DF11-4DP-2DS(24)とDF11-4DP-2DSA(24)。見積書に並んだこの2つを渡されて、違いはどこかと聞かれたら、まず目が行くのは真ん中あたりに挟まった「A」の一文字のはずだ。極数は同じ4極、めっきを示す末尾の「(24)」も同じ。違うのはアルファベット1文字だけ――だとすれば、色違いか、ロットの違いか、その程度の話だろうと踏みたくなる。
ところが、ヒロセ電機の公式製品ページを開いて仕様欄を突き合わせると、この「A」は見た目以上に大きい違いを運んでいた。基板への刺さり方そのものが、90度近く変わる。
結論から言うと
DF11シリーズの型番は、ヒロセ電機公式カタログの「製品番号の構成」という図に、次の骨格が示されている。
- DF11:シリーズ名。カタログの表題は「2.0mmピッチ ダブルロウコネクタ(UL・CSA規格認定品)」で、複写機・プリンターなどのOA機器全般が用途として挙げられている。
- 4〜32の数字:極数。カタログの品名体系図に「4〜32」と明記されている。
- DP:コネクタ種別のうち「ダブルロウピンヘッダー」。基板に実装する側の部品で、今回取り上げる6型式はすべてこれにあたる。
- 2:コンタクトピッチ2.0mmを表す固定の数字。
- DS/DSA:結線部形態(端子形状)。DSは「ライトアングルディップ」、DSAは「ストレートディップ」――つまり基板に対してコネクタの開口部が横を向くか、まっすぐ立つかの違いである。
- 末尾の(24)などの数字:接点部のめっき種別と梱包形態を表す「仕様番号」。カタログの表に付く注記に、(24)はすずめっき・チューブ梱包と明記されている。
ここまでは骨格の要約にすぎない。実際に何が起きているかは、この先の分解と実機当てはめで確かめていく。
型番の分解 ── 同じ「DS」が2つの意味を持つ
ヒロセ電機のDF11カタログには「製品番号の構成」という見出しのページがある。「DF11-#DS-2C」という例を使い、5つの位置に番号を振って説明する図だ。
抜粋するとこうなる。
| 位置 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| ❶ | シリーズ名 | DF11 |
| ❷ | 極数 | 4〜32 |
| ❸ | コネクタ種別 | DS:ダブルロウソケット/DP:ダブルロウピンヘッダー/DEP:ダブルロウ中継プラグ |
| ❹ | コンタクトピッチ | 2mm |
| ❺ | 結線部形態/端子形状 | C:圧着ケース/DSA:ストレートディップ/DS:ライトアングルディップ/V:ストレートSMT |
この表を見て戸惑ったのは、「DS」という同じ2文字が、❸と❺という別々の位置に、別々の意味で登場することだった。❸のDSは「ダブルロウソケット」――つまりケーブル側に圧着する部品全体の種別を指す。DF11-4DS-2Cのような型番の頭に出てくるDSがこれにあたる。一方、❺のDSは「ライトアングルディップ」――基板側のヘッダーが、どちら向きに実装されるかという端子形状を指す。DF11-4DP-2DS(24)の末尾に出てくるDSはこちらだ。
同じ「DS」でも、型番の中のどの位置にあるかで、ソケットという部品種別の話なのか、実装方向という形状の話なのか、まったく違う情報を運んでいる。DP(ヘッダー)の型番なのに末尾がDSだから「ソケットの一種か」と読んでしまうと、足を踏み外す。
では、DSとDSAの違いを、思い込みではなく実物の仕様で確かめるとどうなるか。ヒロセ電機の製品仕様ページには「開口部方向」という項目がある。DF11-4DP-2DS(24)のページを開くと「ライトアングル」、DF11-4DP-2DSA(24)のページを開くと「ストレート」と、それぞれ明記されていた。カタログの図解でも、DS系列は「ライトアングルピンヘッダー」という見出しの下、ケーブルが基板と並行にはい出るように端子が90度折れ曲がった絵で描かれ、DSA系列は「ストレートピンヘッダー」という見出しの下、端子が基板にまっすぐ刺さる絵で描かれている。品名体系図の定義通りだった。
本体高さも、DS(24)が6.45mm、DSA(24)が6.6mmとわずかに違う。極数が増えても、この向きの違い自体は崩れない――カタログの実測寸法表では、DP-2DS(ライトアングル)とDP-2DSA(ストレート)それぞれに4〜32極までの製品番号とHRS No.が並び、同じ極数であれば基板穴の間隔を表すA・B寸法(たとえば4極ならA=6.0mm、B=2.0mm)は両系列で同じ値になっている。穴の並び自体は共通でも、コネクタがどちらを向いて立つかが違う、というのが実態に近い。
実機への当てはめ ── 6つの型式と、嵌合相手の一致
yamlに載っている6つの型式を、ここまでの規則に当てはめる。
DF11-4DP-2DS(24):4極・DP(ヘッダー)・DS(ライトアングルディップ)・(24)(すずめっき)。製品仕様ページで開口部方向ライトアングル・本体高さ6.45mmを確認済み。
DF11-6DP-2DS(24):6極・DP・DS・(24)。最終更新日2026/02/07の製品ページで確認。嵌合相手欄にはDF11-6DS-2C(圧着ソケット)、DF11-6DS-2DSA(05)、DF11-6DS-2R26(05)、DF11CZ-6DS-2V(22)の4部品が並ぶ。
DF11-8DP-2DS(24):8極・DP・DS・(24)。最終更新日2026/07/09の製品ページで確認。
DF11-20DP-2DS(24):20極・DP・DS・(24)。最終更新日2026/07/12の製品ページで確認。極数が20まで増えても、末尾に(24)が付く規則そのものは変わらない。
DF11-4DP-2DSA(24):4極・DP・DSA(ストレートディップ)・(24)。製品仕様ページで開口部方向ストレート・本体高さ6.6mmを確認済み。
DF11-14DP-2DSA(24):14極・DP・DSA・(24)。最終更新日2026/07/09の製品ページで確認。
6つとも、極数・コネクタ種別(DP)・端子形状(DS/DSA)・仕様番号((24))という4層構造にきれいに収まる。
ここで一つ、確かめておきたいことがあった。DS(24)とDSA(24)は形状が違うのだから、ケーブル側の相手部品も別々に用意されているのではないか、という点である。DF11-4DP-2DS(24)とDF11-4DP-2DSA(24)、それぞれの製品ページの「嵌合相手」欄を開いて突き合わせると、どちらもDF11-4DS-2R26(05)(圧着ソケット)とDF11CZ-4DS-2V(22)(中継用レセプタクル)という、同じ2部品が案内されていた。実装方向という基板側の都合が変わっても、ケーブルを差し込む相手は共通というわけだ。設計の自由度としては都合がいい話だが、これを「だから両者はどちらでも同じように使える」と読み替えるのは早計である。基板に対してコネクタがどちらを向いて立つか、必要な実装スペースがどれだけ確保できるかという条件は、ケーブル側の互換性とは別の話だからだ。
現場で間違えやすい点
一つめは、やはり「DS」の二重の意味である。品名体系図の❸(コネクタ種別)と❺(結線部形態)の両方にDSが登場するため、型番のどの位置を見ているのかを取り違えると、ソケットの話をしているつもりでヘッダーの実装方向の話をしてしまう、という食い違いが起こりうる。
二つめは、DS(24)とDSA(24)を「Aの有無だけの軽微な違い」と捉えてしまうことだ。yamlのメモ書きには「Aタイプハウジング」という表現があるが、公式の品名体系図が定義しているのは、ハウジングの型番のバリエーションというより「ライトアングルかストレートか」という実装方向そのものである。同じ基板に両方を混在させて設計してしまうと、後から気づいて設計をやり直す羽目になる。
三つめは、末尾の(24)を軽視することだ。GT5シリーズの型番を調べた際には、末尾の括弧内の数字が何を指すのか、公式資料からは特定できなかった。今回のDF11シリーズでは対照的に、カタログの表に付く【仕様番号】という注記に、(01)は金めっき、(08)はすずめっき、(24)もすずめっきだが梱包形態が違う、という定義がそのまま載っていた。同じすずめっきでも(08)と(24)は別のHRS No.として管理されている別部品であり、(24)を省略したり、似た数字の(08)や(52)と読み違えたりすると、梱包単位やめっき種別の違う部品を注文してしまう。
実務上の注意点
型番を図面や見積書に転記する際は、DP/DS/DSAという結線部形態の記号と、末尾の(24)のような仕様番号を、省略せずにそのまま書き写したい。特にDSとDSAは、見た目には1文字の違いでも、基板への実装方向という後戻りのききにくい仕様を運んでいる。
末尾の仕様番号については、今回のDF11シリーズのように公式カタログに定義が明記されている場合と、以前確認したGT5シリーズの「(70)」のように定義が確認できなかった場合とがある。同じヒロセ電機の型番であっても、シリーズが変われば末尾の数字の性質も変わりうる、という前提で、都度カタログや製品仕様ページを確認したほうがよい。
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