見積書が2枚、机の上に並んでいる。どちらも同じ6600V CVTケーブルの端末処理3本分。ケーブルサイズも心数も、屋内・屋外の区分もそろっている。それなのに、金額には大きな開きがある。型番の並びを見比べても違いがわからず、備考欄まで目を落として初めて気づく。片方には「テープ巻き形」、もう片方には「プレハブ形」とだけ書かれていた。
この一行の違いが、なぜ金額を大きく動かすのか。答えを追っていくと、高圧ケーブルの端末処理には、ストレスコーンという同じ部品を「何で」「どうやって」作るかが違う、複数の施工方法が存在することに行き着く。
この記事でわかること
- 高圧ケーブル端末処理の4つの施工方法(テープ巻き式・プレハブ式・熱収縮式・冷間収縮式)の作り方の違い
- 各工法で現場での加熱作業が必要かどうか
- JCAA(日本電力ケーブル接続技術協会)による工法分類と、その特徴の整理
- メーカー各社の製品ラインから見る、現在の主流工法
- 発注・見積り依頼の際に伝えるべきこと
高圧ケーブル端末処理、4つの施工方法
高圧CVケーブルの端末処理部を規格化しているJCAAは、終端接続部を大きくテープ巻形・プレハブ形・がい管形の3系統に整理している(JCAA技術報告第2号による)。このうちがい管形は、塩害や汚損の影響を受ける屋外設置場所や22kV以上の高電圧向けに、内部をがい管(碍子)で覆って絶縁混和物を注入する特殊な工法で、一般的な6600V級の屋内外端末で選ばれることは少ない。
現場でよく比較の対象になるのは、残りの2系統をさらに分けた次の4つの工法である。プレハブ形は、ゴムストレスコーンをそのまま差し込む従来の方式に加えて、支持コアを引き抜いて収縮させる冷間収縮式という発展形が広まった。この冷間収縮式は「常温収縮式」とも呼ばれ、同じ意味で使われている。
テープ巻き式 — 現場で自在に作る、そのぶん熟練がいる
テープ巻き形は、ストレスコーンそのものを現場でテープを巻いて作る工法だ。絶縁テープを円錐状に巻き上げてストレスコーンの形を作り、その上に鉛テープまたは半導電性融着テープを巻いて仕上げる(JCAA技術報告第2号による)。
材料はテープと端子だけで済むため、材料費は他の工法より安価だとされている。ただしテープを巻いてストレスコーンという精密な形を作る以上、厚み・重なり・張力・円錐の角度を毎回そろえる技量が求められる。JCAA自身が「安価であるが、作業者の熟練を要する」と明記しているのは、この点だ。
プレハブ式 — 工場で成形された部品を差し込むだけ
プレハブ形は、ゴムストレスコーンを工場であらかじめ成形しておき、現場では規定寸法に加工したケーブル絶縁体の上に挿入するだけで完成させる工法だ(JCAA技術報告第2号による)。テープを巻いてストレスコーンの形を作る工程そのものが、工場でのゴム成形に置き換わっている。
JCAAはこの工法について「テープ巻形と比較すると性能の安定性、作業の簡便さおよび作業時間の短縮化などの点で優れている」「作業者の熟練度も従来に比較して大巾に少なくて良いようになった」と評価している。住電機器システムのプレハブ形端末処理材(アサヒニューパット)も、テープレス・ハンダレス・グリスレスの工法によって組立作業時間を大幅に短縮できるとしており、古河電工パワーシステムズの差込式製品も、テープ巻き・グリース塗布を省いた完全グリースレス設計をうたっている。工場成形品を挿入するという発想は、複数のメーカーが同じ方向で製品化を進めてきた工法だといえる。
冷間収縮式(常温収縮式)— 加熱せずにゴムを縮めて密着させる
冷間収縮式は、プレハブ形と同じくゴム部材を使うが、取り付け方が異なる。あらかじめ内径を引き伸ばした状態で、螺旋状などの支持コアに巻きつけてあるゴムスリーブをケーブルに通し、コアを引き抜くと、ゴムが自身の弾性で常温のまま収縮してケーブルに密着する。3Mジャパンの高圧端末処理材(PST端末T6PSシリーズ)や、古河電工パワーシステムズの常温収縮式製品(アイヒットCS6)が、この方式を採用している。
この工法の利点として両社が挙げているのは、加熱工程そのものが要らないという点だ。3Mの製品説明では常温収縮・無半田接地クランプによる作業の簡便さやグリースレス作業が特長として並び、古河電工パワーシステムズも「常温収縮でラクラク施工」とうたっている。3Mジャパンのカタログには、別の接続工法(レジン注入式)の利点として「熱収縮やはんだ上げ工程がないため、火気、熱源を必要とせず、安全」という記載があり、逆に言えば熱収縮という工程には火気・熱源を要するという前提が、メーカー自身の説明の中にも表れている。
熱収縮式 — チューブを加熱して収縮させる
熱収縮式は、電界緩和用・絶縁保護用のチューブを、加熱してケーブルに密着させる工法だ(denki-study.comによる一般的な整理)。放射線架橋などの処理によって「元の細い径に戻ろうとする」性質を持たせたチューブをケーブルに通し、ハンドツール型または据付型の加熱工具で炙って収縮させる(FA Ubonの技術解説による)。
冷間収縮式との違いは、この加熱工程の有無に尽きる。加熱源を現場に持ち込む必要がある一方、チューブという形状の自由度を生かせるため、径のばらつきや複雑な形状への追従性で選ばれる場面もある。レイケム(現TE Connectivity)ブランドの熱収縮製品のように、高圧ケーブル端末向けの製品も市場には流通しているが、今回確認した3Mジャパン・古河電工パワーシステムズの現行の6600V級端末処理材ラインナップでは、プレハブ差込工法と常温収縮工法が主力として並んでおり、熱収縮式単体を前面に出した製品はそれほど多く見当たらなかった。
4つの工法、何を軸に比べるか
ここまでを軸で整理すると、次のようになる。
| 工法 | ストレスコーンの作り方 | 現場での加熱 | JCAA分類 |
|---|---|---|---|
| テープ巻き式 | 絶縁テープ・半導電性テープを現場で巻き重ねて成形 | 不要 | テープ巻形 |
| プレハブ式(差込式) | 工場成形のゴムストレスコーンを挿入 | 不要 | プレハブ形(ゴムストレスコーン形/ゴムとう管形) |
| 冷間収縮式(常温収縮式) | 引き伸ばしたゴムスリーブの支持コアを引き抜いて収縮・密着 | 不要 | プレハブ形の発展系として各社が製品化 |
| 熱収縮式 | 熱収縮チューブを加熱して収縮・密着 | 必要(ヒートガン等) | 収縮チューブ形として整理されることが多い |
こうして並べると、加熱を必要としないという一点で、テープ巻き式・プレハブ式・冷間収縮式の3つと、熱収縮式が分かれることが見えてくる。そして材料費と熟練度という軸で見ると、テープ巻き式は安価だが熟練を要し、プレハブ式・冷間収縮式は工場成形品を使う分、施工のばらつきを抑えやすい、という構図がJCAAの評価とメーカー各社の製品説明の双方から読み取れる。
もうひとつ見落とされがちな軸に、対応できるケーブルサイズの範囲がある。プレハブ式・冷間収縮式は工場成形のゴム部材を使う以上、型番ごとに適合する導体断面積の範囲があらかじめ決まっている。3Mジャパンの一覧表でも、6600V用の同系統製品の中で型番ごとに対応する導体サイズ(mm²)が細かく分かれている(同社のケーブル接続・端末処理材一覧表による)。現物のケーブルサイズに合う型番を選び間違えると、部材そのものが挿入できない。一方でテープ巻き式は、規定の有効閃絡長さえ確保すれば、既製品の寸法区分にとらわれず仕上げられるという自由度を持つ。
現場でどう使い分けるか
この構図を踏まえると、使い分けの目安も見えてくる。特殊な口出し寸法や、まだ規格化されていない古いケーブルへの対応など、既製品のサイズに収まらない現場では、寸法を自在に調整できるテープ巻き式が選ばれることがある。逆に、標準的な6600V CVT・CVケーブルの新設工事や更新工事で、複数本をまとめて施工する場合は、性能のばらつきを抑えやすいプレハブ式・冷間収縮式が優先されやすい。
火気の取り扱いに制限がある屋内やキュービクル内の作業では、加熱工程のない冷間収縮式・プレハブ式・テープ巻き式が扱いやすい一方、熱収縮式は屋外での炙り作業がしやすい環境や、チューブの形状追従性を生かしたい箇所で検討の対象になる。いずれにせよ、どの工法を選ぶにしても、高圧(600Vを超え7,000V以下)の電気工作物である以上、選定・施工には電気主任技術者や専門施工業者との連携が前提になる点は変わらない。
発注時に伝えるべきこと
見積り・調達の場面では、ケーブルサイズ・心数・屋内外の別に加えて、希望する工法やメーカー・製品ラインまで具体的に伝えることが、冒頭のような「同じ条件のはずなのに金額が読めない」事態を避ける近道になる。工法によって対応できるケーブル外径の範囲や、屋外用・耐塩害用といった仕様の有無が異なるため、型番や工法名を指定しないまま発注すると、現場の技能や設置環境に合わない資材が届くことにもなりかねない。
高圧ケーブル端末処理材の購入・見積りについて
高圧ケーブル端末処理材は、電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご購入いただけます。ケーブルサイズ・心数・屋内外の別・希望する工法(テープ巻き式/プレハブ式/熱収縮式/冷間収縮式)をお伝えいただければ、適合品の選定からお見積りまで対応します。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
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