外形寸法図のPDFを開くと、図の隅に小さく「T2PG12S」と書かれている。もう1枚めくると「TPPG12S」。よく似ているのに1文字違う。さらにめくると「T2PG25LS」「T2PG25S」「T2PG25H」——同じ「25」という数字を背負った差込台が3種類も並んでいる。制御盤の更新工事で、古い盤に載っていたTemBreak PROの遮断器を新しいTemPlug70対応品に差し替える。その見積のために、この型番をそのまま発注書に書き写せばよいのだろうと、誰もが最初はそう思う。
寺崎電気産業の公式カタログ(カタログNo.‘25-T77K、2025年4月発行)を最後まで読むと、その前提がそもそも違っていたことに気づく。「T2PG12S」という記号は、実際の発注書のどこにも書く欄がない。以下、この型番がどう組み立てられているのか、そしてなぜ型番通りに発注してはいけないのかを、公式資料に基づいて確認していく。
結論——型番は「差込台を区別するための社内記号」であり、発注の単位ではない
TemPlug70の型番(差込台形式)は、おおまかに「プレフィックス(T2/TP)+PG+フレームの数字(05/12/25/40/63)+末尾記号(なし/S/LS/H/L)」という構成でできている。PGは公式カタログの発注ページに明記された「TemPlug70」というシリーズそのものの略称で、これは固定だ。数字はおおむねブレーカのフレームサイズに対応する。ここまでは、他社の遮断器の型式解読記事で見てきた「フレーム+クラス記号」の組み立てと大差ない。
違うのは、この型番自体が発注の単位になっていない点だ。公式カタログ11ページの「ご発注の方法」には、TemPlugを発注する際に指定すべき項目として「本体形式」「極数」「TemPlugのシリーズ略称」「接続タイプ(2極の場合)」の4つが挙げられ、「差込台単品の供給はしていませんのでTemPlugの個別形式(差込台形式)の記入は不要です」と明記されている。つまり「T2PG12S」という記号は、カタログの適用機種表や外形寸法図の中でどの差込台を指しているかを識別するための、いわば型式図面上の管理番号であって、見積書や注文書に書くべき記号は、あくまでブレーカ本体の形式(例:PS125-NF)と極数、そして「PG」という略称の組み合わせだ。この前提を押さえた上で、型番そのものの構造を分解していく。
型番の分解——プレフィックス・PG・フレーム数字・末尾記号
具体例として「T2PG12S」を分解する。
T2(プレフィックス) ブレーカの系統を区別する記号だが、公式カタログには「T2」「TP」という文字自体の意味を説明した凡例はない。確認できるのはあくまで対応関係で、125Aフレーム帯では、S100-GF・S125-GFという系列にはT2PG12Sが、PS125-NF・PS50-PF・PS125-PFという系列にはTPPG12Sが、それぞれ排他的に対応している。400Aフレーム帯でも同様に、E400-NFにはT2PG40Sが、PS400-CF・PS630-CF等にはTPPG40Sが対応する。「TP」という2文字目のPが、対応するブレーカ形式に含まれる「PS」の頭文字Pと符合しているようにも見えるが、これは筆者の推測であり、カタログに明記された説明ではない。
PG(固定部) 公式カタログの発注方法ページに「TemPlugのシリーズ略称 TemPlug70→PG」と明記されている。TemPlug70という差込台シリーズそのものを表す固定の2文字で、どの型番にも必ず含まれる。
12(フレームの数字) 適用機種表とブレーカ配列例を照らすと、05は50Aフレーム、12は125Aフレーム、25は250Aフレーム、40は400Aフレーム、63は630Aフレームにおおむね対応する。ただし後述の通り、この対応は常に一対一ではない。
S(末尾記号) 同じフレーム数字を持つ差込台の中で、対応するブレーカの系列やサブレンジを区別する記号。「なし・S・LS・H・L」の組み合わせが存在するが、この記号自体の意味を説明した凡例もカタログにはなく、対応するブレーカ形式群から逆算して区別するしかない。
実機への当てはめ——同じ「25」でも3種類、同じ「50/100/125AF」でも4種類
公式カタログ2ページの適用機種表には、次の11種類の差込台形式が掲載されている。
| 差込台形式 | 極数 | 主な適用ブレーカ(一部抜粋) |
|---|---|---|
| T2PG05LS | 2P/3P | S50-SF、S125-SF(15〜50A設定)、ZS50-SF、ZS100-SM(16〜45A) |
| T2PG12LS | 2P/3P | S125-SF(60〜125A設定)、S125-SN、ZS125-SF(60〜125A) |
| T2PG12S | 2P/3P | S50-GF(3Pのみ)、S100-GF、S125-GF、ZS100-GF、ZS125-GF |
| TPPG12S | 2P/3P | PS125-NF、PS50-PF、PS125-PF、PS125-NE、PS125-PE、PS125-NN |
| T2PG25H | 3Pのみ | H100-NF、H125-NF、H225-NF(いずれも「特殊で適用可能」の注記付き) |
| T2PG25LS | 3Pのみ | E250-SF、S250-SF、PS250-PF、PS250-NE、PS250-PE、S250-SN、PS250-NN |
| T2PG25S | 3Pのみ | ZAS225-GF、ZAS250-GF、ZS225-GF、ZS250-GF(漏電遮断器のGF系のみ) |
| T2PG40S | 3Pのみ | E400-NF、ZAE400-NF、ZAS400-NF、ZAS400-GF |
| TPPG40S | 3Pのみ | PS400-CF、PS400-NF、PS400-GF、PS630-CF、PS630-NF、PS630-GF |
| T2PG40L | 3Pのみ | E400-SF、ZAE400-SF |
| T2PG63S | 3Pのみ | S630-CF、S630-NF、S630-RF、S630-PF、ZAS630-CF、ZAS630-NF |
さらに、10ページの「ブレーカ配列例」では、これら11形式が物理的なフレームサイズ区分によって次の4グループにまとめられている。
- 50/100/125AF(2P・3Pあり)……T2PG05LS、T2PG12LS、T2PG12S、TPPG12Sの4形式
- 225/250AF(3Pのみ)……T2PG25LS、T2PG25Sの2形式
- 400AF(3Pのみ)……T2PG40S、TPPG40Sの2形式(T2PG40Lは別掲)
- 600/630AF(3Pのみ)……T2PG63Sの1形式
この配列表を見て気づくのは、225AF以上のフレームには2極品の差込台がそもそも存在しないという点だ。50/100/125AFのグループだけが2極・3極の両方をラインアップしており、それより上のフレームは一貫して3極専用になっている。低圧幹線の主幹用に250A以上のプラグイン式遮断器を検討する際、2極品を前提に盤を設計してしまうと、この時点で型式が見つからないことになる。
現場で間違えやすい点
その1:「T2PG12S」を発注書に書いてしまう。 繰り返しになるが、公式カタログは差込台単品を供給しておらず、差込台形式そのものは発注の単位ではない。見積・発注の際に指定すべきは、ブレーカ本体の形式(PS125-NFなど)・極数・シリーズ略称「PG」・(2極品のみ)接続タイプの4点だ。図面や資料の中で「T2PG12S」という記号を見つけたとしても、それは「どの差込台と組み合わさる仕様なのか」を確認するための手がかりであって、注文の宛先ではない。
その2:数字が同じでも中身が違う。 「05」と「12」はどちらも公式カタログ上「50/100/125AF」という同じフレーム区分に属しているが、両者は排他的な関係にある。とりわけ紛らわしいのは、S125-SFという同一のブレーカ形式が、電流設定によって対応する差込台が変わる点だ。15〜50Aの設定であればT2PG05LS、60〜125Aの設定であればT2PG12LSが対応する。ブレーカのフレームだけを見て「125フレームだからT2PG12LSだろう」と判断すると、実際の電流設定次第で外れる可能性がある。
その3:「25」という数字だけでは、100AFの遮断器が混じっていることに気づけない。 T2PG25Hは、本来100AF・125AF・225AFという別々のフレームに属するH100-NF・H125-NF・H225-NFという限流ブレーカに対応する差込台だ。カタログ上も「特殊で適用可能な機種」という注記が付き、外形寸法図も「ご照会ください」扱いで本カタログには掲載されていない。数字の「25」を額面通り「250Aフレーム用」とだけ理解していると、この形式の存在自体を見落とす。
その4:T2とTPの使い分けは、すべてのフレームにあるわけではない。 T2/TPという2系統の使い分けが存在するのは125Aフレームと400Aフレームだけで、250Aフレームには対応する2系統が存在せず、T2PG25LSという1つの差込台がE250・S250・PS250という複数系列のブレーカをまとめて受け止めている。「TPPG25S」のような形式は、この11形式のどこにも存在しない。
実務上の注意点
見積・発注段階で押さえておくべきなのは、TemPlug70対応品を手配する際に必要な情報は「差込台の型番」ではなく「ブレーカ本体の形式・極数・接続タイプ」だという点に尽きる。2極品を発注する場合は、公式カタログ11ページに図示されている接続タイプA・B・Cのいずれかを必ず指定する必要がある。ON(電源側)を左に取り付けるか右に取り付けるかによって、負荷側の相順(R-S(N)接続かT-S(N)接続か、あるいはR-T接続か)が変わる仕様になっており、指定を誤ると盤内の相順が揃わない。3極品にはこの接続タイプの指定は不要だ。
盤設計の段階では、ブスバーピッチ70±0.5mm、ブスバー取付高さ27.5±1mmという2つの寸法が「重要な寸法」として各外形寸法図に繰り返し注記されている。主母線の仕様も、板厚10mmでフルラウンド形R5または角形R0.9に統一する必要があり、これ以外の形状のブスバーには対応しない。既設盤を更新する場合は、盤の母線仕様がこの規格に適合しているかどうかも、ブレーカ形式の選定と同時に確認しておいたほうがよい。
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