制御盤の中で、パワー半導体を守るためだけに刺さっている小さなヒューズがある。銘板には「A50QS70-4」。別の盤では「A50QS100-4」。もう一台では「A50QS150-4」。定格電流は70A、100A、150Aとばらばらなのに、末尾の「-4」だけは判で押したように揃っている。
型番の末尾がこれだけ律儀に一致していると、つい意味を探りたくなる。世代を表す数字だろうか。それとも電圧クラスの枝番だろうか。定格電流が変わっても動かないということは、逆に言えば「-4」は電流とは無関係な何かを示しているはずだ、というところまでは見当がつく。答えを持っているのは、日本メルセン株式会社の親会社であるMersenが米国サイトで公開しているデータシート「A50QS Amp-Trap® Form 101 High Speed Fuses」だった。
型番は5つの要素に分かれる、という図がそもそも存在する
このデータシート(ファイル名DS-A50QS-Amp-Trap-Form-101-Mersen、PDFのメタデータ上は2025年11月5日作成、フッター表記は「© 2025 Mersen」)の1ページ目には、「Catalog Numbering System」という見出しの図が載っている。型番の見本として「A / 50 / QS / 250 / -4」という5つのブロックが並び、それぞれの下に見出しが振られている。
順に見ていくと、先頭の「A」は「Amp-Trap Fuse」、つまりAmp-Trapという製品ファミリーであることを示す記号だ。2番目の「50」は「Rated Voltage」欄で、図にはその下にもう一段「- 500」と添えられている。500Vクラスの定格電圧を、頭の2桁だけ取って「50」と表しているとみられる。3番目の「QS」は「Style」欄、つまり本体の形式・スタイルを示す記号であることは図から読み取れるものの、QSという2文字そのものが何の略なのかは、今回確認できたMersenの公開資料のどこにも書かれていなかった。取扱説明書や社内資料に別の解説がある可能性は残るが、少なくとも今回のデータシートと製品ページの範囲では、QSは「そういう記号がある」以上の説明を持たない。
4番目のブロックは「Amperes」欄で、図では見本として「250」という数字が入っているが、これは特定の型番ではなく「ここに定格電流の数字がそのまま入る」という位置を示しているだけだ。そして問題の5番目、末尾の「-4」は「Mounting Types」欄。図の下にはっきりと「Blades, bolt-in: 4」と注記されている。ブレード(刃形)端子でボルト締めして取り付けるタイプが、コード「4」に割り当てられている。
「-4」が動かない理由は、25品番が同じ取付方式だから
ここまでで仮説は立った。「-4」が電流と無関係なら、電流定格の違うA50QS70-4・A50QS100-4・A50QS150-4に同じ「-4」が付いていても矛盾しない。データシート2ページ目のCATALOG NUMBERS一覧で、この仮説を確かめられる。
一覧にはA50QS35-4、A50QS40-4、A50QS50-4、A50QS60-4、A50QS70-4……と続き、最後はA50QS1200-4まで、25品番がずらりと並ぶ。眺めて気づくのは、25品番のうち末尾が「-4」でないものが一つもないことだ。35Aから1200Aまで、実に34倍の電流レンジをカバーしながら、末尾記号は一文字も動かない。
理由は単純で、この一覧に載っている25品番が、いずれも「ブレード端子・ボルト締め」という同じ取付方式を採用しているからだ。取付方式が変わらない限り、Mounting Types欄のコードも変わりようがない。逆に言えば、この一覧は「35A〜1200Aのブレード・ボルト締めタイプ」という一つの取付方式ファミリーをまとめたページであり、そこに含まれる限り末尾は常に「-4」になる、というだけの話だった。世代番号でも枝番でもない。
実機のスペック表を突き合わせると、寸法まできれいに符合する
型番の読み方が分かったところで、実際のA50QS70-4・A50QS100-4・A50QS150-4の製品ページを見てみる。三品とも、Technical Specifications表のMounting欄は「Bolted」、Connection/Terminal Type欄は「Blade」で完全に一致している。データシートの図が示した「-4=Blades, bolt-in」という定義と、実機のスペック表が矛盾なくつながっている形だ。
面白いのは寸法だ。データシートのDIMENSIONSテーブルには、「A50QS35〜100」の区分でDiameter(直径)1.00in(25.4mm)、「A50QS125〜200」の区分で1.22in(31.0mm)という区分がある。実際、A50QS70-4とA50QS100-4の製品ページのProduct Diameterはどちらも1in、A50QS150-4だけ1.22inになっていた。電流定格でひとまとめにした区分表と、個別製品ページの実測値が、別々の場所に載っているにもかかわらずぴたりと符合している。型番の読み方が単なる記号解釈にとどまらず、実機の物理サイズの予測にまで使えることが、この突き合わせで裏付けられる。
「-4」で終わらないA50QSも存在する
ここで一つ、確認しておきたい疑問が残る。「-4」がMounting Types欄のコードだとすれば、A50QSシリーズの中に「-4」以外の取付方式を持つ型番があってもおかしくない。
あった。A50QS10-1という製品だ。ページのTechnical Specifications表を見ると、Mounting欄は「Clip」、Connection/Terminal Type欄は「Ferrule」となっている。A50QS70-4等の「Bolted」「Blade」とはまるで違う。しかもAC or DC欄はACのみで、A50QS70-4等にあったDC定格の記載自体が存在しない。フェルール(棒形)端子をクリップで挟み込むタイプの、より小型・低電流(10A)の製品だと分かる。
つまり「-4」はA50QS全体の共通接尾辞ではなく、あくまで「ブレード・ボルト締め」という一つの取付方式グループに属する製品だけが持つコードであり、A50QS10-1のようにクリップ・フェルール方式を採る製品には「-1」という別コードが割り当てられている。ただし、このA50QS10-1は、A50QS70-4等が掲載されている「Amp-Trap Form 101」データシート(35〜1200A、ブレード・ボルト締めを扱う資料)には登場しない。今回確認できた資料の範囲では、10Aフェルール形がどの資料に体系立てて記載されているかまでは追い切れておらず、「-1」という記号の全体像(他にどんな電流帯・仕様が含まれるか)は未確認のまま残る。
現場で間違えやすい点、遮断容量の数字が資料によって違う
型番の構造を追う過程で、もう一つ見過ごせない食い違いに行き当たった。遮断容量の表記だ。
データシートのRATINGS欄には「I.R.: 200kA I.R. AC, 87kA I.R. DC」とあり、さらにA50QS100-4については「200kA(@500VAC)」という個別の注記まで添えられている。かなり具体的な数字だ。ところが、A50QS70-4・A50QS100-4・A50QS150-4いずれの製品ページでも、Technical Specifications表の「Max I.R./Breaking Capacity: I1」欄は、電流定格によらず一律「50kA」と表示されている。200kAと50kA、桁こそ同じでも4倍の開きがある。
どちらも同じMersen公式サイト内の記載であり、今回の調査ではこの食い違いを解消する追加資料までは見つけられなかった。データシートのI.R.と製品ページのI1が、そもそも別の試験条件・別の定義値を指している可能性はある。だが、それを断定できる根拠は手元にない。上位側の保護協調(ブレーカやコンタクタとの組み合わせ)を検討する場面など、この数値の大小が結果を左右する用途では、カタログの数字を鵜呑みにせず、Mersenまたは販売代理店に直接確認したうえで見積・選定を進めたい。
発注前に確認しておきたいこと
型番の読み方を押さえたうえで、実務で気をつけたい点を整理しておく。
一つめは、末尾の記号を電流定格の一部だと誤読しないことだ。「A50QS70-4」の「-4」を見て、何らかの追加仕様やバージョンだと考えてしまうと、後継品や代替品を探す際に的外れな絞り込みをしてしまいかねない。「-4」はあくまで取付方式(ブレード・ボルト締め)のコードであり、電流帯が変わっても付いたままになる。
二つめは、同じA50QSという名前でも、末尾コードが違えば取付方式ごと別物になり得るという点だ。A50QS10-1のように「-1」を持つ製品は、クリップ・フェルール方式かつAC専用であり、A50QS70-4等のブレード・ボルト締め・AC/DC兼用とは端子の形状も固定方法もまったく違う。既設のヒューズホルダに合わせて代替品を探す場合、電流定格だけでなく、この取付方式コードまで揃っているかを必ず照合したい。
三つめは、前段で触れた遮断容量の食い違いだ。データシートの「200kA AC/87kA DC」と、製品ページの「I1 50kA」のどちらを見積書に転記するかで、後々の技術的な問い合わせに違いが生じ得る。数字が保護協調上重要な用途では、資料をそのまま転記せず、メーカーへの確認を挟む一手間を惜しまないほうがよい。
型番の1文字・1桁の意味を取り違えたまま発注すると、届いた現物が銘板の形状と合わない、あるいは想定した遮断性能と資料の数字が食い違う、という形で現場に跳ね返ってくる。不明点があれば、発注前に確認しておきたい。見積もり依頼をする →
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