型式プレートというより、値札に近い見た目をしている。「GTC182B」。エリコ・ジャパンが扱うCADWELD溶接接合システムのモールド(鋳型)には、こういう7文字前後の記号が振られている。接地工事の見積を作るとき、この記号だけを頼りに部材を特定しなければならない場面は少なくない。
厄介なのは、似た記号が並んでいるときだ。手元の資料に「GTC182B」と「GTC182G」が並んでいるのを見つけたとする。頭から6文字目までは完全に一致している。違うのは最後の1文字、BとGだけ。配線用遮断器の型式解読でよく出てくる「末尾のアルファベットは遮断容量クラス」「末尾は接続形状」というパターンに引っ張られると、この1文字も何らかの形状や性能ランクの記号だろうと見当を付けたくなる。実際、このタスクに着手する前の仮説もそうだった——GTC/VSCという接頭辞がモールドの形状・系統を示し、末尾のアルファベットがT字・十字・平行といった接続形状を区別しているのではないか、と。
その仮説を確かめるべく、nVent ERICO公式サイトの個別製品ページを一つずつ突き合わせていくと、思っていたのと違う答えが出てきた。
型番の骨格は「ファミリー+価格キー+部材コード」の3段
nVent公式の製品ページには、Specifications欄に「PRODUCT ATTRIBUTES」という型式分解表が用意されている。GTC182Bのページでは、次のように書かれている。
XX Mold Family / X Price Key / XX Ground Rod Code / XX Conductor Code
日本語に置き換えると、「XX=モールドファミリー」「X=価格キー」「XX=接地棒コード」「XX=導体コード」の4区分だ。これをGTC182Bに当てはめると、
- GT(2文字)=モールドファミリー
- C(1文字)=価格キー
- 18(2文字)=接地棒コード
- 2B(2文字)=導体コード
という区切りになる。「GT」+「C」+「18」+「2B」を並べると「GTC182B」——文字数もぴったり一致する。末尾のBは接続形状の記号ではなく、「2B」という2文字ひと組の導体コードの後半部分だった。最初の仮説は、区切り方を間違えていたことになる。
同じ枠組みで残り4型式を分解すると、次のようになる。
| 型式 | ファミリー | 価格キー | 接地棒/導体コード | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| GTC182B | GT | C | 18 / 2B | 3/4インチ銅被覆接地棒 × 1/0AWG単線 |
| GTC182G | GT | C | 18 / 2G | 3/4インチ銅被覆接地棒 × 2/0AWG撚り線 |
| GTC162Q | GT | C | 16 / 2Q | 5/8インチ銅被覆接地棒 × 4/0AWG撚り線 |
| GTC152G | GT | C | 15 / 2G | (接地棒径は未確認) × 2/0AWG撚り線 |
| VSC1V | VS | C | 1V | #2AWG撚り線(鋼材・平面接続) |
「GT」「VS」が決めるのは形状ではなく「何と何をつなぐか」
先頭2文字のモールドファミリーが、実は接続の相手を決めている。nVent公式の製品ページタイトルを並べると、その役割がはっきりする。
- GTC182Bのページタイトル:「Cable to Ground Rod or Other Rounds, GT, Copper-bonded, 0.75” dia, 1/0 Solid」
- VSC1Vのページタイトル:「Cable to Steel, VS, Steel Pipe or Flat Surface, #2 Concentric, 24” Min Pipe」
GTは「Cable to Ground Rod(ケーブル対接地棒)」、VSは「Cable to Steel(ケーブル対鋼材)」——どちらも接続の「組み合わせ」を表すファミリー名であって、T字や十字といった幾何学的な形状記号ではない。
では接続形状はどこで区別されるのか。北米向けの在庫モールド一覧「Cadweld Stocked Mold List」(2019年5月版、文書番号ERICO-FLY-H85032-CADWELD-USEN)を見ると、答えが出てくる。ケーブル同士を水平に分岐させる型式は「TA」というファミリーにまとめられており、一覧表の説明書きにも「MOLD,CABLE,HORZ TEE(ケーブル・水平T字)」とはっきり書かれている。つまり接続形状は、末尾のアルファベットではなく、GT・VS・TAといった先頭2文字のファミリー記号の側に組み込まれている。今回分解した5型式はいずれもGTかVSのファミリーであり、T字や十字に分岐する型式ではなかった、というのが確認できた事実だ。
導体コードは「1文字目=系統、2文字目=太さ・構造」の組ではない
GTC182BとGTC182Gの違いに戻る。両者は接地棒コード(18=3/4インチ)まで完全に一致し、違うのは導体コードの「2B」と「2G」だけだった。この2文字が何を表すかは、nVent ERICO総合カタログの巻末に載っている「メートル法/US(AWG)換算表」で裏付けが取れる。この表によれば、
- 2B → 1/0AWG単線(Solid)
- 2G → 2/0AWG撚り線(Concentric)
- 2Q → 4/0AWG撚り線(Concentric)
- 1V → #2AWG撚り線(Concentric)
- 1G → #6AWG単線(Solid)
という対応が確認できる。GTC182Bの「2B」とGTC182Gの「2G」は、この換算表の異なる行を指すコードであって、接続形状の違いではなく、接続するケーブルの太さと構造(単線か撚り線か)の違いだったことになる。1/0AWG単線から2/0AWG撚り線へ——ワンサイズ太い、しかも構造の異なるケーブルを同じ3/4インチ接地棒に溶接するための、別の型式というわけだ。
接地棒コードの側も、複数の型式を突き合わせることで対応関係が見えてくる。GTC182B・GTC182Gの「18」は3/4インチ径、GTC162Qの「16」は5/8インチ径、そして別型式GTC141G(0.5インチ径・#6AWG単線)の「14」は1/2インチ径——nVent公式の各製品ページタイトルに記載された径から、この3点は確認が取れた。ただし、これだけの手がかりから「コード÷何かで径が出る」といった換算式を一般化することはできない。3点の対応が確認できた、という以上のことは言わないでおく。
GTC152Gだけ、確認しきれなかったこと
正直に書いておく。GTC152Gについては、nvent.com上の個別製品ページ(efsgtc152g)にアクセスすると「Page not found」が返ってきた。北米向けの在庫モールド一覧にも、この型式は見当たらない。GTC182B・GTC182Gが同じ一覧に載っていないのと同様、特注扱いか、地域限定の型式なのかもしれない。
型式そのものの構造——GT(ファミリー)+C(価格キー)+15(接地棒コード)+2G(導体コード)——は、他の型式と同じ規則に沿って区切ることができる。導体コード「2G」が2/0AWG撚り線を指すことも、換算表とGTC182Gの実例から独立して裏付けが取れている。だが接地棒コード「15」が具体的に何インチの接地棒を指すのかは、今回参照できた一次資料の範囲では確認できなかった。0.5インチ=14、0.625インチ=16、0.75インチ=18という3点の並びから間の値を推測することもできなくはないが、それは裏取りではなく憶測になる。この記事では、確認できたことと確認できなかったことを分けて書く方針を優先し、GTC152Gの接地棒径については「未確認」のまま残す。
現場で間違えやすい点
3点、実務で引っかかりやすいところを挙げておく。
一つ目は、末尾のアルファベット1文字だけを見て「性能ランクの違いだろう」と判断してしまうことだ。ここまで見た通り、GTのファミリーでは末尾の1文字は接続形状でもランクでもなく、2文字ひと組の導体コードの後半にすぎない。型式の意味を読むときは、必ず「ファミリー(2文字)+価格キー(1文字)+コード(2文字ずつ)」という区切りに分解してから照合する必要がある。
二つ目は、VSモールドのようにパイプサイズの区分が省略される型式があることだ。VSC1Vの型式構成は本来「W+ファミリー+価格キー+導体コード+溶接端+パイプサイズ+L+M」という並びだが、実際のVSC1Vは「VS」+「C」+「1V」の5文字しかなく、パイプサイズの区分が空欄になっている。nVent公式のページタイトルにも「Steel Pipe or Flat Surface」とあり、特定径のパイプ専用ではなく、平面や任意径の鋼材にも対応する型式のためパイプサイズコードが付いていないと見られる。型式の文字数が短いからといって、情報が欠落しているわけではない。
三つ目は、低発煙タイプ(Cadweld Exolon)への読み替えだ。換気の悪い場所での施工では、標準モールド型番の頭に「XL」を付けて発注する仕組みがnVent公式仕様に明記されている(例:TAC2Q2Q→XLTAC2Q2Q)。溶接材料側も同様にXL接頭辞が付く。屋内施工の見積を作るときは、標準型番だけで済ませず、低発煙仕様の要否を先に確認したほうがよい。
CADWELDモールドの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、CADWELDモールドの型式照合から代替型式の提案、接地棒・接地プレートとの組み合わせ選定までのご相談を見積フォームで受け付けている。現物のモールド刻印やケーブルサイズが分かれば照合を進められるので、判読に迷う場合は刻印の写真を添えてもらえると早い。
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