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変圧器の絶縁抵抗測定はどこを測るべきか|一次-二次間・一次-大地間・二次-大地間、3方向すべてを測る理由

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

点検報告書に「絶縁抵抗測定:良好」と書いた担当者は、嘘をついたつもりはなかった。一次側(高圧巻線)を絶縁抵抗計で当たり、指示計は振り切れるように高い値を示した。数値だけ見れば文句のつけようがない。報告書にはその1行だけが残り、変圧器は「異常なし」のまま次の点検周期へ送られた。

問題は、それから数か月後に起きた。今度は二次側(低圧巻線)の絶縁が原因の故障だった。一次側は確かに健全だったのだ。だが、その健全さは二次側の状態について何も語っていなかった。同じ絶縁抵抗計で、同じ変圧器を、同じ日に測っていれば防げた話である。何を測るかという設計そのものが、最初から欠けていた。

変圧器の絶縁は、1本の線ではなく3本の線でできている

絶縁抵抗測定と聞くと、多くの人は「機器と大地の間を1回測る作業」だとイメージする。分電盤や単純な低圧回路であれば、それでおおむね正しい。しかし変圧器は違う。変圧器の内部には、電気的に独立した二つの巻線——一次巻線(高圧側)と二次巻線(低圧側)——が、鉄心を挟んで向き合う形で存在している。この二つの巻線と大地(変圧器のタンクや鉄心)を組み合わせると、絶縁が保たれているべき経路は理論上3通りできる。

愛知電機の配電用油入変圧器取扱説明書は、この3通りを別々の結線図として明示している。

測定箇所何と何の間の絶縁を見るか判定基準
高圧巻線-低圧巻線間一次巻線と二次巻線の間1000MΩ以上
高圧巻線-大地間一次巻線とタンク・鉄心の間1000MΩ以上
低圧巻線-大地間二次巻線とタンク・鉄心の間10MΩ以上

3つの図はどれも同じ変圧器を描いているのに、絶縁抵抗計のリード線をつなぐ相手がそのつど違う。(a)は高圧巻線と低圧巻線の端子同士に、(b)は高圧巻線の端子とタンクに、(c)は低圧巻線の端子とタンクに、それぞれL端子・E端子を割り当てる。つまり「変圧器の絶縁抵抗を測る」という一つの行為に見えていたものは、実際には3つの独立した測定を束ねた作業だったということになる。

なぜ3方向すべてを測る必要があるのか

ここで一つ、見過ごしやすい事実がある。判定基準の数値が、3箇所で同じではないのだ。高圧巻線-低圧巻線間と高圧巻線-大地間は1000MΩ以上を求められる一方、低圧巻線-大地間は10MΩ以上でよいとされている。同じ変圧器の中の話なのに、片方は1000MΩ、もう片方は10MΩ。この100倍の開きは何を意味しているのだろうか。

低圧巻線は使用電圧そのものが低く、対地電圧の区分自体が高圧巻線側とは根本的に違う。電気設備に関する技術基準を定める省令第58条が定める低圧電路の絶縁抵抗基準(対地電圧の区分に応じて0.1MΩ〜0.4MΩ以上)と比較しても、変圧器メーカーが定める10MΩ以上という水準はかなり高い。だが、それでも高圧巻線側の1000MΩ以上とは2桁以上の差がある。この差は、二つの経路が同じ物差しで測れる同一の劣化プロセスではないことを示している。

だとすれば、答えは自然と見えてくる。高圧巻線-大地間の絶縁が1000MΩ以上を保っていたとしても、それは「タンクや鉄心に対する高圧側の絶縁が健全である」という一つの事実を語っているにすぎない。低圧巻線が同じように健全かどうかは、この数値からは何もわからない。低圧側は使用環境も、負荷側からの熱履歴も、湿気の侵入経路も高圧側とは別であり、独立に劣化が進む余地がある。

巻線間の話になると、もう一段違う要因が絡んでくる。一次巻線-二次巻線間の絶縁を実際に支えているのは、大地との間の絶縁を支えているのと同じ絶縁油や外部絶縁ではなく、二つの巻線の間に挟み込まれた絶縁紙や絶縁筒、そして両者を隔てる空間そのものである。高圧巻線が大地に対してどれだけ絶縁されているかという話と、高圧巻線が低圧巻線に対してどれだけ絶縁されているかという話は、物理的に別の絶縁物・別の距離を経由した、まったく別の破壊経路を見ている。片方の絶縁物が湿気を吸って劣化していても、もう片方の絶縁物は乾いたままかもしれない。3つの数値は、3つの別々の答案用紙だと考えたほうが実態に近い。

測定時の結線の考え方——測定しない端子をどう扱うか

3箇所のうち一つを測定しているとき、残る一つの巻線をどう扱うかは、地味だが結果を左右する。愛知電機の取扱説明書は、絶縁抵抗測定に続く耐電圧試験の項で「供試巻線と他の巻線・タンク間に試験電圧を印加して……なお、他の巻線とタンクは接地しておきます」と明記している。測定していない側の巻線を宙に浮かせたまま放置せず、接地してしまうという結線の考え方だ。

この考え方は、変圧器メーカー独自の慣行というより、電気設備の技術基準の解釈第16条が定める絶縁耐力試験の規定にも通じている。同条では、ある巻線を試験する際に、試験対象でない他の巻線・鉄心・外箱を接地したうえで試験電圧を加える方法が定められている。巻線間の絶縁と巻線-大地間の絶縁を、法令上も別個の確認対象として扱っているからこそ、こうした結線の切り分けが必要になる。

なぜ浮かせてはいけないのか。共立電気計器が高圧ケーブルの絶縁測定で説明しているG端子(ガード端子)接地方式の考え方が参考になる。測定対象以外の部分が電気的に浮いたままだと、そちらを経由した別の経路が測定回路に紛れ込み、意図した2点間だけの絶縁状態を正確に切り出せなくなる。変圧器の場合も、測定していない巻線を接地しておくことで、その巻線を経由した迂回経路の影響を測定値から締め出し、今測っている2点間の絶縁だけを純粋に評価できるようにしている。

測定順序と、放電を挟むという地味な手間

3箇所とも測定するとして、どの順番で測るべきかという問いには、実は絶対的な正解があるわけではない。どの箇所を測定するにせよ、変圧器を母線から完全に切り離し、無電圧であることを確認してから始めるという前提は共通で、ここを飛ばせば順序を議論する以前の問題になる。

順序そのものより実務上効いてくるのは、測定と測定の間に何を挟むかである。変圧器の巻線は、ケーブルや進相コンデンサほどではないにせよ静電容量を持っており、絶縁抵抗計で試験電圧をかけると、その静電容量に電荷が蓄えられる。一つの測定を終えたあと、その電荷を放電しきらないまま次の結線に移ると、前の測定で溜まった電荷が新しい測定回路にも影響し、指示値がわずかにぶれる原因になる。多くのデジタル絶縁抵抗計には自動放電機能が付いているので、その完了表示を確認してからリード線を組み替えるという一手間を、3回とも省略しないことが、数値の信頼性を保つ最低限の作法になる。

「測っていない側」が測定値を狂わせることがある

先ほど、測定していない巻線は接地しておくと書いた。では、うっかり接地し忘れて浮かせたまま測定してしまったら、何が起きるのか。ここが見落とされやすい。

数値が正しく出なくなるだけでなく、多くの場合は実際よりも低い値として出てしまう。高圧巻線-低圧巻線間を測ろうとしているのに低圧巻線を大地から浮かせたままにしていると、低圧巻線とタンク(大地)との間の絶縁抵抗が、測定回路に対してもう一つの並列な経路として割り込んでくる。共立電気計器が高圧ケーブルの測定で説明しているガード端子(G端子)の考え方も、根はここにある。測定したい2点以外の部分が電気的に浮いていると、そちらを経由した電流の抜け道ができてしまい、意図した2点間だけを切り出した数値にならない。

厄介なのは、この状態で出てきた数値が「絶縁が悪化している」ように見えてしまうことだ。実際には巻線間の絶縁も、巻線-大地間の絶縁も両方健全なのに、浮かせたままの端子のせいで見かけ上だけ低い数値が出る。これを真に受けて「劣化が進んでいる」と判断してしまうと、原因究明の労力を無駄な方向に費やすことになる。数値が想定より低く出たときに真っ先に疑うべきなのは、絶縁そのものの劣化より先に、この結線の抜け漏れであることが少なくない。

結果の記録と比較——1回の測定で終わらせない

3箇所それぞれの数値が出そろったら、次にやることは合否判定だけではない。愛知電機の取扱説明書は、絶縁抵抗が温度によって著しく変化するため、測定時の油温を必ず記録しておくよう指示している。同じ変圧器でも、真夏に測った1000MΩと真冬に測った1000MΩでは、その数値が持つ意味合いが違う。油温という前提条件をそろえずに数値だけを比べても、劣化が進んでいるのか単に季節が違うだけなのかを見分けられない。

そのうえで、3箇所それぞれの数値を前回・前々回の記録と並べて追うことが、単発の合否判定より重要な作業になる。高圧巻線-大地間は依然として1000MΩ以上を維持していても、低圧巻線-大地間だけが前回の50MΩから今回20MΩへと下がっていれば、それは低圧側で何かが進行しているという明確なサインだ。この視点は、絶縁抵抗測定そのものの基本的な読み方——数値の推移を追う発想——とも重なる。詳しい読み方は絶縁抵抗測定(メガー測定)の正しいやり方と数値の読み方にまとめてある。

冒頭の担当者がもし、一次側だけでなく二次側の数値も同じ日に記録していたら、報告書の「良好」は違う中身になっていたかもしれない。変圧器の絶縁抵抗測定という一つの作業名の下には、実際には別々に検査すべき3つの経路が同居している。そのどれか一つを良好と確認することは、残りの二つについて何も保証しない——この一点を運用に組み込めているかどうかが、点検の質を分ける。

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よくある質問

変圧器の絶縁抵抗は、結局どこを測ればよいのですか?

高圧巻線-低圧巻線間、高圧巻線-大地間、低圧巻線-大地間の3箇所です。愛知電機の配電用油入変圧器取扱説明書では、この3つを別々の結線図(図1のa・b・c)として示し、それぞれに異なる判定基準(高圧巻線-低圧巻線間と高圧巻線-大地間は1000MΩ以上、低圧巻線-大地間は10MΩ以上)を設けています。1回の測定で終わらせず、3つとも測定して初めて変圧器の絶縁状態を確認したことになります。

一次側(高圧巻線)を測定していれば、二次側(低圧巻線)は測らなくてもよいのではないですか?

いいえ、それぞれ独立した絶縁経路のため、片方の数値だけで他方を推測することはできません。高圧巻線-大地間と低圧巻線-大地間は、絶縁材料も絶縁距離もまったく別の経路であり、判定基準の数値自体が1000MΩ以上と10MΩ以上で100倍違うことからも、両者が同一の劣化プロセスで動いているわけではないことがわかります。高圧側が健全でも低圧側の絶縁が別の原因(湿気の侵入経路が違う、負荷側の熱履歴が違うなど)で劣化している可能性は排除できません。

測定しない側の巻線は、そのままにしておいてよいのですか?

そのままにせず、接地しておくのが基本です。愛知電機の取扱説明書でも、耐電圧試験の項で『他の巻線とタンクは接地しておく』という結線が明記されています。電気設備の技術基準の解釈第16条の絶縁耐力試験の規定でも、供試巻線以外の巻線・鉄心・外箱を接地したうえで試験電圧を加える方法が定められており、測定対象でない部分を浮かせたままにしないという考え方は、絶縁抵抗測定にも共通して当てはまります。

3箇所を測定する順序に決まりはありますか?

変圧器を母線から完全に切り離し、無電圧を確認したうえで測定するという前提はどの箇所でも共通です。その上での測定順序自体に絶対的な規定があるわけではありませんが、実務では各測定のたびに絶縁抵抗計の放電表示を確認してから次の結線に移ることが重要です。直前の測定で巻線に残った電荷が完全に放電されないまま次の測定に移ると、その電荷が新しい測定の指示値に影響することがあります。

低圧巻線-大地間だけ判定基準が10MΩ以上と、他の2つより大きく緩いのはなぜですか?

低圧巻線は使用電圧が低く、対地電圧の区分自体が高圧巻線側とは違うためです。電気設備に関する技術基準を定める省令第58条が定める低圧電路の絶縁抵抗基準(対地電圧に応じて0.1〜0.4MΩ以上)と比べても、変圧器メーカーが定める10MΩ以上という基準はかなり高い水準です。数値の大小そのものより、高圧巻線側の基準(1000MΩ以上)と2桁以上違うという事実が、これらが同じ物差しで測れる数値ではないことを示しています。

測定器や変圧器本体の見積もりはどこに相談すればいいですか?

松本電業株式会社の「電材サーチ」で、変圧器本体から測定に使う絶縁抵抗計まで一括でお見積りいただけます。竣工検査の3箇所測定に対応した1000Vレンジの絶縁抵抗計の選定から、更新用の変圧器本体の型番相談まで承ります。

参考文献・出典

  • 配電用油入変圧器取扱説明書 S1016-8(愛知電機株式会社) (1.6.1項「絶縁抵抗測定」。図1(a)(b)(c)による高圧巻線-低圧巻線間/高圧巻線-大地間/低圧巻線-大地間の3つの測定結線図、表2の判定基準(高圧巻線-低圧巻線間・高圧巻線-大地間は1000MΩ以上、低圧巻線-大地間は10MΩ以上)、測定は変圧器を母線から切り離して1000V・2000MΩ以上の絶縁抵抗計で行うこと、油温により数値が著しく変化するため油温の記録が必要であること。あわせて1.6.2項「耐電圧試験」で、供試巻線以外の巻線とタンクを接地してから試験する結線の考え方)
  • 電気設備の技術基準の解釈 第16条(絶縁耐力試験)の解説(電験王3) (変圧器の絶縁耐力試験において、試験される巻線以外の巻線・鉄心・外箱を接地したうえで、供試巻線と大地の間、または供試巻線と他の巻線の間に試験電圧を加えるという結線方法の規定。巻線間の絶縁と巻線-大地間の絶縁が技術基準上も別個の確認対象として扱われている根拠)
  • 高圧絶縁抵抗計による高圧ケーブル絶縁劣化診断方法(共立電気計器株式会社) (G端子(ガード端子)接地方式の考え方。測定対象以外の部分が電気的に接続されたまま浮いていると、そちらを経由した経路が測定値に混入するため、測定対象以外を接地して切り離す必要があるという一般原則)
  • 絶縁抵抗測定(メガー測定)の正しいやり方と数値の読み方(電材サーチ) (測定電圧の選び方、ゼロ確認・オープン確認、静電容量を含む回路での充電電流と指示安定待ち、測定後の放電の必要性など、絶縁抵抗測定そのものの基本手順)
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