構内の弱電盤を開けて、電話線路用のケーブルに刻まれた文字を目で追ったことがあるだろうか。「CCP-P」と読めるものもあれば、「CCP-AP」となっているものもある。見積書には「EM-CCP-P/F」という、また少し違う表記が出てくることもある。同じ通信ケーブルのはずなのに、なぜこう何通りも書き方があるのか。
SWCC株式会社の情報通信製品ページを開いてみると、もう一つ気になる作りになっている。「CCP-P」「TKEV」「EM-CCP-P/F」「EM-TKEE/F」という4つの型式のリンクは、いずれもSWCCのサイトを離れて冨士電線株式会社(宮城県の仙台工場を持つSWCCグループ会社)のページへ飛ぶ。ところが「CCP-AP」と「EM-CCP-AP/F」の2つだけは、SWCC自社の製品詳細ページに留まっている。掲載されている6型式のうち、なぜこの2つだけが「自社ページ扱い」なのか、そのこと自体はSWCCのサイトのどこにも説明がない。
答えを探して冨士電線が公開している仕様書(PDF)まで遡ると、型式の枝分かれがどこで起きているのかが、かなり具体的に見えてきた。
型番の骨格——「P」と「AP」を分ける仕様書上の一行
冨士電線株式会社の仕様書「着色識別ポリエチレン絶縁ポリエチレンシースケーブル」(仕様書番号FKST-10P、JCS 9072:2019準拠)には、「種類及び記号」という表がある。ここに、CCPファミリーの骨格がそのまま書かれていた。
着色識別PE絶縁PEシースケーブルはJCS記号ECO-CCP-P、品名CCP-P(記号CP)。同じ構成で自己支持型(架空配線用に支持線を一体化したタイプ)はECO-CCP-P-SSD、品名CCP-P-SS(記号CPS)。着色識別PE絶縁ラミネートシースケーブルはECO-CCP-AP、品名CCP-AP(記号CA)。その自己支持型がECO-CCP-AP-SSD、品名CCP-AP-SS(記号CAS)。4行、これで全部だ。
「P」と「AP」の分かれ目は、この表の隣にある「外被」の項目を読むとはっきりする。CP(CCP-Pの外被)は、より合わせたケーブル心にPE(黒)を標準厚で一様に被覆するだけの構造。対してCA(CCP-APの外被)は、ケーブル心の上にアルミラミネートテープをアルミ面が内側になるように縦添えしたうえで、PE(黒)を被覆する構造だと定めている。SWCC自社の「CCP-AP」製品詳細ページも、この段取りを「遮へい:アルミプラスチックラミネートテープを縦添えする」「シース:アルミプラスチックラミネートテープを縦添えした後黒色PEを被覆し、ラミネートシース(LAP)とする」と、ほぼ同じ言葉でなぞっている。つまり「AP」の「A」は、静電遮へいと耐水性を担うアルミラミネートの有無を表す一文字で、PかAPかは絶縁体の違いではなく、シースの中にアルミの層を一枚挟むかどうかの違いだった。
分解——難燃仕様「/F」には、自己支持型が存在しない
CCPには、難燃・ノンハロゲン仕様の系統もある。冨士電線のもう一枚の仕様書「着色識別ポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースケーブル」(仕様書番号FKST-110N、JCS 9072:2019に加えJCS 5506:2020「ECO-MC/F」適合)を開くと、こちらの「種類及び記号」表は2行しかない。着色識別PE絶縁耐燃性PEシースケーブルがECO-CCP-P/F、品名CCP-P/F(記号CP/F)。着色識別PE絶縁ラミネートシース(耐燃性PE)ケーブルがECO-CCP-AP/F、品名CCP-AP/F(記号CA/F)。P/FとAP/Fの2種類だけで、通常仕様にあった自己支持型(-SS)に相当する行が、この仕様書には存在しない。難燃仕様を架空配線でそのまま使えると思い込むと、標準の型式一覧に載っていない組み合わせを探すことになる。
この仕様書には、もう一つ実務的な注記があった。外被材料の耐燃性PEはハロゲンフリー難燃剤(水酸化マグネシウムなど)を配合しているため、擦れると白い跡が残る「擦れ白化」という現象が起きるが、これは表面だけの現象で電気特性には影響しない、という一文だ。加えて、耐燃性PEはPVCより伸びやすい性質を持つため、布設時に過度な張力を加えないこと、コンクリート床面などと直接こすれさせないこと、配管への引き入れ時は入線剤(滑剤)を使うことも、注意事項として明記されている。仕上がりの見た目に驚いて不良品を疑う前に、まずこの一文を思い出したい。
そして、SWCCの製品一覧に載っている「EM-CCP-P/F」「EM-CCP-AP/F」という表記そのものについても、確認しておいたほうがいいことがある。同じ冨士電線の別の仕様書「耐燃性ポリエチレンシースケーブル通信用構内ケーブル TKEE/F」(仕様書番号FKST-107K)は、規格名を「JCS 9075:2020「ECO-TKEE/F(従来の通称:EM-TKEE)」」と書いている。つまり「EM-」は正式なJCS記号ではなく、「従来の通称」だと仕様書自身が注記している。CCP-P/FやCCP-AP/Fについても、正式なJCS記号はECO-CCP-P/F・ECO-CCP-AP/Fであり、品名としての表記はCCP-P/F・CCP-AP/Fだ。SWCCのサイトに出てくる「EM-」始まりの表記は、この正式な記号体系の外にある、市場で定着した呼び方だと考えたほうが実態に近い。
実機への当てはめ——TKEVは、実は「屋外用」と言い切れない
もう一つ、型式そのものより思い込みを正しておきたい点がある。TKEV(冨士電線の仕様書番号FKST-7J、JCS 9070:2019準拠)は、通信線路の型式に混ざって出てくるので、なんとなく屋外の幹線に使うケーブルだと考えてしまいがちだ。だが仕様書の冒頭の定義を読むと、「構内及び室内等の配線に用いる全心線着色識別星形構成のポリエチレン絶縁、ビニルシースケーブル」とある。構内・室内という言葉が先に来ていて、屋外専用だとは書かれていない。
構造で見ても、TKEVはCCPとは別系統だと分かる。CCPが通信線路(市内電話線路など)向けの規格JCS 9072に基づくのに対し、TKEVは構内・室内配線向けの規格JCS 9070に基づく。線心の色分けやカッド・ユニットの組み方(表1・表2に示された色の並び)はCCPとほぼ同じだが、外被の材質がまるで違う。TKEVの外被はPVC(灰色)。CCPのようなPE+アルミラミネートの「AP」構造も、TKEV系の仕様書には出てこない。
TKEVの難燃版がTKEE/F(冨士電線の仕様書番号FKST-107K、JCS 9075:2020)だ。ここでの変化はシース材質そのもので、PVC(灰色)から耐燃性PE(黒色)へと切り替わっている。難燃化にあたって色まで変わっているので、現物を見て「TKEVのはずなのに灰色じゃない」と戸惑ったら、それはTKEE/Fである可能性を疑ったほうがいい。
サイズ・対数のラインアップも押さえておきたい。冨士電線の各仕様書の構造表を見る限り、CCP系(CP・CA・CP/F・CA/F)は線径0.4/0.5/0.65/0.9mmの4種、TKEV・TKEE/Fは0.4/0.5/0.65mmの3種で、対数はどちらも10P・20P・30P・40P・50P・100P・200Pという並びだ。10P未満、たとえば2Pのような行は、今回確認したどの構造表にも見当たらない。
現場で間違えやすい点
まず、「P」と「AP」を絶縁体の違いだと勘違いしないこと。どちらも絶縁体は着色PEで同じであり、違うのはシースの中にアルミラミネートテープが入っているかどうかだけだ。図面や仕様欄に「AP」と書かれていたら、それは遮へい・防水性を高めた仕様を指定されているという意味であって、単なる型番の枝番ではない。
次に、SWCCのサイトで「CCP-P」「TKEV」などのリンクをたどると冨士電線株式会社のサイトに飛ぶという構造自体を、間違いや広告リンクだと誤解しないこと。これはSWCCグループ内での製造分担を反映したもので、SWCC株式会社の会社情報でも、メタル通信ケーブルの製造の多くを冨士電線株式会社が担っていることが説明されている。型番を検索してSWCCのサイトに情報がなかったからといって、その型式が存在しないと判断するのは早計だ。
最後に、「EM-」という接頭辞を見たら、それが正式なJCS記号(ECO-)とは別の慣用表記であることを踏まえておくこと。見積書や図面にEM-CCP-P/Fと書かれていても、冨士電線の仕様書上の品名はCCP-P/F、JCS記号はECO-CCP-P/Fだ。表記が違っていても慌てず、記号(CP/F・CA/Fなど)と規格(JCS 9072、JCS 5506)を突き合わせて同一品かどうかを確認したほうが確実である。
実務上の注意点
型式を指定するときは、少なくとも次の4点をセットで伝えたほうが行き違いが少ない。系統(CCPかTKEVか、つまり通信線路用か構内・室内配線用か)、シース仕様(P・AP・P/F・AP/Fのいずれか)、線径(0.4/0.5/0.65/0.9mmのいずれか)、対数(10P〜200P)。特にAPと/Fは同時に効いてくる仕様なので、「難燃で、かつ遮へいも欲しい」場合はCA/F(CCP-AP/F)を指定する必要がある。P(アルミラミネートなし)とP/F(難燃)を別々に指定しても、遮へい性能は足されない。
また、自己支持型(-SS)は通常仕様のCCP-P・CCP-APにしか用意されておらず、難燃仕様のP/F・AP/Fには存在しない。架空配線で難燃仕様を検討している場合は、支持線を別途用意する前提になっていないか、発注前に確認しておきたい。
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