制御盤の中を歩き回るのと違って、産業用ロボットの関節部を開ける機会はそう多くない。だが開けてみると、その中心には円盤状の部品が収まっていて、側面にこう刻まれている。「RV-20E」。
RVはナブテスコの精密減速機シリーズを示す接頭辞だ。そのくらいは電材を扱う人間なら知っている。だとすれば続く「20」は何を表すのか。素直に読めば、定格トルクの数字だろうと見当がつく。ロボットの関節に組み込む減速機なのだから、20kgf-m前後のクラスだろう、と。
ところがナブテスコの公式仕様ページでRV-20Eの定格トルクを確認すると、そこに書かれているのは「167N・m」という数字だ。kgf-mに換算すれば17。20ではない。3割近く低い。
見間違いではないかと、同じページのRV-40Eも確認してみる。定格トルクは412N・m、kgf-m換算で42。今度は逆に、型式の数字より実際のトルクのほうが大きい。
型式の数字は、いったい何を約束している数字なのか。
フレーム番号という区分――トルクの実測値ではない
ナブテスコが英語版の技術カタログに載せている「Ordering Information(発注のための製品識別)」のページには、この疑問への答えがそのまま図で示されている。E系列の型式構成図はこう並ぶ。「RV 80 E 121 A B」。先頭のRVが型式記号、次の「80」が「Frame No.(フレーム番号)」、続く「E」がシリーズ、「121」が速度比(減速比の逆数)、最後の2文字が入力ギヤの形式と出力軸の形式だ。
この構成図の下に、フレーム番号と定格トルクの対応表が載っている。フレーム番号6・20・40・80・110・160・320・450に対して、定格出力トルクはkgf-m(Nm)表記でそれぞれ6(58)・17(167)・42(412)・80(784)・110(1078)・160(1568)・320(3136)・450(4410)。
つまりフレーム番号は、定格トルクをkgf-m単位で表した数字にほぼ一致するように付番されている。「ほぼ」であって「必ず」ではない。RV-6E、RV-80E、RV-110E、RV-160E、RV-320E、RV-450Eの6機種はフレーム番号と定格トルク(kgf-m)が完全に一致するが、RV-20EとRV-40Eの2機種だけは、フレーム番号(20・40)と実際の定格トルク(17kgf-m・42kgf-m)がずれている。
なぜこの2機種だけずれるのか、その設計上の理由はカタログに明記がない。確認できるのは「フレーム番号は定格トルクの目安であり、正確な値は仕様表を見なければ確定できない」という事実だけだ。見積や選定の場面で型式の数字を暗算のショートカットに使うと、この2機種で踏み外す。
もう一つ、見落としやすい注記がある。定格トルクの測定条件だ。カタログの脚注には「定格トルクは出力回転数15r/minを基準とする。ただしRV-6Eのみ出力回転数30r/minで測定した値を定格トルクとする」とある。RV-6Eだけ測定条件が他の7機種と違う。単純な比較表として型式間の数字を横に並べる際は、この一点も頭の片隅に置いておいたほうがいい。
C系列では、フレーム番号がそのまま定格トルクになる
同じ疑問をC系列で確認すると、様子が変わる。同じOrdering Informationのページに載るC系列の型式構成図は「RV 100 C 36.75 A B」。フレーム番号100、シリーズC、速度比36.75、中心歯車形と出力軸形の記号が続く。
フレーム番号と定格トルクの対応表は、10・27・50・100・200・320・500というフレーム番号に対して、定格出力トルクkgf-m(Nm)が10(98)・27(265)・50(490)・100(980)・200(1961)・320(3136)・500(4900)。ナブテスコの公式サイトの現行の仕様表(RV-C製品ページ)でも、この7機種すべてでフレーム番号がkgf-m換算の定格トルクと完全に一致することを確認できる。
E系列で例外だったRV-20E・RV-40Eのようなズレは、C系列の7機種には一つもない。同じ「RV」の型式でありながら、系列によって数字の信頼度が違う。この非対称性が、型番を読むときにまず押さえておくべき一点目になる。
E形とC形――中実か、中空か
型式の中央に挟まる1文字、EとCの違いも確認しておきたい。
ナブテスコの公式カタログはEを「Main bearing built-in type」、Cを「Hollow shaft type」と定義している。公式サイトの製品ページの言葉を借りれば、RV-Eは「精密減速機のベーシックモデル」で中実軸を持つ。対してRV-Cは「世界トップシェア・累計700万台出荷の実績を持つ精密減速機RVの中空タイプ」で、「中空化により配管・ケーブルなどの取り回しの面で使い勝手を向上」させている。中心に大径の穴が通っているため、ロボットアームの中を配線・配管が貫通できる。バックラッシュ1分以内、ロストモーション1分以内、主軸受内蔵という基本性能は、EとC共通の特徴として両方の製品ページに並んでいる。
数字が同じフレーム番号を共有する場面もある。RV-320EとRV-320Cは、どちらも定格トルク3136N・mで並ぶ。数字だけを見れば同格の部品に見える。だが公式仕様表で質量を確認すると、RV-320Eは44.3kg、RV-320Cは79.5kgと、ほぼ倍近い開きがある。許容モーメントもRV-320Eの7056N・mに対し、RV-320Cは20580N・mとさらに差が大きい。トルクの数字が並んでいても、中実のEと中空のCとでは背負っている構造がまるで違うから、互換部品として扱うことはできない。
型式の全体像――RV-80E121ABまで読む
ここまでの内容を、ヤマ場だった数字の話から一歩引いて、型式全体の構成として整理しておく。
E系列の完全な型式は「RV-[フレーム番号]E-[速度比]-[入力ギヤ形式]-[出力軸形式]」という並びになる。入力ギヤ形式はA(標準形・狭幅タイプ)、B(標準形・大径タイプ)、Z(特殊仕様・記号なし)の3区分。出力軸形式はB(ボルト締結)、P(ボルト・ピン締結)の2区分だ。公式サイトが公開しているCAD図面のファイル名も、RV-20E-57-xx-B.dxfのように「型式-速度比-xx-出力軸形式」の順で並んでおり、この構成をそのまま裏付けている。
C系列は「RV-[フレーム番号]C-[速度比]-[中心歯車形式]-[出力軸形式]」。中心歯車形式はA(標準形)とZ(特殊仕様・記号なし)、出力軸形式はB(ボルト締結)とT(通しボルト締結)。RV-100C-36.75-A-B.dxfというCAD図面名も、この並びと一致する。
つまり「RV-20E」「RV-100C」という表記は、フレーム番号とシリーズ記号だけを取り出した略称であって、実際に発注する部品を一意に特定する情報ではない。速度比と出力軸形式まで確定して初めて、1個の部品として発注可能になる。
ナブテスコRV-E・RV-C主要機種の対応表
| 型式 | 系列 | 定格トルク(N・m) | フレーム番号とkgf-m換算値の一致 |
|---|---|---|---|
| RV-6E | E(中実) | 58 | 一致(30r/min基準の特例あり) |
| RV-20E | E(中実) | 167 | 不一致(フレーム番号20に対し17kgf-m) |
| RV-40E | E(中実) | 412 | 不一致(フレーム番号40に対し42kgf-m) |
| RV-80E | E(中実) | 784 | 一致 |
| RV-110E | E(中実) | 1078 | 一致 |
| RV-160E | E(中実) | 1568 | 一致 |
| RV-320E | E(中実) | 3136 | 一致 |
| RV-450E | E(中実) | 4410 | 一致 |
| RV-10C | C(中空) | 98 | 一致 |
| RV-27C | C(中空) | 265 | 一致 |
| RV-50C | C(中空) | 490 | 一致 |
| RV-100C | C(中空) | 980 | 一致 |
現場で間違えやすい点
型式の数字を見た瞬間に「フレーム番号=定格トルクのkgf-m値」だと機械的に読み替えてしまうのが、いちばん起きやすい間違いだ。RV-80EからRV-450Eまでの6機種、そしてC系列の全機種ではその読み替えが実際に成立するため、一度成功体験があると次も同じように読んでしまう。RV-20EとRV-40Eの2機種だけがその読み替えを裏切る例外であり、しかも例外が2つとも小型サイズに集中しているために、初めて選定する担当者ほど疑わずに通り過ぎやすい。
もう一つは、型式を「RV-〇〇E」「RV-〇〇C」の略称のまま見積や手配の依頼に使ってしまうことだ。速度比・入力ギヤ形式(またはC系列の中心歯車形式)・出力軸形式のいずれかが欠けると、フレーム番号とシリーズが合っていても部品としては特定できない。銘板や図面に記載された型式は、ハイフンの先まで含めて丸ごと控える必要がある。
そして、RV-320EとRV-320Cのようにフレーム番号が一致する組み合わせを見て、「番号が同じだから代替できる」と早合点することだ。中実のE形と中空のC形は質量も許容モーメントも別物であり、フレーム番号の一致は互換性を意味しない。
実務上の注意点
老朽化したロボットの減速機を更新する相談を受けたときは、銘板の型式をフレーム番号・シリーズ記号(E/C)・速度比・出力軸形式まで、省略せずに写し取ってもらうのが最初の一歩になる。型式の一部だけを頼りに定格トルクを類推すると、RV-20E・RV-40Eのような例外機種で見立てを外す。
後継品・代替品を検討する際も、フレーム番号とシリーズ記号が一致しているかどうかだけでなく、公式仕様表の定格トルク・質量・許容モーメントまで突き合わせたほうが安全だ。とくにE形とC形の間で「近い定格トルクだから」という理由だけで乗り換えを検討すると、配管・ケーブルの取り回し方式や取付寸法が根本的に異なるため、机上の検討段階でつまずくことになる。
型式の読み方に不安が残る場合や、銘板の文字列から現行品・代替品を特定したい場合は、実物の型式を確認したうえで手配を進めるのが確実だ。
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