値を持つ行を探す。行が決まったら、同じ行の「呼称サイズ」列が発注時の表記になる。
ただしWシリーズでは、もう一段確認しておきたい点がある。防水対象がコネクタ付き端末のように途中で外径が変わる段差のある形状の場合、収縮前内径は「対象物の中で最も太い部分」を基準に選ぶ必要がある。二層構造の内層が溶融して段差部分の隙間を埋める仕組みだからこそ、外層自体の収縮代(収縮前内径と収縮後内径〈最大値〉の差)が対象物の最大外径をきちんと上回っているかどうかが、防水性能を左右する。呼称サイズ7を例にとると、収縮前内径7.3mmに対し収縮後内径(最大値)は2.80mmで、この間の範囲に収まる外径であれば密着が期待できるという読み方になる。
現場で間違えやすい点
一つめは、A系で見られたような「呼称サイズは一律で実測値より小さい」という思い込みをそのままWシリーズに持ち込んでしまうことだ。呼称サイズ9・10・11・14は実測内径とぴったり一致しており、A系の感覚で「表示より実際は大きいはず」と身構えると、逆に戸惑うことになる。呼称サイズが一致するかどうかは、その都度サイズ表で確認するしかない。
二つめは、収縮後内径(最大値)欄の「完全充実」を、数値の記載漏れや欠測データと誤解してしまうケースだ。呼称1.5〜5.5では、この欄に具体的な数値ではなく「完全充実」という文字が入っている。これは内層の溶融樹脂が内部の空洞を隙間なく埋め切る状態を指しており、d′(内径)がゼロになるという意味の記載であって、データが抜けているわけではない。
三つめは、「内径収縮率60%以上」という基本特性欄の数値を、サイズ表の収縮後内径(最大値)の代わりに使ってしまうことだ。60%以上という数値は製品全体を代表する目安であり、実際の選定にはサイズごとに個別規定された収縮後内径(最大値)の列を使う必要がある。この関係はA系のときと変わらない。
実務上の注意点
仕様書の「特性」表には、機械的・電気的・化学的特性の欄に「代表値は全て外層のみのデータを記載しています」という注記がある。耐電圧(AC2.5kV×60秒、破壊なし)や体積抵抗率(1.0×10¹⁴Ω・cm以上)といった数値を絶縁性能の見積もりに使う場合、これは内層を含まない外層単体の特性であることを踏まえておきたい。防水封止用途では内層の溶融樹脂による密着・充填の役割が大きい分、外層データだけで製品全体の性能を判断しないよう注意が必要になる。
また、同じ「特性」表の燃焼性欄には「可燃」と記載されている。スミチューブWは防水性・UL規格対応・CSA規格対応を謳う製品だが、難燃性を謳う製品ではない。難燃仕様が必要な用途では、別シリーズ(スミチューブB等)の仕様書を個別に確認する必要がある。
発注書や図面には、呼称サイズだけでなく収縮前内径の実測値(例:呼称7なら7.3±0.5mm)を併記しておくと、検品時の食い違いを防ぎやすい。仕様書は改版される可能性があるため、選定時には仕様書番号R4-1080が最新版かどうかも合わせて確認しておきたい。
スミチューブW(防水型)の呼称サイズ確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、呼称サイズの型番からの手配はもちろん、防水封止したいケーブル・コネクタ部の外径寸法から適合する呼称サイズを選定する相談にも対応している。段差のある端末形状の場合は、最も太い部分の外径を測ってお伝えいただくのが確実だ。
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