在庫棚の奥に転がっていた小さなキャップに、「PEC022」という刻印がある。パイプエンドキャップ――電線管の切り口に被せて、端面のバリやねじ山から施工者の手や電線被覆を守るための、地味だが欠かせない附属品だ。型番の並びからして、019・025・031と続く仲間たちと同じ調子で「呼び径22のE管用だろう」と当たりを付けたくなる。だが、その勘は途中で狂う。JIS規格が定めるねじなし電線管(E管)の呼びを一覧しても、19・25・31・39・51・63・75という数字は並んでいるのに、22という数字はどこにも出てこない。
存在しないはずの呼びを冠したキャップが、なぜ電成興業の製品ラインナップに載っているのか。答えを急がず、まず型式図そのものを開いてみる。
型番の骨格——PEC+3桁の数字という単純な構造
電成興業が公開している「製品・図面検索」システムで「PEC」を検索すると、図面番号PEC-B01-00という1枚のPDFがヒットする。品名は「パイプエンドキャップ」、材質欄には「PE」(ポリエチレン)、日付は2021年3月4日。この図面には、テーパー状にすぼまる筒形状のキャップが描かれ、根元側の径をD、先端側の径をd、全長をLとする寸法表が添えられている。
型番の構造自体は単純だ。「PEC」というシリーズ名の後ろに3桁の数字が続くだけで、アルファベットの追加記号やハイフンによる仕様分岐はない。電材サーチのメーカーデータ(densei-sangyo.yaml)には、この3桁の数字を指して「呼び径」という注記が付けられている。ここでいう「呼び」とは、電線管そのものの規格上の識別番号のことだ。つまりPECの数字は、キャップ自体の寸法ではなく、そのキャップが合わせる相手――電線管側の呼びを、そのまま品番に転記したものだと読める。
問題は、この「呼び」がどの規格の呼びなのか、という一段深いところにある。
図面が示す2つの系列——E管用の7品番とG管用の10品番
PEC-B01-00の寸法表は、実は1つの表ではない。紙面上で左右2列に分かれており、左側にPEC019・025・031・039・051・063・075の7品番、右側にPEC016・022・028・036・042・054・070・082・092・104の10品番が、それぞれ別グループとして並んでいる。電材サーチのメーカーデータに載っている10品番(PEC019・022・025・028・031・036・039・051・063・075)は、この左右2つのグループから数品番ずつをまたいで選び出した組み合わせだった、ということになる。
なぜ図面自体が2つのグループに分かれているのか。その理由は、鋼製電線管メーカーが公開している外径比較表と照らし合わせるとはっきりする。日本シーム株式会社の総合カタログ(69ページ「各種電線管 外径比較表」)には、鋼製ねじなし電線管(E管)と鋼製厚鋼電線管(G管)、それぞれの呼びと外径(mm)が併記されている。
- E管(ねじなし電線管)の呼び:E19=外径19.1mm、E25=25.4mm、E31=31.8mm、E39=38.1mm、E51=50.8mm、E63=63.5mm、E75=76.2mm
- G管(厚鋼電線管)の呼び:G16=外径21.0mm、G22=26.5mm、G28=33.3mm、G36=41.9mm、G42=47.8mm、G54=59.6mm、G70=75.2mm、G82=87.9mm、G92=100.7mm、G104=113.4mm
これを図面PDFの左右のグループと突き合わせると、左側の7品番(PEC019・025・031・039・051・063・075)はE管の呼びとぴったり一致し、右側の10品番(PEC016・022・028・036・042・054・070・082・092・104)はG管の呼びとぴったり一致する。電成興業は、E管用とG管用という別規格の電線管附属品を、同じ「PEC」というシリーズ名の中で作り分けていた。そして電材サーチのメーカーデータは、この2系列から任意の品番を抜き出して1つのリストにまとめていたため、結果として「E管の呼びとG管の呼びが混在した10品番」という見た目になっていたわけだ。
PEC022・PEC028・PEC036が、E管の呼び一覧(19・25・31・39・51・63・75)のどこにも見当たらなかったのは当然だった。この3品番はそもそもE管用ではなく、G管(厚鋼電線管)用の呼びをそのまま品番にしていたからだ。
実機への当てはめ——D(取付側径)は電線管の外径よりひと回り大きい
型番の数字が「呼び」であって「実測寸法」ではないことは、図面のD(取付側径)の値を見ればさらにはっきりする。
E管用グループでは、PEC019のD=21.5mm(E19の外径19.1mmとの差+2.4mm)、PEC025のD=28.5mm(E25の外径25.4mmとの差+3.1mm)、PEC031のD=35.0mm(E31の外径31.8mmとの差+3.2mm)、PEC075のD=78.5mm(E75の外径76.2mmとの差+2.3mm)――と、いずれも電線管の外径より2〜3mm程度大きい値になっている。
G管用グループも同じ傾向だ。PEC022のD=29.5mm(G22の外径26.5mmとの差+3.0mm)、PEC028のD=37.0mm(G28の外径33.3mmとの差+3.7mm)、PEC036のD=45.0mm(G36の外径41.9mmとの差+3.1mm)。
この2〜3mm台の差は、キャップ側に電線管を差し込むための余裕(ポリエチレン製のキャップが管端をすっぽり覆うための遊び)だと考えられる。前回取り上げた樹脂製の可とう電線管(PF管・カナフレキスーパーN等)では、呼びの数字と内径の実測値が管種によってずれたりずれなかったりする、という不揃いな関係だった。今回のパイプエンドキャップでは、そのずれ方がむしろ規則的で、D(取付側径)は「対応する電線管の外径+2〜3mm前後」という、ほぼ一定の余裕を保つように設計されている。数字が示す先が実測値そのものではない、という点は共通しているが、ずれの性質は対照的だ。
現場で間違えやすい点——「呼びが同じ数字」だからといって同じ管とは限らない
ここまでの確認で、現場で起こりうる誤発注のパターンが2つ見えてくる。
1つ目は、E管の呼びに存在しない数字(22・28・36など)を見て、「E管用の中間サイズだろう」と誤って解釈してしまうケース。実際にはこの3品番はG管専用であり、E管の施工現場で使おうとしても、そもそも管の外径からして合わない。
2つ目は、逆にG管の現場でPEC019やPEC025を発注してしまうケース。G管にはG16・G22・G28という呼びしかなく、G19やG25という呼びは存在しない。だが「19」「25」という数字自体は見慣れているため、E管用の品番を機械的に選んでしまう可能性がある。図面上のDの値で言えば、PEC019のD=21.5mmに対してG16の外径は21.0mmとほぼ近い数値になっており、品番の数字だけでなく取付側径の実測値まで確認しないと、うっかり近いサイズのE管用キャップをG管に流用しかねない紛らわしさがある。
いずれのケースも根は同じで、「PECに続く3桁の数字は電線管の呼びを表しているが、その呼びがE管とG管という2つの異なる規格にまたがっている」という前提を知らないまま数字を追ってしまうことに起因する。発注前には、現場の電線管がねじなし電線管(E管)なのか厚鋼電線管(G管)なのかを、まず特定しておく必要がある。
実務上の注意点
電成興業の図面検索システムには、電材サーチのメーカーデータに載っていないPEC016・PEC042・PEC054・PEC070・PEC082・PEC092・PEC104という7品番も、同じ図面番号(PEC-B01-00)の中に記載されている。いずれもG管側の呼びに対応するサイズで、必要な口径がリストにない場合でも、電成興業の型番体系としては存在する可能性がある。取り扱いの可否や納期は、個別に確認したほうがよい。
また、図面上の品名・寸法は2021年3月4日付のものであり、電成興業側の仕様変更や図面改版があれば数値が更新されることも考えられる。発注前には最新の図面・仕様を確認することをおすすめする。
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、電成興業のパイプエンドキャップ(PECシリーズ)をはじめとする金属製電線管附属品のお取り寄せ・お見積りに対応している。現場の電線管がE管かG管か分からない場合や、電材サーチに掲載のないサイズを確認したい場合も、型番・呼び径・現物写真などをお知らせいただければ、該当する品番の特定から見積りまで対応する。
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