手にしたプラグの背中に「770-114」という刻印がある。そばに置いてあった小さな黒い部品には「770-101」。並べてみると、どちらも「770-1」という同じ書き出しで、残りは2桁だけだ。だったら読み方も同じはずだと考えるのが自然だろう。百の位が何かを表し、十の位が何かを表し、一の位が極数か何かを表す——そういう規則が、この二つの型番にも共通して効いているに違いない。
ところが、WAGOの公式データシートと公式製品ページを実際に取得して並べてみると、そうはなっていなかった。770-114は確かに桁ごとの規則で読み解ける型番だが、770-101はそもそも「極数」という項目自体を持たない、まったく別種の部品だった。見た目の並びが同じだからといって、同じ規則が通用するとは限らない。この二つの型番を手がかりに、WINSTA MIDI 770シリーズの型番がどこまで規則的で、どこから規則の外に出るのかを、WAGO公式資料に基づいて分解していく。
結論から言うと
WINSTA MIDI 770シリーズのプラグ・ソケット(コードA・共通仕様品)は、次の3桁で規則的に組み立てられている。
- 百の位:ハウジング形状。「1」ならストレーンリリーフハウジング一体型、「2」なら別体(ハウジングなし)
- 十の位:雌雄。「0」ならソケット(メス)、「1」ならプラグ(オス)
- 一の位:極数。2〜5極までがそのまま数字に対応
770-114であれば「1(ハウジング付)・1(プラグ)・4(4極)」という組み立てになる。ここまでは規則通りだ。
だが770-101は、この規則の対象外にある。WAGO公式製品ページには「Locking lever; for flying leads; for manual operation; black(ロッキングレバー;空中配線用;マニュアル操作用;ブラック)」とあるだけで、770-114の「4-pole」のような極数(pole)の表記がどこにも現れない。ロッキングレバーは特定の極数に属する部品ではなく、どの極数のプラグ・ソケットにも共通して使う汎用アクセサリだからだ。同じ「770-1」で始まる型番でも、プラグ・ソケットの型番とロッキングレバーの型番は、そもそも別の採番ルールの上に立っている。
型番の分解 ── 770という数字が背負っているもの
まず「770」という数字そのものから確認しておきたい。WAGO公式カタログ「Product Short Form 6.0」のWINSTA製品一覧図表には、WINSTAの3サイズと対応する製品グループ番号が並べて示されている。
| サイズ | 対応シリーズ番号 | 対応電線サイズ・定格 |
|---|---|---|
| WINSTA MINI | 890・891シリーズ | 1.5mm² / 16A / 250V |
| WINSTA MIDI | 770・771シリーズ | 4mm² / 25A / 400V |
| WINSTA MAXI | 831シリーズ | 6mm² / 35A / 250-400V |
770という数字は、極数でも定格でもなく、まずWINSTAのどのサイズに属する製品かを表す製品グループ番号だ。この時点で「770」はMIDIサイズであることしか言っていない。極数・雌雄・ハウジング形状は、後ろに続く3桁が担っている。
その3桁を、770-114という実例に沿って一段ずつ剥がしていく。公式データシートによれば、770-114の製品名は「Plug; with strain relief housing; 4-pole; 4,00 mm²; black」だ。「Plug」が雄側であること、「with strain relief housing」がハウジング一体型であること、「4-pole」が4極であることを、それぞれ英語の説明文がそのまま述べている。この3つの属性と、型番末尾の「114」という並びを突き合わせると、百の位「1」がハウジング付、十の位「1」がプラグ、一の位「4」が極数、という対応が浮かび上がる。
思いつきで終わらせず、この対応を他の品番でも確かめておく。WAGO公式サイトの製品ページを個別に確認すると、次のように揃っていた。
| 型番 | 百の位 | 十の位 | 一の位 | 公式表記 |
|---|---|---|---|---|
| 770-103 | 1(付) | 0(ソケット) | 3(3極) | Socket; with strain relief housing; 3-pole |
| 770-105 | 1(付) | 0(ソケット) | 5(5極) | Socket; with strain relief housing; 5-pole |
| 770-104 | 1(付) | 0(ソケット) | 4(4極) | Socket; with strain relief housing; 4-pole |
| 770-113 | 1(付) | 1(プラグ) | 3(3極) | Plug; with strain relief housing; 3-pole |
| 770-114 | 1(付) | 1(プラグ) | 4(4極) | Plug; with strain relief housing; 4-pole |
| 770-115 | 1(付) | 1(プラグ) | 5(5極) | Plug; with strain relief housing; 5-pole |
| 770-204 | 2(なし) | 0(ソケット) | 4(4極) | Socket; 4-pole |
| 770-214 | 2(なし) | 1(プラグ) | 4(4極) | Plug; 4-pole |
百の位・十の位・一の位のどれか1つだけを動かして他の品番を見比べても、公式表記の属性が1つだけ入れ替わる。3桁それぞれが独立した意味を持っているという見立ては、8品番分の公式データで裏付けが取れた。
実機への当てはめ ── 770-114とその相棒たち
770-114を実際に配線に使う場面を想定すると、単体では成立しない。プラグである以上、相手側のソケットが要る。WAGO公式データシートの「Counterpart(対をなす製品)」欄には、770-104(ソケット・ハウジング付・4極)が案内されている。ハウジング形状も極数も型番の桁がそのまま対応しているので、770-114の相手を探すときは、十の位を1から0に変えればいい、という見通しが立つ。
もう一つ、この製品ページには「Required accessories(必須アクセサリ)」として、ロッキングレバー4品番——770-101・770-111・770-121・770-131——が並んでいる。ここで先ほどの770-101が再び出てくる。プラグ・ソケット本体とは別に、なぜロッキングレバーという部品をわざわざ買い足す必要があるのか。
答えは同じデータシートの「Locking lever: Can be retrofitted(後付け可能)」という一文と、その下の注記にある。「空中配線(flying leads)向けのプラグ・ソケットには、追加のロッキングレバーが必要になる。一方、照明器具や機器への組み込み用(スナップイン版)、基板用、分配用の各コネクタは、工場出荷時点でロッキングレバーが装着済みである」という趣旨の説明だ。つまり770-114のような「空中配線でケーブル同士を直接つなぐ」タイプのプラグ・ソケットだけが、振動などによる抜けを防ぐロッキングレバーを別途必要とする。770-101はこの用途に対応する、黒・手動操作タイプの1品番というわけだ。
その770-101を含む4品番を並べると、採番の軸がプラグ・ソケットとはまったく違うことがはっきりする。
| 型番 | 色 | 操作方式 |
|---|---|---|
| 770-101 | 黒 | 手動(マニュアル) |
| 770-111 | 黒 | 工具操作 |
| 770-121 | 白 | 手動(マニュアル) |
| 770-131 | 白 | 工具操作 |
十の位が0〜3で色と操作方式の組み合わせを表し、一の位の「1」は4品番すべてで固定されている。プラグ・ソケットの型番であれば一の位は極数だったはずだが、ロッキングレバーの一の位は極数とは無関係に「1」のまま動かない。同じ桁の位置に、まったく別の情報が乗っている。
現場で間違えやすい点
一つめは、すでに触れた770-101のような汎用アクセサリを、プラグ・ソケットと同じ「百の位・十の位・一の位」の規則に当てはめて読んでしまうことだ。「770-1」で始まる型番を見た瞬間に「ハウジング付・ソケット・1極」のように機械的に分解すると、実在しない属性を読み込んでしまう。ロッキングレバーには極数という概念自体がない、という一次資料の記述を思い出す必要がある。
二つめは、770-114の末尾「4」を、極数ではなく対応電線サイズ「4.00mm²」の略だと誤読することだ。今回はたまたま両方とも「4」で一致しているため、どちらの意味で覚えても実害が出にくい。だが770-103・770-105の公式ページを見ると、3極でも5極でも対応電線サイズの表記は「4,00 mm²」のまま変わらない。断面積はMIDIサイズ全体に共通する仕様であって、型番の一の位が可変で示しているのはあくまで極数だ。この2つの数字がたまたま同じ値になる4極品だけを見て規則を覚えると、他の極数の品番に当てはめたときに読み違える。
三つめは、770シリーズと771シリーズを同じ棚の同じ部材だと思い込むことだ。公式カタログの一覧図表では両方とも「WINSTA MIDI」として並んでいるが、770-114の「Counterpart」欄に挙げられている771-9994は、プラグとソケットをあらかじめケーブルの両端に圧着済みの完成品(pre-assembled interconnecting cable)だった。770番台が現場で自分で結線する個別部品であるのに対し、771番台は工場で組み上げ済みの完成コードという性格の違いがある。同じ4桁の並びに見えても、771から始まる型番を770番台の部品と同列に扱うと、単品部品のつもりで完成コードを発注してしまう可能性がある。
実務上の注意点
図面や過去の発注控えに残る770番台の型番から手配する際は、まず百の位でハウジングの有無を、十の位で雌雄を確認したい。この2桁を読み違えると、ハウジング付のつもりでハウジングなし品を手配してしまったり、プラグとソケットを取り違えたりする。
コード(A、あるいはそれ以外)も別途確認が必要な項目だ。WAGO公式カタログの型番一覧表には、コードAの標準品とは別に、コードI・L・P・R・Sといった品番が並んでおり、マーキング欄には「DA+ DA-」や「LON」のような、一般的な電源配線とは異なる信号系統を示す表記が確認できる。同じ極数・同じハウジング形状の製品でもコードが違えば誤挿入防止のキー形状そのものが変わるため、既設の相手側コネクタのコードを確認せずに極数と形状だけで発注すると、物理的に嵌合しない組み合わせを選んでしまう。
空中配線でプラグ・ソケットを使う場合は、本体だけでなくロッキングレバーの要否も忘れずに確認したい。基板用・スナップイン用・分配用のコネクタには工場出荷時点でロッキングレバーが付いているが、770-114のような空中配線用の品番は本体だけでは振動対策が完結しない。色(黒/白)と操作方式(手動/工具)の組み合わせを間違えないよう、既設設備の仕様に合わせて選ぶ必要がある。
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