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配線ダクト(ワイヤーダクト)の選び方|サイズ選定の基準となる充填率40%の考え方と、増設で詰め込みすぎるリスク

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

盤の扉を開けて、増設予定の制御回路用の電線を通そうとしたら、配線ダクトの蓋が最後まで閉まらなかった。手で押さえてスナップを噛み合わせても、外すとまた浮いてくる。担当者はダクトの中を覗き込み、これまでの改修で少しずつ電線が足されてきた跡を見つける。竣工時の図面には、ここまでの本数は載っていない。

無理やり蓋を閉じることは、実はそれほど難しくない。ダクトの樹脂には多少のたわみしろがあり、力を込めれば形の上では収まってしまうからだ。今回もそうやって収めた。問題は、収まったという事実が、そのまま「大丈夫」を意味するわけではないという点にある。

配線ダクトの役割——電線を「まとめる」以上の意味

配線ダクトは、制御盤の中で電線を整然と収め、機械的な保護を与えるための部材だ。側面や蓋を開けて電線を出し入れできる構造になっており、端子台やリレー、PLCの入出力端子まわりの配線を、束ねてルート化する役目を担う。

見た目の整理整頓のためだけの部材だと思われがちだが、実際にはそれだけではない。電線を外部からの接触・擦れから守る機械的保護の機能に加えて、ダクトの内側という限られた空間の中でどれだけ電線を詰め込んでよいかという、放熱にかかわる制約を抱えた部材でもある。この後者の側面が、増設のたびに見落とされやすい。

サイズ選定の基準——「充填率」という考え方

配線ダクトのサイズを決めるとき、実務でよく使われるのが「充填率」という考え方だ。ダクトの内側の断面積のうち、収める電線(被覆を含む)の断面積の合計が占めてよい割合を指す。

星和電機の技術資料は、自社のカッチングダクト製品について、この充填率をおよそ40%として電線収容本数を算出していると説明している。ここで興味深いのは、40%という数字そのものの出どころだ。同資料によれば、これは配線ダクト固有の基準として最初から存在していたわけではない。内線規程JEAC 8001 410-5が、電線管(丸形の電線管)に電線を収める場合の基準として、原則32%以下、同一太さの電線を収め屈曲が少なく引き替えが容易という条件を満たせば48%以下まで緩和できると定めており、星和電機はこの32%と48%の平均を取って40%を配線ダクトの充填率目安として採用している。

つまり、角形の配線ダクトに使われている40%という基準は、丸形の電線管向けに定められた規定を、メーカーが実務上の目安として角形の部材に当てはめ直したものだ。カタログに記載されている「収容本数」も、この40%という枠に、IV2sqの電線(導体断面積2mm²、仕上がり外径φ3.4mm)を仮定して逆算した本数にすぎない。実際に収める電線が別の太さ・種類であれば、断面積を計算し直して当てはめる必要がある。

具体的に数字を追ってみる。内寸40mm×40mmのダクトなら、内断面積は1,600mm²だ。その40%にあたる640mm²までが、電線の断面積合計として許容される枠になる。IV2sq(仕上がり外径φ3.4mm)1本の断面積はおよそ9.1mm²だから、640mm²をこの値で割ると、収容できる本数はおよそ70本という計算になる。カタログの収容本数表は、この計算をダクトのサイズごとに一通りやった結果を一覧にしたものにすぎない。太い電線や被覆の厚いケーブルを収める場合、あるいは複数のサイズの電線が混在する場合は、表の数字をそのまま使わず、断面積を積み上げて計算し直す必要がある。

なお、配線ダクトとは別に、電気設備の技術基準の解釈第162条は「金属ダクト工事」という工事方法について、電線の断面積の総和をダクトの内部断面積の20%以下とし、電光サイン装置・出退表示灯や制御回路等の配線のみを収める場合に限り50%以下まで緩和できると定めている。こちらは主として屋内配線を金属製ダクトで敷設する工事方法についての法令上の規定であり、制御盤内で使われる樹脂製の配線ダクトとは適用場面が異なる。ただし、電線を密集させるほど許容できる割合が下がるという発想そのものは共通しており、電線管・金属ダクトのいずれの基準を見ても、電線の断面積を管やダクトの内断面積の半分以下、多くの場合は3〜4割程度に抑える方向で設計されていることが分かる。

充填率を超えるとどうなるか——「入る」と「安全」は別の話

充填率の基準が守っているのは、電線が物理的にダクトへ収まるかどうかではない。電線同士の隙間に生じる、熱を逃がすための余地だ。

電線に電流が流れれば、導体の抵抗によって必ず熱が発生する。単独で空気中に配線されていれば、この熱は周囲へ逃げていく。ところが電線を密集させると、隣り合う電線同士がお互いの発する熱を受け合う形になり、単独配線のときより高い温度で平衡する。電線管に電線を詰め込みすぎた結果、被覆が溶損した事例が実際に報告されているように、密集した電線の発熱は決して仮定の話ではない(電線管の詰め込みすぎによる溶損事例を参照)。

厄介なのは、この危険性が目に見えないことだ。蓋が閉まるかどうか、電線が物理的に通るかどうかは、現場で誰の目にも分かる。しかし断面積の合計が内断面積の40%を超えているかどうかは、電卓を叩かなければ分からない。「まだ押し込める」という感触だけを頼りに増設を重ねていくと、収容本数の計算はいつの間にか置き去りになり、蓋が閉まる限界と、電線が安全に使い続けられる限界とが、静かにずれていく。

ダクトの種類——スリット付き・フタ付き・材質による違い

制御盤で使われる配線ダクトは、側面の構造でおおむね2系統に分かれる。因幡電機産業のカットダクト製品も、この2系統に沿ってADRシリーズ(スリットあり)とBDRシリーズ(スリットなし)という形でラインナップされている。

スリットあり(ADRタイプ相当)は、側面に切れ込みが並んで入っており、ニッパー等で必要な箇所だけを切り開いて電線を出し入れできる。端子台やリレーへの配線替えが多いルート、経路の途中で電線を抜き出す必要がある配線に向く。

スリットなし(BDRタイプ相当)は、側面が塞がった構造だ。星和電機の製品説明では、通線孔の内面に面取り加工を施した「エッジレスタイプ」として、通信線のように絶縁被覆が薄い電線を保護するのに有効だとされ、上部に切り込みがなく連続しているぶん、長尺で使ってもたわみにくいとも説明されている。どちらのタイプも、仕切板を追加してダクト内部を2分割し、通線孔を介して電線を相互に移動させる使い方ができる。

系統側面構造向く用途
スリットあり(ADRタイプ相当)切れ込みをニッパー等で切り開いて開口端子台・機器への配線替えが多い経路、経路途中で電線を出し入れしたい配線
スリットなし(BDRタイプ相当)通線孔をエッジレス加工した閉構造被覆の薄い通信線の保護、長尺配線でのたわみ防止

材質は硬質塩化ビニール(PVC)が標準的で、難燃性(UL94 V-0相当)・耐薬品性に優れ、価格も手頃だ。一方でノンハロゲン樹脂を使った「ECOダクト」は、燃焼時に有害な塩素ガスやダイオキシンの原因物質が発生しにくく、比重もPVCよりおおむね20%軽いとされる(大迫電気の技術資料による)。色調は日本電機工業会規格JEM1135に基づく色が選べるようになっており、盤の配色との調和も考慮されている。なお星和電機の製品は使用温度範囲を-20℃~60℃としており、耐候剤を添加していないため屋外使用は基本的にできない。制御盤の外に露出して使うような設計は避けたい。

増設時に見落とされがちな再計算

充填率の考え方でもっとも見落とされやすいのが、「今回追加する電線だけ」を見て判断してしまうことだ。

充填率は、そのダクトに現在収まっている電線すべてに対して評価される割合であり、竣工時の設計値はその後の増設分を含んでいない。今回の追加分の断面積が小さいからといって、それだけを見て「まだ入る」と判断するのは、既設分を含めた合計を無視した判断になる。

増設のたびに踏むべき手順は、さほど複雑ではない。①現在そのダクトに収まっている電線をすべて洗い出す、②電線ごとの仕上がり外径から断面積を計算する、③既設分と追加分を合算し、ダクトの内断面積に対する割合を出す、④40%を超えるようならダクトをワンサイズ上げるか、経路そのものを分割する——この4段階を、増設工事のたびに繰り返す。このひと手間を積み重ねられるかどうかが、冒頭のような「なんとか蓋を閉じた」状態を防げるかどうかの分かれ目になる。

これは、ケーブルラックの支持間隔に対する許容荷重の考え方(ケーブルラックの耐荷重設計)や、盤内の発熱量計算(制御盤の放熱設計)とも通じる構図だ。竣工時点の数字は、その時点までの答えでしかなく、増設という行為そのものが、常に再計算を要求してくる。

配線の美観・保守性への影響

充填率を守った配線ダクトは、安全面だけでなく、日々の保守作業にも効いてくる。電線が密集せず整然と収まっていれば、点検や改修のときに目的の電線を追いやすく、断線や誤配線の調査にかかる時間も短くなる。逆に、隙間なく詰め込まれたダクトは、蓋を開けた瞬間にどの電線がどこへ向かっているのかを追うだけで一苦労になり、次の増設作業そのものの難易度も上げてしまう。

配線ダクトのサイズを、竣工時点でぎりぎりに合わせず、将来の増設をいくらか見込んだ余裕を持たせて選定しておくことは、初期コストのわずかな増加と引き換えに、その後何年もの保守性を左右する判断になる。

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よくある質問

配線ダクトの充填率40%とは何ですか?

ダクトの内側の断面積のうち、収める電線(被覆を含む)の断面積の合計が占めてよい割合の目安です。星和電機の技術資料によれば、この40%という数字自体は電線管(電線を通す丸い管)についての内線規程JEAC 8001 410-5の基準——原則32%以下、条件を満たせば48%以下まで緩和——を平均したもので、配線ダクト固有の法定数値ではなく、電線管の基準を角形のダクトに当てはめた実務上の目安です。カタログに載っている収容本数は、この40%枠にIV2sq(導体断面積2mm²・仕上がり外径φ3.4mm)を仮定して何本入るかを逆算した数値です。

スリット付き(ADRタイプ)とスリットなし(BDRタイプ)はどう使い分けますか?

スリット付きは側面に切れ込みが入っており、そこから電線を出し入れできるため、隣接する機器・端子台への配線替えや、経路の途中で電線を抜き出したい配線に向きます。スリットなしは側面が塞がっており、通信線のような被覆の薄い電線を機械的な擦れから守りたい配線や、長尺で使ってもたわみにくい丈夫さが必要な配線に向くとされます。どちらも仕切板でダクト内部を2分割し、通線孔を介して電線を相互に移動させる使い方ができます。

『まだ物理的に入る』のに、なぜ問題になるのですか?

充填率の基準は、電線がダクトに収まるかどうかではなく、電線同士の隙間に生じる放熱の余地を確保するための基準だからです。電線に電流が流れると導体は発熱します。電線が密集すると、周囲の電線からの熱も互いに受け合う形になり、単独で配線した場合よりも高い温度で平衡することになります。目視や手の感触では『まだ押し込める』段階でも、断面積の割合としてはすでに基準を超えていることがあり、この状態が続くと被覆の劣化が想定より早く進む可能性があります。

増設のたびに充填率を再計算する必要はありますか?

はい。充填率は『そのダクトに現在収まっている電線すべて』に対して評価するものであり、竣工時の設計値はその後の増設分を含んでいません。今回追加する電線の断面積だけを見て『まだ余裕がある』と判断するのではなく、既設分と追加分を合算した断面積の総和を、ダクトの内断面積に対して再計算する必要があります。

配線ダクトの材質はPVCとECOダクトのどちらを選ぶべきですか?

硬質塩化ビニール(PVC)は絶縁性・難燃性・耐薬品性に優れ価格も手頃なため、制御盤内の配線ダクトとして広く使われています。一方、ノンハロゲン樹脂を使ったECOダクトは、燃焼時に有害な塩素ガスやダイオキシンの原因物質が発生しにくく、比重もPVCよりおおむね20%軽いとされます(大迫電気の技術資料による)。焼却時の環境負荷や軽量化を重視する現場ではECOダクト、コストを重視する現場ではPVCダクトを選ぶ、という使い分けが実務的です。

配線ダクトの選定・見積りはどこに相談できますか?

電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)が、収容予定の電線の種類・サイズ・本数と設置環境をお伺いした上で、材質・スリットの有無・サイズの選定とお見積りに対応しています。既設ダクトへの増設を検討中の場合も、現状の収容本数を含めてご相談ください。

参考文献・出典

型番不明でもOK

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