本記事の事例は、安全啓発を目的として典型的な事象を再構成したものです。特定の現場・企業を指すものではありません。
PR 本記事で紹介する商品リンクにはAmazonアソシエイト・プログラム等のアフィリエイトリンクが含まれます。詳細は広告についてをご覧ください。
1. 現場のやらかしエピソード:別々のルートで通したら、管が「IHヒーター」に変貌した
ある日、工場の増設に伴い、三相3線式・200V(動力回路)の長距離配線工事が行われた。 使用する電線は、許容電流を確保するため太い単心CVケーブル。金属電線管(スチール製ねじなし電線管・E39)を3系統並行して敷設し、各管に余裕を持たせて「1本の管にR相」「もう1本の管にS相」「最後の管にT相」と、きれいにバラして通線してしまった。
「管の内部でギチギチにならず、1本ずつ通したほうが熱がこもらなくて安全だろう」
施工者は良かれと思ってこの配線方法をとった。そして試運転を開始し、モーターを高負荷で数時間回し続けたところ、現場に「焦げ臭いにおい」が立ち込めた。 確認に行くと、3本並んだスチール製の電線管自体が、触れないほどアツアツに発熱。電線管の接続部分からは薄煙が立ち上り、内部の電線被覆は熱で溶けかけていた。
電線自体が許容電流オーバーで発熱したのではない。スチール電線管自体が、電磁誘導によって「IHヒーター」となって自己発熱していたのだ。
2. なぜ起こる?「電磁的平衡」無視の物理的メカニズム
このトラブルの原因は、内線規程(JEAC 8001)が金属管配線について定める「電磁的平衡」の原則を無視したことにあります。
graph TD
A[電線に電流が流れる] --> B[周囲に交番磁界が発生]
B --> C{往復線が同一の鉄管内か?}
C -- YES --> D[往路と復路の磁界が相殺 = 発熱なし]
C -- NO --> E[相殺されず鉄管に磁束が集中]
E --> F[鉄管に渦電流ヒステリシス損が発生]
F --> G[電線管自体がIHヒーター化して異常発熱]
① 電流と磁界の発生
電線に交流電流が流れると、その周囲に右ねじの法則に従って磁界が発生します。電流が往復する(単相なら行きと帰り、三相ならR・S・T相)すべての電線を1本の金属管に収めると、磁界は互いに逆方向となり、足し合わせると常にゼロに相殺されます。
② 磁性体(スチール管)の自己発熱
しかし、1相分の電線だけをスチール管に通すと、磁界は相殺されません。 スチール(鉄)は強い磁性体です。交番電流による激しい磁界の変動(東日本なら50Hz、西日本なら60Hz)に鉄管がさらされると、以下の2つの現象によって熱が発生します。
- 渦電流損(エドカレントロス): 磁界の変動によって鉄管に回り込むような電気(渦電流)が流れ、鉄の抵抗によって発熱する。
- ヒステリシス損: 鉄内部の磁気分子が1秒間に50〜60回強制的に反転させられ、その摩擦熱で発熱する。
これがまさに「IHクッキングヒーター」と同じ原理です。高負荷の電流が流れれば流れるほど、電線管は強力に発熱し、最終的には中の電線被覆を熱でドロドロに溶かし、管路短絡(地絡・ショート)を引き起こします。
3. 実務で守るべき「電磁的平衡」の鉄則
金属製のダクト、電線管、またはキャビネット(鋼板製エンクロージャ)に電線を通す際は、必ず以下の原則を守らなければなりません。
① 単相回路・三相回路の全線を同一管に収める
- 単相2線式: 2本(往路・復路)を同一管に通す
- 単相3線式: 3本(L1・中性線・L2)を同一管に通す
- 三相3線式: 3本(R・S・T相)を同一管に通す
- 三相4線式: 4本(R・S・T相・中性線)を同一管に通す
注意!: アース線(接地線)のみは、同一の回路電流の往復には関与しないため、別の管に通しても電磁的平衡上は問題ありません。
② 鋼板製キャビネットのノックアウト穴プレート処理
大きな幹線電線を単心CVTなどで盤に引き込む際、盤の側板(スチール製)のノックアウト穴に1線ずつ別々の穴を通してビス留めすると、その接続ブラケットやノックアウト穴の周辺の鋼板が電磁誘導で発熱します。 これを防ぐために、引き込み部の金属を切断してスリットを入れるか、非磁性体であるアルミ製やアクリル製の「電線引き込みプレート」を使用して引き込む必要があります。
4. 現場で異常発熱を未然に防ぐチェックリスト
- スチール製の電線管(ねじなし管、薄鋼、厚鋼)に、単心ケーブルを1本だけで通していないか?
- メタルダクトやケーブルラックのセパレーターで、同極の電線を別々のスチール製コンパートメントに分けて敷設していないか?
- スチール製配電盤の引き込み口で、単心の太い電線を鉄板の個別穴(ノックアウト)から別々に引き込んでいないか?(別々に引き込む場合は非磁性プレートまたはスリット処理が必要)
- 通電運転後に、非接触サーモグラフィ等を用いて金属管路の温度測定を行っているか?
5. 電設資材・電線管の調達・選定は「電材サーチ」へ
「電磁的平衡を考慮して、単心3本撚りの低圧CVTケーブルと、それを収容できる適切な呼び径のパナソニック製ねじなし電線管・VE管をワンストップで手配したい」「スチール盤の太物引き込み用に、アルミ製ノックアウトプレートや樹脂製グランドをまとめて見積もってほしい」という設計・調達のご担当者様。
「電材サーチ」では、ねじなし電線管(E管)、薄鋼電線管(C管)、厚鋼電線管(G管)や各種フィッティングから、屋外用の耐候性PF管、二重天井内の配管支持具まで、国内主要メーカーの電路資材を幅広く取り扱い。
図面や仕様書からの同等品選定サポート、必要部材の拾い出し見積もりも、電材のプロスタッフが迅速に特別卸価格にてご対応いたします。
関連するおすすめガイド
- 電線・ケーブル完全体系的総合ガイド(ケーブル大百科)
- 電線管の選定方法!PF管・VE管・CD管・金属管の特徴と呼び径の使い分け
- 【現場のやらかし】電線管に電線を『ギチギチに詰め込んで配線』したら発熱で被覆がドロドロに溶損!許容電流の減少係数と電線占有率の盲点
関連する電磁的平衡・電線管・金属管・発熱・電磁誘導・施工ミスの品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。