過去問の配線図問題で、こういう落とし方をすることがある。接地の種別は完璧に覚えている。それなのに、E_A・E_B・E_C・E_Dの4つの記号が並んだ選択肢を前にして、誤ったものを選ぶ。避雷器と断路器の違いも説明できるのに、図の上の2つの記号を取り違える。
知識は正しい。それでも点にならない。何が足りないのか。
足りないのは知識ではなく、見る場所だ。4つ並んだ記号を全体の印象で見比べると、どれも合っているように見えてくる。このトピックを読み終えるころには、記号を見る場所を最初から1カ所に絞る方法——『他の3つには絶対に無い1点』の探し方が、なかまごとに手に入っている。
このトピックは、開閉する機器・計器と変成器・保護の各トピックで学んだ記号を、試験の4択で見比べるための一覧として1枚にまとめ直す。個々の記号の背景はそれぞれのトピックに譲り、ここでは「見分けの決め手」だけに絞る。
まず、なかま分け — 記号は4つの形の部品でできている
一覧に入る前に、1つだけ法則を持っておく。単線結線図の記号は30種近くあるが、使われている「形の部品」は数えるほどしかない。
丸は計器のなかまで、中の量記号が測るものを教える。円2個のだるま形は変成のなかま。斜めの線は開閉のなかまで、先端の印が機能を教える。長方形の枠は継電器やコイルのなかまで、中の文字が見張っている量を教える。だから初見の記号でも、まずどの部品でできているかを見れば、なかまの見当がつく。細部の見比べはそのあとだ。
以下、なかまごとに一覧を並べる。それぞれの記号に付けた「決め手」は、同じなかまの他の記号には無い1点を選んである。
開閉・遮断のなかま — 決め手は先端の印と可動接点の形
見分けの決め手を1つずつ挙げる。どれも、同じなかまの他の記号には無い特徴だ。
- 断路器(DS) — 先端の印が横棒1本だけ。丸も×も付かない。
- 遮断器(CB/VCB) — 先端に×。×が付くのはこのなかまで遮断器だけ。
- 負荷開閉器(LBS) — 横棒の下に小さい丸。丸の有無がDSとの唯一の差。
- PF付きLBS — 可動接点そのものがヒューズ形(細長い長方形+中心線)。先端の印はLBSと同じ。
- 高圧限流ヒューズ(PF) — 細長い長方形を導体がまっすぐ貫通するだけ。斜めに開く接点が無い。
- 電磁接触器(MC)主接点 — 先端の印が小さい半円。横棒・丸・×のどれでもない。
- 配線用遮断器(MCCB) — 四角の中にB。低圧側で使うJIS C 0303(構内電気設備の配線用図記号)の記号で、高圧側の接点系の記号とは体系が違う。
- 漏電遮断器(ELCB) — 四角の中にE。過負荷保護付はBEと書かれることもある。
そして、このなかまで最重要の注意がある。高圧カットアウト(PC)・柱上気中開閉器(PAS)・地中線用ガス開閉器(UGS)には、JIS C 0617に専用の図記号が無い。 PCはヒューズ付きの開閉器系の記号に「PC」と傍記され、PAS・UGSは負荷開閉器の記号(ZCT・GRを併記した形が多い)に「PAS」「UGS」と傍記される慣用表現で示される。つまりこの3つは、形ではなく傍記の文字が決め手になる。
変成のなかま — 決め手は円の重なりと貫通本数
- 変圧器(T)・計器用変圧器(VT) — 円2個が上下に重なるだるま形。導体は円を貫通しない。TとVTは同じ様式の記号で、どちらかは傍記と図中の位置で決まる。
- 変流器(CT) — 導体1本が円の中心を貫通し、円から横へ二次側の線が出る。だるま形と違い、円は1個。
- 零相変流器(ZCT) — 同じ貫通形だが、3本の導体を一括して貫通させる(斜線に3の注記)。JISに「零相変流器」という名の独立記号は無く、この3導体一括貫通の変流器記号に「ZCT」と傍記する描き方が実体だ。
- 計器用変圧変流器(VCT/MOF) — JISに単独の図記号が無い。VTとCTを一体の枠で描いて「VCT」と傍記する慣用表現で、二次側に取引用の電力量計(Wh)がつながる。
- 零相電圧検出装置(ZPD/EVT系) — こちらは対応するJIS図記号自体が確認できない。実務図では独自の描き方に「ZPD」と傍記するのが慣例で、本一覧でも図は載せず、DGRの項で「ZCTと組み合わさる相手」として扱う。
保護のなかま — 決め手は枠の中の文字と、末端の接地
- 避雷器(LA) — 長方形の内側に下向きの黒塗り矢じりがあり、末端が必ず接地記号で終わる。枝がその先の回路へ続かないのはこのなかまでLAだけ。
- 過電流継電器(OCR) — 長方形の枠の中にI>。枠は継電器共通で、中の文字だけが違う。
- 地絡継電器(GR・DGR) — 枠の中がIに接地記号を添えた表記。GRかDGRかは枠では区別できず、ZCTだけにつながっていればGR、ZCT+ZPDの両方につながっていればDGRという、接続相手が決め手になる。
- 直列リアクトル(SR) — 円周の約4分の3だけの弧。完全な円で描かれるCTや変圧器とは、円が閉じているかどうかで見分ける。
- 高圧進相コンデンサ(SC) — 間隔を空けた平行な横線2本。進相専用の飾りは無く、「SC」の傍記が決め手。回路の並びは高圧母線側からSR→SCの順。
計器のなかま — 決め手は円・四角の中の文字
- 電流計(A)・電圧計(V)・電力計(W)・力率計(cosφ) — 指示計器は円の中に量記号を書く一般則。円の中の文字がすべてで、形の差は無い。
- 電力量計(Wh) — 積算計なので円ではなく縦長の長方形。上部に区切り線が1本入る。丸か四角かが、指示計器との唯一の差。
- 電流計切換開閉器(AS)・電圧計切換開閉器(VS) — 正方形の枠に文字と切換接点線。記号は同形で文字だけが違うが、中身は別物だ。ASはCTの二次側を開放しないよう短絡させながら切り換える特別な構造を持つ。
- 試験用端子(CTT・VTT) — 継電器試験のときに試験器をつなぐ端子。専用のJIS図記号は確認できず、端子記号(小さい丸)を並べて「CTT」「VTT」と傍記する慣用表記で描かれる。CTT(電流側)は短絡してから切り離す、VTT(電圧側)は開放してから印加するという操作の違いが、CT・VTの性質をそのまま引き継いでいる。
CTTとVTTは記号が同じなので、傍記が読めないときは「どちらの回路に居るか」で決まる。 小さい丸が並んだ端子記号を単線結線図の上で見つけたら、そこから左(電源側)へ線を辿る。 行き着いた変成器がCT(導体1本が円を貫通)ならCTT、VT(円2個のだるま形)ならVTTだ。 CT二次回路には電流計・OCRが、VT二次回路には電圧計・VS・UVRがつながるので、右(負荷側)に何が 居るかでも裏を取れる。たとえばV結線のVT(V2Vと傍記される2台のVT)の二次側から電圧計へ向かう 線上に端子記号があれば、それはVTTと確定できる。記号が同じ組は、記号の中ではなく回路の中に 答えがある——PF付きLBSとPCの関係と、まったく同じ構造の問題だ。
接地のなかま — 形は全部同じ、決め手は下付きの1文字
冒頭で挙げた、実際に点を落とした4択がこれだ。E_A・E_B・E_C・E_Dは、記号の本体(縦線に横線3本)が完全に同一で、違いは下付き文字だけ。だから見るべき場所は最初から1カ所しかない。
下付き文字を読んだら、そのまま「種別→対象機器」に変換する。設問が「避雷器の接地」ならE_A、「変圧器の低圧側中性点」ならE_B。逆に、図中のE_Cを見たら「この機器は300Vを超える低圧機器のはずだ」と機器側を検算できる。1文字が、工事種別・対象機器・抵抗値の3つを同時に運んでいる。
まぎらわしい組だけ、もう一度並べる
一覧で全体を見たら、最後に、実際に取り違えやすい組だけを隣に並べて差分を確認する。
開く記号4つ — DS・LBS・PF付きLBS・PC
DSとLBSの差分は丸1個だけ。LBSとPCは「どちらもヒューズを持ちうる」ため印象が近いが、そもそもPCには専用記号が無いので、形での区別は不可能だ。傍記(PC)と、図中の位置(PCは小容量変圧器やコンデンサ回路の開閉に使われることが多い)で決める。
傍記が無いときは、変圧器の容量が決める
ここが実際に点を落とす場所だ。「PCと傍記されていないのだから、ヒューズの無いLBSだろう」—— この推論は逆向きに間違っている。傍記が無いなら、その機器はPCではない。PCでないなら、 変圧器の一次側に置ける機器はPF付きLBSかCB(遮断器)になる。
なぜなら、変圧器の一次側にヒューズ無しのLBSを単独で置くことはできないからだ。LBSは負荷電流を 開閉できるが、短絡電流を遮断する能力を持たない。変圧器の内部短絡を切れる機器が要る。 その役目を、PCなら内蔵のヒューズが、PF付きLBSなら限流ヒューズ(PF)が、CB形なら遮断器が担う。
そしてPCと PF付きLBSの境目は容量で決まっている。高圧カットアウト(PC)が使えるのは 変圧器なら300kV·A以下、高圧進相コンデンサなら50kvar程度まで。これを超える変圧器には PCを使えず、PF付きLBSまたはCBになる。
| 変圧器の容量 | 一次側に置く開閉装置 | 図の上の見え方 |
|---|---|---|
| 300kV·A以下 | 高圧カットアウト(PC) | ヒューズ形の可動接点+PCの傍記 |
| 300kV·A超 | PF付きLBS(またはCB) | ヒューズ形の可動接点、傍記は無い |
だから単線結線図で、小容量の変圧器には「PC」と傍記が付き、大容量の変圧器には傍記が無い、 という並びになる。同じ図の中に傍記付きと傍記無しが混在していたら、それは出題者が 容量の違いを見せている。500kV·Aの変圧器の一次側に置く記号を選べと言われたら、 300kV·Aを超えているのでPCは消え、答えは可動接点がヒューズ形のPF付きLBSになる。
見るべき順序はこうなる。①ヒューズ形の可動接点があるか → ②傍記があるか → ③無いなら 変圧器の容量を見る。記号の中で完結させようとすると、この問題は解けない。
円のなかま3つ — VT・CT・ZCT
VTとCTの差分は「一次側が円と別の線か、円を貫通するか」。だるま形の円2個には導体が入り込まないが、CTは導体そのものが円の中心を通る。CTとZCTはどちらも貫通形なので、差分は貫通する導体の本数(1本か、3本一括か)と、斜線に添えられた「3」の注記になる。
縦に落ちる枝 — LAとDS
遠目のシルエットで最も取り違えやすい組がこれだ。どちらも図の上では縦の枝に見えるが、LAの枝は行き止まり(接地)で、DSの枝は通り道。枝の途中と末端という2点を見れば、シルエットの印象に引きずられずに確定できる。
記号だけでは決まらない — 最後は位置とつながる相手
ここまでの決め手で、4択に並んだ記号の差分は読めるようになる。だが本番の配線図問題では、もう一段先がある。TとVTは同じだるま形、GRとDGRは同じ枠、PF付きLBSとPCは同じ形——記号が同じでも機器が違う組が現実にあるからだ。それを分けるのは、傍記の文字と、その記号が図のどこに居て、何とつながっているかという文脈になる。
この「位置とつながりで機器を確定させる」練習は、単線結線図ドリル(9図・50問)で実際の図を使って積める。この一覧で差分の見方を仕込んでからドリルに戻ると、同じ図が別物のように読めるはずだ。
冒頭の話に戻る。知識が正しいのに4択で落とすのは、記号を「全体の絵」として眺めているからだった。図記号は部品の足し算でできていて、似た記号の違いは1〜2カ所に集中する。だから、見るべき場所を先に知っていれば、4つ並んだ記号は怖くない。試験の朝にこのページの一覧だけをもう一度眺めて、決め手の1点を指でなぞってから会場に向かう——この一覧は、そういう使い方のために作ってある。