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測定器具高圧受電設備保守・点検

高圧ケーブルの直流漏れ電流法とは|メガー測定だけでは見えない劣化を電圧を上げながら見抜く仕組み

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

絶縁抵抗計の針が振り切れるほど良好な数値を示していたのに、それから数か月後に地絡事故を起こした高圧ケーブルがある——という話は、点検の現場でめずらしくない。測定した本人に落ち度はない。基準値は満たしていたし、記録にも「良好」と書いた。それなのに、なぜケーブルは壊れたのか。

電力会社系の電気保安協会が、わざわざ「CVケーブル活線診断」という専用のサービスメニューを用意しているのは、この種の「一点測定では追いつけない劣化」が実際に起きているからだ。原因は測定者の技量ではなく、絶縁抵抗測定という検査そのものが持つ、ある構造的な限界にある。

なぜ「良好」だったケーブルが、その後まもなく壊れるのか

高圧用のCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)が経年劣化する主な原因は、水トリーと呼ばれる現象である。絶縁体内部に侵入した水分が、異物や微小な空隙、あるいは製造時の突起といった局所的な電界集中点と結びつき、そこから樹木の枝のような形で劣化が少しずつ進展していく。

ここで見落とされがちなのが、劣化の「広がり方」だ。水トリーは絶縁体全体を均一に劣化させるわけではない。ケーブルの中のごく一部、数十mのうちのほんの数十cmといった限られた範囲で、局所的に絶縁性能が落ちていく。絶縁抵抗測定は、そのケーブル全長をひとまとめにした一つの抵抗値しか返さない検査であり、健全な部分の抵抗が支配的な状況では、局所的な劣化があっても全体の数値としては基準を十分に満たしたまま出てくることがある。測定器が嘘をついているのではない。一点の抵抗値という指標そのものが、局所的な劣化を映しにくい性質を持っている、というだけの話だ。絶縁抵抗測定の正しいやり方と数値の読み方で扱った通り、絶縁抵抗値は湿気・汚れ・経年劣化のどれが原因でも下がりうる。だが逆に言えば、まだ下がりきっていない段階の局所劣化は、この検査だけでは拾いきれない。

もう一つの限界は、測定電圧の性質にある。絶縁抵抗測定は、あらかじめ決めた一つの電圧を短時間かけ、その瞬間の抵抗値を読むだけの検査だ。活線状態でのメガー測定が招く事故で見た通り、印加電圧のレンジ選びには気を配る必要があるが、選んだ電圧で一度だけ測って終わる、という検査の構造自体は変わらない。電圧を上げていったときに反応がどう変わるか、というもう一つの軸は、この検査には最初から組み込まれていない。

直流漏れ電流法とは何か——電圧を段階的に上げていく検査

直流漏れ電流法は、ケーブルの絶縁体に直流の高電圧を印加し、そのとき流れる漏れ電流の大きさと時間変化を観察することで絶縁性能を評価する診断法である。ここまでは絶縁抵抗測定と原理が近い。違うのは、電圧を一段階で終わらせず、階段状に上げていく点にある。

実務では、対象ケーブルを停電させたうえで、電圧階級に応じた複数の段階を設定する。例えば6kV級ケーブルであれば、第1段階をDC5kV、第2段階をDC10kVとし、各段階で5〜10分程度、記録計で漏れ電流の時間変化を追っていく。実際に販売されている直流漏れ電流測定装置も、こうした段階的な電圧印加(ステップ課電)を前提とした仕様で作られており、測定はPCによる自動計測に対応した機種も存在する。

測定の接続方法にも工夫がある。ケーブルの電路と大地間を測定する一般的な接続(E端子接地方式)でまず測定し、そこで十分に高い抵抗値が出れば、それをケーブル全体の絶縁性能として採用する。もし数値が低ければ、ケーブルの金属遮へい層の接地線を一時的に切り離し、遮へい層と大地の間にだけ着目する接続(G端子接地方式)に切り替えて、ケーブル絶縁体そのものの状態をより精密に測定し直す。二段構えの接続方式を使い分けることで、周辺の配線や機器の影響を切り分けながら、対象ケーブル固有の劣化状態に迫っていく。

ここで一つ、混同しやすい点を整理しておきたい。高圧ケーブルの劣化診断には、配電線にごく低い直流電圧や低周波電圧を重畳し、停電させずに測定する「直流成分法」「直流電圧重畳法」といった活線診断技術も存在する。これらは水トリー部が交流電圧の負の半サイクルに対して整流作用を持つ性質を利用したもので、名前は似ているが、数V〜数十Vというごく低い電圧を扱う点で、ここまで説明してきた停電を前提とした直流漏れ電流法とは仕組みが異なる。停電できる設備かどうかで、選ぶ診断法自体が変わってくる。

なぜ電圧を上げながら測定するのか

健全な絶縁体は、印加する電圧にほぼ比例して漏れ電流が増える。電圧を2倍にすれば電流もほぼ2倍になり、電圧を電流で割って求める見かけの絶縁抵抗値は、電圧を変えてもほとんど変わらない。実質的に一定の高い抵抗として振る舞っているからだ。

ところが、水トリーが進行した箇所には話が別だ。局所的に薄くなった絶縁体には電界が集中しやすく、印加電圧を上げるほど、その一点にかかる電気的なストレスが不釣り合いに大きくなる。結果として、健全な部分では電圧に比例した分しか増えない漏れ電流が、劣化した弱点では電圧の上昇分以上に増えていく。二つの異なる電圧段階で見かけの絶縁抵抗値を計算し、それを比べてみたときに、健全なケーブルはほとんど同じ値のまま並ぶのに対し、劣化した弱点を抱えるケーブルは高電圧側でがくんと数値を落とす。一点の測定では同じに見えていた二本のケーブルが、電圧を上げるという操作を挟んだ途端に、まったく違う顔を見せ始める。

測定結果の読み方——弱点比と成極比

この「電圧を上げたときの落差」を数値化したものが弱点比である。低い電圧段階での見かけの絶縁抵抗値と、高い電圧段階での見かけの絶縁抵抗値の比を取り、実務上の目安として、比がおおむね1程度であれば良好、1〜5であれば要注意、5以上であれば不良と判断する例が紹介されている。

これとは別の軸で見るのが成極比だ。こちらは電圧を変えずに、一つの段階の中で時間の経過とともに漏れ電流がどう動くかを見る指標である。健全な絶縁体では、電圧を印加した直後こそ電流が大きく流れるものの、時間の経過とともに徐々に減少し、やがて一定の値に落ち着く。劣化が進んでいる場合は、時間が経っても電流が下がりきらなかったり、途中で急に電流が跳ね上がる「電流キック」と呼ばれる現象が現れたりする。成極比は、印加から一定時間後の電流値と、規定時間経過後の電流値を比較する形で計算し、1以上であれば良好、0.5を下回れば不良の目安とされる。

弱点比は電圧という軸をまたいだ変化を見る指標であり、成極比は時間という軸の中の変化を見る指標だ。どちらも共通しているのは、ある一瞬の数値そのものではなく、条件を変えたときにその数値がどう動くかを見ている、という点である。絶縁抵抗値が基準を満たしているかどうかという一点判定の外側に、もう一段情報の層があるということだ。

どこで使われているか——CVケーブルの経年劣化診断が主戦場

直流漏れ電流法が最も力を発揮するのは、設置から年数が経過した高圧CVケーブルの経年劣化診断である。絶縁抵抗測定の数値が基準ぎりぎりで推移している、あるいは近隣の同種設備で事故が発生した、といった事情から更新の要否を判断したいときに、より踏み込んだ材料として使われる。事故が起きた後の原因調査で、破損箇所以外にも弱点が潜んでいないかを確認する場面でも用いられる。中国電気保安協会や東北電気保安協会をはじめとする各地の電気保安協会が、ケーブル劣化診断を専門メニューとして提供しているのも、この用途があるからだ。

通常の絶縁抵抗測定との使い分け

絶縁抵抗測定は短時間で済み、コストも低い。竣工検査や日常の定期点検で「基準を満たしているか」を広くふるいにかけるスクリーニングの役割に向いている。一方の直流漏れ電流法は、段階的な電圧印加と時間をかけた記録が必要になる分、手間もコストもかかる精密診断だ。すべてのケーブルに毎回実施するような検査ではない。

現実的な運用は、両者を対立させるのではなく、段階的に組み合わせることだ。まず絶縁抵抗測定で広く点検し、数値そのものは基準内でも経年数が長い、あるいは境界線上の値が続いているケーブルを絞り込む。そのうえで、絞り込んだケーブルに対してだけ直流漏れ電流法による精査を行い、更新の優先順位を判断する。冒頭で触れた「良好だったはずのケーブルが後から壊れた」という話も、絶縁抵抗測定を一度きりで終わらせず、この後段の精査を通していれば、電圧を上げた段階で漏れ電流が不釣り合いに増える兆候をどこかでつかめていたかもしれない。一点の数値で安心しない、という姿勢が、次の一本を守ることにつながる。


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