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一般用電気工作物等の保安に関する法令 ・ 1 / 8

電気工事士法 — 誰がどの工事をしてよいか

読み終えると、こうなる

友人からの『お礼はするから』という頼まれごとでも、それが法律上の電気工事にあたるかどうかで引き受けてよいか仕分けられるようになる

  • 自家用電気工作物と一般用電気工作物のどちらの工事かを見て、自分の資格で対応できる範囲かを判定できる
  • 報酬の有無や相手との関係に関係なく、作業の種類だけで無資格作業にあたるかを仕分けられる
  • ネオン工事や非常用発電装置工事を見て、第一種の免状だけでは従事できない特殊工事だと見分けられる
考えてみよう

友人から相談された。「キッチンにコンセントを1つ増やしたいんだけど、業者を呼ぶと出張費だけで高くつくらしい。材料はホームセンターで買ってきたから、工具さえあれば自分でもできそうだよね?お礼はちゃんとするから、お願いできない?」

たしかに、コンセントを1つ増やすだけの作業に見える。壁の中の配線を延長してつなぐだけ、道具さえあれば難しくなさそうだ。しかも今回は「お礼はする」と言われているだけで、正式に報酬を受け取る仕事ではない。この程度なら、資格がなくてもやってしまってよいものだろうか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その答えがはっきり説明できるようになっている。

電気工事士法は、電気工事の安全性を確保するために、工事の種類ごとに必要な資格を定めている法律だ(第3条)。

  • 第一種電気工事士: 自家用電気工作物(大規模な工場・ビルなど)の電気工事に従事できる
  • 第二種電気工事士: 一般用電気工作物等(一般住宅・小規模店舗など、600V以下で受電する場所の電気工作物。小規模事業用電気工作物を含む)の電気工事に従事できる
  • 特種電気工事資格者: 自家用電気工作物のうち、ネオン工事・非常用予備発電装置工事という特殊な工事に従事できる(第一種電気工事士の免状を持っていても、この資格がなければこの2つの工事はできない)
  • 認定電気工事従事者: 自家用電気工作物のうち、電圧600V以下で使用する部分の「簡易電気工事」(電線路に係るものを除く)に従事できる。第二種電気工事士の免状取得後、3年以上の実務経験を積むか、認定講習(1日・6時間程度)を修了することで取得できる

つまり第二種電気工事士は「一般用電気工作物等」が守備範囲であり、工場やビルの自家用電気工作物の工事は原則として行えない。この境界線を問う問題が繰り返し出題される。

電気工事士法が問うているのは「誰の家の工事か」でも「お金をもらう仕事かどうか」でもない。「その作業が電気工事にあたるかどうか」の一点だ。ここに当たれば、無資格での作業はどんな事情があっても違反になる。

電気工事士法第3条に違反して、必要な資格を持たずに電気工事の作業に従事した場合、同法第14条により3月以下の拘禁刑又は3万円以下の罰金という罰則が定められている(刑法改正で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されたため、古い教材では「3月以下の懲役」と書かれている。条文番号も改正で動くことがあるため、「無資格工事には罰則がある」という原則をまず押さえておきたい)。この罰則は、報酬を受け取ったプロの仕事かどうかで区別されているわけではない。

また、電気工事士免状は国ではなく都道府県知事が交付する(第4条)。電気工事士がこの法律や電気用品安全法の規定に違反したときは、都道府県知事はその免状の返納を命じることができる。免状は取得して終わりではなく、違反があれば取り消されうる資格であることも覚えておこう。

「それは受けられない」と根拠つきで言えるようになる

この線引きが頭に入っていると、現場で言葉に詰まらなくなる。工場の受電設備の改修を頼まれたとき、断る理由が「自信がないので」ではなく「自家用電気工作物なので第一種の範囲です」に変わる。逆に、自分がどこまで受けられるかもはっきり見える。第二種のあと実務経験を積むか認定講習を受ければ認定電気工事従事者になり、600V以下の簡易電気工事まで手が届く。資格の区分は、そのまま受けられる仕事の区分だ。

今日できることがある。身のまわりで「頼まれそうな作業」を3つ書き出し、それぞれが電気工事にあたるかを仕分けてみるといい。エアコンの取り付け、コンセントの増設、照明器具の交換。並べてみると、線がどこを通っているかが実感になる。

この法律が「無償でも違反」と言い切るのは、厳しすぎるからではない。壁の中の接続が1か所緩んでいるだけで、何年も経ってから発熱し、火事になることがある。施工した本人はとうに忘れている。だから対価ではなく、作業そのもので線を引いた。太陽光も蓄電池もEV充電設備も、住宅の側に増えていく設備ばかりだ。一般用電気工作物等に手を入れられる人の出番は、これから細っていく方向にはない。

冒頭の友人の頼み、引き受けてよいものだったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 免状に関する手続きの相手を、都道府県知事から経済産業大臣にすり替える

    なぜ引っかかる試験を実施しているのは全国共通の指定試験機関で、法律を所管しているのも国だ。だから免状も国が出しそうに感じてしまう。実際には交付も書換えも返納命令も都道府県知事が相手で、選択肢はそこだけを差し替えてくる。さらに「経済産業大臣に届け出をしないで複数の都道府県で作業に従事した」のような、そもそも存在しない義務を作って囮にする形も使われる。

    見破り方免状に関する手続きの相手はすべて都道府県知事、と一括で固定する。交付する人と取り上げる人が同じである、という対応関係で覚えると、途中に大臣が挟まる余地がないと分かる。存在しない届出制度が出てきたら、それは条文にない義務だと判断する。

  2. 「自家用電気工作物」と書いてあるだけで、第二種では一切できないと思わせる

    なぜ引っかかる第二種電気工事士が従事できない作業を選ばせる問題では、自家用電気工作物という語が付いた選択肢が2つ並ぶ。片方は低圧部分の電線相互の接続(第一種または認定電気工事従事者が必要)だが、もう片方は地中電線用の管の設置で、これはそもそも軽微な工事なので無資格でも行える。語だけで機械的に切ると2つ選んでしまう。

    見破り方設備の区分と作業の種類を、必ず別々に判定する。まず「その作業はそもそも電気工事にあたるか(軽微な工事ではないか)」を確認し、そのうえで「その電気工作物は自分の資格範囲か」を見る。順序を固定すれば、語の印象に引きずられない。

  3. 電気工事士法の目的に、他の法律の制度を混ぜ込む

    なぜ引っかかる「電気工事士法の主な目的は」という問題では、主任電気工事士の資格を定める(電気工事業法の制度)、電気工作物の保安調査の義務を明らかにする(電気事業法の制度)といった、いかにも関係のありそうな内容が並ぶ。どれも実在する制度なので、名前だけでは切り分けられない。

    見破り方電気工事士法が受け持つのは「誰が工事をしてよいか」の一点だ、と役割で押さえる。設備が満たすべき基準は電気事業法(と技術基準)、材料の安全は電気用品安全法、事業者の登録は電気工事業法。ただし目的を問われたときの着地点は資格ではない。第1条は「電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与すること」と書いており、資格は手段、目的は災害の防止だ。だから「電気工事士の身分を明らかにする」のような資格そのものに着地する肢は誤りで、災害・事故の防止に着地する肢を選ぶ。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 第二種電気工事士の守備範囲は「一般用電気工作物等」(一般住宅・小規模店舗など600V以下)まで。工場やビルなどの自家用電気工作物は原則として第一種電気工事士の範囲
  2. 特種電気工事資格者(ネオン工事・非常用予備発電装置工事)、認定電気工事従事者(自家用電気工作物のうち600V以下の簡易電気工事)という中間区分もある
  3. 無資格で電気工事に従事すると、電気工事士法第14条により罰則(3月以下の拘禁刑又は3万円以下の罰金)の対象になる。対価(お金)を受け取ったかどうかは関係ない
  4. 電気工事士免状は都道府県知事が交付し、この法律や電気用品安全法に違反すれば返納を命じられることがある
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