見積書の脇に、二つの品番を並べて置いてみる。「PVK-AN」と「PVK-ANK」。どちらも未来工業のPVKボックス、中浅形でノック付。違うのは末尾の「K」1文字だけに見える。ところが価格表を開くと、前者は730円、後者は830円。同じ形、同じサイズ、同じノックの有無で、なぜ100円の差が付いているのか。
答えを先に言うと、この「K」は色を指す記号ではあるのだが、PVK-ANの色記号(無印・J・M)とは別の系統に属している。未来工業のPVKボックスには、色記号のグループが実は二つある。公式価格表PDFを実際に取得し、型番の骨格と、この二系統がどこで分かれているのかを分解する。
型番の骨格——形状・サイズ・ノック・色を、この順に足していく
結論から書く。PVKボックスの品番は「PVK+形状記号(A/B)+大形記号(L、中形では省略)+ノック記号(N/O)+方出記号(1、該当時のみ)+色記号(該当時のみ)」という構造をしている。PVK-ANであれば、A(浅形)・大形記号なし(中形)・N(ノック付)・色記号なし(グレー)。PVK-BLNKであれば、B(深形)・L(大形)・N(ノック付)・K(ブラック)という組み立てだ。
形状記号のAは浅形、Bは深形を表す。公式価格表では「中浅形・中深形」「大浅形・大深形」という並びで掲載されており、浅形と深形は寸法図でも高さだけが変わる(内寸法の( )書きが深形の場合の数値であることが図に明記されている)。なぜAが浅形でBが深形なのか、この対応の由来そのものは価格表のどこにも書かれていない。読み方として確実に言えるのは、Aは浅形、Bは深形という対応関係そのものだけだ。
大形記号のLは、A・Bのすぐ後ろに挿入される。中浅形はPVK-AN、大浅形はPVK-ALN。中深形はPVK-BN、大深形はPVK-BLN。Lが挟まるだけで、寸法は中形の108mm角から大形の122mm角へと大きくなる。中形四角・大形四角という2段階のサイズ展開は、この1文字の有無だけで表現されている。
型番の分解——色記号が、なぜ二系統に分かれているのか
ここまでは素直な足し算だ。ところが色記号のところで、話がひとつねじれる。
公式価格表を並べると、標準色ラインの色記号表はこうなる。
| 規格 | 無印 | J | M | ノック | 入数 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 中浅形 | グレー(PVK-AN) | ベージュ(PVK-ANJ) | ミルキーホワイト(PVK-ANM) | 付 | 50 | 730円 |
| 中浅形(1方出) | グレー(PVK-AN1) | ベージュ(PVK-AN1J) | ミルキーホワイト(PVK-AN1M) | 付(1方出) | 50 | 730円 |
| 中浅形 | グレー(PVK-AO) | ベージュ(PVK-AOJ) | ミルキーホワイト(PVK-AOM) | ※無 | 50 | 730円 |
| 中深形 | グレー(PVK-BN) | ベージュ(PVK-BNJ) | ミルキーホワイト(PVK-BNM) | 付 | 50 | 860円 |
| 中深形 | グレー(PVK-BO) | ベージュ(PVK-BOJ) | ミルキーホワイト(PVK-BOM) | ※無 | 50 | 860円 |
| 大浅形 | グレー(PVK-ALN) | ベージュ(PVK-ALNJ) | ミルキーホワイト(PVK-ALNM) | 付 | 20 | 1,430円 |
| 大浅形 | グレー(PVK-ALO) | ベージュ(PVK-ALOJ) | ミルキーホワイト(PVK-ALOM) | 無 | 20 | 1,430円 |
| 大深形 | グレー(PVK-BLN) | ベージュ(PVK-BLNJ) | ミルキーホワイト(PVK-BLNM) | 付 | 20 | 1,590円 |
| 大深形 | グレー(PVK-BLO) | ベージュ(PVK-BLOJ) | ミルキーホワイト(PVK-BLOM) | 無 | 20 | 1,590円 |
無印がグレー、Jがベージュ、Mがミルキーホワイト。この対応は、未来工業のマニュファクチャラーデータに載っていたPVK-ANJ(浅型・ベージュ)という例とも一致する。ここまでは、色記号がひとつの表の中で完結している。
ところが、同じ公式サイトの別ページには、まったく別の色記号表が存在した。ページの片隅に「黒系の外壁等にマッチする色もあります」という注記があり、そこから飛んだ先にあったのが、この表だ。
| 規格 | ブラック(K) | チョコレート(T) | ライトブラウン(LB) | ノック | 入数 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 中浅形 | PVK-ANK | PVK-ANT | PVK-ANLB | 付 | 50 | 830円 |
| 中浅形 | PVK-AOK | PVK-AOT | PVK-AOLB | ※無 | 50 | 830円 |
| 中深形 | PVK-BNK | PVK-BNT | PVK-BNLB | 付 | 50 | 990円 |
| 中深形 | PVK-BOK | PVK-BOT | PVK-BOLB | ※無 | 50 | 990円 |
| 大浅形 | PVK-ALNK | ― | ― | 付 | 20 | 1,640円 |
| 大浅形 | PVK-ALOK | ― | ― | 無 | 20 | 1,640円 |
| 大深形 | PVK-BLNK | ― | ― | 付 | 20 | 1,820円 |
| 大深形 | PVK-BLOK | ― | ― | 無 | 20 | 1,820円 |
K・T・LBという色記号は、標準色ラインの無印・J・Mとは完全に別の表に住んでいる。しかも同じ中浅形・ノック付でも、標準色ラインが730円、黒系色ラインが830円と、100円の差が付いている。中深形は860円と990円で130円、大浅形は1,430円と1,640円で210円、大深形は1,590円と1,820円で230円——サイズが大きくなるほど、この色ラインの差額も開いていく。冒頭のPVK-ANとPVK-ANKの100円差は、色記号1文字の違いというより、価格表そのものが標準色ラインと黒系色ラインという二つの体系に分かれていることの表れだった。
実機への当てはめ——マニュファクチャラーデータの3型番を検証する
この読み方が正しいかどうかは、実際の型番に当てはめて確かめられる。
PVK-AN(中形四角・浅型・ノック付)は、A(浅形)+大形記号なし(中形)+N(ノック付)+色記号なし。標準色ラインの価格表でグレー・中浅形・ノック付として掲載されており、730円。読み方どおりの製品がそのまま存在する。
PVK-BNK(中形四角・深型・ノック付・黒)は、B(深形)+大形記号なし(中形)+N(ノック付)+K(ブラック)。黒系色ラインの価格表で中深形・ノック付・ブラックとして掲載されており、990円。これも読み方と一致する。
PVK-ANJ(中形四角・浅型・ベージュ)は、A(浅形)+大形記号なし(中形)+N(ノック付)+J(ベージュ)。標準色ラインの価格表で中浅形・ノック付・ベージュとして掲載されており、730円。こちらも一致する。
3つとも、型番の記号ひとつひとつが公式価格表の掲載内容とそのまま対応していた。骨格の読み方自体は、確度の高いものとして扱ってよさそうだ。
現場で間違えやすい点——「1方出」と、「ノック無」の底の有無
PVK-ANとPVK-AN1は、どちらも中浅形・ノック付で、価格も730円と同じだ。違いは、価格表の図に描かれている。標準の中浅形・中深形図はノックが複数方向に配置されているのに対し、PVK-AN1の図は「付(1方出)」と注記され、ノックの方向が1方向に絞られている。同じ730円だからといって在庫のあるほうを流用すると、複数方向への配管分岐ができないボックスが現場に届くことになりかねない。
もうひとつ、「ノック無」の中身にも注意が要る。中浅形・中深形の「無」(PVK-AO・PVK-BO)には価格表に※印が付き、脚注で「※印は底ノックがありません」と明記されている。つまりこの「無」は側面だけでなく底面のノックまで含めて無い、という意味だ。ところが大浅形・大深形の「無」(PVK-ALO・PVK-BLO)には※印が付いていない。公式ページの図を見ると、大浅形・大深形の解説には「底面はノック付」という注記が別に添えられており、大形サイズは「ノック無」を選んでも底面のノックだけは残る。同じ「ノック無」という言葉が、中形と大形で指している範囲が違う。
実務上の注意点——入数の単位と、色ラインをまたぐ発注
入数(1箱あたりの入り数)は、中形四角が50個、大形四角が20個とサイズで固定されている。最小入数はどちらも1と表示されているため、バラでの取り寄せ自体は可能だが、まとまった数量を発注する際は箱単位の個数がサイズによって違う点を踏まえて必要数を計算したい。
色を選ぶときは、標準色ライン(無印・J・M)と黒系色ライン(K・T・LB)が別の価格表であることを、発注段階で意識しておく必要がある。現場の外壁色に合わせてブラックやチョコレートを選ぶ判断は、単なる色の好みではなく、標準色より100〜230円高い黒系色ラインへの切り替えという、価格を伴う選定になる。さらに大浅形・大深形では黒系色のうちブラックしか選べないため、大形四角をチョコレートやライトブラウンで揃えたいという要望があった場合、その組み合わせの品番自体が存在しないことも事前に共有しておいたほうがよい。
冒頭のPVK-ANとPVK-ANKに戻る。100円の差は、色の好みの違いではなく、標準色ラインと黒系色ラインという、価格表そのものが分かれた二つの体系をまたいだ結果だった。品番の末尾1文字を見て「色が違うだけだろう」と判断する前に、その1文字がどちらの色ラインに属しているのかを、一度価格表で確かめておきたい。
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