改修工事で、EPS(電気シャフト)の壁に穴を開けてケーブルを数本通したとする。結線も絶縁抵抗測定も済み、すき間には手元の耐火パテを詰めた。そこへ検査側から「この貫通部の認定番号は?」と聞かれる。パテは詰めてある。だが問われているのは、その穴の納まりがどの認定の範囲に入っているかである。
防火区画の貫通処理は、何を詰めたかだけでは決まらない。同じメーカーの同じ部材でも、壁と床では使える開口の大きさも、通してよいケーブルの量も違う。では、審査されているのは何なのか。答えの半分は条文にあり、残りの半分は「認定」の仕組みにある。
防火区画貫通処理は何で決まるか(判断表)
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| すき間の処理 | 建築基準法施行令第112条第20項。管と区画のすき間をモルタルその他の不燃材料で埋める |
| 管そのものの構造 | 同令第129条の2の4第1項第七号。イ:貫通部と両側1m以内を不燃材料で造る/ロ:告示1422号の外径未満とする/ハ:国土交通大臣の認定を受ける、のいずれか |
| 区画ごとの時間(ハの場合) | 面積区画・高層面積区画・異種用途区画・防火壁などは1時間、共同住宅の各戸の界壁、学校・病院などの防火上主要な間仕切壁、小屋裏の隔壁は45分、それ以外は20分 |
| 認定の単位 | 貫通する管・ケーブル、壁床の構造と開口、埋め戻し材、処理材の組合せ |
| 認定番号の見分け方 | 国交省の認定帳簿では壁がPS…WL、床がPS…FL。壁と床は別の認定 |
| 消防法の区画 | 令8区画は配管の貫通が原則不可で、電気配線は認められない。共住区画を工法で納めるなら、消防評定品か、60分の大臣認定品に試験成績書を添える |
| 指摘されやすい不備 | すき間処理の未実施、両側1m以内が不燃材料でなく大臣認定工法でもない貫通部(遵法性調査の事例) |
ケーブルそのものの耐火性能は、AE・HP・FPケーブル(警報・耐熱・耐火)の違いと使い分けの領域で、貫通部の処理とは別の話になる。
条文が求めるのは「すき間」と「管の構造」の二つ
一つ目はすき間である。建築基準法施行令第112条第20項は、給水管・配電管その他の管が準耐火構造の防火区画を貫通する場合、管と区画とのすき間を「モルタルその他の不燃材料で埋めなければならない」と定める。電線管はこの「配電管その他の管」に当たる。国交省の認定帳簿でも、ケーブルや電線管の工法は「防火区画を貫通する管」という区分で認定されている。
二つ目は管そのものの構造で、第129条の2の4第1項第七号が次の三つのどれかを求める。
- イ: 貫通する部分と、そこから両側1m以内を不燃材料で造る
- ロ: 管の外径を、用途・材質などに応じて大臣が定める数値(平成12年建設省告示第1422号)未満にする
- ハ: 大臣の認定を受ける。基準は、加熱開始後20分間(面積区画などは1時間、界壁・間仕切壁・隔壁は45分間)、区画の「加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じない」こと
イ〜ハはすき間の処理の代わりにはならない。第20項と第七号は別々の要求で、ロに当てはまる管でも、すき間は不燃材料で埋める。
同号にはただし書がある。1時間準耐火基準の床・壁または特定防火設備で区画されたパイプシャフト・パイプダクトの「中にある部分」は、イ〜ハの対象外になる。除外の対象は「中にある部分」と書かれており、シャフトの区画壁そのものを貫通する箇所まで外れるとは読めない。後で紹介する遵法性調査の事例で指摘されたのも、PS・DSの区画壁を貫通する配管だった。
これらの項番号は施行令の改正で何度か変わっている。ケーブル防災設備協議会(CFAJ)の法令Q&Aは「第112条第14項」「第129条の2の5」と旧番号で引用し、告示1422号の原文も「第百二十九条の二の五」を根拠に挙げている。本稿の項番号は、2026年10月13日にe-Govの現行条文(令和7年12月1日施行版)で確認した。案件ごとの適用条文は、所轄の特定行政庁・確認検査機関に照会して確定する。
「外径90mm未満なら認定は不要」は本当か:VE管で当てはまるのは呼び径82だけ
ロの数値を決めている告示1422号を開くと、配電管の行は1行しかない。「難燃材料又は硬質塩化ビニル」で、肉厚5.5mm以上の管は外径90mm。数値は防火構造・30分・1時間・2時間耐火構造のどれを貫通する場合でも同じである。条文は「未満」と書くので、外径90mm未満で肉厚5.5mm以上の管が当てはまる。
外径だけを見れば、細い電線管ほど楽に収まりそうに見える。ところが条件はもう一つあり、肉厚が5.5mmに届かない管は、この行のどこにも当てはまらない。積水化学工業のVE管(硬質塩化ビニル電線管)の寸法表と突き合わせると、次のようになる。
| 呼び径 | 外径 | 肉厚 | 告示の配電管の行(肉厚5.5mm以上・外径90mm未満) |
|---|---|---|---|
| 14・16・22 | 18・22・26mm | 1.8mm | 当てはまらない |
| 28 | 34mm | 2.7mm | 当てはまらない |
| 36 | 42mm | 3.1mm | 当てはまらない |
| 42 | 48mm | 3.6mm | 当てはまらない |
| 54・70 | 60・76mm | 4.1mm | 当てはまらない |
| 82 | 89mm | 5.5mm | 当てはまる |
JIS C 8430のVE管で告示の行に収まるのは、外径89mm・肉厚5.5mmの呼び径82だけで、それより細いVE管はロでは通せない。イ(両側1mを不燃材料の管にする)かハ(認定工法)で納めることになる。告示はさらに、電線を入れていない予備配管は「先端を密閉」するよう求めている。空配管を通しておく場合も、端を開けたままにはできない。
この告示は2000年6月1日に、昭和44年建設省告示第3183号に代わって施行された。2025年7月4日の改正(国土交通省告示第509号)で耐火二層管の寸法が「第二」として加わったが、配電管の行を含む元の表は変わっていない。
消防法の区画は、別の物差しで測られる
建築基準法の防火区画とは別に、消防法上の区画がかかる壁がある。
消防法施行令第8条の「開口部のない耐火構造の床又は壁」による区画(令8区画)は、一つの建物を消防用設備の設置上は別の防火対象物とみなすための区画で、配管の貫通は原則として認められない。必要不可欠な配管が区画と同等とみなせる場合に限って例外があり(消防予第53号通知、平成7年3月31日)、CFAJは、令8区画では電気配線・ガス配管は許されず給排水管のみが許されると解説している。
消防法の特例を使う共同住宅(特定共同住宅等)で、住戸と住戸、住戸と共用部分を仕切る区画(共住区画)には、平成17年消防庁告示第2号・第4号の基準がかかる。こちらは電気配線にも道がある。さいたま市の消防用設備等の審査基準は、共住区画を貫通できる配管等として配電管・通信線を挙げ、数値で枠をはめている。
| 項目 | さいたま市の審査基準(共住区画) |
|---|---|
| 配管等の太さ | 呼び径200mm以下 |
| 開口の大きさ | 直径300mmの円の面積以下(矩形ならおおむね700cm²) |
| 開口どうしの間隔 | 開口の最大直径以上(200mm以下の穴なら200mm以上) |
| 求める性能 | 1時間の加熱で、裏面に火炎・煙を出さず、裏面温度が可燃物燃焼温度以上に上がらない |
| 工法で納める場合 | 日本消防設備安全センターの評定品、または60分の大臣認定品に耐火性能試験成績書を添えたもの |
電気工事で引っかかりやすいのが乾式壁(中空壁)のスイッチ・コンセントである。同じ審査基準は、評定品・認定品を使わない場合の条件として、配線を不燃材料の配管に収め、ボックスを不燃材料で造り、すき間と管の端口をモルタルなどで埋めることに加え、ボックスを区画の両側で「対面する位置に」欠き込んで設けないことを挙げている。
住戸側と共用廊下側で背中合わせにボックスを付ける納まりは、この条件から外れる。数値と条件は、松戸市・蒲郡市の同種の審査基準でも同じだった。
2000年の法改正で、区画貫通の物差しから「温度」が消えた
共住区画では、なぜ建築の大臣認定だけでは足りず、評定品か試験成績書を求められるのか。理由は、二つの物差しが測っているものの違いにある。
建材試験センター(JTCCM)の2025年度セミナー資料によると、区画貫通の評価は1970年代後半から、告示の仕様と日本建築センターの任意評定(BCJ評定)で行われていた。当時の要求は60分・120分で、判定には遮炎性能に加えて有害な発煙が含まれ、裏面温度260℃・ケーブル表面温度340℃という温度の基準もあった。2000年の建築基準法改正で個別の大臣認定に移り、要求時間は20分・45分・60分の3段階になり、判定は遮炎性能だけになった。温度の規制はない。
消防の評定は、今も遮炎性能に加えて遮煙性能と遮熱性能を消防法独自の基準で判定し、要求時間は60分である。建築の認定は「炎が反対側に抜けないか」を見て、消防の評定はそれに煙と熱を加えて見る。同じ壁に同じ部材を使っていても、どちらの区画として扱われるかで、必要な書類が変わる理由がここにある。
工法の種類と、それぞれが持っている認定
| 工法の系統 | しくみ | 確認する認定・資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 耐火パテ(不燃材料認定タイプ。例:因幡電工KF-P) | 硬化してすき間を物理的に埋める | 不燃材料認定(KF-PはNM-4575、厚さ10〜552mm) | 不燃性配管以外(冷媒配管など)の貫通部には使えない。配管の支持・固定機能はない |
| 熱膨張耐火材(例:積水化学工業フィブロック) | 火災の熱で5〜40倍に膨張し、断熱層を作る | 工法としての大臣認定(PS番号) | 樹脂管等の貫通部は、認定を取得した工法で施工する |
| 耐火スリーブ・耐火ボックス・耐火テープ等(例:未来工業) | 部材と充填材を組み合わせて納める | 部材ごとの認定書・評定書・標準施工図 | 標準施工図どおりの組合せで施工する |
| モルタル・ロックウール保温材の充填 | 不燃材料ですき間を埋める | 第112条第20項そのもの | 不燃材料の配管向け。樹脂管は別に認定工法が要る |
表の1行目と2行目の違いは、認定番号の頭文字に表れる。KF-PのNM-4575は不燃材料としての認定で、区画貫通の工法認定(PSで始まる番号)とは別物である。因幡電工は同製品について、防火区画貫通部の埋め戻しなどに使う場合は事前に所轄の官公庁に相談するよう案内している。「耐火パテ」という名前だけで、樹脂管やケーブルの貫通部に使えるとは限らない。
製品を選ぶ手順:認定書の条件と5項目を突き合わせる
建材試験センターは、区画貫通の性能を「配管類だけの性能」では担保できないとして、①貫通部材(配管・ケーブル)、②躯体の仕様・開口寸法・形状、③埋め戻し材、④貫通部処理材の組合せ全体で評価すると説明している。選定は、この四つを認定書の条件に一つずつ当てはめる作業になる。
- 区画の種類と時間を図面で確定する: 建築基準法の区画なら1時間・45分・20分のどれか。共住区画・令8区画に当たるかも確認する
- 壁か床か、構造と厚さを確かめる: コンクリート・ALC・中空壁の別と厚さ。壁用(WL)と床用(FL)は別の認定である
- 貫通物を数える: 管の材質・外径・肉厚、ケーブルの導体断面積と本数。認定には占積率や総導体断面積の上限がある
- 開口寸法を測る: 認定には最大開口の上限がある
- 認定書・施工要領書で照合する: 番号と別添の施工条件を確認し、施工後は工法表示ラベルを貼って写真を残す
同じ部材でも、壁と床で条件がどれだけ違うかは、因幡電工の耐火ボックスS(IRBS)の適用範囲概要(2025年3月版)が分かりやすい。
| 項目 | 床(PS060FL-0964・0987) | 壁(PS060WL-1104) |
|---|---|---|
| 床・壁の厚さ | 100mm以上 | 75mm以上 |
| 最大開口 | 0.75m² | 0.42m²(高さ0.35m以下) |
| 占積率 | 39.8%以下 | 37.7%以下 |
| ケーブルの総導体断面積 | 7522.5mm²以下 | 3392mm²以下 |
| ケーブル1本の太さ | 導体38mm²以下 | 導体38mm²以下 |
床なら通せるケーブルの量が、壁では半分以下になる。冒頭の「壁と床で違う」の中身は、こうした数字である。
手元の条件がここまで固まっていれば、認定書と突き合わせる前に、条件を送って候補を相談できます。
認定番号「PS060WL」は何を表しているか
国交省は、大臣認定の一覧を「構造方法等の認定に係る帳簿」として公開している。区画貫通の帳簿では、認定区分「防火区画を貫通する管」が明細区分で二つに分かれ、壁は「PSWL」、床は「PSFL」と記号が振られている。
2013年4月から2023年4月までの帳簿に載った番号を数えると、枝番を含めて706件あった。内訳はPS060WLが346件、PS060FLが332件、PS045WLが28件で、20分の認定に当たる番号は見当たらない。帳簿に凡例はないが、3桁の数字は条文の要求時間(60分・45分)と対応しており、045の番号はすべて壁(WL)である。45分の要求がかかる界壁・間仕切壁・隔壁は、どれも壁だからだ。
番号の末尾に「-1」「-2」と枝番が付くものもある。建材試験センターの資料によると、開口寸法や配管種の追加など遮炎性能に影響する変更は新しい試験と新しい認定番号が要るが、試験を要しない追加は既存の番号に枝番を付けて処理する。手元の認定書が枝番付きなら、元の番号の書類と条件が違う可能性がある。
現場で間違いやすい点
ビューローベリタスジャパンの技術監査コラムは、2017年3月に検査済証が交付された延べ15,000㎡・8階建ての事務所ビルの遵法性調査で、パイプスペース・ダクトスペースの防火区画壁(面積区画)を貫通する配管について、次の2点を指摘した事例を紹介している。同コラムは、貫通処理の不備を遵法性調査で比較的頻度の高い項目としている。
- 防火区画を貫通する配管の両側1メートル以内が不燃材料になっておらず、貫通部分も大臣認定を受けた工法で施工されていない
- 防火区画を貫通する部分のすき間処理が行われていない
同コラムは給水管・排水管を例に解説しているが、電線管・ケーブルでも条文の組み立ては同じである。電気工事側で特に注意したいのは、竣工後の変更だ。配線の追加で穴を広げたり既設のパテを一部はがしたりすると、開口寸法・占積率・充填の厚さといった認定の条件から外れるおそれがある。竣工図に載らない「あとから通した一本」は、図面との照合では拾えない。
材料の扱いでは、因幡電工のKF-Pが「配管の支持・固定機能はありません」と明記し、硬化後に負荷や振動が加わるとパテが脱落するおそれがあるとしている。ケーブルの重さをパテに預けず、支持は別に取る。電線を入れていない予備配管の先端の密閉(告示1422号)と、共住区画のボックスの背中合わせ(さいたま市の審査基準)も、仕上げ後には見えなくなる箇所である。
アウトレットボックスの扱いも変わってきた。建材試験センターの資料によると、防火区画の壁に設けるボックスは従来、鋼製であることや開口面積・防火被覆といった仕様条件で扱われ、区画貫通の認定は必須ではないとされていた。2007年に大臣認定の第1号が交付され、複数社が取得したことで、現場で認定品が求められるようになったという。
検査で指摘されたときの是正の進め方
- 該当箇所を全数洗い出す: 図面と現地を突き合わせ、未処理・不完全な貫通口を拾う。竣工図にない後施工の箇所が漏れやすいので、目視で確認する
- 区画と貫通物の条件をそろえる: 区画の種類と時間、壁か床か、構造・厚さ、貫通物の材質・外径・本数、開口寸法を記録する
- 認定工法を選んで施工する: 条件がすべて認定書の範囲に入る工法を選ぶ。開口が認定の最大開口を超えていれば、そのままでは範囲に入らない
- 記録を残す: 認定書の写し、施工写真、工法表示ラベルを、検査官・監査担当者に示せる状態にする。因幡電工・未来工業は、工法表示ラベル(認定シール)や消防評定マークの請求を受け付けている
どの認定が現場の条件に合うか判断に迷う場合は、メーカーの技術窓口に、区画の種類と時間・壁床の構造と厚さ・貫通物・開口寸法を伝えて確認する。
発注するときに伝える4項目
貫通処理材の手配は、「区画の種類と時間」「壁か床かと構造・厚さ」「貫通物(管の材質・外径、ケーブルのサイズと本数)」「か所数」がそろえば進められる。書き方の例は次のとおり。
例: 「面積区画(1時間)・コンクリート壁 厚さ150mm・PF管28を3本×10か所、認定工法で」
「共同住宅の界壁(45分)・乾式間仕切り・ケーブル(導体14mm²)4本×5か所」
- 認定・評定の範囲内であることが条件で、似た製品での代用はできない
- 区画の種類で必要な時間が変わり、使える工法も変わる
- 増設・改修で穴を広げる場合は、既設の処理方法と認定番号も伝える
- 個別の適用条文・工法の可否は、最終的に所轄の特定行政庁・消防・確認検査機関が判断する
この4項目は、下のフォームにもそのまま書けます。
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- コンクリート埋設PF管のつぶれ対策と曲げ半径制限(貫通前の配管施工基準)
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