避雷器を1台入れ替えるだけの案件でも、見積を頼む相手は同じではない。低圧SPDと高圧避雷器を一緒に揃えたいのか、保安器や盤とまとめて発注したいのか、欧州仕様の盤に合う型番が要るのか。「どのメーカーが良いか」ではなく「何を一緒に頼めるか」で答えが変わる。ここでは主なメーカーの例として3社を横に並べ、その違いが公式資料のどこに書かれているかまで示す。
この記事でわかること
- 音羽電機工業・昭電・DEHNの創業と、公式に掲げている事業内容の構成
- 3社が公式サイトに並べている雷・SPD製品のカテゴリと、載っている品番の例
- SPDと避雷針の根拠になるJIS Z 9290-3/-4の役割分担
- 建築基準法上の避雷設備の技術基準が2025年4月に置き換わったこと
- メーカーで先に絞ってはいけない理由と、先に決めるべき条件
避雷器(SPD)メーカーの比較表(主なメーカーの例)
| 比較項目 | 音羽電機工業 | 昭電 | DEHN(日本拠点) |
|---|---|---|---|
| 創業/設立 | 1946年(昭和21年)5月11日創業 | 1965年(昭和40年)10月15日設立 | 「1910年以来」と記載(設立年の記載は当該ページになし) |
| 本社/日本拠点 | 兵庫県尼崎市潮江5-6-20 | 東京都墨田区太平四丁目3番8号 | 横浜市神奈川区鶴屋町2丁目23番地2 TSプラザビルディング16階 |
| 資本金 | 8,190万円 | 302,400,000円 | ―(当該ページに記載なし) |
| 代表者 | 代表取締役社長 吉田 厚 | 代表取締役社長 太田 光昭 | ―(当該ページに記載なし) |
| 事業内容の構成 | 6項目すべてが雷・サージ対策とその周辺(低圧サージ対策製品/高圧サージ対策製品/その他雷対策関連製品/雷対策コンサルティング・電気工事一式および保守管理/雷情報サービス・受託試験/各種デバイス製品) | 電源・通信用保安器および通信用端子板・配線盤・分電盤/免震装置・耐震フレーム・フリーアクセスフロア/光ファイバネットワーク関連機器/LAN関連機器・各種伝送用スイッチ・PBX等/電気・空調・LAN配線・耐震建築等の総合設備工事/その他雷害対策・地震対策・火災・防犯・防災対策・情報通信ネットワークの構築・運用・保全に関するコンサルティング | 雷保護、過電圧保護、電気設備での安全な作業のための対策 |
| 公式サイトの雷・SPD製品カテゴリ | 電源用SPD クラスⅠ/電源用SPD クラスⅡ/接地間用SPD/SPD盤・その他電源用避雷器/信号回線用SPD・避雷器/LAN用SPD・同軸ケーブル用SPD/耐雷トランス/高圧用避雷器/電源トラブル対策/家庭用避雷器/サージ検出装置・試験器など | 外部雷保護システム/電源用SPD/通信用SPD/一般民需用/電力用保安装置/鉄道用保安器/関連製品 | 過電圧保護装置、複合避雷器(コンビネーション放電器)、状態監視ユニットなど |
| 公式サイトに載る品番の例 | ―(型番は製品カテゴリ側に掲載) | ―(型番は製品カテゴリ側に掲載) | DEHNguard M DC ACI 1250 FM=972150(タイプ2、DC充電装置用 最大1250Vまで対応)、DEHNventil M2 TT FM=956315(タイプ1+2+3、TTシステムおよびTN-Sシステム用、3+1回路)。DEHNventil M2シリーズはEN 61643-11に準拠したタイプ1+2+3のコンビネーション放電器と説明されている |
表の各セルは、音羽電機工業は同社会社概要(otowadenki.co.jp/profile3)と公式サイトの製品案内、昭電は同社会社概要(sdn.co.jp/company/profile/)と「雷害対策」ページ(sdn.co.jp/products/lightn/)、DEHNは日本サイト(dehn.jp/ja)の記載による。「―」は「参照した公式ページに記載が確認できなかった」という意味で、無いことの証明ではない。
表の前提: ここに並べたのは会社の輪郭と公開されている製品の区分であって、製品の性能比較ではない。SPDの適合は接地系統(TN-C/TN-S/TT)・使用電圧・設置位置・上位遮断器との協調で決まるため、この表だけで機種は決まらない。
3社の違いは事業内容の構成に出る
音羽電機工業は、会社概要に挙げる事業内容6項目のすべてが雷・サージ対策とその周辺で構成されている。低圧サージ対策製品(電源用避雷器、信号回線用避雷器、電話回線用避雷器、耐雷トランス等)と高圧サージ対策製品、その他雷対策関連製品の開発・製造・販売に加え、雷対策コンサルティングと電気工事一式および保守管理、雷情報サービス・受託試験、各種デバイス製品の研究開発・製造・販売が並ぶ(同社会社概要より)。1946年創業で、社長メッセージには「当社は1946年に創業し『雷との共生』を常に考え、今年創業80年の節目を迎えます」と記されている(同社サイトより)。低圧から高圧までの製品と、調査・相談・受託試験までを1社に集められるのがこの型の特徴だ。
昭電は1965年設立で、事業内容の筆頭に「電源・通信用保安器および通信用端子板、配線盤、分電盤の製造販売」を掲げ、免震装置・耐震フレーム・フリーアクセスフロア、光ファイバネットワーク関連機器、LAN関連機器・各種伝送用スイッチ・PBX等、さらに「電気、空調、LAN配線、耐震建築等の総合設備工事」を並べたうえで、「その他雷害対策、地震対策、火災・防犯・防災対策、情報通信ネットワークの構築・運用・保全に関するコンサルティング」を記載している(同社会社概要より)。雷害対策の製品も、外部雷保護システム・電源用SPD・通信用SPD・一般民需用・電力用保安装置・鉄道用保安器・関連製品というカテゴリで公開している(同社「雷害対策」ページより)。避雷設備だけでなく、盤や工事、耐震まで同じ相手に頼める点が、避雷単体で見るのとは違う価値になる。
DEHNは、日本サイトで「当社の雷保護、過電圧保護、および電気設備での安全な作業のための対策に関する専門知識により、1910年以来、複雑な状況下でも電気システムの信頼性の高い運用を可能にしています」と記載している(DEHN日本サイトより)。製品の説明は接地系統や用途別に分かれており、DEHNventil M2 TT FM(品番956315)は「TTシステムおよびTN-Sシステム用、3+1回路」のタイプ1+2+3として、DEHNguard M DC ACI 1250 FM(品番972150)はDC充電装置用(最大1250Vまで対応)のタイプ2として案内されている(同)。接地系統や用途から型番が引ける構成になっているのが欧州系の特徴だ。
SPDの根拠になる規格の役割分担
避雷器の話が噛み合わなくなるのは、外部雷保護(避雷針)と内部雷保護(SPD)が別の規格で扱われているためだ。
| 対象 | 規格・法令 | 何を扱うか |
|---|---|---|
| 直撃雷対策(建築設計) | JIS Z 9290-3「雷保護 建築物等への物的損傷及び人命の危機」 | 建築物への直撃雷と、それによる人命の危険 |
| 雷サージ対策(電気設計) | JIS Z 9290-4「雷保護 建築物等内の電気及び電子システム」 | 建物内部の電気・電子システムの保護(SPDはここ) |
| 建築基準法上の避雷設備 | 避雷設備告示(令和6年国土交通省告示第151号による改正後) | 2025年(令和7年)4月1日から、JIS Z 9290-3-2019に規定する外部雷保護システムに適合する構造 |
| 住宅の分電盤 | 内線規程(平成28年改訂) | 住宅用分電盤内へのSPD設置を推奨 |
| 危険物施設 | 危険物の規制に関する規則(令和3年5月改正) | 外部雷保護レベルは原則Ⅰとする |
表の前提: JIS Z 9290-3/-4の役割分担は音羽電機工業「JIS概要」、内線規程と危険物規則の各項は同社「各種法令・規格」による。建築基準法上の扱いは、国土交通省住宅局建築指導課長 国住指第532号(令和7年4月1日)による。
ここは間違えやすい。避雷設備告示は長らく「JIS A 4201-2003に規定する外部雷保護システムに適合する構造」を要件としていたが、令和6年国土交通省告示第151号(令和6年3月8日公布)によりこの規定は廃止され、2025年(令和7年)4月1日からJIS Z 9290-3-2019へ置き換わった。JIS A 4201-2003によることができる経過措置は、建築物の工事の着手が2026年(令和8年)3月31日以前の建築物に限られ、この期間はすでに終了している。この「工事の着手」は避雷設備の設置に係る工事ではなく、避雷設備を設置する建築物の工事の着手を指す(いずれも国住指第532号)。メーカーや工事業者の解説ページには改正前のJIS A 4201:2003を前提にした記述が残っていることがあるため、建築基準法側は告示と技術的助言で確認したい。
なお、これらは設計の根拠を示すもので、機種の適合を決めるものではない。規格の全体構成はJIS Z 9290シリーズとは、受雷部の設計基準と告示改正の詳細はJIS A 4201とは、SPDを設置していても効かなくなる現場条件(接地抵抗と経年劣化)は避雷器(SPD)を付けていたのに制御盤が全損した事例にまとめてある。
メーカーで先に絞らない
SPDは、接地系統・使用電圧・設置位置・上位遮断器との協調・盤内の取付方式で適合が決まる。メーカーを先に決めてから型番を探すと、接地系統が合わずに手戻りになりやすい。先に決めるのは、保護したい回路がTN-C/TN-S/TTのどれか、引込口か末端か、そして既設盤のどこに何mmの幅で入るか。そのうえで各社の型番表に当たること。
異メーカーへの置き換えは、数値が近くても代替候補(要仕様確認・現物確認)として扱い、両社の公式資料の数値を突き合わせたうえでメーカーの技術窓口に確認する。ここに示した比較は目安であり、互換性を保証するものではない。
よくある質問
Q. 避雷器(SPD)のメーカーにはどんな会社がありますか?
国内で避雷器・SPDを手がけるメーカーの例として、音羽電機工業(兵庫県尼崎市・1946年創業)、昭電(東京都墨田区・1965年設立)、ドイツDEHNの日本拠点(横浜市)が挙げられます。3社は事業内容の構成が違います。音羽電機工業は会社概要に挙げる6項目すべてが雷・サージ対策とその周辺で、低圧サージ対策製品・高圧サージ対策製品・その他雷対策関連製品の開発製造販売に加え、雷対策コンサルティングと電気工事一式および保守管理、雷情報サービス・受託試験、各種デバイス製品の研究開発を並べています(同社会社概要より)。昭電は電源・通信用保安器および通信用端子板、配線盤、分電盤の製造販売を筆頭に、免震装置・耐震フレーム・フリーアクセスフロア、光ファイバネットワーク関連機器、LAN関連機器、総合設備工事までを挙げ、そのうえで「その他雷害対策、地震対策、火災・防犯・防災対策、情報通信ネットワークの構築・運用・保全に関するコンサルティング」を記載しています(同社会社概要より)。DEHNは日本サイトで雷保護、過電圧保護、電気設備での安全な作業のための対策を挙げ、その専門知識により1910年以来、電気システムの信頼性の高い運用を可能にしてきたと記載しています(DEHN日本サイトより)。
Q. 避雷器とSPDは同じものですか?
実務ではほぼ同義に使われますが、指す範囲は文脈で変わります。低圧の電源線・信号線に入れる雷サージ保護デバイスをSPDと呼び、高圧受電設備に付ける避雷器(アレスタ)と区別する言い方が一般的です。音羽電機工業は事業内容を「電源用避雷器、信号回線用避雷器、電話回線用避雷器、耐雷トランス等の低圧サージ対策製品の開発・製造・販売」と「高圧サージ対策製品の開発・製造・販売」に分けて記載しています(音羽電機工業 会社概要より)。建物側の避雷針・受雷部システム(外部雷保護)はまた別で、こちらはJIS Z 9290-3が扱います。
Q. SPDの根拠になる規格はどれですか?
雷保護のJIS体系は、直撃雷対策(建築設計)がJIS Z 9290-3「雷保護 建築物等への物的損傷及び人命の危機」、雷サージ対策(電気設計)がJIS Z 9290-4「雷保護 建築物等内の電気及び電子システム」に分かれています(音羽電機工業「JIS概要」より)。建築基準法側は、令和6年国土交通省告示第151号により避雷設備告示が改正され、2025年(令和7年)4月1日から、JIS A 4201-2003に規定する外部雷保護システムに適合する構造とする規定が廃止され、JIS Z 9290-3-2019に規定する外部雷保護システムに適合する構造とすることとされました。JIS A 4201-2003によることができる経過措置は、建築物の工事の着手が2026年(令和8年)3月31日以前の建築物に限られ、この期間はすでに終了しています(国土交通省住宅局建築指導課長 国住指第532号)。住宅については内線規程(平成28年改訂)が住宅用分電盤内へのSPD設置を推奨しており、危険物施設では危険物の規制に関する規則(令和3年5月改正)で外部雷保護レベルを原則Ⅰとするとされています(音羽電機工業「各種法令・規格」より)。なおメーカーの解説ページには改正前のJIS A 4201:2003を前提にした記載が残っていることがあるため、建築基準法上の扱いは告示と技術的助言で確認してください。
Q. 避雷器メーカーはどう選び分ければよいですか?
「どこが優れているか」ではなく「何を一緒に頼めるか」で分かれます。低圧SPDと高圧避雷器を同じ窓口で揃え、雷の測定・コンサルティングや受託試験まで含めて相談したいのか。保安器・配線盤・分電盤と一緒に、あるいは免震・フリーアクセスフロアや総合設備工事まで含めて発注したいのか。欧州仕様の盤や、TN-C/TN-S/TTといった接地系統別の型番で設計されている設備に合わせたいのか。この3つで見え方が変わります。ただし機種の適合は接地系統・使用電圧・設置位置で決まるため、メーカーで先に絞るのではなく、保護したい回路の条件から先に決めてください。
Q. 他社のSPDに置き換えるとき、同じ仕様なら差し替えてよいですか?
型番表の数値が近くても、そのまま置き換えられる保証はありません。SPDは接地系統(TN-C/TN-S/TT)、使用電圧、設置する位置(引込口か末端か)、上位の遮断器との協調、外形と盤内の取付方式で適合が決まります。異メーカー間の置き換えは代替候補(要仕様確認・現物確認)として扱い、両社の公式資料の数値を突き合わせたうえで、最終的にはメーカーの技術窓口に確認してください。ここで示す比較は目安であり、互換性を保証するものではありません。
まとめ
避雷器メーカーの違いは、性能の優劣ではなく事業内容の構成に出る。雷・サージ対策とその周辺だけで事業を組み立てている会社、盤や設備工事まで含めて発注できる会社、接地系統や用途別に型番が整理されている欧州系。どれを選ぶかは「何を一緒に頼むか」で決まる。ただし機種そのものは、接地系統・使用電圧・設置位置という回路側の条件が先に決める。会社を選ぶ話と型番を決める話を、順番に分けて扱いたい。
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