冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。
現場に転がっていた古いプルボックスの銘板を覗き込むと、「300X300X150KG」と刻印されている。日東工業の別のシリーズの型番——たとえば屋外用ステンレスキャビネットのSOR・SORBあたり——を先に読み解いた人なら、この段階で身構えるはずだ。あちらは寸法を10や100で割った数字がハイフンの後ろに圧縮されていた。ならばこの「300」「300」「150」も、どこかで換算が挟まっているのではないか。
答えを先に言ってしまうと、そんな仕掛けはなかった。ヨコ300mm、タテ300mm、フカサ(奥行き)150mm。公式価格表の外形寸法欄と見比べても、割り算も繰り上げもなく、実寸がそのまま並んでいるだけだった。拍子抜けするほど素直な型番、というのが最初の印象になる。
ただし、素直なのは数字の部分だけだ。末尾に付く「KG」「KOG」「S」「SKO」という記号のほうは、素材と設置場所の組み合わせによってきっちり4つの系列に分かれていて、しかもその境界の引き方が一様ではない。日東工業のプルボックス公式価格表と、この製品群が準拠する公共建築工事標準仕様書の条文に基づいて、型番の規則を分解する。
型番の骨格——ヨコ・タテ・フカサの実寸に、系列記号を足すだけ
結論から書く。プルボックスの品名記号は「ヨコ寸法(mm)+X+タテ寸法(mm)+X+フカサ寸法(mm)+系列記号」という構造をしている。300X300X150KGであればヨコ300mm・タテ300mm・フカサ150mmの鋼板製標準仕様プルボックス、400X400X200SKOであればヨコ400mm・タテ400mm・フカサ200mmのステンレス製標準仕様防水プルボックス、という具合だ。
系列記号は4種類ある。KG(鋼板製・屋内用・公共建築工事標準仕様)、KOG(鋼板製・屋外用防水形・公共建築工事標準仕様)、S(ステンレス製・屋内屋外兼用防水形)、SKO(ステンレス製・屋内屋外兼用防水形・公共建築工事標準仕様)。加えて樹脂(FRP)製の系列もあるが、こちらは型番の作り方自体が別の規則に従っている。詳しくは後で触れる。
寸法の並び順も固定されている。公式価格表の列見出しは常に「ヨコ・タテ・フカサ」の順で、品名記号の数字もこの順に並ぶ。ヨコとタテが同じ値になる正方形のボックスが大半だが、ヨコとタテを取り違えて発注すると図面上の向きが変わってしまうため、細長い形状の品番を扱うときはこの並び順を意識しておく必要がある。
型番の分解——なぜ4系列に分かれ、境界がどこにあるのか
ここで一つ、素朴な期待が外れる。てっきり「PB」という基本形があって、そこにKGだのSだのという接尾辞が付いているのだろうと予想していた。ところが日東工業のN-TEC商品情報サイトを実際にたどっても、単独の「PB」という品名記号の製品は出てこない。プルボックスとして掲載されているのはKG・KOG・S・SKO・FRPの5系列だけで、「PBシリーズ」という呼び方自体が、取扱店や資材データベース側の通称にとどまっているようだ。現物の銘板に刻まれるのは、あくまでKGなりSKOなりの記号のほうになる。
素材で見ると、KG・KOGが鋼板(電気亜鉛めっき)、S・SKOがステンレスと分かれる。設置場所で見ると、もう少し込み入っている。鋼板製は屋内用のKGと屋外防水用のKOGに完全に分かれているのに対し、ステンレス製のS・SKOはどちらも「屋内・屋外兼用」の1系列で済んでいる。屋内でも屋外でも同じ品番をそのまま使えるのがステンレス側の特徴で、鋼板側のように置き場所に応じて型番を選び替える必要がない。
公共建築工事標準仕様への準拠という軸も走っている。KGとSKOは公式ページの製品名にはっきり「公共建築工事標準仕様」と入っており、アース端子(接地端子)付きであることも明記されている。一方のKOGは製品名にこそ「公共建築工事標準仕様」と入っているものの、屋外防水形という括りでSと並べられる場面もあり、素材と仕様基準という2つの軸が記号のどこに現れているかは、系列によって微妙に組み方が違う。この非対称——鋼板は屋内外で系列そのものを分け、ステンレスは1系列のまま設置場所を吸収する——は、あとで見る国の標準仕様書の条文と突き合わせると、素材の耐食性の違いに理由が求められそうだと分かってくる。
実機への当てはめ——公式価格表の数字を読む
実際の価格表を並べてみる。鋼板製の屋内用KGは、100角の最小サイズから400角まで幅広く展開している。
| 品名記号 | ヨコ×タテ×フカサ(mm) | 質量(kg) | 標準価格(円) |
|---|---|---|---|
| 100X100X75KG | 100×100×75 | 0.7 | 5,250 |
| 200X200X150KG | 200×200×150 | 2.6 | 11,000 |
| 300X300X150KG | 300×300×150 | 5.0 | 17,500 |
| 400X400X400KG | 400×400×400 | 13.2 | 42,500 |
同じ300X300X150という寸法をKOG・SKOで見比べると、系列ごとの価格差がはっきり出る。KOG(屋外防水・鋼板)は41,500円、S(防水・ステンレス、ただし300X300X150は非展開のため近いサイズの300X300X200Sで比較すると)57,000円、SKO(公共標準仕様・屋外防水・ステンレス)は300X300X200SKOで71,500円。同じ外形でも素材と防水・標準仕様の有無を積み重ねるごとに価格が積み上がっていく様子が見える。KOGとSKOはどちらも「屋外防水・接地端子付」という共通の性格を持ちながら、鋼板とステンレスという素材差だけで価格が2倍近くまで開く計算になる。
樹脂製のFRPは、ここまでとは型番の作り方そのものが違う。FRP10-11(外形110×110×100mm)、FRP15-23(外形210×310×150mm)というように、フカサをmmの10分の1にした数字と、ヨコ・タテを表す数字をハイフンでつないでいる。フカサ側の数字はKGなどと同じく10分の1変換で説明が付くが、ヨコ・タテ側の数字(11、22、23、33など)は外形寸法をそのまま10分の1にした値とは一致しない。たとえばFRP10-1515の外形はヨコ160×タテ160mmで、10分の1なら本来「1616」になるはずが、記号は「1515」になっている。ヨコ・タテ側の数字は寸法から機械的に導けるものではなく、実際の外形寸法は価格表の外形寸法欄で確認するしかない、という点は使う側として押さえておきたい。
現場で間違えやすい点——素材違いは「型番の末尾を差し替えるだけ」で済まない
KGとSKOはどちらも公共建築工事標準仕様に基づく品名で、アース端子(接地端子)付きという性格も共通している。だから見積書の型番を鋼板からステンレスに差し替えるだけで済むように見えるかもしれない。ところが公式価格表を突き合わせると、同じ外形寸法でもSKOの標準価格はKGのおおむね3〜4倍になる。素材変更は単なる型番の書き換えではなく、コストへの影響が大きい選定判断だという前提を、発注段階で共有しておく必要がある。
もう一つ、S(ステンレス防水形、公共建築工事標準仕様ではない側)にはアース端子・接地端子の記載が公式ページに見当たらない。KG・KOG・SKOの3系列にはいずれも「接地端子付」または「アース端子・パッキン付」という文言があるのに対し、Sの製品ページにはこの記載がない。同じステンレス製で見た目もよく似ているS系列とSKO系列を、価格だけで比較して「安いほうでいいだろう」と選んでしまうと、接地端子の有無という仕様差を見落とすことになる。公共工事の仕様書で接地端子付きプルボックスの指定がある場合は、SではなくSKOを選ぶ必要がある。
実務上の注意点——消えた大型サイズと、板厚が変わる境界
KGとKOGにはどちらも生産終了の記載がある。KG(屋内用)は500角サイズの4機種が2025年1月末で生産終了。KOG(屋外防水用)はさらに範囲が広く、350角3機種・400角3機種・500角4機種が同じく2025年1月末で生産終了している。現行の価格表を見ると、KOGの最大サイズは300X300X300KOGまでで、かつて存在した350角以上のKOGは公式価格表からすでに姿を消している。
古い制御盤の更新工事で、図面に「400X400X300KOG」のような型番が残っていた場合、それはすでに生産終了品ということになる。屋外・大型・鋼板という条件で代替を探すなら、同サイズ帯まで現行ラインアップが残っているステンレス製のSKO(400X400X200SKOまで現行)への切り替えを検討する必要が出てくる。鋼板からステンレスへの変更は前述の通り価格が大きく変わるため、代替品の選定は型番だけでなく予算とセットで進めたほうがよい。
板厚にも境界がある。KOGの公式仕様には「板厚1.6mm(一辺が400mm以上は2.3mm)」という注記がある。ヨコ・タテのどちらか一辺でも400mm以上になると、板厚そのものが1.6mmから2.3mmへ厚くなるという設計上の区切りだ。ただし現行のKOG価格表は300X300X300KOGまでしか掲載されておらず、この2.3mm規定に該当する400角以上の現行品自体は存在しない。仕様書の記載と現行ラインアップの間に、こうした小さなずれが残っていることも頭の片隅に置いておきたい。
なぜこうなっているのか——標準仕様書が定める最低ラインと、素材による書き分け
KGとSKOにアース端子(接地端子)が明記されている理由は、日東工業が独自に付けた仕様ではない。国土交通省が定める公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版の第2編1.2.6「プルボックス」には、金属製プルボックス全般に対して「標準図第2編『電力設備工事』の接地端子座による接地端子を設ける」という規定がある。公共建築工事標準仕様に準拠する品番であれば、素材が鋼板かステンレスかを問わず、接地端子は最初から組み込まれていて当然、ということになる。KG・KOG・SKOという3系列に共通して接地端子の記載があるのは、この条文をそのまま反映しているからだと考えられる。
同じ条文には、屋外形のプルボックスへの追加要件として「本体とふたの間にパッキンを設ける」「ふたの止めねじはステンレス鋼製とする」といった規定もある。KOGとSKOがどちらも「防塵・防水パッキン付」を名乗っているのは、この屋外形規定を満たすための構造だと読める。
鋼板側だけがKG(屋内)とKOG(屋外)に系列を分けている理由は、同じ条文の別の一節から推測できる。「鋼板製プルボックス(溶融亜鉛めっき又は同等以上の耐食性を有するもの及びステンレス鋼板製のものを除く。)は、さび止め塗装を施す」という規定があり、鋼板は放っておくと錆びるという前提に立っている。屋内専用のKGに対し、屋外で雨風にさらされるKOGでは防水パッキンや防錆塗装といった追加の作り込みが必要になり、それが型番としても別系列に分かれる形で現れているのだろう。一方のステンレスは、同じ条文で「表面仕上げは製造者の標準による」とさび止め塗装の対象から外れており、素材自体の耐食性だけで屋内・屋外を問わず使える。S・SKOが屋内屋外兼用の1系列で済んでいるのは、この耐食性の違いに理由がありそうだ。
ただし、これはあくまで公共建築工事標準仕様書の条文と製品ページの記載を突き合わせた上での推測にとどまる。日東工業がKG・KOG・S・SKOという4文字の記号そのものにどんな由来を込めたのか、たとえば「K」や「G」という一文字ずつが何の頭文字なのかについては、確認できた公式資料のどこにも明記がなかった。型番の数字部分がヨコ・タテ・フカサの実寸をそのまま表しているという規則は確度高く言えるが、記号そのものの語源までは、今回確認できた範囲では特定できていない。
日東工業プルボックスの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の品名記号からのサイズ・素材の読み解き、生産終了品の代替候補の確認、公共建築工事標準仕様への適合可否を踏まえた選定までのご相談を見積フォームで受け付けている。
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