冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。
銘板に「CIPR-GA70A2004ABAA-CAAAAA」とある。安川電機のインバータの型式といえばCIMR-から始まるはずだ——A1000やV1000の型式を見慣れた人ほど、そう思って読み始める。ところが4文字目まで読んだところで、その前提は崩れる。CIMRではなく、CIPRなのだ。
見間違いではないかと、公式の「形式の見方」ページを開き直してみる。型式図に描かれている記号の並びは、確かに「CIPR- GA70 A 2 004 A B A A - C A A A A A」。CIMR-という接頭辞は、GA700には存在しない。しかも記号の数を数えてみると、A1000・V1000ではハイフンなしの8個で完結していたところが、GA700ではハイフンを挟んで14個まで伸びている。同じメーカーの同じインバータ製品群のはずなのに、型式の骨格そのものが別物になっている。
安川電機公式の「形式の見方・カタログコードの見方」ページと、2025年12月発行のGA700カタログ(資料番号KAJP C710617 1TI<8>-0)に基づいて、CIPR-GA70という型式が何を確定させ、A1000・V1000から何を引き継ぎ、何を新しく積み増しているのかを分解する。
型式の骨格——8個から14個へ、ハイフンの先に新しい区画ができた
公式の形式説明図が示す型式は、CIPR-GA70A2004ABAA-CAAAAA。頭から順に、1文字目のGA70が製品シリーズ、2文字目のAが仕向地(記号表にはA=日本とだけ定義)、3文字目の2が入力電源電圧クラス(2=三相AC200V級、4=三相AC400V級)。ここまではA1000・V1000と役割の対応が取れる。
違いが出てくるのは4文字目からだ。GA700ではここに電流クラスが直接続き、A1000・V1000にあった「カスタマイズ仕様」という1文字分の枠がない。かわりに5文字目には、A1000・V1000のどちらにも存在しない記号——EMCノイズフィルタが割り当てられている。Aなら内蔵EMCフィルタなし(標準)、Bならカテゴリ C3のEMCフィルタを内蔵し、この場合はCEマーキング(EMC指令)対応品になる。フィルタの有無という、以前は型式の外で扱っていたはずの情報が、型式の中に組み込まれた格好だ。
6文字目が保護構造、7文字目が耐環境向上仕様、8文字目が設計順位——ここまでの8つは、名前も並び順もA1000・V1000とほぼ重なる。だが型式はここで終わらない。ハイフンをまたいだ先に、9文字目から14文字目までの6つの記号が続く。制御回路端子基板、オプションカード(接続コネクタCN5-A・CN5-B・CN5-C)、キーパッド、特殊用途。A1000・V1000の型式には対応する区画そのものが存在しない部分であり、GA700になって初めて型式の一部として明文化された6桁だ。
電流クラスと保護構造——桁数が減り、選べる幅は広がった
電流クラスの読み方自体は、A1000・V1000と共通のルールを引き継いでいる。「軽負荷(ND)定格の定格出力電流の小数点以下1桁を四捨五入した値」だ。200V級の形式一覧で確認すると、カタログコードGA70A2004のND定格出力電流は3.5A、四捨五入して4、表記は「004」。ここまではA1000のCIMR-AA2A0004と同じ理屈である。
ただし表記の桁数は違う。A1000・V1000の電流クラスは0004のような4桁表記だったのに対し、GA700は004のような3桁表記に変わっている。見た目の桁数が減っているぶん、型式全体の文字数はハイフン以降の6桁で相殺されて、むしろ長くなっている——という、ねじれた構図になっているわけだ。
保護構造も記号の意味自体はA1000に近い。Aが IP00/UL Openタイプ、Bが IP20/UL Openタイプ。ただし公式の注記には「IP20/UL Type1は、オプションで対応(IP20/UL OpenタイプにUL Type1キットを取付け)」とあり、A1000のように保護構造の記号として直接F(UL Type1)を選べるわけではない。IP20/UL Openタイプを選んだうえで、後付けのキットで対応するという2段構えになっている。
大容量帯だけ数字が壊れる——H11・H12という例外
400V級の形式一覧を上から追っていくと、カタログコードは002、004、005、007……と、電流クラスのルールどおり素直に数字が並ぶ。930まで来て、次も当然「1090」あたりの数字が続くのだろうと予測しながら表を見ていくと、そこにあるのは「H11」「H12」という見慣れない表記だ。
H11の内訳は、最大適用モータ容量がHD定格500kW・ND定格560kW、定格出力電流がHD 930A・ND 1090A。H12はHD定格560kW・ND定格630kW、定格出力電流がHD 1090A・ND 1200A。四捨五入のルールをそのまま当てはめれば、H11は1090、H12は1200という3桁超の数字になってもおかしくない。だが公式の形式一覧に載っているのはH11・H12という表記だけで、なぜこの最上位2機種だけアルファベットに切り替わるのかについての説明は、確認できた資料の中にはなかった。
「電流クラスは数字を見れば規模感がつかめる」という読み方は、GA700の400V級では930までしか通用しない。最大容量帯の2機種に限っては、型式の文字面から容量を逆算する手がかりが、数字ではなくH11・H12という記号そのものに移っている。
ハイフンの先の6桁——標準品は「CAAAAA」、その中身
9文字目以降の6桁を、標準品の並び「CAAAAA」から順に見ていく。9文字目のCは制御回路端子基板で、フォトカプラ出力・スクリュークランプ端子基板タイプ(標準)を意味する。もう一つの選択肢であるA(リレー出力・スクリュークランプ端子基板タイプ)も記号表には載っているが、標準品として型式に現れるのはCの方だ。
10文字目から12文字目は、CN5-A・CN5-B・CN5-Cという3つの接続コネクタに対応するオプションカードの有無で、標準品はいずれもA(オプションカードなし)。GA700にはCC-Link・DeviceNet・PROFIBUS-DP・EtherCAT・EtherNet/IPといった通信オプションカードが用意されているが、これらを装着した状態を示す記号は、確認できた形式一覧の中には載っていない。公式の注記どおり「No.9-14はCAAAAAが標準です。それ以外の組合せはご照会ください」という扱いになっており、通信プロトコルの種類は型式の文字列ではなく、別途の型式(例えばCC-Link通信オプションカードならTOBPC73060083)で管理されている。
13文字目はキーパッドだ。ここはA1000・V1000にはなかった選択肢が並ぶ。標準のLCDキーパッド(A)に加えて、耐湿・耐じん仕様(B)、耐ガス仕様(C)、そしてBluetooth内蔵LCDキーパッド(D、耐湿耐じん仕様はE)、LEDキーパッド(F、耐湿耐じん仕様はG)、ブランクカバー(L)。スマートフォンからインバータへ無線でアクセスするというGA700の特長の一つが、この13文字目の記号として型式に組み込まれている。
14文字目の特殊用途は、A(標準)とB(高周波)の2択。Bについては「輸出規制該当機種です。ご照会ください」という注記が付いており、記号表には載っていても一般に流通する型式ではないと読める。
CIPR-GA70A2004ABAA-CAAAAAを通しで読む
ここまでの内容を、公式の型式図に載っている型式そのもので通して読んでおく。CIPRは固定の接頭辞。GA70でGA700シリーズ。2文字目のAは仕向地で日本向け。3文字目の2は入力電源電圧クラスで三相AC200V級。4文字目の004が電流クラスで、200V級の形式一覧によればND定格出力電流3.5Aを四捨五入した値、最大適用モータ容量はHD定格0.4kW・ND定格0.75kW。5文字目のAはEMCノイズフィルタなし(標準)。6文字目のBは保護構造でIP20/UL Openタイプ。7文字目のAは耐環境向上仕様で標準。8文字目のAは設計順位で、意味までは公開資料からは確認できない。
ハイフンの先、9文字目のCは制御回路端子基板がフォトカプラ出力・スクリュークランプ端子基板タイプ(標準)。10〜12文字目のAAAはCN5-A・B・Cいずれのオプションカードも未装着。13文字目のAはLCDキーパッド(標準)。14文字目のAは特殊用途なし(標準)。14個の記号のうち、実際にはほとんどがA(標準)で埋まっている——裏を返せば、この型式が「特に変わった仕様を何も足していない、素の状態のGA700」を表しているということでもある。
現場で間違えやすい点
まとめると、GA700の型式で足を止めやすいのは次の3か所になる。一つめは、接頭辞をCIMR-だと思い込んで検索や照合を始めること。GA700の接頭辞はCIPR-であり、CIMR-では該当する型式が出てこない。二つめは、400V級の最大容量帯でH11・H12という表記に出会ったときに、それを型番の記載ミスや別シリーズの型式と誤認すること。930までの数字表記の延長線上にある、GA700公式の正規のカタログコードである。三つめは、ハイフン以降の6桁を見て通信プロトコルの種類まで読み取ろうとすること。この6桁が示すのはオプションカードの有無までで、CC-LinkかEtherNet/IPかといった具体的な種類は、別途の型式で管理されている。
実務上の注意点
型式を照合するときは、まず接頭辞がCIPR-であることを確認したうえで、ハイフンの前後を分けて読みたい。前半8桁は電圧クラス・電流クラス・EMCフィルタ・保護構造・耐環境仕様という、容量や設置環境に直結する情報。後半6桁は、標準品であればCAAAAAで固定されているはずの区画で、ここが標準以外の並びになっている場合は、制御盤端子基板の種類や通信オプションカード、Bluetooth内蔵キーパッドなど、個別にカスタマイズされた1台である可能性が高い。耐環境向上仕様については、カタログコードGA70A4810〜4H12の大容量帯だけM仕様が標準扱いになるという例外もあるため、容量帯をまたいで型式を比較する際は、この注記も含めて確認しておくと手戻りが少ない。
安川電機GA700インバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の銘板に残ったCIPR-GA70系列の型式から、電圧クラス・電流クラス・EMCノイズフィルタ・保護構造の読み解き、ハイフン以降の6桁が標準品かカスタム品かの確認までのご相談を見積フォームで受け付けている。銘板の型式が判読しにくい場合や、H11・H12のような見慣れない表記に不安がある場合は、写真を添えていただければ照合を含めて確認する。
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