電材サーチのメーカーデータには、コガネイの「111シリーズ」という項目がある。型式はすべて111から始まる。111E1、111E1-2、111E1-2/AC200V、111E1-PLL/DC24V、111E1/AC100V——五つとも、頭は揃って111だ。ところが、それぞれの型式に添えられた説明を読むと、四つまでが「電磁弁110シリーズ」となっている。残る一つ、111E1-PLL/DC24Vだけは「電磁弁110-4Aシリーズ」だ。111という型番に、110という説明。しかも一つだけ、110-4Aという別の数字が混じっている。
typoかもしれない、とは思う。ただ、五分の四まで数字を揃えて間違えるというのも考えにくい。だとすれば、110と111という二つの数字は、見た目ほど矛盾していないのかもしれない。
「110シリーズ」という名前自体が、単体を指していない
確認できたのは、コガネイの公式サイト(product.koganei.co.jp)から配布されているカタログ本体だ。表紙(p.279)には「SOLENOID VALVES 110 SERIES/電磁弁110シリーズ」とある。ファイル名は110_ALL_J_Ver5_03.pdf、PDFのメタデータ上のCreationDateは2026年4月21日。取扱説明書のほうも表題は「電磁弁 110シリーズ 取扱説明書」で、こちらも呼び名は110シリーズに揃っている。
このカタログ一冊が「110シリーズ」を名乗りながら、中身には111E1も110-4E1も113-4E2も同居している。つまり「110シリーズ」は、特定の一つの型式を指す言葉ではなく、複数の型式群をまとめたカタログ・製品群の呼び名だった。個別の型式の頭に「110」が付くとは限らない——ここまではわかる。では、なぜ標準的な単体弁の型式だけ「111」という、シリーズ名とは違う数字を名乗るのか。
「111」と「110」は、単体かマニホールド専用かの境界線
答えは、型式表示の一段深いところにあった。カタログp.282「110シリーズの基本形式と構成」には、単体で使う2・3ポート電磁弁の欄に「111E1」「111E1-11」という型式が載っている。ただし、その型式のすぐ下、かっこ書きでもう一つの型式が添えられている。「(□110E1)」「(□110E1-11)」だ。注1にはこうある。
「110E1・A110E1は、2・3・5ポート混合マニホールド取付専用のバルブです。単体では使用できません。単体で使用する場合は111E1・A111E1-25を使用してください。」
なるほど、と思う。111と110は、同じ機能を持つ弁を、使い方によって呼び分けた型式だった。111E1は単体で直接配管して使える弁。110E1は、マニホールドに複数の弁を混載するときにだけ使う、単体で発注しても動かない弁。数字が違うのは誤記ではなく、発注ミスを未然に防ぐための区別だったわけだ。
念のため、5ポート弁の型式も確認しておく。同じp.282の表では、2ポジション・シングルソレノイドが「110-4E1」、ダブルソレノイドが「110-4E2」、3ポジションが「113-4E2」系列と並ぶ。頭に「111」が付くのは、直接配管の2・3ポート弁だけだ。5ポート弁はどれも「110-4」か「113-4」から始まる。マニホールドの型式でも同じ切り分けが繰り返されていて、2・3ポート弁を載せるマニホールドは「111M」、5ポート弁を載せるマニホールドは「110M」となっている。111と110の境界線は、この一冊のカタログを貫く一貫した規則だった。
「111シリーズ」は5ポート電磁弁なのか
ここで、もう一つ引っかかる。電材サーチのメーカーデータでは、111シリーズを「5ポート電磁弁の定番シリーズ」と紹介している。だが、いま確認した基本形式表を見返す限り、111E1自体は2・3ポート弁だ。出力ポートは2(A)ポート一つ。カタログの別の注記(p.291)にも「111E1、A111E1の出力ポートは2(A)ポートになります」とあり、これは3ポート弁の構成であって、5ポート弁の構成ではない。
シリンダの往復動作を切り替える5ポート弁が欲しいなら、型式は111E1ではなく、110-4E1(シングルソレノイド)か110-4E2(ダブルソレノイド)になる。「111シリーズ」というくくり方自体は、コガネイの製品ページの通称として成立している。だが、111E1という個別の型式一つを取り出して「5ポート電磁弁」と言い切ると、カタログの基本形式表とは食い違ってしまう。
「-2」は、ダブルソレノイドではない
型式の中身にも、もう一段疑わしい記号が残っている。「111E1-2」だ。電材サーチのデータは、この型式をダブルソレノイド・DC24Vと説明している。ダブルソレノイドなら、通電を止めても位置を保持できる弁のはずだ。
だが、注文記号の一覧(カタログp.288「110シリーズ電磁弁・パイロット切換弁注文記号」)には、そう書かれていない。同じページの凡例には、2・3ポートバルブのポート数として「3ポート=無記入」「2ポート=-2」という対応が示されている。ダブルソレノイドの記号ではなく、2ポート弁を選ぶときに付ける記号だ。しかも2・3ポート弁の欄には、そもそもダブルソレノイドという選択肢自体が用意されていない。ダブルソレノイドが選べるのは5ポート弁の「110-4E2」のほうであって、2・3ポート弁の「111E1」に「-2」を足しても、ダブルソレノイドにはならない。
念のため、同じカタログの別ページでも裏を取っておく。p.282の一覧表では、111E1系列(2・3ポート弁)と、110-4E1(2ポジション・シングルソレノイド)・110-4E2(同・ダブルソレノイド)という5ポート弁が、先頭の数字から別の行として並んでいる。ダブルソレノイドという選択肢が置かれているのは5ポート弁の側であって、111E1の側ではない。電材サーチのデータにある「111E1-2=ダブルソレノイド」という説明は、注文記号表とも一覧表とも噛み合わない。
「110-4Aシリーズ」という、また別の型式
残る一つ、111E1-PLL/DC24Vの説明にも触れておく。電材サーチのデータはこれを「電磁弁110-4Aシリーズ」としている。だが、カタログの注文記号表を辿ると、111E1-PLLは111E1という基本形式に、エルコネクタ配線(-PLL)とDC24Vを組み合わせただけの、ごく普通の2・3ポート弁だ。
一方の110-4Aは、同じp.288の下段に載っている別物で、「5ポートシングルパイロット パイロット切換弁(オーダーメイド)」という注記が付く、受注生産の切換弁だ。ポート数も、単体・マニホールド専用の区別も、発注方法(標準品か受注生産か)もまったく違う。111E1-PLL/DC24Vと110-4Aを同じ製品として扱うのは、カタログの構成上は無理がある。
ただ、この混同がどこから来たのかについては、見当がつく部分がある。通販サイトの商品見出しでは、111E1-PLL/DC24Vや111E1-2/AC200Vといった品番に「空気作動弁110-4Aシリーズ」というカテゴリ名が添えられていることがある。電材サーチのデータにある「110-4Aシリーズ」という注記は、コガネイのカタログではなく、こうしたサイト側の商品分類をそのまま引き写した可能性がある。
型番を分解して当てはめる
ここまでの読み方を、五つの型式にあてはめ直しておく。
111E1(DC24V)は、直接配管・2・3ポート・常時閉(NC)の基本形式そのものだ。カタログの表記通りで、無理がない。「シングルソレノイド」という説明も、2・3ポート弁がそもそも単一の電磁石で開閉する構造である以上、大きくは外れていない。
111E1-2(DC24V)は、「-2」が2ポート弁を選ぶ記号である以上、ダブルソレノイドではなく、常時開・常時閉のどちらか一方だけを持つ2ポート仕様になる。111E1-2/AC200Vも、同じ2ポート弁の電圧違いだ。
111E1-PLL/DC24Vは、111E1の基本形式にエルコネクタ配線(-PLL)とDC24Vを組み合わせた型式で、110-4Aとは別系統。111E1/AC100Vは、111E1の基本形式にAC100Vを組み合わせただけの、111E1(DC24V)と対になる素直な型式だ。
こうして並べると、五つのうち三つ(111E1、111E1-PLL/DC24V、111E1/AC100V)はカタログの構成とそのまま一致し、二つ(111E1-2、111E1-2/AC200V)の「ダブルソレノイド」という説明と、一つ(111E1-PLL/DC24V)の「110-4Aシリーズ」という説明に、裏付けの取れない食い違いが残る。
現場で間違えやすい点
制御盤の更新でこのシリーズに触れるとき、間違えやすい点は三つある。
一つめは、110E1と111E1の取り違えだ。カタログにかっこ書きで示されている通り、110E1はマニホールド混載専用で、単体では動かない。既設の制御盤から外した弁の刻印が「110E1」だったからといって、そのまま単体品として発注すると、届いた弁がマニホールドの一部としてしか機能しない。単体が欲しいなら、頭を111E1に読み替える必要がある。
二つめは、「-2」を見て安易に双方向・保持型の弁だと思い込むことだ。他メーカーの型式表示に慣れていると、末尾に付く数字が切換方式(シングル・ダブル・3位置)を表すことが多いため、コガネイの「-2」もそう読みたくなる。だが、このシリーズの「-2」はポート数の記号であって、切換方式の記号ではない。
三つめは、流通サイトの商品カテゴリ名を、メーカーの型式区分だとそのまま信じてしまうことだ。「空気作動弁110-4Aシリーズ」という見出しは、少なくとも今回確認した2件では、コガネイ自身のカタログ構成とは一致していなかった。型式の意味を確認するときは、販売店のカテゴリ名ではなく、メーカーの注文記号表まで遡る必要がある。
実務上の注意点
実際に発注する際は、型式と一緒に次の三点を確認しておきたい。
配管形式(直接配管かサブベース配管か)。頭にAが付くかどうかで分かれ、サブベース配管には「-25」というサブベース付きの記号が必要になる。
配線方式(無記入のグロメットか、-PSLのストレートコネクタか、-PLLのエルコネクタか)。既設の配線コネクタ形状と一致しないと、弁だけ交換しても結線し直しになる。
電圧(DC12V・DC24V・AC100V・AC200V)。同じ111E1でも電圧が違えば別部品で、コイルの互換性はない。
これらはすべて、注文記号表(カタログp.288)の一つの行の中に収まっている。型式の後ろに何も付いていない状態(111E1、電圧のみ指定)を基準に、必要な記号を一つずつ足していくと読みやすい。
コガネイの電磁弁は、110E1と111E1のように見た目の近い型式が複数存在し、既設設備の現物確認だけでは判断がつかないことがある。電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、刻印の写真や現物からの型式照合、配線方式・電圧を含めた発注仕様の確定までのご相談を見積フォームで受け付けている。
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