CQM-07とCQM-08。型番を並べて見せられたら、まず何を思うだろうか。数字が1つ違うだけの、隣り合った兄弟品。7極が8極になっただけで、あとはおおむね同じ規格に収まっているだろう——そう考えるのが自然だ。丸型コネクタでも端子台でも、型番の末尾が1つ違うだけの製品は、たいてい同じ取付枠・同じ工具・同じ周辺部材を共有している。
ところが、ILME(イルメ)のCQシリーズ角型コネクタの公式データシートを実際に開くと、その予想は外れる。CQM-07の「Size」欄には「21.21」とある。CQM-12(12極+PE、10A)も同じ「21.21」。CQM-21(21極、6.5A)も同じだ。ところがCQM-08(8極+PE、16A)だけ、「Size」欄が「32.13」に変わっている。7と12という、8を挟んで両側にいる極数の製品が同じサイズを名乗っているのに、真ん中の8だけ違う規格を名乗っている。型番の並びの規則性と、実際に収まるハウジングの規格が、ここで食い違う。
結論から言うと
ILMEのCQシリーズ標準角型コネクタインサートの型番は、次の骨格で組み立てられている。
- 系統名:CQ(標準タイプ)またはCQ4(3極+PEで40A対応の枝番)
- 性別記号:M(オス、インサート側はピン)/F(メス、インサート側はソケット)
- 極数コード:05・07・08・12・21など。CQ・CQ4の場合、この数字はそのままアース(PE)を除いた極数を表している
ここまでは素直だ。JAEの丸型コネクタのように、数字が極数と一致しないという類のクセはない。CQM-08はきちんと8極、CQM-12はきちんと12極である。
問題は、この型番のどこにも書かれていない情報がある、という点だ。それが「サイズ」——インサートを固定するハウジングやフレームの規格である。ILME公式サイトの製品データベースを実際に確認すると、CQ・CQ4シリーズの標準品は次の2つのサイズのどちらかに収まる。
- サイズ“21.21”:固定ネジ1本どめ。3極+PE・40AのCQ4M-03、5極+PE・16AのCQM-05、7極+PE・10AのCQM-07、12極+PE・10AのCQM-12、21極・6.5AのCQM-21が、いずれもこのサイズに収まる。
- サイズ“32.13”:固定ネジ2本どめ。8極+PE・16AのCQM-08(CQF-08)だけが、この記事で確認した型式の中では唯一このサイズになる。
同じ「21.21」という枠の中で、極数が3→5→7→12→21と増えるにつれ、定格電流は40A→16A→10A→10A→6.5Aと下がっていく。枠の広さは変わらないのに極数を増やせば、1極あたりに使える面積は狭くなる——それ自体は素直な理屈だ。だが、その理屈だけでは「なぜ8極のCQM-08だけ枠そのものが変わるのか」を説明できない。7極と12極という、8極を挟む両側の製品が同じ21.21に収まっているからだ。答えは、極数の多さそのものではなく、8極のCQM-08が「16Aという、CQM-05と同じ大きさのコンタクトを使い続けたまま」8本分の場所を必要とした、という組み合わせにある。
型番の分解 ── 「サイズ」が示しているのは、極数でも電流でもない
ILME公式サイトの各製品ページには、型番とともに「N. of poles」「Current」「Voltage」「Size」という項目が並ぶ。試しにCQM-05のページを開くと、「Male insert, CQ series, crimp connection, 5 poles + PE, 16 A 230/400 V 4 kV 3, size 21.21」という一文が表示される。ここまでは、型番と仕様が1対1で対応しているように見える。
だが、この「サイズ」は型番の文字列のどこにも現れない。CQM-05という型番だけを見ても、それが21.21サイズなのか32.13サイズなのかは判定できない。判定できるのは、公式データシートの「Size」欄を実際に開いたときだけだ。この点は、シェルサイズを型番の桁にそのまま埋め込む丸型コネクタの設計方針とは対照的だと言える。
では、この「サイズ」という数字自体は何を意味しているのか。ILME総合カタログCN.19の「一般的な特徴」章、「エンクロージャの特定」という項目に、次のような対応表がある。
| エンクロージャサイズ | X-Y寸法 |
|---|---|
| 21.21 | (21 × 21 mm) |
| 32.13 | 32 × 13 mm |
| 49.16 | 49.5 × 16 mm |
| 66.16 | 66 × 16 mm |
| 44.27 | 44 × 27 mm |
| 57.27 | 57 × 27 mm |
| 77.27 | 77.5 × 27 mm |
| 104.27 | 104 × 27 mm |
同カタログの説明によれば、この数字は「インサートとエンクロージャを固定するネジの中心間距離(X-Y寸法)」を表している。ただし21.21だけには注記が付く。「“21.21”サイズのインサートは固定ネジが1つのため、断面のサイズを記載しています」。つまり32.13以降の数字は正真正銘のネジ間距離だが、21.21だけは固定ネジが1本しかないため、ネジ間距離の代わりにインサート自体の断面寸法(21×21mm)を代用しているわけだ。同カタログ8頁の別の注記でも「1個ネジ固定のサイズ“21.21”、2個ネジ固定のサイズ“32.13”インサートは除く」と、21.21が1本ネジ、32.13が2本ネジという固定方式の違いがはっきり書かれている。
つまり「サイズ21.21」から「サイズ32.13」への変化は、単に「一回り大きくなった」という話ではない。1本の中心ネジで留める正方形のブロックから、2本のネジで留める縦横比の違う長方形のブロックへ、固定方式そのものが変わっている。CQ.pdf(ILME総合カタログのCQシリーズ製品ページ)の寸法図を見ると、CQ05・CQ12の挿入体には「21」「21」という数字が並んで記載されており、CQ08の挿入体には「32.2」「13.4」に近い数字が並ぶ。カタログの一般対応表にある「32×13mm」という値と、CQ08個別の詳細図に現れる実測値は、小数点以下の丸め方が違うだけで、指しているものは同じだと考えてよい。
実機への当てはめ ── 6つの型式を並べる
ここまでの読み方を、実際にラインナップされている型式に当てはめてみる。ILME公式サイトの各データシートで確認できた値をまとめると、次のようになる。
| 型番 | 極数 | 定格電流 | サイズ | 固定ネジ | コンタクト系列 |
|---|---|---|---|---|---|
| CQ4M-03 / CQ4F-03 | 3極+PE | 40A | 21.21 | 1本 | CX系(40A) |
| CQM-05 / CQF-05 | 5極+PE | 16A | 21.21 | 1本 | CC系(16A) |
| CQM-07 / CQF-07 | 7極+PE | 10A | 21.21 | 1本 | CD系(10A) |
| CQM-08 / CQF-08 | 8極+PE | 16A | 32.13 | 2本 | CC系(16A) |
| CQM-12 / CQF-12 | 12極+PE | 10A | 21.21 | 1本 | CD系(10A) |
| CQM-21 / CQF-21 | 21極 | 6.5A | 21.21 | 1本 | ─ |
「コンタクト系列」は、各製品ページの「RELATED ITEMS」欄に表示される、対応するクリンプコンタクトの型番から拾った。CQM-05のページには「CC 0.5 AN」「CCMA 0.3」といったCC系コンタクトが並び、CQF-08のページにも同じ「CCFA 0.3」といったCC系コンタクトが並ぶ。CQM-07とCQM-12のページには、代わりに「CDM2D 0.3」「CDMA 0.3」といったCD系コンタクトが並ぶ。つまりCQM-05とCQM-08は、極数こそ5と8で違うが、使っているコンタクトの「型」自体は同じCC系(16A)なのだ。一方でCQM-07とCQM-12は、極数が7と12で違っても、コンタクトはどちらもCD系(10A)で共通している。
ここまで並べると、CQM-08だけがサイズ32.13になる理由が見えてくる。21×21mmという決まった広さの中に、CD系(10A)の小さなコンタクトなら7本でも12本でも収まる。ところがCC系(16A)という一回り大きなコンタクトになると、21×21mmに収まるのは5本が限度だったのだろう。CQM-08は、CQM-05と同じCC系のコンタクトをそのまま使いながら、本数だけを5本から8本に増やそうとした型式だ。同じ大きさのコンタクトを3本も追加で押し込む余地は、21×21mmの正方形にはもう残っていない。だからILMEは、21.21サイズを拡張するのではなく、固定ネジを1本から2本に増やした32.13サイズという別の挿入体そのものへ切り替えた——手元で確認できた極数・電流・コンタクト系列の組み合わせから読み取れるのは、そういう構図である。
なお、この記事の依頼元である型式一覧には含まれていなかったが、ILME総合カタログのCQ製品ページには「CQM-04/2」(4極40A+2極10A+PE)という型式も掲載されており、これも同じ32.13サイズを使っている。4極分の40Aコンタクト(CX系)と2極分の10Aコンタクト(CD系)を同居させる複合的な構成であり、これも21×21mmには収まらなかった組み合わせの一例と見てよい。32.13サイズは、CQM-08のような「同じコンタクトを増やしたい」パターンと、CQM-04/2のような「異なる電流のコンタクトを混在させたい」パターンの、どちらの受け皿にもなっている。
現場で間違えやすい点
一つめは、型番の数字の並びから、収まるハウジングまで連続的に変化すると思い込んでしまう点だ。CQM-07・CQM-08・CQM-12という並びを見ると、真ん中のCQM-08もCQM-07やCQM-12と同じ21.21サイズのハウジング(CK/MKシリーズなど)に収まりそうに見える。だが実際には、CQM-08だけ専用のCQ/MQシリーズという別のハウジング系統が必要になる。既設のCK/MKハウジングにCQM-08用のインサートだけを追加しようとすると、そもそも固定ネジの数(1本か2本か)から合わない。
二つめは、CQM-21の定格電流表記のゆれである。ILME公式サイトのデータシートでは、型式説明文とEN 61984規格に基づく特性欄はどちらも「6,5A」と記載されているのに、同じページのTechnical dataブロックにあるCurrent項目だけが「5 A」になっている。パンくずカテゴリの表記も「CQ 6.5/10/16/40 A INSERTS」であり、CQシリーズの電流ラインナップは6.5・10・16・40Aの4段階である旨が示されている。1箇所だけの数字を鵜呑みにせず、型式説明文かEN 61984のコードで確認したほうがよい。
三つめは、「CQ4」という系統名を見て、ハウジングまで一回り大きいと思い込んでしまう点だ。CQ4M-03は40Aという大きな電流に対応する専用コンタクト(CX系)を使っているが、ハウジングのサイズは21.21のままである。系統名が変わることと、ハウジングサイズが変わることは、別々に確認する必要がある。
四つめは、交換用コンタクトを手配する際に、極数の近さでコンタクト系列まで同じだろうと判断してしまう点だ。CQM-07(10A・CD系)の予備コンタクトを探すつもりで、極数が近いCQM-08(16A・CC系)の型番から連想して部材を選ぶと、系列自体が違う部品に行き着く。極数の近さと、コンタクト系列の共通性は、必ずしも一致しない。
実務上の注意点
CQシリーズの型式を選定・手配する際は、型番の極数コードだけで判断せず、必ず公式データシートの「Size」欄を確認したい。既設の制御盤にすでに21.21サイズのハウジングが取り付けられている場合、そこに追加できるのは21.21サイズのインサート(CQ4M-03、CQM-05、CQM-07、CQM-12、CQM-21)に限られる。CQM-08を後から追加したい、という要望が出た場合は、インサートだけでなく、32.13サイズに対応したCQ/MQ系ハウジングごと手配が必要になる可能性が高い。
また、コンタクトを個別に手配する場面では、極数ではなくコンタクト系列(CC系・CD系・CX系)で在庫や互換性を確認したほうが、手戻りが少ない。同じ21.21サイズの中でも、CQM-05とCQM-07・CQM-12ではコンタクトの型番体系そのものが違う。
配線仕様や既設ハウジングの型番が分からない場合は、現物の型番か図面をお知らせいただければ、電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)にて適合品を確認する。
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