配線図問題の終盤、キュービクルの中の写真が並んでいる。灰色の箱、白い磁器の筒、樹脂で固めた円筒形のコイル、小さな金属の箱。どれも同じような無骨な見た目で、名前がまったく出てこない。
第二種電気工事士の写真鑑別では、リモコンリレーや可とう電線管の附属品を、1点の決め手で見分ける練習をした。高圧の世界に入ると、機器はもっと種類が多く、もっと似て見える。だが方法は変わらない。決め手はいつも、他のどれにも無いものの側にある。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、これらの高圧機器を、外観の1点だけから言い当てられるようになっている。
ブッシングの本数と位置から入る
高圧機器の外観は、無骨な灰色や白色ばかりで似て見える。だが、多くの機器は「上面から何本のブッシング(碍管)が出ているか」「その脇に何が付いているか」という1点だけで、かなりの精度まで絞り込める。
GR付PAS・UGS — 区分開閉器の外観
GR付PAS(地絡継電装置付き高圧交流負荷開閉器)は、柱上に取り付ける箱形の気中開閉器だ。箱の上面から磁器製ブッシングが6本(電源側3・負荷側3)出ているのが目印になる。内部にZCT(零相変流器)を内蔵し、電柱の下方に付くSOG制御装置(小さな制御箱)と制御ケーブルでつながる。VT内蔵形は、制御電源をつくるための変圧器も内蔵している。
UGS(地中線用ガス開閉器)も同じく区分開閉器で、ZCTを内蔵する点はPASと共通する。だが、この2つを外観だけで見分けることはできない。決め手は機器そのものではなく、引込方式(架空か地中か)だ。柱上にあればPAS、地上のマンホールや地中線の立ち上がり部にあればUGSと判断する。「同じ役割の機器だから外観にも必ず違いがあるはずだ」という思い込みは、この2つには通用しない。
断路器(DS)— 何も付いていないことが決め手
断路器(DS)の外観は、他の高圧機器と比べて驚くほど単純だ。支持がいし(キュービクル用ではV形に配置される小形のものが多い)の上に、露出した刃(ブレード)が乗るだけの構造で、アークを消すための消弧装置も、ヒューズも持たない。役割の違いは断路器・遮断器・高圧交流負荷開閉器で扱ったとおりで、無負荷でしか操作できない機器だ。
PF付きLBSと限流ヒューズ単体 — 本体の有無で見分ける
高圧限流ヒューズ(PF)は、白色の磁器(または樹脂)の円筒の両端に金属キャップが付いた筒形をしている。内部にはヒューズエレメントと消弧剤(けい砂)が充填され、動作すると突き出る動作表示器(ストライカ)が端部に付く。
写真鑑別の決め手は、筒の背後に開閉器としての本体(横に長い箱形で操作ハンドルが付く)があるかどうかだ。本体があり、そこに3本のヒューズ筒が並んで取り付けられていれば、変圧器やコンデンサ回路の短絡保護を担うPF付きLBS。ヒューズ筒だけが単独で写っていれば、限流ヒューズ単体、または磁器の容器に収められた高圧カットアウトのどちらかだと考える。高圧カットアウトの箱型・筒型それぞれの外観と、ヒューズ溶断時の変化(赤色表示・筒の下がり)は高圧機器・工具の写真鑑別で扱っている。避雷器(LA)の、ひだ状の傘(スカート)が連なる円筒形という外観も同じトピックで詳しく扱っているので、あわせて確認しておくとよい。
LBSと高圧カットアウト(PC)の見分け【最重要】
写真鑑別で実際に最も迷うのが、この2つの組み合わせだ。どちらも高圧の開閉に関わり、白っぽいヒューズ・磁器が絡む外観のため、細部を見ずに眺めると同じ系統の機器に見えてしまう。だが構造そのものはまったく違う。
PF付きLBSは、鋼製フレームに三相分の開閉ブレード・消弧室が横一列に並んだ、フレーム一体構造の開閉器だ。三極連動でフック棒(操作フック)を引くと、3相が同時に入切する。主遮断装置として使うPF・S形では、白い筒状の限流ヒューズが3本、斜めに並んで取り付くのが最大の目印になる。相間には絶縁バリア(仕切り板)が立ち、ヒューズ溶断時にはストライカが連動して欠相を防ぐ。
高圧カットアウト(PC)は、これとは対照的に磁器(がいし材質)製の単極の機器だ。箱形は磁器の小箱で、前面のふたの内側にヒューズ筒が装着され、ふたの前面フックを操作棒で開閉して1相ずつ入切する(円筒形は磁器筒の中にヒューズ筒が入る)。1相分ずつ独立した磁器体を3個並べて使う点が、フレームで三相が連動するLBSとの決定的な違いになる。
用途も対応して異なる。LBSは受電設備の主遮断装置(300kVA以下のPF・S形)や幹線の開閉に、PCは変圧器(300kVAまで)やコンデンサの一次側の個別開閉・過負荷保護に使われる。コンデンサ側の上限は、メーカーカタログでは75kVA、高圧受電設備規程では50kvarと表記が分かれるので、数値そのものより「変圧器は300kVAまで」を先に押さえておきたい。高圧カットアウトの箱型・筒型の詳しい外観と、ヒューズ溶断時の変化(赤色表示・筒の下がり)は高圧機器・工具の写真鑑別で扱っている。
VT・CT・VCT — 変成器は「一体化されているか」で見る
VT(計器用変圧器)・CT(変流器)・VCT(電力需給用計器用変成器、通称MOF)は、図記号のうえではVTがだるま形、CTが導体を円がまたぐ形と、はっきり描き分けられる(計器と変成器の記号で扱った)。だが実物の写真になると、単体のVT・CTはそれぞれ樹脂モールドの小さなブロック状の機器として盤内に収まり、外側からは巻線の様子までは見えない。
CT単体には、外観のはっきり違う2形式がある。貫通形は、本体中央に大きな貫通穴(窓)が開いており、そこに一次導体(銅バーやIV電線)を通して使う。本体には小さな二次端子(k・l)のねじ端子2つしかない。巻線形は一次巻線を内蔵するため貫通穴が無く、太い一次端子K・L(電源側K・負荷側L)2つと、小さい二次端子k・l 2つの計4端子が付く。
決め手になるのは、一体化されているかどうかだ。VCT(MOF)は、VTとCTの機能を1つの箱(タンクまたは樹脂モールド)にまとめた機器で、一次側(母線からの引き込み)と二次側(電力量計Whへ向かう引き出し)の端子が、それぞれ別の面に出ている一体形の筐体として写る。単体のVT・CTがそれぞれ別の場所に個別に取り付けられているのに対し、VCTは1つの箱にまとまっている外観そのものが識別点になる。ZCT(零相変流器)も輪形で穴があるが、3線一括で貫通させる大きめのドーナツ形である点で、単相のCTとは大きさと用途が異なる。
高圧遮断器(VCB)— 車輪付き台車と背面端子
高圧遮断器(VCB)の引出形は、車輪付きの台車構造の箱形機器で、配電盤(スイッチギヤ)から水平に引き出せる。前面に操作パネル(入/切表示器・ON/OFFボタン・投入ばね蓄勢表示・動作回数カウンタ)が並ぶのが特徴。背面に主回路接続用の丸い端子(差込コンタクト)が上下2段×3相=6個並び、内部には円筒形の真空バルブ(真空容器)が3本立つ。
モールド変圧器 — 樹脂の円筒3本と、端子の上下
モールド変圧器は、巻線全体がエポキシ樹脂で円筒状に固めてある乾式変圧器だ。油タンクや放熱フィンがなく、樹脂色(赤茶・ベージュ・グレー)の円筒コイルが相ごとに3本並んで見えるのが最大の特徴で、油入変圧器のような磁器ブッシングの列も無い。
端子は上下で分かれており、過去問の実例(第一種電気工事士 H30年度問15)では、最上部にあるのが二次(低圧側)端子、その下に一次(高圧側)端子が続く。「高圧側のほうが危険だから下にあるはずだ」という直感的なイメージだけで覚えると、実際の配置と逆になる。写真で端子の高さを見るときは、イメージではなく実例の配置を基準にする。
高圧進相コンデンサと直列リアクトル — 外観では決まらない組
高圧進相コンデンサ(SC)は、力率改善のために母線に接続される箱形の機器で、銘板にkvar表示があり、碍子(がいし)が付く点が、μF表示・角形樹脂ケースの低圧進相コンデンサとの違いになる(低圧側の外観は第二種電気工事士の写真鑑別で扱った)。
一方、直列リアクトル(SR)は、SCの電源側に直列で設置され、突入電流の抑制と高調波拡大の防止を担う(役割は高圧進相コンデンサと直列リアクトルで扱った)。
見た目の1点を、言葉にして持ち帰る
| 機器 | 写真上の決め手(1点) | 混同しやすい相手 |
|---|---|---|
| PF付きLBS | 鋼製フレームに三相分が一体で連動。白い限流ヒューズ筒3本が斜めに並ぶ | 高圧カットアウト(PC。磁器製の単極の箱・筒が3個独立) |
| 高圧カットアウト(PC) | 磁器製の単極の小箱(または筒)が3個、独立して並ぶ | PF付きLBS(鋼フレームに三相一体で連動) |
| GR付PAS | 上面に磁器製ブッシングが6本、SOG制御装置と制御ケーブルでつながる | UGS(外観では区別できず、引込方式=架空か地中かで判断) |
| 断路器(DS) | 支持がいしに露出した刃が乗るだけで、消弧装置もヒューズも持たない | PF付きLBS(ヒューズ筒が並ぶ)・高圧カットアウト(磁器の筒に収まる) |
| 限流ヒューズ(PF)単体 | 白色の筒の両端に金属キャップ。筒だけが単独で写る | PF付きLBS(本体にヒューズ筒が3本並ぶ) |
| CT(貫通形) | 本体中央に大きな貫通穴。二次端子k・lのみ | VT(穴が無く、ヒューズ筒が付く) |
| CT(巻線形) | 貫通穴は無く、太い一次端子K・Lと小さい二次端子k・lの計4端子 | VT(一次端子の脇にヒューズ筒が立つ点で区別) |
| VCT(MOF) | VTとCTの機能を1つの箱にまとめた一体形の筐体 | 単体のVT・CT(それぞれ個別に設置される) |
| 高圧遮断器(VCB・引出形) | 車輪付き台車構造。前面に操作パネル、背面に6端子 | LBS(開放形のフレーム構造でヒューズと組合せ) |
| モールド変圧器 | 樹脂で固めた円筒コイルが3本並ぶ。最上部が二次(低圧側)端子 | 油入変圧器(磁器ブッシングの列を持つ) |
| 高圧進相コンデンサ(SC) | 銘板にkvar表示、がいしが付く箱形 | 直列リアクトル(外観だけでは判別できない) |
| 直列リアクトル(SR) | SCの電源側に直列で入る位置と、銘板の6%・13%表示 | 高圧進相コンデンサ(外観だけでは判別できない) |
灰色の箱が、種類の違う機器の集まりに見えてくる
この見方が身につくと、キュービクルの中や柱上の設備が「同じような灰色・白色の機器の集まり」から、「ブッシングの本数と付属物で言い当てられる個々の機器」に変わる。今日試せることとして、高圧受電設備の点検写真や工事現場の記録写真を見る機会があれば、まず「上面から何本の碍管が出ているか」「本体に何か付属物が付いているか」と1つだけ問うてみるといい。
この「ブッシングの本数と付属物から入る」という見方は、機器が新しくなっても使い回せる。太陽光発電や蓄電池の高圧連系設備が増えても、外観から機器を特定する基本のやり方は変わらない。むしろ新しい機器が増えるほど、名前を丸暗記するのではなく、外形の決め手から入る習慣のほうが長く役立つ。
冒頭の4枚の写真、それぞれ何を見れば名前が言えたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。