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法令・資格電源蓄電池

産業用リチウムイオン蓄電池の設置基準|消防法・火災予防条例の規制区分と離隔距離、届出義務を一次情報で整理

読了目安: 12分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

「うちの規模だと、消防に届け出は必要になりますか」——工場の設備担当者からこう聞かれて、即答できる電気工事店は実はそう多くない。太陽光の余剰電力を貯めるにせよ、非常用電源を厚くするにせよ、産業用のリチウムイオン蓄電池を導入する話が持ち上がると、必ずこの質問が出る。容量次第で扱いが変わるらしい、ということは何となく知られている。だが具体的にどこに線が引かれているのかとなると、現場の共有知識としてはかなり心もとない。

無理もない。この線引きは、2024年1月にかなり大きく組み替えられたばかりだからだ。しかも組み替えの理由が、鉛蓄電池を前提に作られた古い規制を、電池の種類がまるで違うリチウムイオン電池にそのまま当てはめようとしたときに生じた、単位のねじれにある。何が変わり、何が変わっていないのかを、一次資料に沿って順に見ていく。

蓄電池設備は消防法上どこに位置づけられるか

産業用の定置型蓄電池は、消防法上「対象火気設備等」の一つに分類される。火を使う設備そのものではないが、電気的な出火リスクを抱える設備として、消防法に基づく省令(対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令)が全国共通の技術基準を定め、これを受けて市区町村ごとの火災予防条例が、より具体的な規制内容を条文化する仕組みになっている。

つまり、実際に適用される条文は「火災予防条例」という市区町村単位の法令であり、全国一律の一本の法律があるわけではない。総務省消防庁が示す「火災予防条例(例)」という模範条例をベースに、各市区町村が自分の条例として制定しているのが実態だ。この記事で紹介する数値の多くは東京消防庁の火災予防条例に基づくものだが、模範条例に準拠している以上、他の自治体でも大筋は同様と見てよい。ただし細部の運用や様式は自治体差がありうるため、最終的な確認は所轄消防署に委ねるべき部分が残る。

なぜ規制単位が「Ah・セル」だったのか——そして、なぜそれが行き詰まったか

蓄電池設備の規制は、昭和36年(1961年)の条例制定時にさかのぼる。当時想定されていたのは、開放形の鉛蓄電池だけだった。規制の目的は3つ、電気的な出火の危険、希硫酸を使う電解液からの水素ガス発生による燃焼の危険、そして希硫酸自体による可燃物の酸化の危険。この3つを防ぐために、定格容量の合計が200アンペアアワー以上(電圧48ボルト未満のものを除く)の蓄電池設備を規制対象とする、という単位が採用された。

この「アンペアアワー(Ah)・セル」という単位は、その後4,800Ah・セル以上という基準に更新されながら、長く維持されてきた。電流と時間の積という、電池の物理量としては素直な指標だ。

ところが、この単位には見落とされがちな弱点があった。Ah・セルという値は、電圧を無視した容量の表現だ。同じ4,800Ah・セルという規制ラインでも、電池のセル電圧が違えば、実際に持っている電力量(キロワットアワー、kWh)はまるで別物になる。総務省消防庁の資料が示す換算表によれば、4,800Ah・セルという同一の基準値は、鉛蓄電池(セル電圧2ボルト)なら9.6kWh相当だが、ニッケル水素蓄電池(同1.2ボルト)なら5.76kWh相当、そしてリチウムイオン蓄電池(同3.7ボルト)なら17.76kWh相当になる。同じ「規制の入口」のはずが、電池の種類によって、実質的な電力量では最大3倍以上の開きが生じていたことになる。

鉛蓄電池しか想定していなかった時代はこれでよかった。しかし密閉形のアルカリ蓄電池やリチウムイオン蓄電池が普及し、しかも設備の大容量化が進むにつれて、この換算のねじれが規制の実態と合わなくなっていった。総務省消防庁はこの問題を「蓄電池設備の特徴に応じた規制の見直し」という検討課題として取り上げ、電池種別ごとの火災リスクを実証実験で検証したうえで、規制単位そのものを組み替える結論に至る。

2024年1月施行の改正——規制単位は「kWh」へ

この検討を経て、令和5年(2023年)5月31日に公布、令和6年(2024年)1月1日に施行されたのが、現在の規制の姿だ。規制単位はAh・セルから、電圧を反映した蓄電池容量(kWh)へ切り替わった。電池種別による換算のねじれは、これで解消されている。

現在の区分は次の3段階に整理される。

  • 蓄電池容量10kWh以下のもの——火災予防条例への適合、届出のいずれも不要
  • 10kWh超20kWh以下のもの——消防庁長官が定める出火防止措置(令和5年消防庁告示第7号第2)が講じられていれば適合不要、講じられていなければ火災予防条例への適合が必要。ただしこの区分は届出の対象にはならない
  • 20kWh超のもの——火災予防条例への適合、および消防長(消防署長)への届出のいずれも必要

改正前は届出対象そのものが4,800Ah・セル以上(電池種別により5.76〜17.76kWh相当)というばらつきのある基準だったが、改正後は届出の要否が「20kWh超かどうか」という一本の線に統一された、と理解しておけば実務上は足りる。

なお、この改正が施行された時点で既に設置されている設備、あるいは施行後の一定期間内に設置されたもので新基準に適合しないものについては、当分の間なお従前の例によるという経過措置が設けられている。既存設備の増設・更新を検討する際は、この経過措置がどこまで適用されるかも含めて、所轄消防署に確認しておいたほうがいい。

屋内設置と屋外設置で何が変わるか

容量区分の次に押さえておきたいのが、設置場所による基準の違いだ。火災予防条例(例)は、屋内設置と屋外設置とで、求める安全対策の中身をはっきり書き分けている。

屋内に設置する場合、まず不燃材料で造った壁・床・天井によって区画され、かつ窓・出入口には防火戸を設けた室内に設置することが求められる(周囲に延焼を防ぐのに十分な空間を確保できている場合はこの限りでない)。加えて、屋外に通ずる有効な換気設備を設けること、不燃区画を貫通するダクトやケーブル等の周囲のすき間を不燃材料で埋めることも求められる。要するに、蓄電池設備そのものよりも、それを囲う部屋側の防火性能で延焼を食い止める発想だ。

屋外に設置する場合は、発想が変わる。雨水等の浸入を防止する措置が講じられた、鋼板等で造られた筐体(キュービクル式)に収めることが前提になり、そのうえで建築物から3メートル以上の距離を保つことが求められる。これが、いわゆる「離隔距離」だ。部屋で囲えない以上、単純な距離で延焼リスクを切り離す考え方になる。

ただし、この3メートルには除外規定がある。消防長または消防署長が火災予防上支障がないと認める構造——具体的には、鋼板等の厚さが一定以上(総務省消防庁の資料では2.3ミリメートル以上等の水準が例示されている)で、開口部にも防火戸を備えるといった要件を満たすキュービクル式のものは、この離隔距離が不要とされている。さらに2024年の改正では、JIS規格等に定められた延焼防止措置(防火筐体等の外部延焼防止措置)を満たす蓄電池設備についても、消防法が求める離隔距離と同等の安全性が確保されたものとして扱う枠組みが整理された。「3メートル離せないから設置できない」と即断する前に、製品側がこの緩和要件に対応した筐体構造を持っているかどうかを、メーカーの技術資料で確認する価値がある。

いずれの設置形態でも共通して求められるのは、振動や衝撃で容易に転倒・落下・破損しない構造であること、見やすい箇所への標識掲示、係員以外の立入禁止、そして専門知識を持つ者による定期的な点検・絶縁抵抗測定と、不良箇所を発見した場合の直ちの補修・記録の保存だ。容量が規制ラインを下回り届出が不要な設備であっても、これらの基本的な管理まで免除されるわけではない。

リチウムイオン電池ならではの、もう一つの規制軸

ここまでは、蓄電池設備という「入れ物」に対する規制の話だった。リチウムイオン電池には、これとは別に、電池そのものの中身に着目した規制軸がある。

総務省消防庁の資料は、リチウムイオン蓄電池の電解液が、消防法上の危険物(第4類第2石油類)に該当することを明記している。したがって、屋外コンテナなどにまとまった数量のリチウムイオン電池を集積する設置形態では、蓄電池設備としての規制(離隔距離等)に加えて、危険物を扱う一般取扱所としての規制——消防活動上必要な空地の確保、防爆構造の電気設備、危険物が浸透しない床構造、可燃性蒸気を屋外の高所へ排出する設備など——が、別立てで適用されうる。二つの規制が同時に効いてくる、という点は見落とされがちだ。

もっとも、これは常に重い規制が二重にのしかかるという意味ではない。平成23年12月27日付けの消防庁通知(消防危第303号)は、リチウムイオン蓄電池について、地上高さ3メートルからコンクリートの床面へ落下させる試験を行い、漏液や可燃性蒸気の漏れが確認されない場合には、指定数量未満の施設における屋内設置において、電気設備の防爆構造化・浸透しない床構造・排出設備の設置といった措置が不要になる特例を示している。また、屋内で自家発電設備の付近に蓄電池設備を設置する場合、電解液量が指定数量未満のリチウムイオン蓄電池設備を厚さ1.6ミリメートル以上の鋼板等の箱(原則として出入口以外に開口部を持たないもの)に収納すれば、自家発電設備側の危険物量と合算しなくてよい、という運用上の取扱いも示されている。設置形態次第で、規制の重なりを回避する余地があるという理解のほうが実務には近い。

実務上、どう動けばよいか

ここまでの規制は、あくまで火災予防条例(例)という全国共通の模範に基づく整理だ。実際に適用されるのは、設置場所を管轄する市区町村の条例であり、条例改正の反映時期や運用の細部には、自治体ごとの差がありうる。容量区分の境界線に近い規模の設備を計画する場合や、屋外設置で離隔距離の緩和を狙う場合、あるいはリチウムイオン電池を大量に集積する設置形態を検討する場合は、設計の早い段階で所轄消防署に相談し、届出の要否と技術基準への適合方法を確認しておくことが、後戻りのない導入につながる。

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よくある質問

工場に産業用リチウムイオン蓄電池を設置する場合、必ず消防署への届出が必要ですか。

容量によります。2024年1月施行の改正後は、蓄電池容量が20kWh以下であれば火災予防条例上の届出は原則不要とされています。20kWhを超える場合に、設置しようとする旨をあらかじめ消防長(消防署長)へ届け出る義務が生じます。ただし届出の要否や様式の細部は市区町村の条例によって定められるため、正確な取り扱いは所轄消防署に確認するのが確実です。

10kWh以下の蓄電池設備なら、離隔距離や構造の基準を一切気にしなくてよいのですか。

火災予防条例上の技術基準(屋外設置時の離隔距離、屋内設置時の不燃区画等)については、蓄電池容量10kWh以下のものは規制対象外とされています。ただし、これは火災予防条例の適合義務がないという意味であり、電気設備としての安全性(結線・保護回路・メーカーの設置要領)を無視してよいという意味ではありません。またリチウムイオン電池を大量に集積する設置形態では、後述する危険物規制が別途かかる可能性も残ります。

屋外に設置すれば、必ず建築物から3メートル離さなければならないのですか。

原則はその通りですが、例外があります。総務省消防庁の資料によれば、消防長または消防署長が火災予防上支障がないと認める構造(鋼板等の厚さが一定以上のキュービクル式など)を有するものは、この離隔距離の規定から除かれています。さらに2024年の改正では、JIS規格等に基づく延焼防止措置が講じられたものについても、離隔距離を不要とする枠組みが整理されました。個別の設備がこの例外に該当するかどうかは、製品の技術資料と所轄消防署への確認が必要です。

リチウムイオン蓄電池は、蓄電池設備としての規制のほかに何か別の規制もあるのですか。

あります。総務省消防庁の資料は、リチウムイオン蓄電池の電解液が消防法上の危険物(第4類第2石油類)に該当することを明記しています。屋外コンテナ等にまとまった数量を設置する形態では、蓄電池設備としての規制(離隔距離等)に加えて、危険物の一般取扱所としての規制(保有空地、防爆構造、耐火構造等)が別立てでかかりうる、という二重構造になっています。ただし平成23年の通知に基づく落下試験の特例など、緩和の余地も用意されています。

産業用リチウムイオン蓄電池はどこで購入・相談できますか。

松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからお見積り・ご相談いただけます。設置場所(屋内・屋外)や容量の見込みに応じて、届出の要否を検討する前段階の製品選定からご相談いただけます。

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参考文献・出典

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