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端子ねじの角座金・平座金と電線押さえ金具の役割|同じトルクでも電線の潰れ・緩みが変わる理由

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

制御盤の定期点検で、担当者が首をかしげた。半年前、規定トルクをきっちり守って締め付けたはずの端子ねじが、また緩んでいる。トルクドライバーは使った。合いマークも入れた。締め付けの手順に落ち度はなかったはずだ。それなのに、振動の続くポンプ盤の端子だけが、決まって数か月後には指で回るようになる。

もう一つ、別の現場で見つかった話がある。更新工事で撤去した制御盤の端子台をばらしてみると、より線の素線が扇のように広がって潰れていた。ねじは確かに規定トルクで締まっていた形跡がある。締めすぎたわけではない。それでも電線は変形し、接触面の一部だけに力が集中した跡が残っていた。

締付トルクの管理は、もちろん重要だ。呼び径ごとの規定トルク値やトルクドライバーの正しい使い方については、本サイトの別記事で詳しく扱った。だが、この二つの現場の違和感は、トルクの数値だけでは説明がつかない。同じ「規定トルクで締めた」はずのねじが、なぜ一方は緩み、もう一方は電線を潰すのか。

答えの一端は、ねじそのものではなく、ねじと電線の間に挟まっている小さな部品にある。座金と、電線を押さえる金具だ。

ねじの頭が電線に直接当たると何が起きるか

端子ねじの役割を「電線を締め付けて固定する」とだけ理解していると、見落としてしまう問題がある。ねじの頭は、本来平らな円盤状の面で、電線を押しつぶす方向に力をかけるだけの形をしている。この面を、そのまま撚り線や単線に直接押し当てて締め込むとどうなるか。

撚り線であれば、細い素線の束が均一に潰れてくれる保証はない。ねじの回転にともなって素線が外側へ押し流され、広がっていく。ひどい場合は素線の一部がねじ頭の外へはみ出したまま締め込まれ、電線が変形した状態のまま固定されてしまう。単線であっても事情は変わらない。ねじ頭のエッジが芯線に食い込み、断面を歪ませたまま締結が完了することがある。

この状態でも、電気は流れる。だが電線と端子の接触面積は、設計者が想定していたよりずっと狭い。狭い面積に電流が集中すれば接触抵抗は上がる。トルクドライバーが示す数値は「ねじを回すのに要した力」であって、「電線と端子板がどれだけ均等に密着しているか」までは教えてくれない。ここに、締付トルクの管理だけでは埋まらない隙間がある。

角座金——凹凸で素線をつかまえる四角い金具

この隙間を埋めるために、端子台・ブレーカーの端子ねじの多くには、あらかじめ座金が組み込まれている。フジコン株式会社の技術資料は、ナベ小ねじと四角形の角座金でできた「フリー端子ねじ」という構造を紹介している。新日本ファスナー工業の資料によれば、この角座金の底部には凹凸(ビード)が設けられており、その凹凸が圧着端子や電線の締付け部に対して締付け力を平均的に加える働きをする。フジコン株式会社は角座金の役割を「食い込み防止、気密性の保持」と整理している。

つまり角座金は、単に「電線を挟むための板」ではない。表面の凹凸そのものが、締め込まれてくる素線を物理的にとらえ、外側へ逃げようとする動きを止める役割を持っている。撚り線の素線がばらける方向へ動こうとする力を、座金の凹凸が受け止める——ねじ頭が直接当たっていたら起きていたはずの「押し流し」を、角座金が肩代わりしているわけだ。しかもフジコン株式会社によれば、こうした座金はねじの製造段階からビスに組み込まれており、外れない構造になっている。座金だけを紛失したり、締結のたびに位置を合わせ直したりする手間が生じないのは、この一体構造があってこそだ。

平座金——荷重を面で受け止め、集中を散らす

角座金と並んでよく使われるのが平座金だ。サトーパーツ株式会社の資料は、平ワッシャーと組み合わされた「セムスねじ」という構造を紹介しており、この構成は主に圧着端子を用いた配線に適しているとされる。株式会社明工社の資料でも、座金組込みねじの中で「平座金で締付力を受け止め、丸型圧着端子に伝え」るという役割分担が説明されている。

角座金が素線をとらえる凹凸に主眼を置くのに対し、平座金はむしろ、締付け力そのものを面で受け止めて散らすことに主眼がある。考えてみれば当然の話で、ねじ頭という点に近い狭い面積に力を集中させたまま締め込めば、電線側だけでなく端子台の樹脂部分にも過大な面圧がかかる。座金を挟んで接触面積を広げれば、同じ締付トルクでも単位面積あたりの圧力は下がる。締めすぎによる端子台本体の割れや、電線の潰れは、この「面圧が一点に集中する」という同じ原因から生じている場合が多い。角座金と平座金は役割の重心こそ違うが、どちらも「同じトルクをかけても、電線が受ける実際の圧力は座金の有無と形状で変わる」という一点でつながっている。

電線押さえ金具——圧着端子ごと固定する専用座金という発想

ここまでの角座金・平座金は、電線や圧着端子とねじの間で圧力を整える部品だった。もう一段踏み込んで、圧着端子そのものを面で固定し続けるために作られた座金もある。

株式会社明工社が紹介する「セフティーワッシャ付端子ねじ」は、まさにこの課題に特化している。特殊な形状の座金(セフティーワッシャ)が圧着端子をしっかり押さえ、緩み止め効果を発揮する構造だ。丸形圧着端子はねじを完全に緩めない限り抜け落ちないとはいえ、振動でリング部分が座金上でわずかに動くだけでも、接触面はじわじわと荒れていく。セフティーワッシャは、圧着端子という「部品全体」を面でつかまえ、締付力を過不足なく伝え続けるために設計された、いわば電線押さえ金具の一種だ。

ただし、座金や押さえ金具の設計がどれだけ工夫されていても、電線の端末処理そのものが甘ければ話は別だ。同じ明工社の資料は、撚り線を圧着端子なしでそのまま挟み込む「はさみ込み接続」や「巻き締め接続」について、「電線のほつれによるねじの緩みが発生し、発熱や発火のおそれがあります」と明記し、可能な限り圧着端子接続を推奨している。座金・押さえ金具は電線を挟む圧力を整えてくれるが、そもそも素線がまとまっていない電線を挟んでいたのでは、整えるべき対象が最初から崩れている。

振動対策のばね座金・歯付座金——「効く」とは限らない、という研究がある

フリー端子ねじに角座金と組み合わせて使われる波形のばね座金を、フジコン株式会社は「スパック」という通称で呼んでいる。スパック付きのものは波形状になっているぶん、スパックなしに比べてばね性が高く、ゆるみ止めの効果を発揮するとされる。歯の付いた座金(歯付座金)も同様に、座金の縁のギザギザが座面に食い込んで摩擦を上げ、回転を防ぐ働きを持つ。ねじ締結技術ナビ(ハードロック工業)の資料でも、ばね座金は接合面のなじみ・へたりによる軸力低下を補い、切断部分が座面に食い込むことで戻り回転を防ぐ、と位置づけられている。

現場の理屈としては筋が通っているように聞こえる。だが、この「ばね座金は緩み止めに効く」という理解には、実は異論がある。しぶちょー技術研究所が紹介している神奈川大学の実験(2006年)では、皿ばね座金には軸力低下の抑制効果が確認できた一方、食い違い型のばね座金には緩み止め効果が確認できず、むしろ座金なしより緩みが大きかったという結果が出ている。さらに東京大学が2007年に行った有限要素法による解析では、ばね座金は「緩み止めどころか緩みを促進する効果がある」という、直感に反する結論まで示されている。

すべてのばね座金が無意味だと言いたいわけではない。効果が確認できた皿型のケースでも、その効果はばねとしての弾性ではなく、座金による摩擦直径の増大という、普通の座金と同じ理屈によるものだったという指摘もある。要するに、ばねが伸び縮みして緩みを吸収してくれる、という素朴なイメージのまま座金の形状を選ぶのは危うい。振動対策として座金を追加するなら、その座金がどの原理で効いているのかを、メーカーが示す試験結果や適用実績まで確認したほうがいい。

座金・押さえ金具を省略すると、現場で何が起きるか

角座金や電線押さえ金具のない端子ねじで、撚り線を直接締め付けた場合に典型的に起きるのが、素線の一部が座金の外へはみ出したまま気づかれずに締め込まれる不具合だ。はみ出した素線は隣の端子や金属フレームに接触し、短絡の原因になる。仮に短絡まで至らなくても、はみ出した分だけ本来の導体断面積が減り、同じ電流を流したときの発熱が増える。

平座金を省いて樹脂製の端子台に直接ねじ頭を押し当てた場合は、締付トルクが同じでも面圧が集中し、端子台本体の座面が陥没したり割れたりする不具合につながりやすい。座面が陥没すれば、締付け直後は規定トルクが確保できていても、時間とともに締結力が抜け落ちていく。振動の多い設備でこれが起これば、点検のたびに増し締めが必要になるだけでなく、増し締めを重ねるうちにねじ山や座面がさらに傷んでいくという悪循環に入る。東朋テクノロジーのFAQが、振動・衝撃のある場所での定期的な増し締めを求めているのも、座金・押さえ金具があってなお緩みが避けきれない、という前提に立った運用上の手当てだ。

サイズ・材質選定の基本

座金や押さえ金具は、ねじのサイズに従属して決まる部品ではあるが、選定を誤りやすい点がいくつかある。

一つは、座金の穴径・外径と圧着端子側のサイズを対応させることだ。圧着端子は「R5.5-5」のように、適用電線呼び(この例では5.5mm²のより線)とスタッド径の呼び(この例ではM5)の組み合わせで型番が決まる。電線呼びごとに対応するねじサイズと取付穴径には幅があり、たとえば電線呼び1.25の端子はM3〜M5、取付穴径3.2〜5.3mmの範囲で複数展開されている。座金の外径に対して圧着端子のリング径が小さすぎれば、座金の凹凸がリングの外側にはみ出た状態で締まり、期待した圧力分散が働かない。逆に座金に対してリングが大きすぎれば、座金の効果がリングの一部にしか及ばない。ねじ径だけでなく、実際に使う圧着端子の型番まで踏まえて座金のサイズを確認したい。

もう一つは材質だ。フジコン株式会社の資料によれば、端子台に使われる材料は銅・黄銅・リン青銅・鉄・ステンレス鋼が中心で、表面処理としてニッケルメッキ・スズメッキ・三価クロメートが施される。導電性が求められる導電金具側には黄銅(ニッケルメッキ)、機械的な強度と防錆性が求められるねじ・座金側には鉄(亜鉛メッキ・クロメート処理)が使われる組み合わせが一般的に見られる。役割が違う部品に同じ材質を選ばないという、当たり前だが見落とされやすい前提がここにある。既存の端子台やブレーカーの座金・押さえ金具を交換する場合は、この役割分担を崩さないよう、メーカー純正または同等品を選ぶのが安全だ。

よくある質問

Q. 角座金と平座金、どちらを選べばいいですか? A. 多くの端子台・ブレーカーでは、どちらを使うかはねじにあらかじめ組み込まれた形で製品ごとに決まっており、現場で自由に選べるものではない。角座金は撚り線・単線を直接締め付ける構造の端子(フリー端子ねじ)に、平座金は圧着端子を介して接続する構造の端子(セムスねじ)に組み込まれていることが多い。既設設備の座金を交換する場合は、元の端子がどちらの接続方式を前提にしているかを先に確認する。

Q. 座金がもとから付いていない古い端子台に、後から座金を追加してもいいですか? A. 端子台のねじ穴・ねじ長さは、座金なしの状態を前提に設計されていることが多く、座金を追加するとねじの掛かり代(ねじ山がかみ合う長さ)が不足したり、ねじが最後まで締まらなくなったりする可能性がある。座金の追加は端子台メーカーに適合を確認したうえで行うのが安全で、自己判断での改造は避けたい。

Q. ばね座金を追加しておけば、振動による緩み対策としては万全ですか? A. 万全とは言えない。本文で触れた通り、ばね座金(特に食い違い型)の緩み止め効果には、神奈川大学や東京大学の研究で否定的な結果が出ている。振動が問題になる箇所では、ばね座金の追加だけに頼らず、定期点検での増し締めや、ねじそのものを使わないプッシュイン式(スプリング式)端子台への切り替えもあわせて検討する価値がある。

Q. 圧着端子を使わずに撚り線を直接端子ねじで締め付けても大丈夫ですか? A. 端子の構造による。フリー端子ねじのように角座金で素線を押さえる前提で設計された端子であれば可能だが、明工社の技術資料でも、撚り線を圧着端子を使わずにそのまま挟み込む接続方法は「電線のほつれによるねじの緩みが発生し、発熱や発火のおそれがあります」と指摘されており、可能な限り圧着端子(できれば棒端子)を使った接続が推奨されている。


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よくある質問

角座金と平座金、どちらを選べばいいですか?

多くの端子台・ブレーカーでは、端子ねじにあらかじめ組み込まれた形で製品ごとに決まっており、現場で自由に選べるものではありません。角座金は撚り線・単線を直接締め付ける構造の端子(フリー端子ねじ)に、平座金は圧着端子を介して接続する構造の端子(セムスねじ)に組み込まれていることが多いという傾向があります。既設設備の座金を交換する場合は、元の端子がどちらの接続方式を前提にしているかを先に確認してください。

座金がもとから付いていない古い端子台に、後から座金を追加してもいいですか?

端子台のねじ穴・ねじ長さは、座金なしの状態を前提に設計されていることが多く、座金を追加するとねじの掛かり代(ねじ山がかみ合う長さ)が不足したり、ねじが最後まで締まらなくなったりする可能性があります。座金の追加は端子台メーカーに適合を確認したうえで行うのが安全で、自己判断での改造は避けてください。

ばね座金を追加しておけば、振動による緩み対策としては万全ですか?

万全とは言えません。本文で触れた通り、ばね座金(特に食い違い型)の緩み止め効果には、神奈川大学や東京大学の研究で否定的な結果が出ています。振動が問題になる箇所では、ばね座金の追加だけに頼らず、定期点検での増し締めや、ねじそのものを使わないプッシュイン式(スプリング式)端子台への切り替えもあわせて検討する価値があります。

圧着端子を使わずに撚り線を直接端子ねじで締め付けても大丈夫ですか?

端子の構造によります。フリー端子ねじのように角座金で素線を押さえる前提で設計された端子であれば可能ですが、明工社の技術資料でも、撚り線を圧着端子を使わずにそのまま挟み込む接続方法は「電線のほつれによるねじの緩みが発生し、発熱や発火のおそれがあります」と指摘されており、可能な限り圧着端子(できれば棒端子)を使った接続が推奨されています。

参考文献・出典

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

電線の接続で「電気抵抗を増加させないこと」「機械的に十分な強さで接続すること」という条件は、ここで扱う座金・電線押さえ金具の役割と直結しています。ねじを締めるだけでなく、何が電線を挟んでいるかまで見ておくと理解が深まります。

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