現場で新旧の分電盤を並べて型番を見比べたことがあるだろうか。片方は「MAG36183」、もう片方は「MALG36183」。数字の並びはどちらも「36183」で寸分違わない。違うのは「L」の一文字だけだ。
見落としそうになる、と言いたいところだが、実際には見落としてはいけない一文字である。テンパール工業の公式サイトで型式「MAG」の商品一覧を確認すると、掲載されているすべての品番でリミッタースペース欄が「なし」と表示される。ところが型式「MALG」の一覧を開くと、今度はすべての品番が「付」になる。品番「MALG33042」と「MAG33042」は数字部分が完全に同じ「33042」なのに、Lが入るかどうかだけで、盤の中にリミッター(電流制限器)を収めるスペースがあるかどうかという、設置の前提そのものが分かれている。
骨格──MA(L)G+固定の「3」+容量コード+回路コード
テンパール工業の住宅用分電盤「パールテクト」MAG/MALGシリーズの型番は、次の順で桁を積み上げている。
先頭は扉の有無とリミッタースペースの有無を表す部分だ。扉付は「MA」、扉なしは「YA」、そこにリミッタースペース付きなら「L」が挟まり、最後に「G」が続く。扉付・リミッタースペースなしなら「MAG」、扉付・リミッタースペース付きなら「MALG」というわけだ。
続く「3」は、公式サイトで確認できたすべての品番――30A帯から100A帯まで――で一貫して現れる固定の数字だった。個別商品ページで相線式を確認すると「単3」(単相3線式)と記載されており、住宅用分電盤がほぼ単相3線式である以上、この「3」が相線式を示していると考えるのは自然だ。ただし「この3は単3を意味する」と明言した一次資料そのものは見当たらなかったので、確度の高い推測にとどめておく。
その次に来るのが主幹容量のコードだ。容量(A)を10で割った値がそのままコードになる。30A→3、40A→4、50A→5、60A→6、75A→7。ここまでは規則的だが、100Aだけは10÷10=1にはならず、公式の品番一覧では「MAG310142」のように「10」という2桁がそのまま使われる。上限の容量帯だけ桁が増える理由は、テンパール工業の公開資料からは読み取れなかった。
残りは分岐回路数(2桁、ゼロ埋め)と予備回路数(1桁)だ。ただし予備回路数が0のときは、その桁ごと消える。「MAG310142」(14分岐+予備2)と「MAG31016」(16分岐+予備0)を並べると、後者には予備回路の桁が最初から存在しない。
分解してみる
品番「MALG33042」を分解すると、「MA」(扉付)+「L」(リミッタースペース付)+「G」+「3」(単3)+「3」(主幹30A)+「042」(分岐4回路+予備2回路)となる。公式の品番一覧でもリミッタースペース欄は「付」、主幹容量は「30A」、分岐回路数は「4」、予備回路数は「2」と、数字の並びに寸分違わず対応している。
100A帯も同じ規則で読める。「MAG310142」なら「MA」+(Lなし)+「G」+「3」+「10」(主幹100A)+「14」(分岐14回路)+「2」(予備2回路)だ。実際に公式ページで確認すると、分岐回路数14・予備回路数2・主幹容量100Aと表示されており、狂いはない。
扉の有無も同じ数字列の上で切り替わる。「住宅用分電盤パールテクト エコモデル」のカタログには、扉付の品番「MAG33042M」(標準価格21,000円)と、扉なしの品番「YAG33042M」(標準価格19,700円)が並んで掲載されている。主幹30A・分岐4回路・予備2回路という中身は同じで、外形寸法もタテ320mm×ヨコ313mm×フカサ103mmと共通だ。先頭を「MA」にするか「YA」にするかだけで、扉が付くかどうかと、1,300円の価格差が決まる。
ここまでは、規則を知っていれば追える範囲の話である。
驚いたのは、同じ数字列が二つの意味を持っていたことだ
型式「MAG」の一覧を見ていて、価格欄が空欄のまま「【旧商品】パールテクト」と注記された行に気づいた。品番は「MAG33042」「MAG34042」。数字だけを見れば、これは先ほど分解した「30A・4分岐・予備2」「40A・4分岐・予備2」とまったく同じ構成である。
一方、別のカタログPDF「住宅用分電盤パールテクト エコモデル」の商品ラインナップ表には、「MAG33042M」「MAG34042M」という品番が現行品として載っている。数字部分「33042」「34042」は廃番になった旧商品とまったく同じだ。違うのは末尾に付いた「M」の一文字だけである。
つまりテンパール工業は、同じ数字の並びを使い回しながら、旧世代の標準タイプ(末尾に何も付かない)を廃番にし、末尾に「M」を足した樹脂使用量削減・小型化済みの「エコモデル」へ世代交代させている。数字が意味する「主幹容量・分岐回路数・予備回路数」という骨格自体は変えず、末尾一文字だけを新しい世代の目印にした、ということだ。
似た例はもう一つある。「MAG310142」と「MAG310142F」も数字部分は「310142」で完全に一致するが、公式の品番一覧では前者が施工方式「露出・半埋込形」・標準価格72,500円、後者が施工方式「埋込形」・標準価格82,100円と表示され、9,600円の価格差がある。「MAG310142D」まで来ると、今度は付属機器取付スペースの欄が「大型付属機器取付スペース」に変わる。数字の並びは容量と回路数を語っているだけで、末尾のアルファベット一文字が施工方式や機能の有無という、まったく別の情報を担っている。
なぜ末尾に一文字を足すという設計にしたのか
Lは先頭寄り(MA(L)G)に、MやFやDは末尾に置かれている。これは推測の域を出ないが、リミッタースペースの有無は電力会社との契約方式に直結し、発注段階の最初期に確認すべき事項だから先頭近くに置かれ、一方でエコモデルへの世代交代や施工方式・付属スペースといった違いは、既存の容量・回路数の体系を壊さずに後から選択肢を追加できるよう、末尾に増設する形をとった――という説明は筋が通る。ただし、この配置の意図をテンパール工業自身が説明した資料は見つかっていない。あくまで観察から導いた仮説として扱ってほしい。
現場での注意点
数字の並びだけを見て「同じ構成の製品だ」と判断するのは早い。「33042」という5桁は、廃番になった旧商品にも、現行のエコモデル(末尾M)にも使われている。見積り・発注の際は、末尾にMが付くかどうか、Lが挟まっているかどうかまで含めて品番全体を照合する必要がある。
100Aだけ容量コードが2桁になる点も、桁数を数えて回路数を逆算しようとすると読み違えの原因になる。「31016」を見て「3・10・1・6」と細かく割ってしまうと、予備回路数を誤読しかねない。まず容量コードが1桁か2桁かを確定させてから、残りを分岐回路数・予備回路数に振り分ける順序で読むほうが安全だ。
そして、IT2C2EV4やK3、N1のような複数機能が重なった接尾辞は、公式サイトにも一覧化された凡例が見当たらなかった。太陽光・IH・エコキュート・EV/PHEV回路など、対応機能が増えるほど接尾辞も長く複雑になる傾向があるが、正確な仕様は品番一覧の該当行、または個別商品ページで確認するのが確実だ。
テンパール工業の住宅用分電盤の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の銘板や既存図面から読み取ったMAG/MALGの品番の仕様確認から、リミッタースペースの有無や機能サフィックスを踏まえた発注仕様の確定までのご相談を見積フォームで受け付けている。
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