MOTOMAN-GP8の仕様書を開いて、GP7の仕様書と並べてみたことがあるだろうか。GP8は可搬質量8kg、GP7は7kg。数字だけ見ればGP8の方が一回り大きいロボットに見える。ところが最大リーチはGP7が927mm、GP8が727mmで、可搬質量が小さいはずのGP7の方が200mmも長い。
型番台帳に手で書き写していて、これに気づくと手が止まる。数字を打ち間違えたのはメーカーの資料か、それとも自分の転記メモか。どちらかを疑いたくなる場面だが、実際には両方とも正しい。安川電機の公式仕様ページを確認すると、この「逆転」はメーカーが意図して設計した仕様だとわかる。
この記事の結論
MOTOMAN-GPシリーズの型番は、「GP」に続く数字が原則として可搬質量(kg)をそのまま表す。GP7=7kg、GP12=12kg、GP25=25kgというように、31機種を確認してもこの原則はほぼ崩れない。GP7とGP8のリーチが逆転して見えるのも誤記ではなく、GP7が公式に「ロングリーチタイプ」と位置づけられた設計上の特徴である。
ただし例外が2つある。GP25-12とGP180-120では、GPの直後の数字(25、180)はベース機種のフレームクラスを示すだけで、実際の可搬質量はハイフン以降の数字(12kg、120kg)の方だ。型番の数字を可搬質量だと機械的に読み替えると、この2機種だけ読み違える。
型番の基本ルール——数字は可搬質量(kg)そのもの
安川電機の公式サイトに掲載されているGPシリーズのラインアップページには、GP4からGP700、さらにGP165R・GP200R・GP300Rまで31機種が並んでいる。可搬質量と最大リーチを一つずつ突き合わせていくと、数字の一致率は高い。GP4は4kg、GP10は10kg、GP50は50kg、GP88は88kg、GP110は110kg、GP180は180kg、GP225は225kg、GP360は360kg、GP700は700kg——桁が3桁に達しても、GPの後の数字と可搬質量はぴたりと一致する。
これだけ揃うと、型番のルールを覚えるのは簡単そうに見える。GPの後の数字を読めば、それが可搬質量。現場の型番確認において、これほど機械的に処理できるルールもそう多くない。
GP7とGP8、リーチが逆転して見える理由
そのルールを疑いたくなるのが、冒頭のGP7とGP8だ。可搬質量はGP7が7kg、GP8が8kgでGP8の方が1kg重い。ところが最大リーチはGP7が927mm、GP8が727mmで、GP7の方が200mm長い。可搬質量が大きいほどアーム全体も大きく長くなる、という素朴な予想は、ここで裏切られる。
安川電機公式のMOTOMAN-GP7仕様ページには、この機種の位置づけがはっきり書かれている。「可搬質量を従来の5kgから7kgにアップし、適応範囲を拡大」という説明に続けて、「ロングリーチタイプで、幅広い工程レイアウトに対応」という一文がある。GP7は同クラスの中でリーチを優先した設計であり、GP8は逆に標準的なリーチのまま可搬質量を1kg積み増した設計だ。同じ6軸垂直多関節・同じYRC1000系コントローラという土台の上で、どちらを優先するかをメーカーが機種ごとに選び分けている。
つまり、可搬質量とリーチは同じ数字の大小に連動する2つの指標ではない。GP7とGP8は兄弟機種でありながら、設計の重心が違う。型番台帳でこの2機種を見比べて違和感を覚えたなら、それは転記ミスの兆候ではなく、メーカーが意図した設計差を正しく読み取れているということになる。
「-12」「-120」が付くと数字の意味が変わる
ここまでの原則が崩れる機種が、ラインアップの中に2つだけある。GP25-12とGP180-120だ。
GP25-12を最初に見たとき、素直に読めば「可搬質量25kgのGPシリーズの、12番目のバリエーション」のような枝番だと思うかもしれない。だが公式仕様ページの紹介文は、そう読んではいけないと教えてくれる。「MOTOMAN-GP25(可搬質量25kg - 動作範囲1,730mm)の動作範囲を2010mmまで拡張し、自動化の対象範囲をさらに拡大」——つまりGP25-12は、GP25という基準機種のリーチを1730mmから2010mmへ延ばした派生機種であり、その代償として可搬質量が25kgから12kgへ下がっている。ハイフンの後ろにある「12」こそが、この機種の実際の可搬質量だ。
同じ構造はGP180-120にもある。基準機種GP180は可搬質量180kg・最大リーチ2702mmだが、GP180-120は可搬質量120kg・最大リーチ3058mmで、GP25-12と同じくリーチを延ばして可搬質量を下げた派生機種になっている。GPの直後の数字(25、180)は、可搬質量ではなく「どの基準機種をベースにした派生型か」を示すフレームクラスの表記に変わり、実際の可搬質量はハイフン以降の数字を見なければわからない。
ここまでわかれば、あとは型式コードにも同じ理屈が通用するはずだと考えたくなる。ところが公式仕様ページの「形式」欄を見比べると、この2機種の間でも書き方が揃っていない。GP25-12の形式は「YR-1-06VXH25-A10」で、数字部分は基準機種GP25と同じ「25」のままだ。実際の可搬質量12kgは、末尾のコードがGP25の「A00」から「A10」に変わったことでしか示されていない。一方でGP180-120の形式は「YR-1-06VX180-120-D00」で、こちらは「180-120」という実質量がそのまま数字として型式コードに埋め込まれている。同じ「基準機種のリーチを延ばして可搬質量を下げる」という派生の作り方をしていても、それを型式コードのどこに反映させるかはモデルによって違う。商品名の「-12」「-120」だけを頼りに実際の可搬質量を確認し、型式コードの数字の並びから類推しない方が安全だ。
Lは長リーチ、Bは7軸——アルファベット記号が示すもの
数字の次に見るべきは、末尾に付くアルファベットだ。今回確認できた範囲では、Lという記号の意味は一貫している。GP8とGP8L、GP35HとGP35Lを比較すると、どちらの組でも可搬質量は変わらず(8kg同士、35kg同士)、最大リーチだけがLの付いた側で大きく伸びている(GP8の727mmに対しGP8Lは1636mm、GP35Hの2070mmに対しGP35Lは2538mm)。Lは「同じ可搬質量のまま、腕を長くしたロングリーチ版」を示す記号だと考えてよい。
Bという記号は、リーチでも可搬質量でもなく、軸の構造そのものに関わっていた。GP110Bの仕様ページを見ると、可搬質量110kg・最大リーチ2236mmという数値は6軸のGP110とまったく同じだが、構造欄には「垂直多関節型(7自由度)」とあり、紹介文には「7軸構造によりLアーム長が可変となり、実際のアプリケーションに即した有効動作領域が拡大」と書かれている。Bは可搬質量やカタログ上の最大リーチを変えるための記号ではなく、6軸から7軸に増やして腕の取り回しの自由度を上げるための記号だった。
一方でHという記号については、正直に書いておく必要がある。GP35Hのように商品名に堂々とHが入っている機種がある一方、GP12やGP25のように商品名にHの文字は一切ないのに、公式仕様ページの「形式」欄を見ると内部コードにはH(VXH12、VXH25)がしっかり含まれている機種もある。商品名だけを見ていては、この内部コードのHに気づけない。Hが具体的に何を意味する記号なのか、安川電機の公開資料からは明確な定義文を確認できなかった。ここで無理に意味を決めつけるより、「Hの有無は商品名から一律には判断できない」という事実だけを、確認できた範囲の結論として残しておく。
MOTOMAN-HCシリーズとの違い
型番のルールという観点では、協働ロボットのMOTOMAN-HCシリーズもGPシリーズと同じ発想でできている。公式仕様ページで確認したHC10DTPは可搬質量10kg・最大リーチ1379mmで、「HC」に続く数字がここでも可搬質量をそのまま表している。
ただし、数字の読み方が同じだからといって、GPシリーズとHCシリーズを型番の延長線上でしか区別しないのは危険だ。GPシリーズは産業用ロボットとして安全柵での隔離を前提にした設計であるのに対し、HCシリーズは人と同じ空間で作業する協働ロボットという別カテゴリーに属する。可搬質量の数字だけで「HC10はGP10の協働版」のように単純に置き換えて選定すると、安全規格上の要件を見落とすことになる。型番の数字が示すのは可搬質量という一つの指標にすぎず、GPかHCかという頭文字の違いこそが、選定の出発点で最初に確認すべき情報になる。
現場での実務的な注意点
MOTOMAN GPシリーズの型番を現場で確認するときは、まず「GP」の直後の数字を可搬質量(kg)として読んでよい。ここまでは31機種中29機種で成立する、信頼できる原則だ。
そのうえで、型番にハイフンと数字が続く場合(GP25-12、GP180-120)は、直後の数字ではなくハイフン以降の数字を実際の可搬質量として扱う必要がある。基準機種と派生機種の関係を把握するために、公式仕様ページの紹介文まで確認するのが確実だ。型式コードの数字の並びから可搬質量を類推しようとすると、GP25-12とGP180-120で表記の作り方が違うために、かえって読み違える。
末尾のアルファベットについては、Lが付いていれば「同じ可搬質量でリーチを延ばした版」、Bが付いていれば「同じ可搬質量・同じ最大リーチのまま軸数を7軸に増やした版」と読める。ただしHについては商品名の有無だけで判断せず、公式仕様ページの「形式」欄まで確認したほうがよい。予備品の手配や後継機の選定で型番を照合する際は、可搬質量・最大リーチ・軸数の3点を公式仕様ページで直接突き合わせることを勧める。
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