某工場の更新工事だった。制御盤から現場のセンサーまで、シールド付きの信号ケーブルで引き直した。片端接地の処理も、正しく施した。ところが中継用の端子箱のところで、手持ちのシールド線の在庫がわずかに足りず、最後の1.5メートルだけ、手元にあった予備の平行2心線——シールドもなければ撚りもない、ただ2本を並べただけの線——で継ぎ足すことになった。「ほとんどの区間はシールド済みだし、残りはたった1.5メートルだ」。その場の判断としては、無理もないものだった。
試運転では、ほとんどの時間、計器の指示値は落ち着いていた。ただ、近くの動力盤でコンタクタが投入されるたびに、その瞬間だけ指示値が跳ねた。シールドは正しく機能しているはずだった。接地の処理も間違っていない。それでも、この現象だけがどうしても消えなかった。
原因は、継ぎ足した1.5メートルの区間にあった。シールドの有無ではない。その区間だけ、2本の心線が撚られておらず、ただ平行に並んでいたことだった。
ただ束ねるだけでは、なぜ足りないのか
「2本の電線を束ねる」という作業だけを見れば、撚った場合とただ平行に並べた場合とで、大差はないように見える。どちらも2本の線が並んで走っているし、どちらも結束バンドで留めれば1本の線材として扱える。
ここで紛らわしいのが、電線の世界にある「より線」という言葉だ。1本の太い単線ではなく、細い素線を何本もより合わせて1本の導体にしたもので、目的は柔軟性の確保にある。硬い単線を曲げれば折れやすいが、細い素線をより合わせれば同じ太さでもしなやかに曲がる。これは電気的には依然として「1本の導体」であり、電流はそのより合わされた素線全体を1つの塊として流れる。
一方、ここで扱う対撚り(ツイストペア)はまったく別の構造を指す。絶縁された2本の別々の導体を、対として撚り合わせたものだ。同じ「より」という字を使うために現場でも混同されやすいが、より線が柔軟性のための工夫であるのに対し、対撚りはノイズを打ち消すための工夫である。より線を使っていようと単線を使っていようと、2本の導体が撚られていなければ、対撚りの持つノイズ耐性は一切発生しない。
では、なぜ平行に並べただけでは打ち消せないのか。外部の動力線などが発するノイズ源からの距離は、2本の線それぞれで見れば必ずわずかに違う。片方の線がノイズ源にわずかに近く、もう片方がわずかに遠い——この関係は、2本を平行に並べたまま配線した場合、配線の全長にわたって固定されたままになる。近い方の線には常に大きめの誘導電圧が、遠い方の線には常に小さめの誘導電圧が乗り続け、その差はどこまで配線を延ばしても解消されない。受信側の機器は多くの場合、2本の線の電圧差を信号として読み取る差動方式を採っているが、この方式は「2本に等しくノイズが乗ること」を前提にしている。等しく乗らなければ、その差はそのままノイズとして信号に混入する。
撚ることで、何が入れ替わっているのか
対撚りが行っているのは、この「常に固定された近い・遠い」の関係を、配線の途中で意図的に入れ替え続けることだ。2本の線をよじれば、ある地点では線Aがノイズ源に近く、その半ピッチ先では線Bが近くなる。ノイズ源との位置関係は、撚りのたびに反転する。
JMACS株式会社の技術資料は、この仕組みを「ツイストペア構造にすることで、発生した誘導電圧が互いに打ち消され、ノイズが軽減される」と説明している。日本語版ウィキペディアの記述も同じ結論に立ち、撚り合わせることで「ノイズ源に近い配線が入れ替わるようにすることで、両配線のノイズの影響を均一にし、ノイズ打ち消しが作用しやすいようにしている」としている。
平行線が長い1本の差を作り続けるのに対し、撚り線は短い区間ごとに符号の反転する小さな差を積み重ねている、と言い換えてもよい。反転する差同士は打ち消し合い、残るのは撚りの端数程度のわずかな不均衡だけになる。同じ「2本の線を束ねる」という見た目の作業が、撚るか撚らないかという一点で、まったく別の物理現象を利用する対策に変わる。
撚りピッチが細かいほど効く——数字で見る打ち消し効果
では、撚りの間隔(撚りピッチ)を詰めれば、どこまで効果は伸びるのか。JMACSの技術資料には、実際に測定された数値が示されている。
| 試料 | ピッチ(インチ) | 雑音除去率(比率) | 雑音除去率(dB) |
|---|---|---|---|
| 並行線 | - | 1:1 | 0 dB |
| 撚り線 | 4インチ(約100mm) | 14:1 | 23 dB |
| 撚り線 | 3インチ(約75mm) | 71:1 | 37 dB |
| 撚り線 | 2インチ(約50mm) | 112:1 | 41 dB |
| 撚り線 | 1インチ(約25mm) | 141:1 | 43 dB |
(出典:JMACS株式会社技術資料、原典は「ノイズ対策ハンドブック」日刊工業新聞社)
並行線を基準にすると、撚りピッチを4インチまで詰めるだけで雑音除去率は14倍(23dB)に達し、1インチまで詰めれば141倍(43dB)まで伸びる。ピッチを短くするほど、1本の配線の中に反転する小さな差が数多く並ぶことになり、打ち消しの機会がそれだけ増えるためだ。
ただし、ピッチを詰めるほど無条件によいわけではない。同じ資料は、ピッチを小さくしすぎることがケーブルの生産性低下によるコストアップにつながり、線心の撚り込み率が大きくなることで導体抵抗が増加するといった副作用も生じると釘を刺している。撚りピッチの設定は、必要なノイズ耐性と、製造コスト・電気的特性とのバランスで決まる。
LANケーブルのカテゴリで、撚りの作り込みはどう変わるか
この関係は、身近なLANケーブルのカテゴリ差にもそのまま表れている。Cat5eからCat6、Cat6Aへとカテゴリが上がるほど、対応する伝送帯域は広がっていく(Cat5eは100MHz、Cat6は250MHzが目安とされる)。より高い周波数帯まで安定して打ち消す必要が出てくる分、撚りの作り込みにも精度が求められるようになる。
もう一つ見落とされがちな作り込みがある。LANケーブルの中には4対、つまり8本の心線が入っているが、この4対すべてを同じ撚りピッチで作ってしまうと、別の問題が起きる。日本語版ウィキペディアが指摘する通り、「隣り合ったペアのツイスト率が同じだと、別々のペア同士で同じ導線が繰り返し隣り合うようになる」ため、対と対の間で新たな干渉(クロストーク)が発生しやすくなる。だからこそ、ケーブル内の4対は意図的に撚りピッチをずらして作られている。1本のケーブルの中で、外来ノイズを打ち消す仕組みと、対同士の干渉を避ける仕組みが同時に成立するよう設計されているわけだ。
Cat6以上のケーブルでは、さらにもう一段の対策が加わる。パンドウイットの解説によれば、Cat6以上のケーブルには対と対の間を仕切る「十字介在」と呼ばれるセパレータが入っている。撚りピッチの調整だけでは足りなくなった対間の干渉を、物理的な仕切りで補う構造だ。
ケーブル1本の中の対策だけでは終わらない場面もある。東京富士産業株式会社の技術資料は、複数のLANケーブルを束ねて敷設した際に隣のケーブルから受ける「エイリアンクロストーク」という現象を扱っており、実測例として、48本を束ねた状態ではあるペアの余裕(マージン)がわずか0.31dBまで落ち込んでいたものが、束ねる本数を24本まで減らすだけで5.32dBまで改善したという数値を示している。ケーブル1本の中の撚りをどれだけ精密に作り込んでも、隣に別のケーブルを密着させて束ねてしまえば、そちらから新たなノイズを拾ってしまう。対撚りの効果は、あくまで「そのケーブル1本の中」で完結する対策だ、という一点は見落とされやすい。
シールドとの併用(STPケーブル)が、さらに効く理由
対撚りとシールドは、しばしばセットで語られる。だが両者は同じ弱点を補い合っているわけではなく、そもそも防いでいるノイズの経路が異なる。
対撚りが打ち消しているのは、2本の線に誘導された後の電圧の差だ。ノイズが心線に届くこと自体は止めておらず、届いた後の不均衡を打ち消すという、いわば後処理の対策になる。これに対してシールドは、外来のノイズが心線に届く量そのものを、金属の遮へい層で減らす。ノイズが心線に到達する前の段階で効く対策だ。
この違いから、両者を組み合わせる意味が見えてくる。対撚りの打ち消し効果には限界があり、撚りピッチをどれだけ詰めても、2本の線に誘導される電圧を完全に同一にすることはできず、わずかな不均衡は必ず残る。ノイズ源が強力であればあるほど、この残った不均衡の絶対量も大きくなる。シールドを併用しておけば、対撚りに届く前の段階でノイズの絶対量そのものを減らせるため、対撚りが打ち消しきれずに残す分もあらかじめ小さく抑えられる。産業用イーサネットのようにノイズの多い環境で、シールド付きのSTPケーブルが選ばれるのはこのためだ。
なお、シールドをどう接地するか(片端か両端か)は、対撚りとはまた別の判断が必要になる論点であり、その原理と実務上の注意点は別記事で詳しく扱っている。
撚りが甘い・戻ってしまった配線は、何が起きているか
対撚り構造は、配線の途中では正しく機能していても、末端の処理一つで簡単に壊れる。
コネクタや端子に接続するために被覆を剥ぎ、撚られた対をほどく作業を「撚り戻し」と呼ぶ。東京富士産業株式会社の技術資料は、ANSI/TIA-568-Dに基づく実務基準として、接続ハードウェアへ成端する際の対の撚り戻しを13mm以下に抑えること、Cat6以上のケーブルではさらに厳しく6mm以下に抑えることを推奨している。同資料はまた、シースの除去も対の撚り状態を維持するために最小限にとどめるべきだと述べている。
この許容値がなぜ厳しく決められているのか。撚りが打ち消し効果を発揮するのは、あくまで規則正しく撚られた区間に限られる。端末付近でほどいてしまえば、その部分だけ元の平行線に戻ってしまい、しかも配線の中でもっともノイズにさらされやすい端子・コネクタ周辺という場所で、打ち消しの仕組みが丸ごと失われる。ケーブルの大部分をどれだけ精密な撚りピッチで作り込んでも、端末のわずか数ミリの撚り戻しが、その効果を局所的に無効化してしまうということになる。
同じことは、施工中に撚りが乱れて元のピッチに戻らなくなった箇所や、無理な張力で撚りが伸びてしまった箇所にも当てはまる。ピッチが不揃いになれば、規則正しく反転するはずの差が場所によって崩れ、平均化されずに残る不均衡が増える。撚りは、ケーブルを買った時点で決まる仕様であると同時に、施工の最後まで維持されて初めて意味を持つ構造だということになる。
冒頭の1.5メートルは、結局、対撚りの信号ケーブルに引き直された。シールドはそのままで十分だった。足りなかったのはシールドではなく、撚りだった。
電材サーチでの見積り・調達について
「計装用の対撚りケーブルやシールド付きSTPケーブルを、既設設備の仕様に合わせてまとめて手配したい」「LANケーブルのカテゴリを、敷設環境やノイズ条件に応じて選定してほしい」という設備担当者様へ。
電設資材専門商社の電材サーチでは、古河電工・住友電工などの計装用・通信用ケーブルを、用途や敷設距離に応じてお見積りいたします。
あわせて読みたい
- シールド線の正しい接地処理|片端接地と両端接地の使い分け・グラウンドループの原理と現場の間違い
- 【現場のやらかし】LANケーブルと動力線の「並行配線ノイズ干渉」の盲点と正しい離隔・シールド対策
- 4-20mA電流ループとは何か|なぜ電圧信号ではなく電流信号なのか、なぜ0-20mAではなく4-20mAなのか
関連する対撚り・ツイストペア・ノイズ・撚りピッチ・原理の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。