工場クレーンの予備品棚に、同じような黒い丸ケーブルが二本並んでいる。シースの印字を見比べると、「600V CUR-2PNCT」と「600V CAR-2PNCT」。数字の並びはどちらも「2PNCT」で揃っている。違うのは頭の3文字、CURかCARか、それだけだ。担当者は一瞬、こう思う。CURもCARも似たようなものだろう、在庫にあるほうを流用しても大差ないはずだ、と。
その判断は、たぶん半分だけ正しい。同じ600Vの2種EPゴム絶縁クロロプレンキャブタイヤケーブルという中身は同じだからだ。ところがプロテリアルの製品ページを開くと、CURは「カーテン方式用」、CARは「キャリア方式用」と、まったく別の給電方式に紐づいた記号だと分かる。カーテン方式はハンガーとクランプでケーブルを吊るしながら移動させる構造、キャリア方式はキャリアドラムに巻き取りながら移動させる構造で、ケーブルにかかる曲げ方も張力の向きも違う。CAR用の設計をCURの現場で使い続ければ、見た目には分からないまま屈曲疲労が進み、ある日突然、断線という形で結果が出る。
プロテリアルはこの手の見間違いを防ぐためか、キャブタイヤケーブルの品名を「品名の表示」という一枚の図で公開している。以下、この図とセレクションガイドPDF・技術資料PDF(いずれもプロテリアル公式サイトで公開、作成日は2017年9月)に基づいて、型番がどう積み上がっているのかを一段ずつ確認する。
品名は五段構成――①電圧②方式③クラス④絶縁シース⑤オプション
プロテリアルのセレクションガイドには、次のような記載例が載っている。
〈例〉600V CUR-2 PNCT-SB 30×3.5mm2
これを①〜⑤に割り振ると、次のようになる。
- ①定格電圧:600V/3300V/6600V
- ②主な用途:CUR(カーテン方式用)、SK(カーテン方式用、平形)、CAR(キャリア方式用)、RE(リール巻〔拾い巻〕方式用)、RE(V)(垂直リール巻方式用)、H(リール巻方式用、平形)、TOR(捻回〔旋回〕方式用)、SPD(バスケット〔スプレッダ〕用)、K(計器用〔小勢力〕)、T(耐震形)、F(複合ケーブル)、FG(光複合ケーブル)、MM(難燃性)、LT(耐寒性)、SKR(耐寒性)
- ③クラス:2(2種)、3(3種)、4(4種)
- ④ケーブルの種類:PNCT(絶縁体:EPゴム、シース:クロロプレン)、FFCT(絶縁体:フロンレックス、シース:フロンレックス)
- ⑤オプション(シールド等):SB(一括シールド)、PSB(各対シールド)、CSB(各心シールド)、SX(特殊シールド)、B(ガラステープ+ステンレス編組)、RF(シース補強型)
先の例で言えば、600V(①)のカーテン方式用(②CUR)で、2種(③)のEPゴム絶縁クロロプレンシース(④PNCT)に、一括シールド(⑤SB)を追加した品名が「600V CUR-2PNCT-SB」ということになる。そのあとに続く「30×3.5mm2」は、線心数(または対数)×導体サイズを示す部分で、品名の五段構成そのものには含まれないが、発注時には必ずセットで指定される数値だ。
②の記号は、電圧でもサイズでもなく「動かし方」を表している
この五段のうち、選定の入口になるのは②主な用途だ。プロテリアルのセレクションガイドには「使用方式と適用ケーブル」という表があり、可動部の動き方ごとに推奨タイプが割り当てられている。
- カーテン(ハンガーとクランプで吊る、またはメッセンジャワイヤ)→ CURタイプ、SKタイプ(平形)
- キャリア(キャリアドラムでケーブルを送り出す)→ CARタイプ
- ケーブルチェーン(25心以上)→ CARタイプ推奨
- リール巻(拾い巻)→ REタイプ、Hタイプ(平形)
- 垂直リール巻 → RE(V)タイプ
- 捻回(旋回) → TORタイプ
- バスケット(スプレッダ) → SPDタイプ
- 耐震 → Tタイプ
- ダンサロール、ペンダント(吊り下げ)、仮設用・固定用 → REタイプ、Tタイプ、2PNCT・3PNCT
つまり②の記号は、電圧の高さでも太さでもなく、設備がケーブルをどう動かすかという機構の違いに直結している。MM(難燃性)・LT/SKR(耐寒性)・F(複合ケーブル)・FG(光複合ケーブル)・T(耐震形)は、この動かし方の記号にさらに重ねて使われる修飾語に近い。実際、製品一覧には「6600V FG-RE-3PNCT」(光複合丸形高圧、リール巻方式)や「3300V FG-H-3PNCT」(光複合平形高圧、リール巻方式・平形)という品名があり、FGとRE、FGとHがそれぞれ組み合わさっている。給電方式の記号と、環境・機能を示す記号は、別々に選んで積み上げる仕組みになっているわけだ。
PNCT・FFCTは、一文字ずつには分解されない一体表記
では④の「PNCT」自体は、どこまで分解できるのか。ここは正直に書いておきたい。今回確認したプロテリアルの製品ページ・セレクションガイドPDF・技術資料PDFのいずれにも、PNCTをP・N・C・Tの一文字ずつに割って意味を説明した箇所は見当たらなかった。示されているのは「PNCT=絶縁体:EPゴム、シース:クロロプレン」という、四文字ひとまとまりの対応関係だけだ。2PNCT・3PNCT・4PNCTと数字を変えても、変わるのは③クラスの部分だけで、PNCTそのものは常に同じ意味の塊として扱われている。FFCT(絶縁体:フロンレックス、シース:フロンレックス)も同様に、一体表記として示されている。
したがって、NCTという並びから「クロロプレンキャブタイヤケーブルを表す業界共通の略号ではないか」と推測することはできても、その一文字ずつの由来をプロテリアルの一次資料から裏付けることはできなかった。断定を避け、確認できた範囲――PNCT・FFCTは分解不能な一体表記としてカタログ上に固定されている――にとどめておく。
クラス2種・3種・4種は、法令上の使用場所区分と結びついている
③クラスの2種・3種・4種は、単なるグレード分けではない。プロテリアルの技術資料には「電気設備技術基準におけるキャブタイヤケーブルの用途別選定基準」という表があり、屋内・屋側・屋外・トンネル等という設置場所ごとに、300V以下/600V以下/7,000V以下の電圧区分で、クロロプレンキャブタイヤケーブルの2種・3種・4種がいずれも使用可(○)となっている一方、高圧用クロロプレンキャブタイヤケーブルは2種・3種の2段階しか用意されておらず、しかも7,000V以下の区分で使用できるのは3種だけ(2種は×)となっている。ウェブページ側の説明を補うと、2種は可とう導体・絶縁体・シースだけの最も基本的な構成で補強層を持たず、3種はシース中間に帆布などの補強層を追加して耐衝撃性・耐摩耗性を高めた構成だ。損傷を受けやすい現場では3種以上を、という選び方は、法令上の区分と現場の実態の両方から裏付けられている。
なお技術資料の許容電流表には「ケーブル構造は、SP31-90019A(JISC3327)によるものです」という脚注があり、プロテリアルの社内規格SP31-90019Aが、JIS C 3327(ゴム絶縁キャブタイヤケーブルのJIS規格)に準拠していることも確認できた。品名の記号は独自のようでいて、土台の構造規格はJISに接続している。
実機の型番を、一つずつ辿ってみる
ここまでの規則を、実際にお取り寄せ対象となっている品名に当てはめてみる。
- 「600V CUR-2PNCT」:600V・カーテン方式用・2種・EPゴム絶縁クロロプレンシースという、最も基本的な組み合わせ。
- 「600V CUR-2PNCT-SB」:同じCUR・2種に、⑤オプションのSB(一括シールド)が追加された仕様。制御線や計装線を含み、外来ノイズの影響を避けたい配線で選ばれる。
- 「600V MM-2PNCT」:②の記号がCURからMM(難燃性)に変わった仕様。セレクションガイドの「その他の用途でのケーブル選定」表では、原子力発電所・火力発電所・製鉄所向けの難燃性要求に対応する例として挙げられている。
- 「600V CAR-2PNCT/600V CAR-3PNCT」:キャリア方式用で、2種・3種の両方が用意されている。
- 「600V RE-2PNCT/600V RE-3PNCT」:リール巻(拾い巻)方式用。
- 「H-3PNCT」:Hは「リール巻方式用、平形」を表す記号だが、製品一覧には「600V H-3PNCT/600V H-3PNCT」(平形ケーブル)と「3300V H-3PNCT/6600V H-3PNCT」(平形高圧ケーブル)が別の品名として存在する。H-3PNCTという文字列だけでは電圧までは確定できず、①の定格電圧まで含めて型番を伝える必要がある。
- 「600V T-2PNCT」:耐震形。ダンサロールやペンダント(吊り下げ)用途と並んで、耐震設備向けの推奨タイプとされている。
- 「FFCT」:200℃耐熱のフロンレックス®被覆品。ただしプロテリアルの製品一覧表を見ると、CURタイプ〜Tタイプまでが「キャブタイヤケーブル」というカテゴリーにまとめられているのに対し、FFCTタイプは「フレキシブルケーブル」という別カテゴリーの見出しの下に置かれている。同じページに掲載されてはいるが、プロテリアル自身の分類上は、厳密には「キャブタイヤケーブル」の並びには属していないことになる。
現場で間違えやすい点
- NCTの一文字ずつの意味は、少なくとも今回確認した一次資料には書かれていない。PNCT・FFCTは分解できない一体表記として扱う。
- LTとSKRは、品名表示の一覧上どちらも「耐寒性」を表す記号として並んでいる。型番の記号だけで構造上の違いを判別することはできないため、冷凍倉庫など低温用途であることを先に伝えたうえで仕様を確認したほうがよい。
- FFCTタイプはプロテリアルの製品一覧上「フレキシブルケーブル」に分類されており、CUR〜Tタイプの「キャブタイヤケーブル」カテゴリーとは別枠になっている。
- 計器用のK-PNCT・K-PNCT-SBは、他の品名と違って先頭に定格電圧の表記がない。小勢力回路向けという用途上の位置づけによるものと考えられる。
- H-3PNCTのように、②の記号が電圧を固定しない品名では、①の定格電圧まで含めて確認しないと、600V品と3300V/6600V品を取り違えるおそれがある。
実務上の注意点
見積・発注の際に伝えるべき情報は、プロテリアルの選定方法の項目に沿うと整理しやすい。用途(設備の動かし方=カーテン・キャリア・リール巻などの給電方式、必要であれば張力条件)、仕様(使用電圧、線心数×サイズ、遮蔽の有無)、ケーブル外径・重量の希望、の3点だ。
許容曲げ半径は、丸形・リール巻方式以外なら低圧R≧6d/高圧R≧8d、丸形・リール巻方式なら低圧R≧10d/高圧R≧15d、平形・リール巻方式以外なら低圧R≧6d/高圧R≧8d、平形・リール巻方式なら低圧R≧12d/高圧R≧16d(dはケーブル仕上外径)と、技術資料に定められている。許容張力については、3/0.32鋼線入り導体の場合は「161×線心数(N)以下」、鋼線無し導体の場合は「39×導体断面積合計mm2(N)以下」という計算式が示されており、たとえば20心×2mm2(鋼線入り導体)なら許容張力3,220N以下、3心×38mm2(鋼線無し導体)なら4,446N以下が目安になる。
最小ロットは100m(在庫品を除く)で、線心識別はナンバリング識別への変更にも対応するとQ&Aに明記されている。特殊要求事項(難燃性・耐寒性・可とう性・耐熱性など)がある場合は、型番の記号を先に決め打ちするより、条件を伝えて選定を相談したほうが手戻りが少ない。
プロテリアル キャブタイヤケーブルの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、プロテリアルのキャブタイヤケーブルについて、現物のシース印字や設備図面から給電方式・クラス・オプション記号を照合したうえでのお取り寄せ・お見積りに対応している。CURとCAR、LTとSKRのように記号が紛らわしい場合や、H-3PNCTのように電圧まで確認が必要な品名の場合は、現物の写真か既存の品名が分かる資料を添えてもらえると照合が早い。
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