型番表を眺めていて、最後の記号だけ毛色が違う一列に気づいたことはないだろうか。「BI4-M12-AP6X」「BI4-M12-AN6X」ときて、次に「BI4-M12-ADZ30X」と並んでいる。前の二つは末尾が「英字ひとつ+数字ひとつ+X」という同じ形をしているのに、三つ目だけ「DZ」と英字が二つ続き、数字も二桁の「30」になる。検出距離を伸ばした特別仕様なのか、それとも読み方そのものが違う型番なのか——見た瞬間に、そこで指が止まった。
結論から言うと、この違和感は正しかった。ターック(TURCK)公式の通販サイト(turck.com)を型番違いで何通りも検索した結果、「BI4-M12-ADZ30X」という型番は、少なくとも現行カタログ上には見当たらなかった。これは推測ではなく、公式サイトの検索挙動そのものから导き出した結論だ。なぜそう言い切れるのか、そしてAP6X・AN6Xという「読める」型番が何を表しているのか、順を追って確認していく。
結論——A/Pが出力方式を、6/4が電源電圧の範囲を表す。ただし「ADZ30X」はM12サイズでは実在確認できなかった
ターックには「Sensors Part Number Key」という型番凡例のPDF(文書番号B0003、Rev C、2024年3月発行、ターック本社である米国TURCK Inc.が公開)が存在する。これに沿ってBI4-M12-AP6Xを分解すると、次のような構成になる。
BI[B=埋込型/I=誘導型]4[検出距離4mm]-M12[M=部分ねじ切り金属筐体・12mm径]-A[常時開接点(N.O.)]P[PNP出力]6[電源電圧10〜30VDC]X[LED1個]
AN6Xも並びは同じで、PがNに変わるだけ。NPN出力になる。ここまでは公式データシートPDFの記載と完全に一致しており、迷う余地はない。
ところが「ADZ30X」だけは事情が違う。同じ凡例表で文字を追うと、A(常時開接点)+DZ(2線式AC/DC出力、パワーMOSFET)+30(電源電圧20〜250VAC/10〜300VDC、400mA区分)+X(LED1個)という組み合わせに読める。だが、この読み方が「正しい」ことと、「BI4-M12-ADZ30Xという商品が実在すること」は別問題だった。turck.comの検索窓に何度打ち込んでも、この型番はヒットしなかったのだ。
型番を分解する——まずは読めるAP6X・AN6Xから
BI4-M12-AP6X-H1141の公式データシートPDF(2025年2月21日発行)を開くと、Technical dataの最初の行に「Output function: 3-wire, NO contact, PNP」とある。Operating voltage UBは「10…30 VDC」。製品名の副題は「Inductive Sensor – With Increased Switching Distance」、つまり「検出距離を伸ばしたタイプ」だ。
turck.comの製品ページ(オーダーID 46070)のTechnical Data欄を見ても、Rated switching distance=4mm、Mounting conditions=Flush(埋込可能)、Connector type=M12x1、Special features欄には「Sn +」という表記がある。この「Sn +」が、データシート表題の「Increased Switching Distance(検出距離増強)」に対応していると考えられる。
AN6X-H1141(オーダーID 46071)のデータシートも同日発行で、Output functionだけが「3-wire, NO contact, NPN」に変わる。配線図を見比べると、AP6X側は「3 BU=-、1 BN=+、4 BK=出力(pnp)」、AN6X側は「3 BU=-、1 BN=+、4 BK=出力(npn)」——出力トランジスタの極性以外、配線のピン配置まで完全に同一だった。この一致は、A・P・Nという文字が単独の意味単位として機能している何よりの証拠になる。
B0003凡例のVoltage Range欄には、6=「10-30 VDC」、4=「10-65 VDC」という定義がある。実際にBI4-M12-AP6Xのデータシートは10〜30VDCで一致しており、末尾の数字が検出距離ではなく電源電圧の区分を表すことがここで確定する。
「ADZ30X」を凡例通りに分解してみる
同じB0003凡例で「DZ」を引くと、Output欄に「DZ = 2-wire AC/DC, (power MOSFET output)」とある。AP6X・AN6Xの「3-wire」(電源+出力を含め3本の配線)とは異なり、DZは電源線と出力線を共用する「2線式」で、しかも直流だけでなく交流(AC)にも対応する。制御盤の中でDC24Vだけを使う設備よりも、AC100V系や現場配線が交流主体の古い設備との親和性を意識した出力方式だと読み取れる。
数字の「30」は、Voltage Range欄の「30 = 20-250 VAC, 10-300 VDC 400mA(Latched SCP)」に対応する。AP6X・AN6Xの「6」(10-30VDC)や「4」(10-65VDC)よりも一段上の、AC100〜200V級まで含む広い電圧レンジだ。実際、この読み方が的外れでないことは、似た型番を持つ実在製品で裏付けが取れた。BI4-G12-ADZ32X(G12=フルねじ切り金属筐体・12mm径)の公式Technical Dataは、Operating voltage=AC/DC、Output function=2-wire、Switching frequency=0.02kHzという低速仕様を示しており、DZ出力(2線式AC/DC)の実機データと一致する。「32」の場合はVoltage Range欄の「32 = 20-250 VAC, 10-300 VDC 100mA」に対応し、「30」との違いは許容電流(400mAか100mAか)だと分かる。
それでも「BI4-M12-ADZ30X」は見つからなかった
ここまでは文字の意味が確認できた。問題はその先だ。turck.comの検索窓に「BI4-M12-ADZ30X」と入力すると、フィルタ絞り込みが一切かからず、検索結果が「Results total: 32,224件」といった、ほぼカタログ全件に相当する数字にフォールバックした。これは、検索語と部分一致する商品が存在しないときにturck.comの検索エンジンが示す挙動だ。
比較のため、実在が分かっている型番でも同じ検索を試した。BI4-G12-ADZ32Xは363件、BC10-M30K-VP4Xは483件というように、実在する型番を検索した場合は明確に絞り込まれた結果が返る。対して「BI4-M12-ADZ30X」「BI4-M12-ADZ32X」「BI4-M12-AD4X」「BI2-M12-AP6X」は、いずれも32,000件前後の全件表示にフォールバックした。つまり、M12(12mm)サイズのBI4系列に、DZ出力(2線式AC/DC)のバリエーションを組み合わせた型番は、少なくとも現行のturck.comカタログには存在しないという結論になる。
さらに手がかりを探すと、「ADZ30X2」という非常によく似た並びを持つ実在型番が見つかった。BI10F-Q34-ADZ30X2/S34やBI10-G30-ADZ30X2-B1131といった製品だ。しかしこれらはいずれも、Q34(角形樹脂筐体)やG30(円筒形30mm径)という、M12より一回り大きい筐体の製品だった。ADZ系の2線式AC/DC出力は、どうやらM12サイズよりも大きい筐体で使われる出力方式のようで、M12サイズのBI4系列にはこのバリエーションが用意されていない可能性が高い。
この記事の当初の目的は「ADZ30Xの2桁の30が何を意味するか」を確認することだったが、たどり着いた答えは「意味は凡例から読み取れるが、その組み合わせ自体がM12サイズの製品として実在するかは確認できなかった」というものだ。これは失敗ではなく、公式資料で裏取りできた範囲を正直に報告する結果だと考えている。
現場で間違えやすい点
まず、型番の見た目が似ているからといって同じ筐体サイズとは限らない。「M12」と「G12」はどちらも12mm径だが、B0003凡例上はMが「部分ねじ切り」、Gが「フルねじ切り」という別の筐体スタイルを示す文字だ。さらに「G30」「Q34」は30mm級・角形の別サイズであり、末尾の出力記号だけを見て「同じM12だろう」と思い込むと、実際には取り付け穴の径からして合わない部材を発注してしまう。
次に、この記事のもとになった型番一覧には、BI4系(誘導型)だけでなくBC系(容量型)の型番も含まれていた。容量型のBC10-M30-AP6Xについても同様にturck.comで検索したところ、部分一致がなくカタログ全件表示にフォールバックした一方、「BC10-M30-AP4X」(オーダーID 25010)は実在を確認できた。BI4系・BC系のいずれでも、末尾の数字が「6」か「4」かで実在の有無が分かれるケースがあり、一文字・一桁の違いが致命的になる。
最後に、V(複合接点)の存在も見落としやすい。BC10-M30K-VP4Xの公式Technical Dataを見ると、Switching element functionは「Complementary contact」となっている。これはB0003凡例の「V = complementary outputs: one N.O., one N.C.」、つまり常時開接点と常時閉接点を同時に持つ出力だ。A(常時開接点のみ)とV(常時開接点+常時閉接点)を読み違えると、配線のピン数や結線方法が変わってくる。
実務上の注意点
「BI4-M12-ADZ30X」のように、社内の型番リストやカタログの転記に由来する型番は、必ずターック公式サイトの検索窓で実在を確認してから発注してほしい。今回のように検索結果がカタログ全件にフォールバックする場合は、その型番が存在しないか、少なくとも現行の標準品ではない可能性が高いサインだ。型番の一部が正しくても、組み合わせ全体としては存在しないという事例は、思っている以上に起こり得る。
また、B0003のような型番凡例PDFは非常に有用だが、あくまで「型番の文字が何を意味するか」を教えてくれるものであり、「その組み合わせの商品が実在するか」までは保証しない。凡例通りに読めたからといって安心せず、最終的には個別の製品ページかデータシートPDFで実機の型番と技術データを直接照合する、という二段階の確認を徹底したほうがいい。
BI4-M12シリーズの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、ターックBI4-M12シリーズの型番読み取りから、末尾記号の照合、実在有無の確認までのご相談を見積フォームで受け付けている。型番ラベルが摩耗して読み取りにくい場合や、社内リストの型番に不安がある場合は、現物の写真があると照合が早い。
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