ヴィーランドエレクトリック・ジャパンのRST系について、自社データにこう書いた覚えがある。「RST20I3S=RST Classicシリーズのソケット」。3極・20A・250/400V・IP68。書いた時点では、たしかにそう見えた。型番の末尾が「S」で終わっている。ソケットの頭文字も「S」ではないか、と。
だが、この思い込みには裏がある。ヴィーランド公式のeショップで実際の製品ページを開くと、末尾に「S」が付く型式は、ソケット側だけでなくプラグ側にも存在した。「S」はどうやら雌雄を言っているのではない。では何を言っているのか。それを確かめるところから、この記事は始まる。
結論から言うと
型番「RST20I3S」「RST16I3S」は、次の要素が順に並んだものである。
- RST ── ヴィーランドの丸型プラグコネクタ製品群の共通名
- 20 / 16 / 25 / 50 ── 定格電流(アンペア)。RST20とRST25はどちらも「RST Classic」ファミリーに属する
- I3 ── 極数(3極)。IとNの組み合わせで2極〜7極までを表す
- S(またはF) ── 接続方式。S=ねじ接続(screw connection)、F=ばね式のスプリングクランプ接続(spring clamp connection)
- S1 / B1 / S2 / B2 ── 雌雄と接続方式の再表示。S=プラグ側(雄)、B=ソケット側(雌)、数字の1はねじ接続、2はスプリングクランプ接続に対応する
- ZR1〜ZR3(またはZT1〜) ── 適合ケーブル外径。RST Classic系はZR、RST Mini系はZTという別の記号系列を使う
- 末尾の色記号(SW・GL・GN など) ── コーディングカラー。電圧クラスと極表示の組み合わせに対応する識別色
つまり、「RST20I3S」という並びだけでは、まだプラグかソケットかは決まっていない。雌雄を決めているのは、そのあとに続く「S1」なのか「B1」なのか、という部分である。この分解が実際の製品データと一致することを、次の章で一つずつ確認していく。
型番の分解 ── 公式カタログとeショップが示す6つの層
「20」「16」は電圧ではなく、電流の数字だった
RST系の型番を見て、まず「20」「16」という数字が何の単位なのか気になった。250Vや400Vという電圧値と並べて語られることが多いだけに、電圧クラスの略記かとも思える。
公式カタログ(Order No. 0690.1)の技術データ表を一つずつ確認すると、答えはどの製品でも一貫していた。RST08(RST MICROシリーズ)は「Rated current: 8 A」、RST16(RST MINI)は「Rated current: 16 A」、RST20(RST CLASSIC)は「Rated current: 20 A」、RST25(同じくRST CLASSIC)は「Rated current: 25 A」、RST50(RST POWER)は「Rated current: 50 A」。RSTに続く数字は電圧ではなく、そのまま定格電流のアンペア数だった。
ここで一つ、自社データの前提を修正する必要が出てくる。「RST Classic=RST20」という対応は、間違いではないが不完全だ。カタログの目次では「RST20/25」がひとまとまりの章として扱われており、RST25もRST Classicファミリーの一員として存在する。ただしRST25はi3(3極)とi5(5極)だけの展開で、RST20が持つi2〜i7という幅広い極数ラインアップは持たない。20Aで足りない電流容量が必要になったとき、次に見るべきはRST Classicの中のRST25であって、別ファミリーへの乗り換えではない。
「I3」の3は、極数がそのまま数字になっている
「I3」の部分は、カタログの章立てを見ればすぐに読み解ける。「RST20i2」「RST20i3」「RST20i4」「RST20i5」「RST20i6」「RST20i7」という具合に、Iに続く数字が2〜7まで並び、それぞれ「2-pole」「3-pole」という見出しに対応していた。I3なら3極、I5なら5極。ここは型番の中でもっとも素直な部分だ。
末尾の「S」は雌雄ではなく、ねじ接続かばね式かを言っている
問題は、この先に付く「S」だった。冒頭で触れた「RST20I3S=ソケット」という思い込みを、実際の製品データで確かめてみる。
公式eショップで品番96.032.5055.7のページを開くと、型式は「DEVICE CONNECTOR RST20I3S S1 M01VH GN0」、説明文には「connection type screw connection」「model male」とある。型番の末尾が「S」で終わっているにもかかわらず、これは雄側(male)の製品だった。ソケットどころか、プラグ側にも「S」が付いている。
では「S」は何を言っているのか。同じ説明文に手がかりがある。「connection type screw connection」——接続方式が「ねじ接続」であることを示す項目だ。型式中の「S」は、この接続方式のことだった。裏付けとして、スプリングクランプ接続(ばね式)の製品を見ると、品番96.031.0053.1の型式は「CONNECTOR RST20I3F B2 ZR1 SW」で、説明文は「connection type spring clamp connection」「female」となっている。SがねじならFはばね。「S」は接続方式を表す記号であって、雌雄とは無関係だった。
雌雄を実際に決めているのは、Sのさらに後ろに続く記号
では雌雄はどこで決まるのか。同じ2つの製品を見比べると、「S」の直後にもう一つ別の記号が続いている。プラグ側は「S1」、ソケット側は「B1」あるいは「B2」だ。
Sはドイツ語のStecker(プラグ、雄側)、Bは同じくBuchse(ソケット、雌側)を指すとみられる。数字の1と2は、直前の接続方式ともう一度対応していて、ねじ接続の製品には1が、スプリングクランプ接続の製品には2が付く(S1=プラグ・ねじ接続、S2=プラグ・ばね式、B1=ソケット・ねじ接続、B2=ソケット・ばね式)。接続方式の情報が「S/F」と「1/2」の二箇所に重複して埋め込まれている格好だが、雌雄そのものを担っているのは、あくまで英字の部分——SかBか——のほうである。
自社データの「RST20I3S=ソケット」という記述は、この「S1」「B1」の存在を踏まえていなかった、ということになる。「RST20I3S」という文字列単独では、実はまだプラグかソケットか決まっていない。
ケーブル径を示す記号は、Classic系とMini系で系列が違う
雌雄の後ろに続くのは、適合するケーブルの外径を示す記号だ。RST20I3S側の製品を3品番並べると、ZR1が品番96.032.4053.x(cable diameter 6-10mm)、ZR2が品番96.032.4153.x(cable diameter 10-14mm)、ZR3が品番96.032.4553.x(cable diameter 13-18mm)と対応していた。
ところがRST16I3側で同じ位置を確認すると、記号がZTに変わる。品番46.032.4553.1の型式は「CONNECTOR RST16I3 S S1 ZT4 SW」で、説明文には「cable diameter 5 - 10.6 mm」とある。RST Classic系のZRと、RST Mini系のZTは、似た位置に置かれた別の記号系列であり、番号の並び方(ZT4がZT3より細いケーブル用など)も単純な昇順にはなっていない。ケーブル径の互換性を型番だけで判断せず、この位置の記号が指す実際のmm値を都度確認したほうがいい。
色の記号は、電圧クラスと極表示のペアを表す識別色
型番の末尾に付くSW・GL・GN・BLといった2文字は、コーディングカラー(識別色)を表す。公式カタログの「Definition of our numerical code」ページには、この色がケーブルアセンブリの品番末尾の数字とどう対応するかを示す表があり、light grey=0、black=1、concrete grey=3、signal brown=4、turquoise blue=6、leaves green=7、pebble grey=8、light blue=9と定義されていた。実際にRST20I3の黒色品の品番が「…4053.1」、明るい灰色品が「…4053.0」、若葉色品が「…4055.7」で終わっていることとも一致する。
色は見た目だけの違いではない。RST Classic i3の色分け表を見ると、黒は250V・L/N/PE表示、若葉色は250/400V・1/2/PE表示、明るい青は250/400V・1/2/3表示というように、色ごとに電圧クラスと極の意味づけが変わる。プラグ側とソケット側の色を揃えて選ぶのは、デザインの統一ではなく、誤接続を防ぐための機械的・電気的なコーディングだからだ。
実機への当てはめ
自社データが挙げていた2品番を、ここまでの分解に当てはめておく。
| 型番の骨格 | 系列 | 極数 | 定格電流 | 接続方式 | IP等級(公式表記) |
|---|---|---|---|---|---|
| RST20I3S | RST CLASSIC | 3極 | 20 A | ねじ接続(S1=プラグ/B1=ソケット) | IP66/68 (3m;2h) /IP69 |
| RST16I3 S | RST MINI | 3極 | 16 A | ねじ接続(S1=プラグ/B1=ソケット) | IP66/68 (3m;2h) /IP69 |
自社データでは「RST20I3S=IP68」「RST16I3S=IP66/68/69」と、同じ接続方式・同じ極数の製品なのにIP表記の粒度が揃っていなかった。公式カタログの技術データ表を見る限り、両者のIP等級は実際には同一で、どちらも「IP66/68 (3m;2h) /IP69」という3規格併記が正確な表記である。
現場で間違えやすい点
一つめは、すでに触れた「S=ソケット」の思い込みだ。型番の見た目の語呂に引っ張られると、「S」で終わる型式をソケット扱いしてしまう。実際にはSは接続方式、雌雄はさらに後ろのS1/B1が担っている。見積依頼や図面転記の際は、型番の末尾だけでなく、雌雄を示す記号がどこにあるかまで追ったほうがいい。
二つめは、「RST20I3S」と「RST16I3 S」を同じ書き方のルールで扱ってしまうことだ。公式eショップの製品ページを確認する限り、RST Classic系は極数記号と接続方式の「S」が続けて書かれるのに対し、RST Mini系は間にスペースが入る。同じ意味の記号でも製品ラインによって詰め方が違うため、型番の文字列をそのまま検索キーにすると、スペースの有無で該当製品を取りこぼすことがある。
三つめは、IP等級を「68」や「69」の一部だけ切り出して伝えてしまうことだ。公式の表記は3つの規格を同時に満たすという意味の併記であり、どれか一つだけを条件書に書くと、残りの規格が要求される現場(高圧洗浄が必要な工場など)で適合根拠が抜け落ちる。
実務上の注意点
図面やお客様の手元資料に「RST20I3S」とだけ書かれている場合、それは接続方式まで特定できていても、雌雄・ケーブル径・色(=電圧クラスと極表示)までは確定していない、という状態だと考えたほうがいい。実際の発注では、この型式(Type)ではなく、96.032.4053.1のような数字のみのArt.No.(品番)で品目を一致させるのが確実だ。型式は表記が製品ラインによって揺れる一方、品番は一意の識別子として機能する。
また、プラグ側とソケット側を組み合わせて使う都合上、色(コーディングカラー)は電圧クラス・極表示とセットで決まる。同じ「RST20I3S」でも色が違えば結線の意味が変わるため、更新前の設備でどの色が使われているかを、可能であれば現物やコネクタ本体の刻印で確認してから選定するとよい。
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