制御盤の更新案件で、既設電源のリストをもらう。「ZWS10B-24」「ZWS50B-24」「ZWS75-24」「ZWS150B-24」。並べて眺めているうちに、一つだけ様子がおかしいことに気づく。ZWS75-24だけ「B」が付いていない。
同じ違和感は、TDK-LambdaのHWSシリーズのリストにも出てくる。「HWS50A-24」「HWS150A-24」「HWS30A-24」に混じって、「HWS300-24」だけ「A」がない。
タイプミスだろう、と最初は思う。だが、片方をタイプミスだと決めつけてもう片方も同じ理屈で片付けてしまうと、痛い目に遭う。この二つの「文字が足りない型番」は、実は成り立ちがまったく違う。
ZWS75B-24の「B」——データシートに例外はなかった
TDK-Lambda公式のZWS-Bシリーズデータシート(文書内符号a_ZWS-B)を開くと、1ページ目に「型名呼称方法」という図がある。「ZWS 150B-5/□」という並びを示し、「ZWS」がシリーズ名、「150B」が定格出力電力、「-5」が定格出力電圧、「/□」がオプション記号だと説明している。
ここで注目したいのは、「150」と「B」が別々の枠ではなく、「150B」という一塊で「定格出力電力」の枠に収まっている点だ。同じページのモデル名一覧を見ても、ZWS10B・ZWS15B・ZWS30B・ZWS50B・ZWS75B・ZWS100B・ZWS150Bと、10Wクラスから150Wクラスまでの7段階すべてに、数字の直後に「B」が付いている。10B・15B・30B・50B・75B・100B・150B。抜けている段は一つもない。
もっと踏み込んで、ZWS75B自体の仕様表を確認する。DC24V出力の行には「ZWS75B-24」とあり、最大電流3.2A、最大電力76.8W。冒頭のリストに出てきた「ZWS75-24(75W出力)」と、W数も出力電圧もぴたり一致する。違うのは型番の綴りだけだ。つまり、あのリストの「ZWS75-24」という表記は、TDK-Lambda公式データシートのどこにも存在しない型番であり、正しくは「ZWS75B-24」である可能性が高い。
なぜそう言い切れるのか——「B」が抜けた型番は一件も見当たらない
一件くらいなら、たまたま「B」を省略して呼ぶ慣習が現場にあるのかもしれない、とも考えた。だから、ZWS-Bシリーズのテクニカルデータページも見てみた。ZWS10B、ZWS15B、ZWS30B、ZWS50B、ZWS75B、ZWS100B、ZWS150Bという7つの型番ごとに、外観図・CADデータ・安全規格認証書が並んでいる。ここでも「ZWS75」「ZWS150」のような、Bを欠いた型番の掲載は一件もなかった。
さらにデータシートの脚注には「※10〜50W品は、新規設計非推奨です。」という一文がある。ZWS-Bシリーズのうち10W〜50Wクラスは、すでに新規設計での採用が推奨されていない。TDK-Lambdaのカタログ一覧ページを見ると、同じ10〜50Wの容量帯には「小型・低ノイズ・低漏洩電流」をうたうZWS-Cシリーズ(ZWS10C・15C・30C・50C)が現行品として並んでいる。75W・100W・150Wクラスにはこの新規設計非推奨の注記がなく、こちらはZWS-Bのまま現行ラインアップに残る。同じ「ZWS-Bシリーズ」という名前の中に、すでに世代交代が進んだ帯と、まだ現役の帯が同居している格好だ。
ここまでの材料を並べると、結論はそう複雑ではない。ZWS75-24という表記は、TDK-Lambda公式の型番規則からは説明がつかない。おそらくは、どこかの段階で「B」の一文字が抜け落ちた表記の誤りであり、正しい型番はZWS75B-24だと考えるのが妥当だ。
HWS300-24の「A」——探しても、そもそも無かった
同じ調子でHWSシリーズにも当たりを付けた。HWS50A-24、HWS150A-24、HWS30A-24には「A」が付いている。ならばHWS300-24も、本当は「HWS300A-24」の書き間違いなのではないか。
その予想は、データシートを開いた瞬間に崩れた。
TDK-Lambda公式のHWSシリーズデータシート(文書内符号a_HWS、300W〜1800W向け)には、こう書いてある。「HWS 300-5/□□」。〔HWS300〜1800モデル〕という注記付きで、HWSがシリーズ名、300が出力電力タイプ、-5が定格出力電圧、/□□がオプション記号だと説明されている図だ。この図のどこにも、「A」を挿し込む枠がない。300W以上のこのシリーズは、型番に「A」を含まない設計として、最初から成立している。
「A」が付くのは、まったく別のデータシートで案内されている「HWS-Aシリーズ」(15W〜150W)だけだった。HWS15A、HWS30A、HWS50A、HWS80A、HWS100A、HWS150A。こちらは6クラス全部に律儀に「A」が付いている。HWS30A-24は最大電力31.2W、HWS50A-24は52.8W、HWS150A-24は156.0W。冒頭のリストに出ていたHWS30A-24(31W)・HWS50A-24(50W)・HWS150A-24(150W)と符合する。
つまりHWSシリーズには、最初から二つの型番体系がある。15W〜150Wの帯には「A」が付く「HWS-A」シリーズ、300W〜1800Wの帯には「A」が付かない「HWS」シリーズ。HWS300-24に「A」がないのは、書き忘れではなく、その帯を担当するシリーズの型番規則そのものに「A」という文字が存在しないからだ。
同じ「1文字足りない」でも、正体は正反対
ここまでをまとめると、見た目はそっくりな二つの「型番の欠落」が、まったく逆の理由で起きていたことになる。
ZWS75-24は、TDK-Lambda公式データシートの型名呼称方法・モデル名一覧・仕様表のどこを見ても、対応する「B」なしの型番が存在しない。10Wクラスから150Wクラスまでの全段が「B」を伴う中で、75Wクラスだけが例外的に「B」を落とす理由も見当たらない。表記の誤りと判断するのが自然だ。
HWS300-24は逆に、公式データシートの型名呼称方法の図そのものが「A」を含まない構造になっている。300W以上を担当する「HWS」シリーズと、15W〜150Wを担当する「HWS-A」シリーズは、型番の見た目こそ近いが、公式資料の上では最初から別のシリーズとして案内されている。「A」の不在は誤記ではなく、シリーズが違うという事実の表れだった。
現場で間違えやすい点
「B」「A」の有無だけで容量帯を推測しない。 ZWS-Bシリーズは75W〜150Wクラスがまだ現行品だが、10W〜50Wクラスは新規設計非推奨で、同容量帯にはZWS-Cという現行世代が別に存在する。図面に「ZWS30B-24」とだけ書かれていても、新規の制御盤なら一度ZWS-Cへの置き換えを検討する余地がある。
HWS-AとHWSは、冷却方式まで違う別シリーズだと意識する。 HWS-Aシリーズ(15W〜150W)はデータシート上、全クラスが自然空冷。ファンによる強制空冷が標準仕様になるのは、300W以上のHWSシリーズのほうだ。設置場所の通風条件を検討するとき、「HWS」という3文字の一致だけで両シリーズを同一視すると、冷却方式の前提を取り違える。
型番を転記するときは、末尾の一文字まで公式資料と突き合わせる。 ZWS75-24のような欠落は、見積書や配線図を何度も転記するうちに紛れ込みやすい。既設品の型番が判読しにくい場合は、現物の銘板写真とデータシートの型名呼称方法の図を並べて確認したほうが確実だ。
TDK-Lambda製ZWS・HWSシリーズの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、TDK-Lambda製ZWS・HWSシリーズの型番確認から、旧世代品と現行世代品(ZWS-BとZWS-C、HWS-AとHWS)の照合、代替品選定までのご相談を見積フォームで受け付けている。図面や現物の型番表記に自信が持てない場合は、写真を添えてもらえれば公式データシートと突き合わせて確認する。
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