配電盤の更新工事で、古い仕様書の隅に「イラックススリーブ SBI300 6/15」という一行が残っていた。ブスバー(母線)の絶縁を厚肉タイプの熱収縮チューブでやり直す、という指示の意図まではわかる。だが「6/15」という数字の並びをどう読めばいいのかについては、手元の資料に説明が一切ない。
スミチューブAの呼称サイズ表示を扱ったことがあれば、こう当たりを付けたくなるかもしれない。呼称サイズというのは「実測に近いおおまかな呼び名の数字」が先に来て、そのあとに補助的な数値が続くものだ、と。だとすれば「6」がチューブの太さを決める主役の数字で、「15」はそれに付随する何かではないか——。
その読み方は、このイラックススリーブSBI300/SBI350では逆になる。
結論——「6/15」の6は収縮後、15は収縮前
スミチューブ公式サイトが公開しているSBI300・SBI350それぞれの製品ページのサイズ表を数値で突き合わせると、答えは一意に決まる。呼称サイズ「6/15」の行では、収縮前サイズ(内径最小値)が15.0mm、収縮後サイズ(内径最大値)が6.00mmと記載されている。呼称サイズの文字列に含まれる「6」は収縮後の内径、「15」は収縮前の内径であり、表記の並び順は「収縮後/収縮前」だ。表の列そのものは左から「収縮前サイズ→収縮後サイズ」の順に並んでいるのに、製品名として印刷される呼称サイズの数字は、その逆順で組まれている。
小さい数字が先、大きい数字があとに来る——この並びは、同じ住友電工ブランドのスミチューブAで採用されている「呼び径×肉厚(収縮前の参考値)」という組み方とは、性格がまったく違う。スミチューブAの呼称サイズは径ひとつと肉厚ひとつの組み合わせだが、イラックススリーブSBI300/SBI350の呼称サイズは、径ふたつ(収縮後と収縮前)を並べたものだ。同じメーカーの同じ「熱収縮チューブ」という括りの中でも、表示の設計思想が製品シリーズごとに独立している。
表示を分解する——サイズ表の全行を確認する
呼称サイズが本当にこの並びで一貫しているかどうかは、1行だけでは判断できない。SBI300の全6サイズ、SBI350の全4サイズを、それぞれの製品ページからそのまま転記する。
IRRAX®SLEEVE SBI300(対応電圧24kV以下)
| 呼称サイズ | 収縮前内径(最小値) | 収縮前肉厚(呼称) | 収縮後内径(最大値) | 収縮後肉厚(呼称) | 単長(最小値) | 角ブスバーL+T | 丸ブスバーR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 6/15 | 15.0mm | 1.10mm | 6.00mm | 2.00mm | 25m | 12〜18mm | 6.5〜12.0mm |
| 12/30 | 30.0mm | 1.10mm | 12.0mm | 2.30mm | 25m | 22〜38mm | 13.5〜25.0mm |
| 20/50 | 50.0mm | 1.10mm | 20.0mm | 2.50mm | 25m | 36〜65mm | 22.0〜43.0mm |
| 30/75 | 75.0mm | 1.10mm | 30.0mm | 2.50mm | 25m | 55〜95mm | 33.0〜63.0mm |
| 40/100 | 100.0mm | 1.10mm | 40.0mm | 2.50mm | 25m | 70〜130mm | 44.0〜86.0mm |
| 50/120 | 120.0mm | 1.30mm | 50.0mm | 3.00mm | 25m | 90〜165mm | 55.0〜105.0mm |
IRRAX®SLEEVE SBI350(対応電圧36kV以下)
| 呼称サイズ | 収縮前内径(最小値) | 収縮前肉厚(呼称) | 収縮後内径(最大値) | 収縮後肉厚(呼称) | 単長(最小値) | 角ブスバーL+T | 丸ブスバーR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/25 | 25.0mm | 1.60mm | 10.0mm | 4.00mm | 25m | 17〜28mm | 11.0〜20.0mm |
| 16/40 | 40.0mm | 1.60mm | 16.0mm | 4.00mm | 25m | 28〜45mm | 18.0〜32.0mm |
| 25/65 | 65.0mm | 1.60mm | 25.0mm | 4.00mm | 25m | 45〜67mm | 28.0〜47.0mm |
| 40/100 | 100.0mm | 1.60mm | 40.0mm | 4.00mm | 25m | 67〜102mm | 44.0〜72.0mm |
全10行を見比べると、「呼称サイズの前半=収縮後内径(最大値)」「呼称サイズの後半=収縮前内径(最小値)」という対応に例外は一つもない。20/50なら収縮後20.0mm・収縮前50.0mm、10/25なら収縮後10.0mm・収縮前25.0mmという具合に、律儀に守られている。
もう一つ、両方の表に静かに紛れ込んでいる事実がある。SBI300にもSBI350にも、「40/100」という同じ呼称サイズが存在する。内径の数字だけを見ればまったく同じ製品に見えるが、収縮前肉厚はSBI300が1.10mm、SBI350が1.60mm。収縮後肉厚に至ってはSBI300が2.50mm、SBI350が4.00mmと、1.5倍の開きがある。24kV以下用と36kV以下用という対応電圧クラスの差が、そのまま肉厚の差として表に現れている格好だ。
実機への当てはめ——呼称サイズより先に見るのはブスバー寸法
現場で型番を選ぶときの手順は、呼称サイズの数字から入らないほうが速い。まず絶縁したいブスバーの断面形状と寸法を確認する。角ブスバーであれば厚みと幅を足した「L+T」、丸ブスバーであれば半径「R」を実測する。次に、上の表の「推奨適応ブスバー」列を見て、その実測値が収まる範囲を持つ行を探す。たとえばL+Tが30mm前後の角ブスバーなら、SBI300の12/30(22〜38mm)が候補になる。
範囲を決めたら、その行の「呼称サイズ」列がそのまま発注時の型番表記になる。ここまで来て初めて、「12/30」という数字が意味を持つ——収縮前内径30.0mmのチューブをブスバーにかぶせ、加熱すると収縮後内径12.0mm(最大値)まで締まる、という寸法変化の記録として読める。
逆に、呼称サイズの数字を先に眺めて「12だから12mm角のブスバー用だろう」と当てずっぽうで選ぶと、対応電圧クラス(SBI300かSBI350か)を取り違えたまま発注が進みかねない。ブスバー寸法→推奨適応ブスバー欄→呼称サイズ、という順で表を読むのが、遠回りに見えて確実だ。
現場で間違えやすい点
一つめは、ここまで確認してきた並び順そのものの取り違えである。「6/15」を見て「6が収縮前、15が収縮後」と逆に読んでしまうと、実際よりずっと細いブスバーを想定してチューブを選んでしまう。収縮前内径15.0mmのチューブを、収縮前内径6.00mm相当のブスバーに使おうとする——という誤解が起こりやすい構図だ。スミチューブAの「呼び径が先」という感覚をそのまま持ち込むと、この逆転に気づきにくい。
二つめは、同じ呼称サイズがSBI300とSBI350の両方に存在するという事実の見落としである。「40/100」とだけメモを取って発注担当に渡すと、受け取った側はSBI300なのかSBI350なのか判断できない。対応電圧クラス24kV以下と36kV以下では絶縁に求められる肉厚がそもそも違うため、この一手間を省くと、盤の定格電圧に対して肉厚が不足した製品が届くリスクがある。仕様書や図面に呼称サイズを書き写す際は、必ず製品名(SBI300/SBI350)を併記しておく必要がある。
実務上の注意点
収縮率の数値には、確認した2つの一次資料のあいだで食い違いがある。スミチューブ公式サイトの製品ページでは「収縮率60%以上」とあるのに対し、住友電工が公開しているスミチューブ製品カタログ(p.55、PDFメタデータ上の作成日は2025年2月17日)では「収縮率/内径収縮率50%以上」となっている。どちらも同じ材質・同じ製品を説明しているはずの数値だが、参照する資料によって見える数字が違う。絶縁設計上、収縮率の数値が判断材料になる場面では、発注前にどちらの版を基準にするか確認しておいたほうがいい。
単長(最小値)は、SBI300・SBI350のどのサイズも一律25mとカタログに記載されている。短いブスバー1本のために切り売りを期待すると、最低25mからの購入になる可能性がある点は見積もり段階で押さえておきたい。
カタログにはもう一つ、サイズ表とは別に「絶縁距離試験の結果(参考値)」という表が載っている。SBI300は商用電圧12kVでインパルス電圧75kV・フラッシュオーバーしない最短絶縁距離20mm、商用電圧24kVでインパルス電圧125kV・最短絶縁距離70mm。SBI350は商用電圧36kVでインパルス電圧170kV・最短絶縁距離120mmとされている。これはあくまで参考値であって保証値ではないが、チューブの選定だけでなく、盤内でブスバー同士・ブスバーと接地部の間にどれだけの空間距離を確保すべきかを検討する際の目安になる。
イラックススリーブSBI300/SBI350の呼称サイズ確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、呼称サイズの型番からの手配はもちろん、ブスバーの実測寸法(角ブスバーのL+T、丸ブスバーのR)と設置先の定格電圧から適合サイズを選定する相談にも対応している。仕様書に呼称サイズだけが書かれていて対応電圧クラス(SBI300/SBI350)が不明な場合は、盤の定格電圧を併せてお伝えいただくのが確実だ。
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