制御盤の点検で、名刺サイズの小さな基板を見つける。ラベルには「TC12-0A」とだけ印字されている。似たような型番の読み方を扱ってきた身としては、ここでもどこかの桁に規則が仕込まれているのだろうと当たりをつける。末尾の「0A」は、きっと何かの仕様値の略記に違いない——たとえば、この基板が積んでいるパワーリレーの定格電流と同じ「20A」の下2桁だろうか、と。
芝浦機械の公式サイトで仕様を確認すると、TC12-0Aは確かに20Aのリレー出力を8点搭載していた。予想は当たったように見える。ところが同じページの見出しをよく見ると、そこには「TC12-0A・TC12-0G」と、聞いたことのない型式が並んで書かれていた。
型番の骨格——シリーズ番号は世代を、ハイフン以降は仕様の組み合わせを運ぶ
TCminiは、東芝産業機器システムが取り扱い、製造は芝浦機械が行うボード型PLCである。型番は「TC」のあとに続く数字でシリーズが決まり、ハイフンのあとの数字・アルファベットで個別の機種が決まるという2階建ての構造を持つ。ここまでは他社のPLCとも共通する作りだ。
違うのは、シリーズ番号が運ぶ情報の中身である。芝浦機械の製品ラインナップページには、現行5シリーズがそれぞれ一言で性格づけされている。TC9シリーズは「超小型安価型」で名刺サイズ、TC13シリーズは同じく「超小型安価型」だが「TC9シリーズの上位機種」、TC5シリーズは「統合型」、TC11シリーズは同じく「統合型」だが「TC5シリーズの上位機種」でネットワーク機能を強化、TC12シリーズは「機械制御における必要機能をコンパクトに搭載した安価型」——つまり汎用型。数字が大きいほど高機能というより、9→13、5→11という組でそれぞれ世代が進み、12は12で独立した安価路線を保っている。
この世代関係は、モデルチェンジのたびに型番をリセットする方式ではなく、旧シリーズを残したまま上位シリーズを並走させる方式でもある。事実、2026年4月にリリースされたばかりのTC13-00は、TC9-00と同じ90×60mmの名刺サイズを保ちながら、Modbus RTUマスター機能を標準搭載して最大16台のスレーブ機器を制御できるようになった。TC9シリーズはそのまま販売が続いており、TC13は「置き換え」ではなく「上位の選択肢が増えた」という関係にある。
一方、ハイフンのあとの「-00」「-02」「-03」「-01」「-0A」には、この手のシリーズ横断の規則は見当たらない。TC9シリーズには00と03しかなく、01・02は存在しない。TC11シリーズには00・02・03があるが01がない。TC12シリーズには01・02・0Aがあるが00も03もない。もし末尾の数字が「00=標準、01=通信強化、02=カレンダー追加、03=温度強化」のような共通コードだったなら、どのシリーズにも同じ並びが揃うはずだが、実際には各シリーズが必要になった構成だけを、その都度末尾に割り当てているように見える。
実機への当てはめ——現行9機種の仕様表と、消えたTC02V
東芝産業機器システムの製品ページと、芝浦機械の仕様比較表を突き合わせて、現行機種の主要仕様を一覧にする。
| 型式 | シリーズの位置づけ | 電源電圧 | 使用温度範囲 | 外部入力 | 外部出力 | アナログ入力 | 通信機能 | カレンダー機能 | 外部寸法(W×H×D) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| TC9-00 | TC9(超小型安価型) | DC5V | 0~55℃ | 接点入力8点 | トランジスタ出力8点 | サーミスタ2点/0-5V 2点 | RS485 1ch | なし | 90×60×15mm |
| TC9-03 | TC9 | DC5V | 0~60℃ | 接点入力8点 | リレー出力8点 | サーミスタ2点/0-5V 2点 | RS485 1ch | なし | 130×80×37mm |
| TC13-00 | TC13(TC9の上位機種) | DC5V | 0~55℃ | 接点入力8点 | トランジスタ出力8点 | サーミスタ2点/0-5V 2点 | RS485 1ch(Modbus RTUマスタ標準) | なし | 90×60×13.5mm |
| TC11-00 | TC11(TC5の上位機種) | DC24V | 0~60℃ | ―(CUnet経由のリモートI/O前提) | ― | ― | RS232C 1ch/RS485 1ch/CUnet 1ch/Ethernet 1ch | なし | 115.2×72×18mm |
| TC11-02 | TC11 | DC5V | 0~60℃ | フォトカプラ入力16点 | リレー出力16点 | サーミスタ4点+切替式4点 | RS232C 1ch/RS485 3ch/CUnet 1ch(※)/Ethernet 1ch | あり | 220×135×40mm |
| TC11-03 | TC11(熱電対対応) | DC24V | -10~60℃ | フォトカプラ入力8点 | リレー出力8点+トランジスタ出力4点 | 熱電対5点ほか | RS232C 1ch/RS485 1ch(※) | なし | 200×150×20mm |
| TC12-01 | TC12(汎用安価型) | DC5V | 0~60℃ | フォトカプラ入力12点 | リレー出力12点 | サーミスタ4点+0-5V 2点 | RS232C 1ch/RS485 1ch | なし | 180×100×37mm |
| TC12-02 | TC12 | DC5V | 0~55℃ | フォトカプラ入力16点 | リレー出力(AC250V,3A)16点 | サーミスタ4点+0-5V 2点 | RS232C 1ch/RS485 1ch | あり | 220×135×39mm |
| TC12-0A | TC12(パワーリレー20A) | DC5V | 0~60℃ | 接点入力8点 | リレー出力(AC250V,20A)8点 | サーミスタ2点+0-5V 2点 | オプション(RS485 1ch)※標準は通信機能なし | なし | 125×75×45mm |
(※印はオプション実装可能な項目。出典:芝浦機械「仕様比較表」、東芝産業機器システム「TCmini」製品ページ)
表を眺めていて意外だったのは、TC11-00の外部入力・外部出力・アナログ入力の欄が軒並み「なし」になっていることだ。TC11シリーズは「TC5の上位機種」でネットワーク機能を強化したモデルという説明だったから、上位機種なら入出力も豊富だろうと思い込んでいた。ところが実際のTC11-00は、CUnet・Ethernet・RS485・RS232Cという通信インタフェースに特化した「ネットワークのハブ」で、デジタルI/Oもアナログ入力も自前では持たない設計になっている。芝浦機械の製品ページにも「リモートI/Oや拡張ボードを接続することでお客様のシステムにマッチしたI/O構成を安価に実現」とあり、TC11-00は単体で動く制御器というより、他のI/Oモジュールをぶら下げるための親機として位置づけられている。
もう一つ気になったのが、東芝産業機器システムのカタログに載っている「TC02V」だ。寸法190×135×28mm、フォトカプラ入力12点とパルス入力1点、RS232C 1ch・RS485 2ch——この仕様は表の9機種のどれとも一致しない。ところが芝浦機械の現行ラインナップ(TC5・TC9・TC11・TC12・TC13の各シリーズ一覧)にも、販売終了モデルの一覧(TC3-00・TC3-01・TC7-00・TC7-01/02)にも、TC02Vという名前は出てこなかった。掲載されている以上、現時点で取り寄せ自体はできると思われるが、型式の位置づけ(どのシリーズの派生なのか)は芝浦機械のサイト上では確認が取れなかった、というのが正直なところである。
現場で間違えやすい点
一つ目は、冒頭で自分がやってしまった「末尾のアルファベットは仕様値の略記だろう」という早合点だ。TC12-0Aの「0A」は確かに20Aのリレー出力と符合して見える。だが、この20Aリレーを変えずに通信機能(RS485)だけをオプションで追加した機種は、「TC12-0A」のまま拡張されるのではなく、「TC12-0G」という独立した型式に切り替わる。数字とも仕様値とも対応しない「G」が採用されている以上、末尾の記号は仕様を計算式のように運ぶものではなく、構成の組み合わせごとに振られた管理番号だと考えたほうが実態に近い。
二つ目は、開発ツールをひとまとめに「TC-WORX」と思い込むことだ。ラダー編集ソフトそのものはTC-WORXで全機種共通だが、東芝産業機器システムのFAQには「TCminiとPCを接続する変換器SI595U(TC11シリーズは市販USBケーブル)」という注記がある。芝浦機械の仕様比較表でも、TC13・TC11シリーズの開発ツール欄は「TC-WORX」、TC12・TC9シリーズの欄は「SI595Uパック」と書き分けられていた。古い世代のTC12・TC9をPCにつなぐには、市販USBケーブルではなく専用の変換器(SI595U)をセットで用意する必要がある。
三つ目は、TC12-0Aの通信機能を標準搭載だと思い込むことだ。表のとおり、TC12-01・TC12-02はRS232C・RS485を標準搭載しているのに対し、TC12-0Aは通信機能そのものがオプション扱いで、標準構成では通信ポートを持たない。パワーリレー(20A)という目立つ機能を優先した分、通信インタフェースは削られている。
四つ目は、「TC3」という型番を古い記憶のまま検索してしまうことだ。芝浦機械の販売終了モデル一覧によれば、旧「TC3-01」の後継機種は現行の「TC12-01」であり、旧「TC3-00」には後継機種がないと明記されている。ところが現行の型番一覧に立ち返ると、「TC3」はいまPLC本体ではなく、TC12シリーズなどに接続する操作パネルの型式(TC3-P01・TC3-P02)として使われている。同じ「TC3」という文字列が、世代によって指すものが違う。
実務上の注意点——機種変更はソフトの互換性頼みにできる範囲が決まっている
東芝産業機器システムのよくあるご相談には「TCminiシリーズのソフトには機種間で互換性があります。ご使用中の機種が製造中止となった場合でも、一部I/O・レジスタのアドレス修正(お客様プログラムで使用している分のみ)のみで、容易に移植が可能です」とある。旧型のTC12・TC9系から現行のTC11・TC13系へ更新する場合、ラダープログラムを一から書き直す必要はなく、使用しているアドレスの読み替えで済む可能性が高い。
ただし、これはあくまで「ソフト側の言語・命令体系」が共通だという話であって、ハードウェアの仕様まで同じという意味ではない。表で見たとおり、TC11-00は自前のI/Oを持たない設計であり、TC12-0Aは通信機能がオプション扱いだ。移行先の機種を決める前に、必要な入出力点数・通信インタフェース・電源電圧(DC5VかDC24Vか)が現行機種でどう配分されているかを、芝浦機械の仕様比較表で確認しておく必要がある。特に電源電圧はTC9・TC12・TC13がDC5V、TC11-00とTC11-03がDC24Vと機種によって分かれているため、電源回路をそのまま流用できるとは限らない。
東芝産業機器システム扱いTCminiの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、制御盤に組み込まれたTCmini基板の型番から、シリーズの位置づけ、必要な入出力・通信機能、後継機種の有無までの確認に対応している。ラベルの型式表記が薄れて読み取りにくい場合や、TC02Vのように現行ラインナップとの対応が定かでない型式については、基板の写真を添えてもらえると照合が早い。
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